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日経平均64,325.64-1,890NYダウ52,980.73+214ドル円158.84-1NASDAQ26,208.82+109S&P 5007,666.58+35SOX 指数11,332.81+449/2終値

iPhoneだけ10%値上げ、あなたの給料は他人事じゃない理由

アップルが日本でiPhoneを約10%値上げ。1ドル162円の円安が、輸入品価格を通じて私たちの生活にどう届くのか。値上げできる企業とできない企業の格差、日銀の政策との意外な関係、そして投資家が見るべき「円安の勝者と敗者」を、一本の因果の鎖で解き明かします。

超!企業DB 編集部·2026-07-18·10
京都・金閣寺を背景にiPhoneで写真を撮る人の姿。円安によるiPhone値上げを連想させるイメージ。
Photo · Max Harlynking / Unsplash
目次6
  1. 01なぜiPhoneだけが10%も値上がりするの?
  2. 02そもそも「1ドル162円」って、どれくらい異常なの?
  3. 03値上げできる会社、できない会社——あなたの給料を決める「価格決定力」
  4. 04なぜ今、こんなに円安が続くの? 日銀の深層
  5. 05あなたの給料は結局どうなるの? 円安が賃金に届く長い道のり
  6. 06次に似たニュースが出たとき、あなたがチェックすべき3つのポイント

アップルが日本でiPhoneを約10%、値上げしました。ニュースを見て「またか」と思った人、ちょっと待ってください。実はこれ、あなたの給料や、持っているかもしれない日本株に、じわじわ効いてくる話です。値上げの裏にある「円安のメカニズム」は、今日の買い物から将来の資産まで、すべてにつながっています。その道筋を、これから一本のストーリーでたどります。

なぜiPhoneだけが10%も値上がりするの?

NHKwww3.nhk.or.jp· 2026-07-18
米アップル 日本でiPhoneの販売価格を約10%値上げ

7月18日、アップルが日本でiPhoneの販売価格を約10%引き上げました。為替が1ドル162円前後と、歴史的な円安水準で推移しているのが直接の理由です。でも、考えてみれば不思議じゃないですか? なぜすべての輸入品が一斉に10%値上がりしないのか。実はここに、企業の「価格決定力」という、投資でも家計でも超重要な概念が隠れています。

たとえ話をしましょう。あなたが近所のパン屋さんだとします。小麦が値上がりしたら、パンの値段を上げますか? もし隣に大手チェーンのパン屋があって、同じ値段で売っていたら……値上げした瞬間、お客さんはそっちに流れてしまいます。つまり、値上げできるかどうかは、お客さんが「あなたのパンじゃなきゃダメだ」と思ってくれるかどうか。これが価格決定力です。アップルのiPhoneは、多くの人にとって「これじゃなきゃダメ」な製品。だから為替コストを価格に転嫁できる。一方、似たような商品がいくらでもある輸入品は、円安になっても値上げできず、企業が利益を削って耐えていることが多いんです。

この「値上げできる企業」と「できない企業」の差は、今の日本経済を読み解く大きなカギです。円安が進むと、輸入品の原価はすべての企業で上がります。でも、それを販売価格に反映できるのは、ブランド力や独自の技術で「選ばれる理由」を持っている企業だけ。アップルはその最たる例で、今回の値上げも「売れ行きが落ちるリスク」より「利益を守る」を選んだとみられます。つまり、iPhoneの値上げは、円安が私たちの生活に直接届いた瞬間であると同時に、企業の競争力の差が如実に表れた出来事でもあるのです。

そもそも「1ドル162円」って、どれくらい異常なの?

為替を見るとき、多くの人は「前の月より円安だな」くらいで捉えがちです。でも、1ドル162円という数字は、歴史的に見てかなりの円安水準です。2021年の年初は1ドル103円程度でした。つまり、たった数年でドルの価値が1.5倍以上になった感覚です。海外旅行に行ったら「何もかも高い」と感じるのと同じことが、輸入企業の仕入れで起きているわけです。

この為替変動が、輸入物価から消費者物価へと波及する経路を「パススルー」と呼びます。日銀の分析でも、為替の変動が消費者物価に与える影響は時間差を伴いながらじわじわと広がることが示されています。2022年以降の急激な円安は、最初はエネルギーや原材料価格を押し上げ、それが徐々に食品や日用品へ。そして今、ついにiPhoneのような「ブランド消費財」にまで明確に値札として現れた。これが今回の値上げの歴史的な位置づけです。

ただし、ここで一つ、理解しておきたいことがあります。為替が円安に振れたからといって、すぐにすべての価格が上がるわけではありません。企業はまず為替予約などで為替変動をヘッジ(保険掛け)していますし、在庫があるうちは旧レートで仕入れた商品を売ります。その猶予期間を超えたとき、企業は決断を迫られます。値上げするか、利幅を削って現状維持か。アップルが今、値上げに踏み切った背景には、この「ヘッジが切れた」可能性も指摘されています。

値上げできる会社、できない会社——あなたの給料を決める「価格決定力」

さて、価格決定力の話に戻ります。なぜこれがあなたの給料に関係あるのか。答えはシンプルで、企業が値上げできなければ、従業員の賃金を上げる余裕も生まれないからです。逆に、アップルのように強いブランドで値上げができる企業は、利益を確保し、そこで働く人の給料も上がりやすくなります。ただし、アップルはアメリカ企業なので、日本の雇用への直接効果は限定的ですが、この構図は日本の企業にもそのまま当てはまります。

