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エヌビディア決算前に、日本の半導体株が下がるのはなぜ? 「決算またぎ」の仕組み

今週、投資家が注目するエヌビディアの決算発表。しかし発表の前に、日本の半導体株が売られています。なぜ結果が出る前に売るのか。その理由は「決算またぎ」のリスクにあります。オプション市場の数字を手がかりに、株価が急変する仕組みを「試験の前日」に例えて解き明かします。

超!企業DB 編集部·2026-08-23·13
微細な電子部品が並ぶ半導体チップの接写。エヌビディアの決算を控え、値動きが注目される日本の半導体関連株のイメージ。
Photo · Tima Miroshnichenko / Pexels
目次6
  1. 01今週、なぜエヌビディア決算がそんなに注目されるのか
  2. 02決算前に株が売られるのは「試験の前日」と同じ
  3. 03オプション市場が教える「想定変動率」の読み方
  4. 04なぜ日本の半導体株まで連動する? サプライチェーンの鎖
  5. 05良い決算なのに株が下がる? 材料出尽くしの正体
  6. 06個人投資家が「決算またぎ」で気をつけること

今週、エヌビディアの決算発表が控えています。この一大イベントを前に、日本の半導体株が売られている。なぜ「結果が出る前に」売るのでしょうか。投資家が避けたい「決算またぎ」のリスクと、株価が上下に大きく振れる仕組みを、身近なたとえで解説します。

今週、なぜエヌビディア決算がそんなに注目されるのか

AIブームの中心にいるエヌビディア。この会社の決算は、もはや一企業の業績発表を超えています。世界中の投資家が「AI需要は本物か、それとも泡か」を見極めるための、いわば中間テスト。結果次第で、半導体関連株全体が大きく動きます。実際に今週は、エヌビディア決算と米国のジャクソンホール会合が「二大イベント」と報じられています。

エヌビディアの時価総額はすでに世界一の規模です。日本円にすると、東京エレクトロンとアドバンテスト、レーザーテックの時価総額を全部足しても、その10分の1にも満たないという試算もあります。つまり、エヌビディア1社の株価の揺れが、世界中の投資家のポートフォリオに直接影響を与える。それが「中間テスト」がこれほど重要視される理由の一つです。

Google Newsnews.google.com· 2026-08-23
【日本株週間見通し】今週はジャクソンホール会合とエヌビディア決算が二大イベントに - マネーポストWEB

そしてこの決算、日本の投資家にとっても対岸の火事ではありません。日本には半導体製造装置や材料の会社が多く、エヌビディアの売上見通しが変われば、そのサプライチェーン全体に影響が出ます。たとえば東京エレクトロンやアドバンテスト。これらの株価は、エヌビディアの決算に対して敏感に反応します。

ところが、ここで不思議な動きがあります。決算発表の『前』なのに、日本の半導体株が売られているのです。良いニュースなら上がるはずだし、悪いニュースなら下がって当然。でも、結果がまだわからないのに、なぜ売るのか。ここに「決算またぎ」という投資行動の本質があります。

決算前に株が売られるのは「試験の前日」と同じ

たとえ話をします。あなたが学生で、明日が国家試験だとします。試験に合格すれば人生が大きく開ける。でも、落ちたら計画が崩れる。そこで、試験の前日に「とりあえず今持っている安全な選択肢を確保しておこう」と考える人もいます。株で言うと、これが決算前の売りです。

このたとえをもう一歩進めてみましょう。国家試験の前日、もしもあなたが「優秀な友人」から確実な合格情報を聞いていたとしたらどうでしょう。すでに安心して、わざわざ安全な選択肢を確保する必要はないかもしれません。しかし、今回の決算は、どんなに優秀なアナリストでも結果を確実には予想できない。つまり、情報を持たない大多数の受験生と同じ状態です。だからこそ、試験前に手元のリスクを減らしておきたい、という心理が強く働きます。

さらに、ここに「試験の傾向が変わった」という不安が重なると、売りは加速します。今回のエヌビディア決算では、新しいAIチップの出荷状況や、主力顧客の設備投資の変化が焦点の一つとされています。過去の試験と出題範囲が違うかもしれない。そう思うと、たとえ実力があっても、前日に自信を持てる人は少なくなります。市場の不安は、この「想定外」に対する防衛反応から生まれやすいのです。

株式投資では、利益が出ている株を持っているとき、「結果が二分されるイベント」の前にはリスクを減らしたくなります。なぜなら、良い結果でも悪い結果でも、株価が大きく動く可能性があるからです。特に、オプション市場が示す「予想変動率」が高いときは、事前に利益確定やヘッジ売りが出やすくなります。

