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日経平均64,325.64-1,890NYダウ52,980.73+214ドル円158.84-1NASDAQ26,208.82+109S&P 5007,666.58+35SOX 指数11,332.81+449/2終値

2200円安の日経平均でスーパーの株が上がる不思議——暴落の「逃げ場」の正体

日経平均が一時2200円超安と歴史的な下げ幅を記録した7月16日。半導体株が売られる裏で、食品や医薬品の一部が逆行高しました。なぜ、何を作っているかでもうける株が「安全」なのか。景気に左右されない需要の正体と、金利より高い配当利回りが生む「下値の固さ」を解き明かします。

超!企業DB 編集部·2026-07-16·13
スーパーマーケットの棚に並ぶ食品の品揃えのイメージ
Photo · Franki Chamaki / Unsplash
目次6
  1. 012200円下落の裏で、なぜか上がっていた株たち
  2. 02「生活必需品」は不況に強い——景気に左右されない需要の正体
  3. 03配当があなたを守る——高配当利回りがもたらす「下値の固さ」
  4. 04過去の暴落局面でも、ディフェンシブは意外と下げなかったデータ
  5. 05今日の日本株で実際に買われたセクターと、その落とし穴
  6. 06「ディフェンシブ買い」はいつまで続く? 出口を考える

7月16日、日経平均が一時2200円以上も下落する中、スーパーで売っているような食品メーカーの株に買いが入りました。なぜ、半導体が売られて、おにぎりや薬が買われるのか。この「逃げ場」の仕組みを理解すると、次の暴落がきたとき、数字の見え方が変わるはずです。

NHKwww3.nhk.or.jp· 2026-07-16
株価 一時 2200円以上値下がり 半導体関連など売り注文広がる

2200円下落の裏で、なぜか上がっていた株たち

16日の日経平均は前日比で2200円を超える下落。これは数字だけ見れば歴史的な下げです。ところが、同じ日の午前中、一部の生活必需品関連銘柄には逆行高する動きが出ました。半導体やハイテクが売り込まれる中、スーパーに並ぶ商品を作っている企業が買われる——市場で「リスクオフ」と呼ばれる典型的な構図です。

「リスクオフ」とは、簡単に言うと投資家がお金を危ない場所から安全そうな場所に移すこと。では、この「安全そう」とは何か。答えは「明日も明後日も、たぶん変わらず売れるものを作っているかどうか」です。景気が悪くなろうが、ウクライナで何が起きようが、私たちは急にしょうゆの消費をやめたりしません。

だから日経平均が泣き叫ぶような日でも、味の素や日本たばこ産業(JT)といった銘柄は、比較的しっかりとした値動きを見せました。味の素はこの日、わずか0.88%の下落にとどまり、JTに至っては0.10%安とほぼ変わらず。一方、武田薬品工業も0.73%安と、全体の2.84%安に比べるとはるかにマイルドです。

こうした数値の差は偶然ではありません。株式市場には「ベータ」と呼ばれる指標があります。これは、市場全体が1%動いたときに、その銘柄が何%動く傾向があるかを示す数字。日経平均の下落率2.84%に対し、味の素の下落率0.88%は、市場全体の変動に対する感応度が極めて低いことを物語っています。つまり、暴落時のショックを吸収するクッションのような存在なのです。

Google Newsnews.google.com· 2026-07-16
日経平均急落でリスクオフ、ディフェンシブ再評価【今日の市場はどう動いた?】 - Yahoo!ファイナンス

「生活必需品」は不況に強い——景気に左右されない需要の正体

これらの企業に共通するのが、事業の「不可欠性」の高さです。経済学では「必需財」と呼ばれます。たばこは嗜好品ですが、習慣性が強いため需要は極めて安定しています。要するに、景気が悪くても「家計の支出の中で最後まで削られない」商品なのです。

景気が悪くなると、企業は設備投資を絞ります。すると半導体や機械の注文は減り、関連株は真っ先に売られます。今回はまさに、半導体関連を中心に利益確定売りが広がったと報じられました。しかし、「悪くなったからといって今夜の鍋の味付けを薄くするか」と言われれば、たいていの人はそうしません。

これが「景気に左右されない」の実態です。味の素の調味料は、世界中で毎日コツコツと使われ続けます。武田薬品の医薬品は、景気の良しあしより患者さんの数で決まります。JTのたばこは、価格が上がろうが景気が悪くなろうが、日々の習慣として消費され続けます。この、需要が勝手に補充されていく構造が、暴落時の株価を支える最初の柱です。

ここで、需要の安定性をもう一段深掘りしてみましょう。食品や日用品の需要が減らないのは、単に「安いから」ではありません。たとえば味の素の主力製品である調味料は、家庭の食費の中で占める割合が1%にも満たないと推計されます。1食あたり数円程度のコストで料理のおいしさを支えている。家計が苦しくなったとしても、「まずは牛肉を鶏肉に変える」という調整のほうが先で、調味料をやめるという発想にはなりにくい。この「削減の優先順位の低さ」が、必需財の真の強さです。

一方で、半導体や製造装置の需要は、顧客企業の「将来もうかりそうだから設備を増やそう」という期待に依存します。この期待は、ちょっとした悪材料でしぼみやすい。だからSOX指数が5%下がるような局面では、関連銘柄の株価は一気に1000円単位で吹き飛んだりするのです。

