週末版:半導体が火を吹き、円が157円を割り込んだ1週間
AIバブル再来の期待と、為替介入という政府の「伝家の宝刀」が交錯した7月最終週。来週は中東と日銀の地合いが試される。
「半導体は終わった」は早すぎたようです。今週、マイクロソフトやアマゾンの決算がAI投資の成果を見せつけ、市場に安堵が走りました。東京市場では半導体関連株が急反発し、日経平均は一気に4%高の6万4362円。まるで熱帯夜に打ち水をしたような、ほっと一息の金曜日でした。
一方で、財務省は静かに「伝家の宝刀」を抜きました。金融政策決定会合の前夜、警告なしの円買い介入で、ドル円は一時157円台前半へ。介入額は6兆円超とも試算されます。政府の本気度は伝わりましたが、円安の構造そのものが変わったわけではありません。中東リスクや原油高という火種は燻り続けています。
来週は、介入の効果がどこまで持続するかが焦点です。9日の日銀・植田総裁の会見で、利上げの次の一手が示唆されれば、円高がもう一段進む可能性もあります。原油価格が落ち着くかどうかも、家計や企業のコスト感を左右します。まずは週明けの東京市場が、動いた円と割高な原油をどう消化するか、そこから始まります。
また円が急騰、政府が「伝家の宝刀」を抜いた夜
外国為替市場で31日夕方から8月1日未明にかけ、円が急激に買われ、一時1ドル=157円台前半と約2か月半ぶりの円高水準をつけました。アメリカ財務省が市場介入の可能性を伝えたと報じられ、警戒感が高まったためです。
日銀が金利を据え置いた直後の介入で、政府の本気度が伝わりました。ただ、金利差が大きく変わらない限り、円高の勢いが続くかは不透明です。
日銀は金利を1%で据え置き。植田総裁は次回以降の議論を強調
日銀は7月31日の金融政策決定会合で、政策金利を1%程度に据え置きました。6月に利上げしたばかりで、家計や企業への影響を見極める必要があると判断したとみられます。植田総裁は会見で、物価上昇リスクを警戒し、次回以降の会合で「しっかり議論する」と述べました。
「据え置き」決定自体は想定内ですが、総裁発言で9月の利上げ観測がくすぶり続けます。住宅ローン金利がじわじわ上がっているのも、その兆候です。
住宅ローンの固定金利が8月から上昇へ
長期金利の上昇傾向を受け、大手銀行は8月から適用する住宅ローンの固定金利を引き上げます。日銀の政策金利据え置きの裏側で、市場の金利は先に動いている形です。
日銀が動かなくても、生活に直結する金利は上がる。そんな「隠れ利上げ」が家計をじわりと圧迫し始めているサインです。
「100年に1度の異常事態」アップルCEOがメモリ高騰に悲鳴
米アップルの4-6月期決算は、iPhone販売が好調で増益となりました。しかしティム・クックCEOは、半導体メモリの価格高騰を「100年に1度の異常事態」と表現し、今後のコスト負担がさらに重くなる可能性を示唆しました。
AI向けの需要がメモリ市場を加熱させ、アップルのような巨大企業ですら利益を圧迫し始めています。値上げか、機能削減か、その余波は消費者にも及びそうです。
NY株は続伸、アマゾン決算がAI投資への不安を和らげる
7月31日の米株式市場で、NYダウは前日比276ドル高、ハイテク株中心のナスダックも1%高となりました。オンライン小売大手アマゾンの決算が市場予想を上回り、巨額のAI投資が利益につながるとの期待が広がりました。一方、アップルはメモリ高騰への懸念から下落しました。
「AI投資の成果」を見せる企業と、「コスト高に苦しむ」企業の明暗がくっきり分かれました。市場は企業のAI活用力を値踏みし始めています。
FRB議長、FOMCの開催頻度削減を検討と報道
ウォーシュFRB議長が、米紙ニューヨーク・タイムズのインタビューで、金融政策を決めるFOMC会合の開催回数を削減する案を検討していると明らかにしました。現在は年8回の開催ですが、より少ない回数で政策を慎重に決めるべきとの考えです。
会合が減れば、一度の決定の重みが増します。市場は発表のたびに過剰反応する可能性があり、かえって値動きが荒くなるかもしれません。
エクソンとシェブロン、イラン情勢で燃料高が続くと警告
米石油大手のエクソンモービルとシェブロンが、イランをめぐる地政学的リスクにより、燃料価格の高止まりが続くとの見方を示しました。中東の緊張が原油の供給不安につながり、ガソリン価格を押し上げているためです。
原油高はガソリン代や物流費を通じて、あらゆるモノの値段を押し上げます。夏のドライブシーズン、家計の負担はしばらく続きそうです。
米国債の利回りが上昇。FRBへの信頼に揺らぎか
米国債の利回りが上昇し、一部では30年債利回りが5%に迫る場面がありました。FRBの利上げが長引くとの見方から債券が売られ、利回りが上昇しています。金融専門紙バロンズは、FRBの政策運営に対する「信頼性のギャップ」が背景にあると指摘しました。
FRBが「もうすぐ利下げ」と言っても、市場は簡単に信じなくなっています。長期金利の上昇は、住宅ローンや企業の借り入れコストをさらに押し上げる要因です。
介入の夜、市場は中央銀行を見ている
7月31日から8月1日未明にかけて、円が急騰した。一時1ドル=157円台前半と、約2か月半ぶりの水準である。政府が為替介入に踏み切ったとみられる。アメリカ財務省が介入の可能性を伝えたと報じられ、緊張が走った深夜の出来事だった。
介入は日銀が政策金利を1%で据え置いた直後に行われた。政府としては「ここで円安を放置できない」という強い意思を示した形だ。しかし市場は、金利差が大きく変わらなければ円高の勢いは続かないと冷ややかに見ている。日銀の植田総裁は会見で「次回以降にしっかり議論する」と述べたが、具体的な道筋を示さなければ、政府の「伝家の宝刀」も一時しのぎに終わる。
この1週間、金融政策と市場の対話はかみ合っていない。7月25日には米国債の利回りが上昇し、長期金利が19年ぶりの水準に迫った。FRBへの信頼が揺らいでいるからだ。FRBが「いずれ利下げ」と言いながら利上げに傾く委員もいる。FOMCの開催頻度削減案も飛び出し、市場はかえって過敏になっている。中央銀行の言葉が、かつてほど市場を落ち着かせなくなっているのである。
同じ構図は住宅ローン金利にも表れている。7月31日、日銀が金利を据え置いたにもかかわらず、大手銀行は8月からの固定金利引き上げを発表した。長期金利が先に動いているためだ。中央銀行が動かなくても、市場の金利は上がる。この「隠れ利上げ」は、家計の負担をじわじわと重くしている。日銀の「見極め」の間にも、生活のコストは先へ進んでしまう。
中央銀行と市場の対話が上手くいかないとき、為替や金利は実体経済以上に振れやすくなる。筆者は、金融政策の「間」が長引くほど、実需よりも思惑で動く危うい相場が続くとみている。次に為替が大きく動くとしたら、それは政府の介入ではなく、日銀かFRBの一言かもしれない。いずれにせよ、私たちの財布のひもは、しばらく緩みそうにない。