つまり、決算前に株が売られるのは、決算が悪いという予想ではなく、「どちらに転ぶかわからないリスクそのもの」を避ける行動なのです。結果を見てから買えば、少なくとも最悪のシナリオは避けられます。試験の合格発表を見てから入学手続きをする、という堅実な選択です。

オプション市場が教える「想定変動率」の読み方

では、その「リスクの大きさ」はどう測るのか。ここで登場するのが、オプション市場です。オプションとは、株式をあらかじめ決めた価格で売買できる権利のことで、その値段から「市場が想定する株価の変動幅」を計算できます。これがインプライド・ボラティリティ、略してIVと呼ばれるものです。

IVが高いときは、市場が「この株、決算で大きく動きそうだ」と見ていることを意味します。エヌビディアの決算前は、このIVが跳ね上がることで有名です。実際に、過去の決算では株価が10%以上動くこともあり、オプションの値段はその分高くなります。

実際、エヌビディアの決算前後の株価変動率は、他のハイテク大手と比べても突出しています。過去の決算では、株価が一晩で10%近く動いたこともあり、この変動幅は、日経平均株価が1日で6000円以上動くイメージに相当します。オプション市場が織り込むIVは、こうした過去の実績をもとに高まり、さらに新規の取引を呼び込む。市場全体が「今回も大きく動く」という前提で、事前に安全装置を固め始めるのです。

そして、この期待の高さが、さらに売りを誘うのです。IVが高いと、オプションが高く売れます。ヘッジファンドなどは、リスクを抑えつつ利益を狙う戦略で、決算前にオプションを売って株価の急変に賭けることがあります。これがさらに市場の緊張感を高める、という循環が起きます。

なぜ日本の半導体株まで連動する? サプライチェーンの鎖

エヌビディアはアメリカの会社です。では、なぜ東京エレクトロンの株価が動くのでしょう。これは、半導体産業のサプライチェーンをたどるとわかります。エヌビディアが設計したGPUを、TSMCなどのファウンドリが作る。その工場で使う製造装置や検査装置を、日本の会社が供給しています。

もう少し細かく鎖を辿ってみると、エヌビディアが設計したGPUを搭載したAIサーバーは、まず台湾のTSMCや韓国のサムスン電子などのファウンドリで作られます。そのファウンドリが、シリコンウェハーに回路を焼き付ける工程で使うのが、東京エレクトロンの成膜装置やエッチング装置です。そして、できあがった半導体チップが正しく動くかどうかを検査するのが、アドバンテストのテスター。さらに、最先端のEUV露光装置向けのマスク検査では、レーザーテックがほぼ独占的な地位を占めている。つまり、エヌビディアのAI需要が一巡すれば、日本の装置メーカー各社の売上に順番に波及する、という構造です。

東京エレクトロン
8035
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売上
2.44兆円
営業利益
6,249億円
時価総額
25.0兆円

エヌビディアの決算が、AI半導体の需要拡大を示せば、ファウンドリの設備投資が増える。すると、装置メーカーに注文が来る。つまり、エヌビディアの売上は、数四半期後の東京エレクトロンの売上に波及するのです。逆に、エヌビディアの見通しが弱ければ、装置需要も減る。「上流が咳をすると、下流は風邪をひく」という構図です。

これは、2020年から2021年にかけての巣ごもり需要で起こったこととよく似ています。当時、パソコンやゲーム機の需要が急増し、半導体不足が深刻化しました。そのときも、エヌビディアやAMDのGPU、そしてアップルのiPhone向けチップの増産が、東京エレクトロンやアドバンテストの受注を急増させました。今回のAI需要は、その時と比べて「単価が高い」という特徴があります。AIサーバーに使われるハイエンドGPUは、通常のパソコン向けチップよりも数倍から数十倍の価格がつくため、数量が同じでもサプライチェーンへの波及効果が大きい。つまり、今のAIブームは、過去の半導体サイクルよりも、日本企業にとって「一撃の重み」が大きいのです。

だから、投資家はエヌビディアの決算を、日本半導体株の先行指標として見ます。実際、韓国でもエヌビディア決算が焦点と報じられています。世界中の半導体関連銘柄が、同じ株式市場にいるようなものです。

