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17日のアメリカ株は、イランとの和平交渉が行き詰まりを見せたことで原油価格が上がり、NYダウは続落しました。18日の日経平均先物も前日比280円安で取引が始まっています。この「原油高→日本株安」の流れ、実はあなたの資産に深く関わっています。ガソリン代だけの話ではないんです。
ガソリンが上がると、なぜ株が下がるの? 第1の経路:金利
原油価格が上がると、まず思いつくのは「ガソリン代が増える」。もちろんそれも正しい。でも株式市場が恐れるのは、もっと別の連鎖です。原油高は、企業の原材料コストを押し上げます。すると、商品の値段が上がる。つまり、インフレが進むんですね。
インフレというと、モノの値段が上がって家計の負担が増える、というイメージが強いかもしれません。でも投資の世界では、インフレは金利を通じて株価に跳ね返ってくるんです。その橋渡しをするのが、中央銀行の存在です。中央銀行はインフレを抑えるために金利を上げる。つまり、原油高という外の出来事が、中央銀行の政策という内のルールに変換されて、株価を冷やすわけです。
インフレが進むと、中央銀行は金利を上げたくなります。アメリカではFRB(連邦準備制度理事会)がその役割を担っています。金利が上がると、投資家は「株よりも債券」に惹かれます。だって、リスクを取らなくても高い金利がもらえるんですから。株式の価値が相対的に下がる。これが第1の経路です。
ここで重要なのは、金利上昇が「すでに起こった」か「これから起こると予想される」かで、株価の反応が違うことです。18日の市場が反応したのは、実際にFRBが利上げしたからではありません。先物市場で、将来の金利が少し上がる方向に傾いたからです。市場はいつも先回りする。金利が上がると予想した瞬間に、投資家は将来の利益の価値を計算し直し、株を売る。だから実際の利上げの前から株価は動くんです。
ちなみに、18日のニューヨーク市場では、S&P500が0.52%下落、NASDAQも0.31%下落しました。一方、半導体セクターのSOX指数は1.64%上昇しています。金利上昇が必ずしも全面安を招くわけではないんですが、今回は原油高が主犯なので、セクターによって明暗が分かれました。
戦争リスクが高まると、投資家は株を売る? 第2の経路:リスク回避
第2の経路は、もっとシンプルです。イランの和平交渉がこじれると、ホルムズ海峡の通航リスクが意識されます。世界の原油輸送の大動脈です。最悪のシナリオでは、供給が止まり、原油価格が跳ね上がる。そして、中東の地政学リスクが高まると、投資家は「リスクを取るのはやめよう」と株を売り、安全な国債や円に逃げ込みます。
たとえば、あなたが今から10年後に受け取る100万円を、今の価値に換算することを考えてみてください。金利が1%なら、今の価値はおよそ99万円です。でも、もし戦争のリスクで「安全な資産に逃げたい」という人が増えると、今すぐ現金化したい人が増えます。将来の100万円よりも、今の90万円のほうが魅力的に見える。これが「リスク回避」の心理です。投資家がリスクを避けるほど、株のようなリスク資産の価格は下がりやすくなるんですね。
これは「リスクオフ」と呼ばれる動きです。リスクオフが起きると、円が買われる傾向があります。円高は日本株にとって逆風。輸出企業の利益が目減りするからです。でも、18日のドル円は159.36円と、17日からほぼ変わらず。市場はまだ冷静です。「戦争になる」とまでは織り込んでいない、というわけですね。
日本はエネルギー輸入国だから、実はダメージが大きい
日本は原油のほとんどを輸入しています。つまり、原油高は日本企業のコストを直撃します。発電用の燃料、輸送用のガソリン、プラスチックの原料。ありとあらゆるものに原油が使われています。企業収益が圧迫され、株価に下押し圧力がかかります。
身近な例で考えてみましょう。ガソリン価格が1リットル当たり10円上がったとします。家計の負担は、月に50リットル給油する人なら500円増える。これ自体は小さな話です。でも企業にとっては、工場の燃料、物流のトラック、出張の飛行機代など、あらゆるコストが上がる。たとえば、配送を外注しているネット通販の会社は、送料の上昇分を商品価格に転嫁するか、自社の利益を削るか選ばなければなりません。値段を上げれば客が離れる。値段を上げなければ利益が減る。原油高は、企業にとって「売り上げ」ではなく「利益」に直撃する。それが株式市場で嫌われる理由です。
一方で、原油高で利益が増える企業もあります。石油開発のINPEX(1605)や、国内最大の石油元売りENEOSホールディングス(5020)などがその代表です。実際、INPEXの株価は過去1年で67.4%も上昇しています。資源価格の上昇は、こうした企業にとって追い風です。
