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日経平均64,325.64-1,890NYダウ52,965.38+199ドル円158.86-1NASDAQ26,205.58+106S&P 5007,665.62+34SOX 指数11,344.26+569/2終値

金利が29年ぶりに上がったのに、日経平均が下がらないのはなぜ?

長期金利が一時2.930%と29年10カ月ぶりの高水準。普通なら「金利上昇=株安」を心配するところですが、日経平均は5日続伸しました。この矛盾の裏に隠れた、金利と株価の本当の関係を解き明かします。

超!企業DB 編集部·2026-08-17·14
株価チャートとグラフが記されたクリップボード。金利上昇と株価の関係を分析する記事のイメージ。
Photo · Leeloo The First / Pexels
目次6
  1. 0129年ぶりの金利水準、でも下がらない日経平均
  2. 02金利上昇の「2つの経路」を知っていますか?
  3. 03銀行・保険が上がり、不動産・公益が下がる
  4. 04「金利に強い株」の見分け方
  5. 05実は危ない「金利上昇の落とし穴」
  6. 06次に金利が上がるニュースを見たら、何をチェックする?

長期金利が一時2.930%まで上がり、29年10カ月ぶりの高水準をつけました。日銀の利上げ観測が強まり、円も159円近辺と円高方向に動いています。ところが、同日の日経平均は前週末比7円高と、5日続伸。この「金利が上がるのに株も上がる」という奇妙な風景は、いったい何を意味しているのでしょうか。

29年ぶりの金利水準、でも下がらない日経平均

まず確認しておきたいのは、長期金利2.930%という数字の重みです。29年10カ月ぶり、つまり1996年以来の水準まで金利が上がった。バブル崩壊後の日本では、金利は下がるものという常識が染みついています。だから「金利上昇=株には大きな逆風」と反射的に考えてしまいがちです。

1996年というと、日本ではようやくインターネットが一般家庭に広がり始めたころです。銀行の預金金利はまだ1%を超えるのが当たり前で、金利のある世界が日常生活の一部でした。そこから30年近くをかけて、日本の金利はほぼゼロまで下がっていった。この長い時間の流れを考えると、2.930%という数字がどれほど異例かがわかります。しかも、金利はゆっくり上がったわけではなく、足元では日銀の政策転換への期待をきっかけに、短期間で水準を切り上げてきています。

Google Newsnews.google.com· 2026-08-17
長期金利、一時2・930%/29年10カ月ぶり高水準 - shikoku-np.co.jp

ところが市場はというと、日経平均は前日比7円高の68,721円。わずかとはいえ、5日続伸です。しかも、週間の高値圏で取引されています。金利がこんなに上がっているのに、株が下がらない。むしろ、前の週に比べればはっきりと高いところにいます。この違和感こそが、今日の金利と株価の関係を見直す入り口になります。

金利がここまで上がれば、本来なら株価にはもっと強い下押し圧力がかかってもおかしくありません。たとえるなら、金利は株価にとっての重力のようなものです。高いところに登れば登るほど、落下のリスクは大きくなる。ところが今の日本株は、ロケットのように上昇しているわけではないにせよ、少なくとも地に足がついたまま高い位置を保っています。この状態が続くためには、重力を打ち消すだけの上向きの力が必要です。市場はその力を、企業の業績改善という形で見出しています。

教科書的な説明では、金利が上がると株価は下がりやすくなります。将来もらえるお金を現在の価値に割り引くとき、金利が高いほど価値が小さくなるからです。これを「割引率」といいます。企業の利益も同じで、金利が上がれば将来の利益の現在価値は割り引かれてしまいます。

でもそれだけでは、今の日本株の強さを説明できません。なぜか。金利上昇の原因が「景気が良いから」という場合、企業の業績そのものが伸びて、割引率のマイナスを補って余りあるプラスが生まれるからです。今はまさに、そうした局面だと市場は見ています。

たとえば自動車のように、世界中で製品を売っている企業を思い浮かべてみてください。金利が上がる局面では、国内の個人消費が冷える可能性はありますが、海外経済が強いなら為替の影響も含めて業績は底堅く推移します。実際、トヨタ自動車の株価は前日比で1.17%上昇しています。金利上昇の逆風を、グローバルな事業展開で受け流している形です。つまり、金利上昇は日本株すべてに等しく逆風なのではなく、企業ごとに影響の向きと大きさが異なる。これが、日経平均が下がらない理由の一つです。

金利上昇の「2つの経路」を知っていますか?

