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金利が上がると銀行は儲かる? 地銀8割増益でも赤字の銀行が出た理由

日銀の利上げで「銀行は儲かる」と思われがち。実際、上場73地銀の8割が増益というニュースが先週末を賑わせました。でも同じ日に、赤字を出した銀行がある。この差はどこから生まれるのか。預貸利ざや、期間ミスマッチ、有価証券の含み損という3つのレンズで読み解きます。

超!企業DB 編集部·2026-08-15·9
金融チャートとスマートフォン、貯金箱を並べた机上のイメージ。利ざやと金利変動を分析する地銀経営のテーマを想起させる。
Photo · Leeloo The First / Pexels
目次6
  1. 01地銀8割増益って本当? なぜ一部の銀行だけ取り残されたのか
  2. 02金利が上がると銀行は儲かる? その半分は「錯覚」です
  3. 03「含み損」が銀行の利益を消す、有価証券の時価評価という曲者
  4. 04銀行によって運命が分かれる理由、過去の教訓から学ぶ
  5. 05じゃあ、銀行を選ぶときはどこを見ればいい? 3つのチェックポイント
  6. 06次に利上げのニュースを見たら、こんなふうに考えてみてください

8月15日、上場している73の地方銀行の4〜6月期決算で、8割が増益を発表しました。日銀の利上げが追い風になった格好です。ところが同じ決算シーズンに、赤字を出した銀行も出ています。「金利が上がれば銀行は儲かる」という思い込みは、半分だけ正しくて、半分は誤解です。

地銀8割増益って本当? なぜ一部の銀行だけ取り残されたのか

先週金曜、地方銀行の決算が一斉に出ました。上場する73地銀のうち、8割が前年同期より多い純利益を記録したと報じられています。同時に、全東信という銀行が赤字を出したとのニュースも流れました。同じ時期、同じ金利環境の中で、この差はどこから生まれるのでしょう。

答えを先に言うと、銀行の利益は「貸出金利から預金金利を引いた差」で決まるからです。この差を利ざやと呼びます。金利が上がると貸出金利が先に動き、預金金利はゆっくり上がる。すると利ざやが広がって、多くの銀行は儲かる。ところが、この構図に乗れない銀行も出てくる。その理由を順番にたどってみます。

Google Newsnews.google.com· 2026-08-15
上場73地銀、8割増益 日銀利上げ貸出利息伸び 4~6月、全東信で赤字も - 福島民報デジタル

まず、銀行の商売を身近なたとえで説明します。銀行は「お金を売る」商売です。仕入れ値が預金金利、売値が貸出金利。その差額が粗利になります。八百屋がキャベツを安く仕入れて高く売るのと同じで、銀行は預金者から安くお金を借りて、借り手に高く貸す。この差額で人件費や店舗代をまかない、残りが利益になる。

だから、金利が上がると「売値」が先に上がるんです。特に企業向けの貸出金利は、日銀の政策金利にほぼ連動する変動金利が多い。一方の「仕入れ値」である預金金利は、銀行がすぐに引き上げるインセンティブが小さい。預金者は金利が低くても預金を引き出さない、つまり価格に鈍感だからです。

ただし、この「利ざや拡大」の恩恵を受けやすい銀行と、そうでない銀行があります。鍵を握るのは、どれだけ貸出を伸ばせているか。そもそも資金需要が乏しい地域では、金利が上がっても貸出先が見つからない。貸出金利が上がっても、貸出残高が増えなければ収益は伸びません。

流れはこう
1
日銀が政策金利を引き上げる
市場金利全体が上向く起点
2
貸出金利が素早く上昇
変動金利の企業向け融資が中心
3
預金金利はゆっくり上昇
預金者は金利に鈍感なので銀行は急がない
4
利ざやが拡大する
銀行の粗利が増える
5
ただし貸出が伸びないと空回り
資金需要が乏しい地域は取り残される

金利が上がると銀行は儲かる? その半分は「錯覚」です

「金利上昇=銀行の利益」という見方は、実は半分は錯覚です。なぜなら、銀行の資産の多くは貸出ではなく有価証券だからです。特に国債を大量に持つ地方銀行は、金利が上がると保有債券の価格が下がり、含み損が膨らみます。この含み損は、決算書の純利益に直接影響を与える場合があります。

ここで、銀行のバランスシートをざっくり見てみましょう。銀行の資産側には、貸出金のほかに国債や地方債などの有価証券が並びます。負債側には預金があります。金利が上がると、貸出金利は上がりますが、有価証券の価格は下がります。この「価格が下がる」部分は、時価評価されると損失として利益から引かれます。

特に、満期まで保有するつもりの国債でも、時価評価を迫られるケースがあります。銀行の自己資本比率計算では、評価損が資本を減らす。すると貸出余力が減り、本業にも影響します。利ざや拡大で稼いだ金額と、含み損の拡大が綱引きをして、負けた銀行が赤字になる。今回の全東信のケースは、まさにこの構図とみられます。

さらに話をややこしくするのが、期間のミスマッチです。銀行は預金(短期)を集めて、住宅ローンや企業融資(長期)に貸します。金利が上がると、長期の貸出金利はすぐに上がりません。固定金利のローンは、契約時の金利のままです。一方、預金金利は総じて上がりやすい。すると利ざやが逆に縮む局面もある。

つまり、金利上昇の影響は銀行の資産構成と期間構成によって千差万別です。単純に「銀行株は金利上昇で買い」と言えないのは、このためです。大事なのは、その銀行がどんな貸出を、どれだけの期間で持っているか。決算書の注記を読まないと、本当のところは見えてきません。

