週を追うごとに強気に 日経平均、5日で1割高
今週の東京市場は、イランの和平期待や春の決算発表を追い風に、日経平均が5日間で約1割上昇。1ドル157円台の円安も輸出企業を支え、週末の米雇用統計が弱かったことで、米国の利上げ観測が後退する追い風まで吹いた。
今週の日経平均は、週初に6万1867円だったところ、週末の金曜日には6万5606円まで駆け上がりました。5営業日で約3740円の上昇、率にして6%を超える値上がりです。きっかけは週明けに伝わったイラン情勢の和平期待。実際にはまだ予断を許しませんが、「最悪のシナリオは避けられそう」というそれだけで、市場には十分なごちそうになりました。
そこに春の決算発表が追い風を重ねます。INPEXやテルモといった大企業が業績見通しを上方修正し、「企業は意外と元気」という見方が広がりました。円安も手伝って、輸出関連企業の収益にはさらなる追い風です。週の半ばあたりからは、投資家の頭が「悪材料を探すモード」から「好材料を探すモード」に切り替わったようにも見えました。
そして金曜の夜、アメリカの雇用統計が市場の期待を裏切り、就業者数が2.3万人の減少。本来なら悪いニュースですが、これが「米国の利上げは急がなくてよさそう」というサインに読み替えられ、NYダウは151ドル高。ドル円は157円台後半まで円高が進みましたが、週明けの東京市場は「追い風の綱引き」で始まりそうです。
公的年金が四半期で24兆円の黒字 株高が追い風に
公的年金の積立金を運用するGPIFが、4月から6月の運用実績を発表しました。黒字額は24兆円余りと、四半期としては過去最高です。国内外の株式市場が堅調だったことが主な要因で、特に日本株の上昇が大きく貢献しました。この時期の日経平均は、3月末から6月末までに約13%上昇しています。
GPIFの運用成績は、私たちの年金が世界経済とつながっていることを実感させます。好調な四半期の次に何が起きるかはわかりませんが、少なくとも積立金が目減りするリスクが少し遠のいた、と思ってよいでしょう。
ビール大手3社が上半期決算で増収 国内のビールが好調
ビール大手3社の上半期決算が出そろい、いずれも売上高が前年を上回りました。特に国内のビール販売が好調で、2社は上半期として過去最高の売上高を記録。値上げが浸透したことに加え、外食需要の回復や夏場の猛暑が追い風になったとみられます。
食料品の値上げ疲れが指摘されるなか、嗜好品のビールが売れているのは、消費者の「ちょっとした贅沢」志向のあらわれです。節約一辺倒ではない生活者の体温が感じられます。
6月の景気は「改善」続く 指数が0.3ポイント上昇
内閣府が発表した6月の景気動向指数(速報値)で、景気の現状を示す一致指数は118.2と、前月を0.3ポイント上回りました。基調判断は「改善を示している」で据え置かれました。生産や消費の一部に弱さがみられるものの、全体としては緩やかな回復基調が続いています。
「景気ウォッチャー」などの実感よりは強めの数字ですが、統計上は悪くなっていません。数字が実感に追いつけば、消費者の気持ちも上向くかもしれません。
シャープが業績予想を下方修正 イラン情勢と円安が重荷に
シャープは7日、2027年3月期の通期業績予想を下方修正しました。最終利益は当初予想から40%以上減る見通しです。イラン情勢の緊迫で原材料や燃料の価格が高騰したことに加え、円安が収益を圧迫しています。同社は国内生産比率が高く、為替の影響を受けやすい構造です。
円安は輸出企業に追い風と言われますが、輸入に頼る素材や部品が多い企業には逆風です。同じ「日本の電機」でも、立ち位置で風景がこれだけ変わる好例と言えます。
米雇用者数が予想外の減少 利上げ観測が後退
7日の米雇用統計で、7月の非農業部門の就業者数が前月比2.3万人減と、市場予想に反して減少しました。これを受けて、FRBが早期に追加利上げに動くとの観測が後退。米国債の利回りは低下し、株式市場ではS&P500が最高値を更新しました。一方、為替市場ではドルが売られ、円が一時157円台前半まで買われました。
