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長期金利2.85%で思い出す、国債が値下がりする「逆の世界」の歩き方

長期金利が約29年ぶりの2.85%に上昇したと聞いて、「金利が上がると国債が値下がりする」という話を思い出した方へ。あの逆転現象、なんとなくわかったつもりでいませんか?今日のニュースを入り口に、仕組みから投資信託への波及まで一緒にたどる話です。

超!企業DB 編集部·2026-07-07·12
目次6
  1. 01長期金利2.85%──「29年ぶり」でも、なぜ実感がわかないのか
  2. 02「金利が上がると国債が値下がり」──この逆転現象、どういうこと?
  3. 031万円の国債は金利が0.5%上がるといくらになる? 具体例でたどる
  4. 04なぜ今、長期金利が上がっているのか──日銀と財政の綱引き
  5. 05金利が上がると株やREITも下がりやすい──「割引率」という共通言語
  6. 06「金利ある世界」で、私たちはどう身構えればいいのか

長期金利が2.85%まで上がりました。約29年ぶりの水準です。でも「金利が上がって何が悪いの?利息が増えて嬉しいのでは?」と思った方、実はその直感が国債の世界では通用しません。今日は「金利と債券価格は逆に動く」という投資初心者の最初の壁を、29年ぶりの数字を使って一緒に越えていきます。

長期金利2.85%──「29年ぶり」でも、なぜ実感がわかないのか

長期金利2.85%と聞いて「へえ、29年ぶりなんだ」と驚いたあと、実は多くの人が「でも、自分には関係ないかも」と感じている。銀行預金の金利はほぼゼロのままだし、住宅ローン金利も急には上がらないからだ。この「自分と関係ない感」こそが、金利の話をわかりにくくしている最大の理由だ。なぜなら、長期金利は私たちの日常生活に直接響く数字ではなく、むしろ金融市場の裏側で資産の値段を決める「ものさし」として働いているからである。

長期金利とは、国が10年後に返すと約束したお金を、今いくらで貸すかを決める「物差し」のようなもの。教科書的には「国債の利回り」のことを指す。この物差しが長さを変えると、すでに世の中に出回っている国債の値段がすべて連動して動く。銀行預金が反応しなくても、あなたが持っている投資信託やREITにはじわじわ効いてくる。たとえば、金利が上がると将来の家賃収入や企業利益を今の価値に直すときの割引率が変わるため、それらの資産価格が下落する圧力がかかるのだ。

2026年7月の日本では、日銀が金融緩和を縮める動きを続けている。市場では「いずれはもっと金利が上がるはずだ」という見方が広がり、長期金利がじりじりと押し上げられている。財政への懸念も相まって、29年ぶりの数字が現実になった。この背景には、日本が長年続けてきた超低金利政策からの出口戦略と、膨らみ続ける政府債務への警戒感がある。まるで、長い間平らだった道が突然上り坂に変わり、今までと同じ速度で自転車を漕いでいては進みにくくなったような状況だ。

「金利が上がると国債が値下がり」──この逆転現象、どういうこと?

まず「固定利付債」というものをイメージしてほしい。政府が「10年間、毎年1.0%の利息を払います。10年後に額面の100万円を返します」という券を発行する。これが国債だ。あなたがこの国債を額面100万円で買えば、毎年1万円の利息を受け取り、10年後に100万円が戻ってくる。このように、国債はあらかじめ利息と元本の支払いが約束されたシンプルな金融商品だが、ここに「市場金利」という外部要因が入り込むことで、価格が変動する仕組みになっている。

さて、ここで長期金利が2.0%に上がったとする。そうすると、世の中には「10年で毎年2.0%の利息がもらえる新発債」が出てくる。あなたが持っているのは年1.0%の利息しかもらえない古い国債だ。こんな状態で、誰かに「この国債を100万円で買ってくれ」と言っても、相手は「利回りが悪いから安くしないと買わない」と値切ってくる。これは、スーパーで賞味期限が近い弁当が値引きされるのに似ている。中身は同じでも、鮮度(利回り)が落ちたものは定価では売れないのだ。

