半導体が売られても世の中は回る
日経平均が4%安と荒れた一週間の締めくくり。半導体株への逆風が続く中、リニア着工や米国での巨大投資といった実体経済の話は静かに前進しています。
金曜日の東京市場で日経平均は約2700円安。週間では記録的な下落となりました。引き金は中国発のAI技術への警戒感。巨額投資の期待が揺らぎ、半導体関連株が日米で売られました。
ただ、ちょっと立ち止まって考えてみると面白い。AIブームの主役が半導体からメモリーに移るかもしれない、なんて話も出始めています。エヌビディアのCEO自身が「AIのボトルネックはメモリーだ」と語ったとか。勝ち馬の移り変わりは、いつだって相場の綾です。
目先は来週のアルファベットや半導体大手の決算発表が、AI投資の実り具合を占う試金石になりそうです。その一方、リニア新幹線がようやく静岡で工事へ。相場の外では、地道な前進も続きます。
静岡でリニア着工へ、20年来の膠着がついに終幕
鈴木静岡県知事とJR東海が18日、自然環境保全協定を締結しました。これにより、大井川の水問題などを理由に見送られてきた静岡工区のトンネル工事が動き出します。開業時期の明言はまだですが、全国の人流を変える一歩です。
半導体ばかりが産業の主役ではありません。巨大インフラの再始動は、10年単位で地域経済の地図を塗り替える力を持ちます。
iPhoneが約10%値上げ、円安が家計にじわり
アップルが日本でiPhoneの販売価格を引き上げました。円安で輸入原価が上昇しているのを販売価格に反映した形です。最新モデルだけでなく、旧モデルも対象です。
為替の変動が、生活の必需品ともいえるスマホの価格にまで染み出しています。日々の買い物で、円の実力を実感する場面は増えそうです。
三菱UFJがトヨタ超え、銀行株が主役に躍り出る
東証の時価総額ランキングで、三菱UFJフィナンシャル・グループがトヨタ自動車を抜き首位になりました。日銀の利上げ観測が銀行の収益改善期待につながり、資金が流入しています。
金利のある世界では、お金を扱う会社に再び光が当たります。日本の株式市場で主役が交代する、大きな変化点といえます。
AI期待の修正が止まらない、半導体関連が軒並み安
前日に続き、SUMCOやキオクシアなど半導体関連株が大幅安。アドテックプラズマは一時18%超の下落。中国のAI新興企業「ムーンショットAI」への警戒感が、米ハイテク株安と連鎖しました。
「AIならなんでも上がる」という風潮に、初めて本格的な冷や水がかかりました。来週の米テック決算で、どこまで実態が見えるかが焦点です。
TSMC、アリゾナ工場に追加で1000億ドル
台湾の半導体大手TSMCが、アメリカ・アリゾナ州の工場への投資を約1000億ドル積み増します。強い顧客需要に応えるためで、総投資額は巨額になります。最先端チップの生産能力が北米で拡大します。
半導体の株価が調整しても、重要な工場は国境を越えて着々と建ちます。地政学リスクを分散する「工場の保険」と見ることもできます。
IBM株が25%暴落、AI投資で「異変」
IBMが業績見通しを大幅に下方修正し、株価が約25%急落しました。AI関連の投資がコンサルティング事業など既存部門の予算を圧迫し、収益に悪影響が出たとみられています。
AIにお金をかけすぎて、会社全体のバランスを崩す企業が出始めました。熱狂の裏で、投資の「しわ寄せ」が業績に現れています。
EU、産業界に配慮し排出規制を緩和へ
欧州連合(EU)の欧州委員会は、二酸化炭素の排出枠取引制度の規制緩和を提案しました。温暖化対策による競争力低下を懸念する声に応えた形で、今後の審議で制度の行方が注目されます。
環境と経済の綱引きは、国際ルールでも続きます。世界の工場が集まるアジアにとっては、規制の強さを占う一つのメルクマールです。
AIの次はメモリー? エヌビディアCEOが語ったボトルネック
エヌビディアのジェンスン・フアンCEOが「AIの最大の制約はメモリーだ」と発言していたと報じられました。以来、マイクロンやサンディスクといったメモリー関連銘柄がエヌビディア株を上回るパフォーマンスを示しています。
ブームの主役は移り変わります。計算するチップから、記憶するチップへ。次の投資テーマが静かに姿を現し始めているかもしれません。
インフラ再始動と静かな投資の秋
静岡でリニアの工事が動き出す。20年来の膠着に終止符を打つ協定が結ばれた。
半導体株が軒並み売られた今週末、このニュースは紙面の片隅でひっそりと輝いていた。
今月あたまには「日本が原油の『裏道』整備」との報もあった。ホルムズ海峡の緊張が高まるなか、エネルギーの通り道を自前で確保する動きだ。
14日には「光通信半導体の国産化に最大1600億円」の政策も出ている。
株の値動きとは別の次元で、国の骨格を作り直す投資が水面下で進んでいる。
共通して働いているのは、経済安全保障という名の引力だ。十年後の地政学リスクを織り込み、必要なものを国内や友好国に引き寄せる。
リニアは人流を加速し、原油の新航路は物流の安定を支える。
光通信半導体の国産化はデータを守る壁になる。いずれも短期的な収益では測れないが、いったん整えば社会の前提を変える。
半導体バブルに冷や水がかかったいま、こうした実体経済の重い投資に光が当たり始めている。
AIの熱狂で先行きが見えにくい株より、目には見えにくいが着実に進むインフラに資金と人の流れが移るのではないか。
読者の日常にも、数年後に通勤時間の短縮や物流コストの沈静化という形で静かに染み出してくるはずだ。