Google Newsnews.google.com· 2026-08-23
韓国株 エヌビディア決算と米金利動向が焦点 - CHOSUNBIZ - Chosunbiz
流れはこう
1
エヌビディア決算に注目
AI需要の持続性を示す重要なイベント
2
ファウンドリの設備投資判断
TSMCなどがエヌビディアの売上予測に連動
3
製造装置・材料の受注
東京エレクトロンやアドバンテストに影響
4
日本の半導体株に反映
市場が先行して織り込む

良い決算なのに株が下がる? 材料出尽くしの正体

ここでもう一つの逆説があります。エヌビディアが素晴らしい決算を出したのに、株価が下がる。そんなことが実際に起きます。投資家が「良いニュースだったら、株は上がるはずだ」と思うなら、この現象は謎でしょう。しかし、これが「材料出尽くし」です。

市場は、すでに未来を今の株価に織り込みます。エヌビディアの過去の成長率を見て、投資家は「このくらいの数字が出るだろう」と期待しています。その期待が株価に反映されているのです。だから、いざ結果が出ても、それが期待通りなら、むしろ「買い材料がなくなった」と売られる。

たとえるなら、サプライズパーティーを開いて、主役に「実は知ってたよ」と言われるようなものです。驚きがない以上、お祭りは終わってしまいます。エヌビディアの決算も、市場が期待するラインを超えないと、株価が下がっても不思議ではありません。

この「サプライズがないと売られる」という現象は、エヌビディアに限らず、過去のハイテク決算で繰り返し起きてきました。例えば、2020年代前半のアップルやテスラの決算でも、過去最高益を更新したのに株価が下落する、ということがよくありました。市場は常に「予想を超えるかどうか」だけに反応します。だから、決算またぎのリスクを考えるときは、数字の絶対値だけでなく、その数字が市場の期待と比べてどうか、という相対的な見方が欠かせません。

さらに、エヌビディアのガイダンス、つまり今後四半期の売上予測が注目されます。過去の実績より、これを投資家は重視します。今期の利益が最高でも、来期の伸びが鈍ると「成長のピーク越え」とみなされ、株が売られることがあります。

要するに、決算またぎのリスクは「悪い結果で下がる」ことだけではありません。「良い結果でも、期待が高すぎて下がる」リスクも含んでいるのです。予想変動率の高さは、この両方向の振れ幅を示しています。

個人投資家が「決算またぎ」で気をつけること

では、この仕組みを理解したうえで、個人投資家はどう行動すればいいのか。答えは一つではありません。むしろ、自分の投資スタイルと照らし合わせて選ぶものです。

短期売買を好む人にとって、もう一つのハードルは、IVの高さがもたらす「時間との闘い」です。決算が終わると、たとえ株価が予想通りに動いたとしても、オプションの価値は急激に減ります。これはオプションの「時間的価値の減衰」と呼ばれるもので、決算の瞬間を境に、市場の不確実性が一気に収縮するためです。つまり、決算またぎの買い方は、単に方向性だけでなく、この減衰スピードをも考慮した戦略が求められるのです。

短期で売買する人にとって、決算またぎはオリンピックの100メートル決勝のようなものです。勝負に出るもよし、安全に退くもよし。ただし、IVが高いときはオプション価格が高いため、思わぬ損失を被らないよう注意が必要です。

長期で考える人は、そもそも一つの決算に一喜一憂しない戦略があります。エヌビディアの決算で在庫調整が起きると、日本の半導体株も一時的に下がるかもしれません。しかし、AIという大きな潮流が変わらないと信じるなら、それは「押し目」と見ることもできます。

長期投資の視点で言えば、エヌビディアの決算で一時的に株価が乱高下しても、それが本質的な成長シナリオを変えるかどうかが重要です。過去に半導体関連株が大きく下げた局面でも、その後の業績拡大で株価が数倍になった例は、東京エレクトロンやアドバンテストのチャートを見れば一目瞭然です。現在のAIインフラ投資は、まだ初期段階と見るアナリストも多く、短期的な需給変動と長期的な成長トレンドを分けて考える視点が役立ちます。

歴史を振り返ると、2000年のITバブル崩壊では、期待がはじけた後に本物の成長企業が生き残りました。今回のAIブームも、いつかは淘汰が来るでしょう。しかし、その中で実際に利益を生む企業は、嵐の後により強くなっている可能性があります。

最後に、いちばん大事なポイントです。決算またぎで株価が動くのは、「結果の良し悪し」よりも「市場の期待と結果の差」です。次に大きな決算が来たとき、あなたが注目すべきは数字そのものではありません。市場がすでにどんな期待をし、その期待が株価にどう織り込まれているか。そこを読むと、プロの投資家と同じ景色が見えてきます。

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