つまり、金利が上がると、新発債の利回りに釣り合うように、既発債の価格は下がらなければ買い手がつかない。この関係が「金利と債券価格は逆に動く」の正体だ。金利が上がれば手持ちの国債の価格は下がる。金利が下がれば手持ちの国債の価格は上がる。これが債券投資の土台にある逆転のルールだ。さらに一歩踏み込むと、この価格調整は投資家が「機会損失」を嫌うから起こる。もし金利が上がったのに、低い利息の国債を高い値段で買ってしまうと、新しく発行される高い利息の国債を買う機会を逃したことになる。市場は合理的なので、そうした損が出ないように、既発債の価格が自動的に調整されるのである。

1万円の国債は金利が0.5%上がるといくらになる? 具体例でたどる

理屈はわかっても、数字が動かないとイメージしにくい。そこで、極端に単純化した例で計算してみる。額面1万円、年利1.0%、満期まで残り10年の国債をあなたが持っているとする。これを市場で売ろうとしたとき、金利がどれだけ価格を動かすのか、数字で追いかけてみよう。

市場の長期金利が1.0%のとき、この国債はほぼ1万円で取引される。では、金利が1.5%に上昇したらどうなるか。ざっくりした計算では、将来もらえる利息と元本をすべて現在の価値に割り引いた合計が約9,550円程度になる。つまり、金利が0.5%上がっただけで、国債の価格は約4.5%も下がる。たった半年分の利息程度の金利上昇で、元本が4.5%も目減りする計算だ。これは、わずかな金利変化が債券価格に大きな変動をもたらすことを示している。

この「割り引く」という作業が肝だ。将来の1万円は、今の1万円より価値が低い。金利が高いほど、将来のお金はより大きく割り引かれるため、債券の現在価値は下がる。金利が2.85%ともなれば、割引率はさらに厳しくなり、長期の国債ほど大きく値下がりする。例えば、残り10年の国債と残り20年の国債では、後者の方が価格下落の幅が大きい。これは、遠い未来のお金ほど、金利上昇の影響を累積的に受けるからだ。2021年にも、米国の長期金利上昇局面で長期債ETFが大きく下落した例がある。日本でも同様のパターンが起こり得ると考えておいた方がいい。

流れはこう
1
長期金利が上昇(2.85%に)
新発10年債の利回りが上がる
2
既発債の利息が割安に見える
固定利回りのため相対的価値が減少
3
既発債の価格が下落
新発債と同じ利回りになるよう調整
4
国債価格下落が投資信託・REITにも波及
金利上昇は資産価格全般の割引率を上げる

なぜ今、長期金利が上がっているのか──日銀と財政の綱引き

長期金利が29年ぶりの水準に達した直接のきっかけは、日銀の政策修正だ。かつて日銀は大量の国債を買い入れることで長期金利を0%近くに抑え込んでいたが、2020年代半ばから徐々にその枠組みを外してきた。具体的には、2023年7月と10月にイールドカーブ・コントロール(YCC)の運用を柔軟化し、長期金利の上限を実質的に引き上げた。さらに2024年3月にはマイナス金利を解除し、17年ぶりの利上げに踏み切っている。これらの政策変更は、市場に「日銀は本気で正常化を進める」とのシグナルを送り、長期金利の上昇圧力を強めた。

一方で、政府の巨額の債務も長期金利を押し上げる要因になっている。日本は先進国でも突出した借金大国であり、国債が増えれば増えるほど「本当に全部返せるのか」という疑念が利回りに上乗せされる。これが財政プレミアムだ。一般に、国の債務残高がGDP比で高まると、投資家はより高いリスクプレミアムを要求する。日本の債務残高はGDPの2倍を超えており、世界的にみても異例の水準だ。日銀が国債購入を減らせば、そのツケが金利上昇として表面化しやすくなる。