雇用が弱いのは本来悪いニュースですが、市場は「利上げしなくて済む」というストーリーを歓迎しました。今は、悪いニュースが悪いニュースとして扱われない、変わった相場です。
中国の7月輸出が23%増 半導体とEVがけん引
中国税関総署の発表によると、7月の輸出額が前年同月比で23%以上増加しました。内需が低迷するなか、半導体や電気自動車の輸出が好調で、経済を下支えしています。貿易摩擦を抱える欧米向けも伸びており、中国の工場は依然として世界の需要を吸い上げている形です。
中国の内需が弱いのに輸出が強いというアンバランスな構図です。世界経済が中国の製品を必要としている証拠でもあり、日本企業にとっても輸出競争の相手として警戒が必要です。
米国、半導体材料に追加関税 中国の独占崩し狙う
トランプ米大統領は、半導体や太陽光パネルの主要材料であるポリシリコンとその派生品に追加関税を課す文書に署名しました。この分野で高いシェアを握る中国を念頭に、サプライチェーンの多様化を促す狙いです。米国内での生産回帰も視野に入れた措置で、貿易摩擦の新たな火種となる可能性もあります。
関税は諸刃の剣で、米国内の半導体価格が上がる恐れもあります。結局は消費者が負担するコストだと考えると、政策の着地点はまだ見えません。
NY原油先物が下落 ホルムズ海峡の緊張緩和で
週末のニューヨーク市場で、原油先物相場が下落しました。ホルムズ海峡の緊張緩和に向けた協議が続いているとの報道を受け、供給不安が和らいだためです。エネルギー株も売られ、S&P500のセクター別ではエネルギーが下落。一方、ガソリン価格の下落期待から消費関連株が買われました。
原油価格が下がれば、世界中の企業や家計の負担が減ります。中東の政治リスクが株高のエンジンになる、という逆説的な相場が続くかもしれません。
円高の陰で進む年金の静かな回復
公的年金を運用するGPIFが、四半期で24兆円もの黒字を計上したという。4月から6月にかけて、日経平均が1割以上値上がりしたことが追い風になった。今週も日経平均は5日間で1割高と、目まぐるしい上昇を続けている。だが筆者は、この数字の裏側にある静かな変化に目を向けたい。
今朝の報道面には、ビール大手3社の上半期決算も並んでいる。値上げが浸透し、外食需要の回復と猛暑が重なった。企業収益が堅調なのは喜ばしいが、こうした内需の強さが株価を支え、結果として年金の運用成績を押し上げる。つまり、私たちが日々消費しているあらゆるものの値段や売れ行きが、未来の年金額にじわじわと影響を与えているのだ。
先週末には、米国の雇用統計が弱く、利上げ観測が後退した。それを受けて円高が進んだが、これは輸出企業にとっては逆風となる。実際、シャープは業績予想を下方修正し、円安が重荷になったと説明している。しかし為替の影響は企業によってまちまちで、年金マネーの運用先である世界の株式や債券の価格は、むしろ金利低下を好感して上昇した。複雑に絡み合う要素を、巨大な運用機関はどうやって乗りこなしていくのか。
GPIFの黒字が過去最高を記録したのは、国内株高が主因だが、春先からの地政学リスクの低下や、半導体需要の回復といった世界経済の底流も見逃せない。このところの株高は、単なる一過性の熱狂ではなく、底堅い企業業績や技術革新への期待に支えられている。半面、積立金がこれ以上目減りするリスクが遠のいた、という評価はまだ早計だろう。市場は常に先回りして動く。今は良好な環境でも、次の四半期には逆風が吹くかもしれない。
とはいえ、今回の黒字は、少なくとも「年金が危ない」という漠然とした不安を和らげる材料にはなる。現役世代が毎月給与から天引きされる保険料の行方に、少しだけ明るい数字が灯った。これが続くかどうかは、私たちが日々の生活で何を選び、世界経済がどの方向に進むかにかかっている。巨額の運用を定点で見つめると、遠い国の戦争や株式市場の上げ下げが、私たちの老後と地続きである事実に気づかされる。