たとえば、ソニーグループはどうでしょうか。ソニーはプレイステーションやイメージセンサーなど、世界的に独自性の高い製品を持っています。イメージセンサーは世界中のスマートフォンに使われており、代替が効きにくい。だから、ある程度は円安によるコスト増を価格に転嫁したり、そもそもドル建て取引で円安メリットを享受しやすい。一方、値上げが難しいのは、似たような商品が溢れている分野です。たとえば、スマートフォン販売を手がけるソフトバンクのような通信キャリアは、iPhoneの値上げをそのまま通信料に転嫁できるわけではありません(そもそも通信料は値下げ圧力が強い)。

この違いは、投資の世界では「円安メリット銘柄」と「円安デメリット銘柄」として語られます。でも、もっと大事なのは、その企業が「価格を自分で決められるかどうか」です。円安は、すべての企業の地力をあぶり出すリトマス試験紙のようなもの。値上げできる企業は生き残り、できない企業は苦しくなる。そして、その差がそのまま、日本全体の賃金の上がりやすさに直結しているのです。

流れはこう
1
円安進行(1ドル162円)
輸入コストが全般的に上昇
2
企業の仕入れ価格が上昇
為替ヘッジや在庫の効果が徐々に剥落
3
販売価格への転嫁判断
ブランド力や独占度で対応が分かれる
4
値上げできる企業:利益確保 → 賃上げ余力
アップル、ソニーなどが代表的
5
値上げできない企業:利幅縮小 → 賃金抑制
競合多数の分野や価格競争の激しい業界
6
消費者物価全体に波及、家計の購買力に影響
特に輸入浸透度の高い財で顕著

なぜ今、こんなに円安が続くの? 日銀の深層

為替の話になると、必ず出てくるのが日銀の金融政策です。2026年7月現在、日本銀行は大規模な金融緩和を修正しつつも、欧米に比べて低金利環境を維持しています。金利が低いと、円で運用する魅力が薄れ、より金利の高いドルなどにお金が流れます。これが円安の大きな要因の一つです。簡単に言うと「円を持っていても利息がほとんどつかないから、みんなドルを買う」という構図。

実はここにも、パススルーの考え方が役立ちます。日銀が利上げに慎重なのは、日本経済がまだ本格的な回復途上にあり、急な金利上昇が個人消費や企業の投資意欲を冷やすことを警戒しているからです。しかし、その低金利こそが円安を招き、輸入物価を押し上げて、家計を圧迫している。つまり、中央銀行のジレンマが、iPhoneの値段にまで表れているわけです。

歴史を振り返ると、1995年には1ドル80円を切る超円高で、日本企業は海外生産に大きく舵を切りました。あの時は「円高だから安い海外で作ろう」だったのが、今は逆。製造業の国内回帰や、海外で稼いだ利益を円に換える際の為替差益にスポットライトが当たっています。2022年以降の円安局面は、過去の教訓を企業がどう生かすかの実験場でもあるのです。

あなたの給料は結局どうなるの? 円安が賃金に届く長い道のり

ここまで読むと「で、私の給料は上がるのか」と気になるはずです。残念ながら、即答はできませんが、道筋は示せます。カギを握るのは、日本企業の価格決定力の回復と、賃上げの好循環です。これまではデフレ(物価下落)が当然で、企業は価格を上げられず、賃金も据え置き。それが「失われた30年」の正体でした。

今、ようやく物価上昇が定着しつつあり、企業も値上げに踏み切りやすくなっています。しかし、その利益が従業員に還元されるには、もう一段階が必要です。値上げによる増収を賃金に回せるかどうか。その余力がある企業と、余裕のない企業の二極化が、あなたの給料の明暗を分けます。つまり、転職市場でも「入社したい企業の価格決定力」が、将来の年収を左右する時代になっているのです。

具体的な例を出すと、ソニーグループは為替の影響を大きく受けますが、グローバルに分散された収益構造のおかげで、円安メリットを一部享受できます。イメージセンサーのように世界シェア50%の製品は、まさに「値上げできる財」です。一方、ソフトバンクのように国内市場の競争にさらされる企業は、iPhoneキャリアとして端末値上げの逆風をもろに受けつつ、通信料収入は簡単に上げられない。このコントラストが、今後ますますはっきりしてくるでしょう。

ソニーグループ
6758
企業ページへ
売上
12.5兆円
営業利益
1.45兆円
時価総額
24.1兆円
ソフトバンク
9434
企業ページへ
売上
7.04兆円
営業利益
1.04兆円
時価総額
11.6兆円

次に似たニュースが出たとき、あなたがチェックすべき3つのポイント

今回のiPhone値上げは、単なる「高いスマホ」の話ではなく、日本経済の構造を映し出す一枚のレントゲン写真です。だから、次に同じようなニュースが出たら、以下の3つを思い出してください。

第一に、「その企業は値上げできる立場か?」。ブランドや技術の独自性を測ってみてください。第二に、「為替の影響はどれくらいのタイムラグで来ているか?」。ニュースになるのは、ヘッジや在庫のバッファーが尽きた後です。第三に、「その値上げが賃金や採用にどう跳ね返りそうか?」。最終的に、あなたの経済的立ち位置は、勤め先の価格決定力に左右されます。

iPhoneの10%値上げは、残念ながら「終わり」ではなく「始まり」かもしれません。円安が長期化するほど、同じような値上げの波は、より多くの製品に広がります。けれど、仕組みを理解していれば、振り回されるのではなく、自分の選択に活かせます。次に買うスマホ、次に受ける転職のオファー、そして何より、あなたが持っているかも知れない日本株の見え方も、きっと変わってくるはずです。

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