金利が株価に影響する道筋は一つではありません。一つは、先ほど触れた割引率を通じた逆風ルート。もう一つは、景気やインフレ期待が高まることで企業の売上や利益が伸びるという追い風ルートです。この2つが同時に働くから、金利上昇イコール株安とは一概に言えなくなります。

この2つの経路は、自転車のペダルに似ています。片方のペダルを踏み込むと、もう片方が持ち上がる。金利上昇は割引率というペダルを踏み込んで株価を押し下げようとしますが、同時に景気というペダルを押し上げて企業業績を後押しします。どちらのペダルに体重がかかっているかで、自転車の進む方向が決まる。今の日本では、景気のペダルを踏む力がやや強いため、株価は前に進んでいる。この感覚を持つと、金利上昇のニュースを一面的に恐れなくなります。

流れはこう
1
景気・インフレ期待が高まる
企業の売上増加期待が生まれる
2
長期金利が上昇
国債を売り、金利は2.930%へ
3
日銀の利上げ観測が強まる
円高ドル安が進む要因にも
4
銀行・保険など金利敏感株に資金が移動
利ざや改善期待
5
日経平均は5日続伸
追い風が逆風を上回る

この2つの力は、常に綱引きをしています。景気が強いときは、追い風の影響が大きくなります。景気が弱いのに金利だけ上がる場合、たとえば国債の信用が落ちて金利が上がるようなときは、株には厳しい展開になります。今はどちらかというと、追い風が勝っている構図です。

実際、為替市場では日銀の早期利上げ観測が強まり、ドル円は159円前後と円高方向に動いています。金利が上がって通貨が買われるのは、景気の強さを映しているからです。この円高自体は輸出企業には逆風ですが、それでも日経平均が下がらないのは、金利上昇で得をする企業に投資家が集まっているからです。

ソニーグループの株価は前日比5.73%高と、日経平均の動きを大きく上回りました。金利上昇局面でも、グローバルに多角的な事業を展開する企業には、投資家が安心感を持ちやすい。ゲームや音楽、イメージセンサーなど、金利の影響を受けにくい収益源を持っているからです。このように、金利上昇のニュースの裏で、個別企業の業績や事業構造が値動きの差を生んでいる。日経平均の数字だけを見ていては、こうした資金の移動は見えてきません。

銀行・保険が上がり、不動産・公益が下がる

金利上昇局面でわかりやすいのは、銀行や保険といった金融セクターです。預金金利と貸出金利の差、つまり利ざやが拡大すると、銀行の収益は直接的に増えます。三菱UFJフィナンシャル・グループや三井住友フィナンシャルグループのようなメガバンクにとっては、長年抑えられていた金利が解放されるわけです。

銀行のビジネスを家計にたとえると、預金者から安くお金を借りて、貸出先に高く貸すという商売です。金利が上がれば、この利ざやが自然に広がります。しかも、日本の銀行は長くゼロ金利に苦しめられてきたため、金利上昇の恩恵は単なる利益の上乗せではなく、構造的な収益回復につながります。三菱UFJと三井住友フィナンシャルグループの株価が1年前と比べて6〜7割も上がっているのは、この期待が少しずつ織り込まれてきた証拠です。

三菱UFJフィナンシャル・グループ
8306
企業ページへ
売上
14.6兆円
時価総額
43.7兆円

一方で、不動産や電力などの公益セクターは、借金が多いので金利上昇のコストが重くのしかかります。高配当で人気の銘柄ほど、金利上昇で相対的な魅力が下がるという面もあります。安全資産としての国債の利回りが上がれば、無理にリスクを取って株を買わなくてもよくなるからです。

この動きは、池の水が干上がっていく風景に似ています。金利が極端に低いとき、投資家はわずかな利回りを求めて、不動産や公益のような守りの株に集まります。しかし、金利が上がり始めると、国債というさらに安全で利回りのある選択肢が復活し、守りの株から徐々に水が引いていく。同時に、銀行や保険など金利で稼ぐ企業に資金が流れ込みます。同じ金利上昇でも、セクターによって全く逆の風景が広がっていることがわかります。

こうしたセクター間の資金移動を見れば、金利上昇がすべての株に等しく効くわけではないとわかります。実際、三菱UFJの株価は前日比ではわずかに下げていますが、1年前と比べると6割以上も上がっています。金利上昇への期待が、じわりと織り込まれてきた結果とみられます。

「金利に強い株」の見分け方

では、金利が上がる世界で強い株とは、どんな企業でしょうか。一つの物差しは「価格決定力」です。原材料費や人件費が上がっても、製品やサービスの価格に転嫁できる企業は、インフレ下でも利益を守れます。逆に、値上げをすると顧客が離れてしまうような企業は、金利上昇のコストを吸収できません。

価格決定力という点では、NTTのような通信大手も金利上昇に強い側面を持っています。生活に欠かせない通信インフラを提供しているため、多少の値上げでも顧客が離れにくい。実際に、NTTの株価は前日比1.37%高でした。配当利回りも3%を超えており、金利が上がる世界でも投資家の期待をつなぎとめる力があります。つまり、価格決定力は単に業績を守るだけでなく、株主への還元余力という形でも評価されるのです。

もう一つの物差しは、EPS(1株あたり利益)のモメンタムです。金利上昇の逆風があっても、利益の伸びがそれを上回る企業は株価が持ちこたえやすい。たとえば、ソニーグループのようなグローバル企業は、国内外の景気が強い局面では業績が伸びやすく、金利上昇のマイナスを吸収できます。