「含み損」が銀行の利益を消す、有価証券の時価評価という曲者

今回の地銀決算で、黒字の銀行でも「有価証券評価損」が利益を押し下げた例が散見されます。この評価損は、金利上昇局面では避けられないコストです。銀行は大量の国債を持っていますから、金利が1%上がれば、国債価格は数兆円規模で下がります。

この「時価評価」の仕組みを、住宅ローンの例で考えてみましょう。あなたが固定金利1%で住宅ローンを借りたとします。その後、市場金利が2%になると、あなたの借金(銀行にとっては債権)の価値は下がります。銀行がこの債権を売却しようとすると、額面より安くしか売れない。この「安くなった分」が含み損です。

銀行は通常、この含み損を損失として毎期計上する必要があります。会計上のルールです。含み損が膨らむと、純利益が減る。だから、利ざやで稼いだ分が有価証券の評価損で帳消しになる。この二つの力のバランスが、銀行決算の明暗を分けます。

では、どうやって銀行は含み損を管理しているのか。理想は、金利上昇が始まる前に国債の保有期間を短くしておくことです。短期国債は長期国債に比べて価格の下落幅が小さい。すぐに満期が来て、元本が戻ってくる。実際、金利上昇を見越して国債のデュレーション(平均回収期間)を短くしていた銀行ほど、今回の含み損は軽く済んでいます。

銀行によって運命が分かれる理由、過去の教訓から学ぶ

金利上昇が銀行に与える影響は、過去に一度、大きな形で現れました。1990年代のバブル崩壊後ではありません。2000年代前半の米国です。米連邦準備理事会(FRB)が2004年から2006年にかけて政策金利を1%から5.25%へ引き上げたとき、多くの地方銀行で同様の現象が起きました。

あのとき、米国の地方銀行は貸出金利の上昇で利ざやを広げようとしました。しかし、住宅ローン市場の変動金利化が進んでいたため、借り手の負担が急増し、貸し倒れが増えた。同時に、保有していた住宅ローン担保証券の価格が暴落し、含み損が膨らみました。利ざや拡大という「順風」が、資産の劣化という「逆風」に負けたのです。

日本の地銀も、国債を大量に持っている点で同じ構図を抱えています。ただし、日本は米国と異なり、貸出金利の上昇がまだ限定的です。日銀の利上げは始まったばかりで、政策金利は依然として低い。だから、今のところは利ざや拡大効果が勝っている銀行が多い。しかし、今後さらに金利が上がれば、含み損の圧力が強まります。

要するに、銀行決算は「利ざや拡大」と「含み損拡大」という二つの力の綱引きです。この綱引きのどちらが勝つかは、銀行ごとの資産構成と金利感応度で決まります。だから、同じ地銀でも8割が増益、1割は減益、さらに赤字も出る。一見矛盾した結果が、同じ市場環境から生まれるのです。

三菱UFJフィナンシャル・グループ
8306
企業ページへ
売上
14.6兆円
時価総額
43.7兆円
みずほフィナンシャルグループ
8411
企業ページへ
売上
9.09兆円
時価総額
21.6兆円

じゃあ、銀行を選ぶときはどこを見ればいい? 3つのチェックポイント

ここまでの話を踏まえて、次に銀行決算を見るときのチェックポイントを整理します。一つ目は「貸出金の伸び率」です。利ざやが広がっても、貸出残高が増えていなければ収益は増えません。決算短信の「貸出金残高」を見て、前年同期比で伸びているかを確認します。

二つ目は「預金コスト」です。預金金利が上がり始めると、利ざやは縮みます。特に定期預金の比率が高い銀行は、金利上昇の影響を強く受けます。普通預金の比率が高い銀行ほど、預金コストの上昇を抑えられます。この情報は、預金の種類別残高という項目で開示されています。

三つ目は「有価証券の含み損」です。これが膨らんでいると、今後の利益を圧迫します。特に、国債を満期まで持つ銀行でも、自己資本比率計算で評価損が資本を減らし、配当や貸出余力に影響します。含み損の推移は、四半期ごとの「その他有価証券評価差額金」で追えます。

この三つの数字は、決算短信の「主要勘定」や「金融再生法開示債権」の近くに載っています。投資判断の材料としてだけでなく、自分の取引銀行の経営状態を確かめる意味でも、一度眺めてみると面白いです。数字は嘘をつきませんが、読み方を知らないと何も見えてきません。

次に利上げのニュースを見たら、こんなふうに考えてみてください

日銀が追加利上げを発表するたびに、「銀行株が買われる」という見出しが出ます。そのとき、ぜひ思い出してほしいのが、今回の地銀決算のグラデーションです。同じ利上げでも、銀行によって影響は真逆になり得る。8000億円の利益を出す銀行もあれば、赤字に沈む銀行もある。

次に銀行のニュースを見たら、「この銀行は貸出が伸びているか」「預金の種類はどうか」「含み損は増えていないか」の三つをチェックしてみてください。すると、ニュースの見出しだけで一喜一憂しなくなるはずです。銀行の決算は、金利という同じ環境に対する各銀行の「構え」の違いを映し出します。

そして、もしあなたが住宅ローンを借りているなら、金利上昇はあなたの返済額にも響きます。変動金利を選んでいる人は、銀行の貸出金利上昇の裏返しで支払いが増える。銀行が儲かるということは、誰かが利息を多く払っているということ。この構図を忘れずにいたいものです。

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