さらに、世界的に物価が上がりやすい体質に変わったことも背景にある。インフレが続けば、お金の価値が目減りするため、貸し手は高い金利を要求する。日本もデフレから完全に抜け出したわけではなく、微妙なバランスの上で金利が揺れている。例えば、2022年以降の資源高や円安進行で、消費者物価は日銀の目標である2%を超える状態が続いたが、それが一時的なものか定着するのか、市場参加者の見方は割れている。この不確実性が長期金利を押し上げる一因となっている。

金利が上がると株やREITも下がりやすい──「割引率」という共通言語

話を国債から株やREIT(不動産投資信託)に広げよう。一見、金利と株価は関係なさそうに思える。しかし、企業の価値も株主が将来受け取る利益を現在価値に割り引いて計算するという点では、債券と同じ理屈が働く。これは「配当割引モデル」や「DCF法」といった企業価値評価の基本であり、金利はその割引率の重要な構成要素だ。

金利が上がると、将来の利益を割り引く率(割引率)が大きくなる。すると、同じ利益でも現在価値は小さくなるため、理論上の適正株価は下がる。とりわけ、将来の成長を期待して買われている高PER(株価収益率)のグロース株ほど、この影響を強く受ける。なぜなら、グロース株は利益の大半が遠い将来に実現すると想定されており、その分、割引率の上昇によって現在価値が大きく目減りするからだ。逆に、足元で安定した利益を出しているバリュー株は相対的に影響が小さい。これは、長期国債と短期国債の価格変動の違いと同じ構造である。

REITも同じだ。REITが持つオフィスビルやマンションから得られる将来の家賃収入を、金利で割り引いて価値が決まる。しかも、REITは借入金で物件を買っているため、金利上昇で支払利息が増えれば分配金が目減りするという二重の打撃を受ける。長期金利2.85%という数字は、株とREITの両方に冷や水を浴びせる効果があるということだ。過去には、2013年春の「バーナンキ・ショック」時に、米国の長期金利上昇でREIT価格が急落した事例が知られている。日本でも同様のリスクは常に存在する。

「金利ある世界」で、私たちはどう身構えればいいのか

まず確認したいのは、金利上昇がすべて悪者ではない点だ。預金金利がつき始めれば、これまで利息ゼロだった普通預金にもわずかながら利息がつく可能性が出てくる。また、債券をこれから買う人にとっては、高い利回りで運用を始められるというメリットがある。長らく「貯蓄から投資へ」と言われながらも低金利で債券の魅力が薄かった日本で、ようやく債券投資が現実的な選択肢になりつつあるという見方もできる。

投資信託を持っている人は、自分のファンドが何に投資しているのかを一度確認したほうがいい。長期国債を多く組み入れているファンドや、高PERの成長株に集中投資しているファンドは、金利上昇局面では値下がりしやすい。バランス型ファンドであっても、債券部分が長期国債中心なら注意が必要だ。例えば、毎月分配型のREITファンドを保有している場合、分配金の減少と基準価額の下落が同時に起こる恐れがある。目先の分配金利回りだけに惑わされず、金利変動リスクを考慮したポートフォリオ点検が欠かせない。

個人が取れる策は大きく分けて二つある。一つは、金利上昇の影響を受けにくい資産にシフトすること。具体的には、短期債や変動金利型の債券、あるいは金利上昇で利ざやが改善する銀行株などだ。もう一つは、長期・分散・積立の原則を思い出して、一喜一憂せずに淡々と積み立てを続けること。特に、積立投資では金利上昇による価格下落を「安く買えるチャンス」と捉え直すことができ、長期的にはむしろ好機となる場合もある。

次に長期金利が動いたニュースを見たら、「ああ、割引率の話だな」と思い出してほしい。そして、自分の持っている資産が「将来利益を割り引くタイプ」なのか「金利そのものを受け取るタイプ」なのか、ざっくり分けてみる。それだけで、ニュースの数字が自分ごとに変わるはずだ。長期金利2.85%という29年ぶりの数字は、単なる過去の再現ではない。長年の超低金利環境に慣れた投資家にとっては、新たな市場環境への適応を迫る節目の数字でもある。遠い世界の出来事と思っていた「金利」が、あなたの資産を静かに動かしている。その仕組みを知ることは、変化の時代を生き抜くための小さな知恵だ。

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