ソニーグループ
6758
企業ページへ
売上
12.5兆円
営業利益
1.45兆円
時価総額
24.1兆円

過去を振り返ると、1990年代前半の日本では金利が高止まりする中で、銀行株が大きく買われた時期がありました。その後、バブルが崩壊して状況は一変しましたが、金利上昇の初期段階では金融株に資金が集まるというパターンは、形を変えて繰り返されます。今も、市場が同じ地図を見ている可能性は高いです。

つまり、投資家が注目すべきは金利の絶対水準よりも、実質金利(名目金利からインフレ率を引いたもの)と、企業業績の方向性です。金利が上がっても、それ以上に企業の利益が伸びると期待されていれば、株価は下がりません。今の日本株の底堅さは、まさにその状態です。

実は危ない「金利上昇の落とし穴」

ただし、金利上昇がずっと株価に優しいわけではありません。注意すべきは、実質金利が急上昇する場面です。インフレ率が変わらないのに名目金利だけが上がると、実質的な借り入れコストが急増し、景気を冷やします。これは株価にとっては明確な逆風になります。

実質金利が急上昇する典型的なパターンは、中央銀行がインフレを抑えるために急速な利上げを行う局面です。景気が強いのに金利が上がるのはまだ耐えられますが、景気を冷やすために金利を上げるとなると、話は別です。企業は借り入れコストの上昇に耐えられなくなり、個人消費も冷え込みます。今の日本は、日銀が利上げに動くとしても、そのペースは極めて緩やかだとみられています。インフレ率も高止まっているため、実質金利はまだ低い。だからこそ、市場は冷静でいられるのです。

また、金利上昇のスピードが速すぎると、市場が過熱感を持つこともあります。今回の2.930%という水準は、29年ぶりの高さです。それ自体が投資家の警戒感を呼び起こすはずですが、今のところ日経平均は冷静です。しかし、この「冷静さ」がいつまで続くかは、誰にもわかりません。

長期金利(一時)
2.930%
29年10カ月ぶり
日経平均
68,721.44
前日比 +7.64(5日続伸)
ドル円
159.09
日銀利上げ観測で円高

過去のケースで言えば、2000年代初頭の米国では、ITバブル崩壊後に金利が急低下しても株価が下がり続けたことがあります。逆に、2010年代後半の米国では、金利が多少上がっても株価は堅調でした。これは、企業業績のモメンタムと実質金利の方向性が、株価により強く効いた時期だったと言えます。

今の日本は、名目金利が上がっていますが、インフレ率も上がっているため、実質金利は歴史的に見ればまだ低い水準にあるとみられます。だからこそ、株式市場は金利上昇を「許容」できている。それが、日経平均が5日続伸した理由の一つの解釈です。

ただ、実質金利が低いから株価が安全かというと、必ずしもそうではありません。インフレ率が上がる一方で名目金利が上がらなければ、実質金利はマイナスのままです。しかし、日銀が利上げを進めれば、その分実質金利も上昇に転じます。重要なのは、そのスピードが企業業績の伸びを上回らないかどうかです。上回り始めたら、今度は割引率の逆風が追い風をのみ込み、日経平均が重くなる展開も考えられます。今はまだ自律的な業績の伸びが、金利上昇を許容する下支えになっています。

次に金利が上がるニュースを見たら、何をチェックする?

金利上昇のニュースを見たとき、まず確認したいのは「なぜ金利が上がっているのか」です。景気が良いから上がっているのか、それとも国債が売られているから上がっているのか。前者なら株価には追い風、後者なら逆風です。今回の場合は、日銀の利上げ観測が強まったことが大きいですが、その背景には景気の堅調さがあるとみられます。

たとえば、似たようなニュースが飛び込んできたとき、最初に手元のスマートフォンで長期金利の水準だけでなく、日経平均先物の夜間取引の値動きも確認すると良いでしょう。日中は反応が薄くても、海外投資家の思惑が夜間に現れることがあります。また、ニュースが「日銀の利上げ観測」によるものなのか、「国債の需給悪化」によるものなのかを読み分ける習慣がつくと、市場の反応の深さが変わってきます。同じ金利上昇でも、原因によって将来の風景は全く違うからです。

次に、金利に敏感なセクターの動きを確認します。銀行や保険が上がり、不動産や公益が下がっているなら、市場は金利上昇を景気の追い風と捉えています。逆に、銀行株が下がっているのに金利だけ上がっているなら、何か別の要因が働いている可能性が高いです。

最後に、実質金利と企業業績のモメンタムを見ます。金利が上がっても、EPSが伸びている企業が多ければ、株価の底堅さは続くでしょう。この3つの点を押さえれば、「金利上昇=株安」という単純な思い込みから抜け出し、自分の持ち株を判断する物差しになります。

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