でも、市場全体で見れば、エネルギー輸入国としてのデメリットのほうが大きい。日経平均はバブル後高値圏にありますが、18日の先物は280円安で始まりました。今日の取引では、原油高への警戒感が続くでしょう。
要するに、原油高は「日本企業のコスト増」と「海外投資家のリスク回避」という二重の逆風を日本株にもたらします。ガソリン代だけでなく、投資の世界にもしっかり影響するんです。
2022年ウクライナ危機では株価はこう動いた
今回のイラン問題と似たケースが、2022年のウクライナ危機です。ロシアがウクライナに侵攻した直後、原油価格は急騰し、一時1バレル130ドルを超えました。日経平均は短期間で大きく下落しました。当時を覚えている人も多いはずです。
2022年のウクライナ危機は、まさに「インフレの連鎖」が株価を揺らした典型です。ロシアがウクライナに侵攻した直後、原油価格が急騰すると同時に、世界中でガソリンや食料品の値段が上がりました。アメリカの消費者物価指数は前年同月比で9%を超え、FRBは慌てて利上げを急いだ。株式市場は「高い金利で将来の利益が割り引かれる」と、成長株を中心に大きく売られました。イラン問題も、原油高→インフレ→金利上昇という同じ伝達経路を持っています。だから、2022年の値動きが頭の片隅にある投資家は、今回のニュースに敏感に反応しているんです。
ただし、2022年と今では状況が違います。あの時は世界的に金利が低く、インフレが急加速しました。今はすでにインフレが落ち着き、金利も高止まりした状態からのスタートです。原油高が再びインフレを加速させれば、FRBは利下げを先送りせざるを得ません。そうなると、株価の下押し要因が長引くことになります。
反対に、中東情勢が沈静化すれば、原油価格は落ち着き、金利上昇圧力も弱まります。株式市場にとってはプラス材料です。つまり、今後のイラン交渉の行方が、日本株の材料としてこれまで以上に重要になる、というわけです。
それでも下がらないセクター:石油・商社・防衛
原油高の局面では、すべての株が同じように下がるわけではありません。むしろ、原油高を利益に変える企業は株価が上がります。すでに触れたINPEXやENEOSのような石油関連企業は、典型的な勝ち組です。
それから、商社にも注目です。日本の総合商社は資源ビジネスを多く手掛けています。石油や天然ガスの権益を持つ企業は、原油高で収益が拡大します。保有する資源の価値が上がれば、株価にもプラスに働きます。
さらに、資源価格の上昇は、商社の「持っている資産の価値」を押し上げます。資源権益は、将来にわたって原油や天然ガスを販売する権利です。原油が上がれば、その権利が生み出すキャッシュフローも増える。だから、商社の株は原油高局面で買われやすい。ただし、商社は資源ビジネスだけでなく、食品や機械など多角的な事業を抱えています。資源価格が上がれば資源部門が稼ぐ一方で、原燃料コストが増えて他の部門の利益を圧迫することもある。そのバランスを決算書で見極めるのが、投資家の腕の見せどころです。
地政学リスクが高まると、防衛関連株も買われる傾向があります。戦争リスクが現実味を帯びると、各国は防衛費を増やします。防衛企業の将来の売上が期待され、株価が上がる。日本でも、防衛関連株はすでに高値圏にあります。
ただし、こうしたセクターはあくまでリスクヘッジや短期的なテーマ投資の側面が強い。長期投資の基本は、原油価格がどうなっても業績が安定する企業を探すことです。エネルギー価格に左右されないビジネスモデルかどうか、決算書を見直してみるのも面白いですよ。
次に似たニュースを見たときのチェックポイント
中東のニュースが流れたとき、まず確認したいのは原油価格の動きです。WTI原油先物がどうなったか。そして、アメリカの金利先物市場の動き。利上げ期待が高まっているか、利下げ期待が後退しているか。この2つで、株価への影響の大きさがわかります。
次に、円相場です。リスク回避が強まれば円高に振れます。円高が進むほど、日本株には逆風です。アメリカ株の先物やアジア市場の反応も見ておくといいでしょう。
最も大事なのは、このニュースが「一時的なノイズか、構造的な変化か」を考えることです。和平交渉が再開される兆しが見えれば、原油高は一時的で終わります。逆に、紛争が長引くなら、企業業績への影響は深刻です。ニュースの見出しだけでなく、債券市場と為替市場がどう反応しているかまでチェックすれば、プロに一歩近づけます。
原油高のニュースは、私たちの生活に直結する割に、投資への影響は意外と知られていません。今回のイラン問題をきっかけに、ぜひ「原油→金利→株価」の連鎖を頭に入れておいてください。次に同じようなニュースが流れたとき、あなたはもう一歩先を読むことができるはずです。