流れはこう
1
景気悪化の懸念・地政学リスク
投資家の不安心理が高まる
2
将来の業績不透明感から半導体・ハイテク株を売却
設備投資が減り、需要が先細ると判断
3
売却資金が「安定需要のある」必需財セクターへ流入
景気に左右されない食品・医薬・たばこ
4
必需財企業の株価が相対的に底堅く推移、資金の「避難先」に
暴落局面での下値の固さを形成

配当があなたを守る——高配当利回りがもたらす「下値の固さ」

事業の安定性に加えて、ディフェンシブ株にはもう一つ、暴落時に効いてくる武器があります。それが配当です。株価が下がると見かけ上の配当利回りが上がります。すると、「銀行に預けるよりずっとマシ」と考える投資家の買いが入りやすくなるのです。

具体的に見てみましょう。7月16日時点で、武田薬品工業の配当利回りは3.75%、JTは3.82%でした。長期金利の指標となる10年国債利回りは、この日1%前後で推移しています。単純比較で3倍以上の利回りです。「この会社がつぶれなければ」という前提で、配当目当ての買いが下値を支えているのです。

これは個人投資家の心理だけでなく、年金基金や保険会社といった機関投資家の行動原理でもあります。彼らは「少しでも高い利回りで安全に」資金を運用する必要があるからです。株価が下がって利回りが上昇した瞬間、自動的に買いプログラムが発動することもあります。

では、なぜ機関投資家は配当利回りにこれほど敏感なのでしょう。年金基金を例にとると、将来の年金給付のために毎年一定の運用収益を確保しなければなりません。国債の利回りが1%しかないのに、3.8%の利回りを提供するJT株は、そのギャップを埋める手段として極めて魅力的です。株価が下がれば下がるほど利回りは上昇するので、「安くなったから買う」というよりも、「利回りが目標値に達したから買う」という自動的な需要が発生します。これが、値下がりを一定の範囲で食い止める「下値の固さ」のメカニズムです。

注意すべきは、「高配当だから安全」とは限らない点です。業績が悪化すれば配当は減らされます。この点、食品や医薬品といった必需財は、減配リスクが相対的に低いため、高配当の魅力が純粋に生きてくるというわけです。

武田薬品工業 配当利回り
3.75%
長期金利の約3.7倍
JT 配当利回り
3.83%
長期金利の約3.8倍
味の素 配当利回り
0.85%
成長期待から利回り低め

過去の暴落局面でも、ディフェンシブは意外と下げなかったデータ

歴史を振り返ると、2008年のリーマンショックでは日経平均が年間で42%下落する中、食品株の下落率はこれより小さく、医薬品株に至っては業種別で最も下げが小さかったというデータがあります。2020年のコロナショックでも、最初の暴落で食品スーパーや医薬品の一部に資金が集中し、いち早く底打ちしました。

なぜか。コロナ禍で真っ先に売られたのは「外出が減るから」という理由で航空・鉄道・百貨店でした。しかし、人が家にこもればこもるほど、家庭での食事や日常薬の需要はむしろ増える。トイレットペーパーが品薄になったように、「とりあえず生活必需品の会社は大丈夫だろう」という心理が働くのです。

この構図は、今日の半導体急落とも同じです。AIバブルへの過熱感から利益確定売りが膨らむ中で、「いったんお金を安全な場所に置いておこう」と考える投資家が、過去の経験則から食品や医薬品を選んでいる。暴落時の「逃げ場」とは、単なる気休めではなく、過去のデータに裏打ちされた投資行動のパターンなのです。

もう少し具体的にコロナショックを振り返ると、2020年2月下旬から3月にかけての急落局面で、日経平均は約30%下落しました。その間、食品スーパーを展開するライフコーポレーションの株価はむしろ上昇し、同じく食品スーパーのマルエツも限定的な下落にとどまりました。これは、需要が「外食」から「内食」にシフトしたためです。同じ「食」でも、景気敏感の外食株は売られ、必需の食品小売は買われる。この選別は、2年後の今日でもまったく同じパターンで現れています。

さらに、リーマンショック時には、世界的な信用収縮で「現金を持っていること」自体が評価される局面がありました。その中で、負債が少なく手元資金が豊富な食品・医薬品企業は、倒産リスクが低いと見なされ、相対的に資金が集まりました。今回の下落局面で味の素やJTに目立った売りが出なかった背景にも、財務の健全性に対する市場の信頼があるのです。

味の素
2802
企業ページへ
売上
1.58兆円
営業利益
1,994億円
時価総額
5.11兆円
武田薬品工業
4502
企業ページへ
売上
4.51兆円
営業利益
62億円
時価総額
9.27兆円

今日の日本株で実際に買われたセクターと、その落とし穴

今回の相場で実際に資金が向かったのは、食料品、医薬品のほか、小売の中でも食品スーパーなどです。これらの企業は、提供する商品やサービスが人々の日常生活に直結しており、売上高の変動が小さいのが特徴です。

ただし、「ディフェンシブだから全部買い」は危険な発想です。たとえば、味の素は配当利回りが1%未満で、むしろ海外の調味料・冷凍食品需要による成長期待で買われている面があります。同じ食品でも、外食産業は景気敏感です。高級レストランより牛丼チェーンの方が防御的と言えます。

この「同じ食品でも温度差がある」現象を、もう少し分解してみましょう。外食企業のコスト構造を考えると、売上の約3割が食材費、約3割が人件費です。景気が悪くなって客数が減っても、店舗の家賃や正社員の人件費はすぐに減らせません。すると利益が急減し、株価も大きく下がります。一方、食品メーカーの味の素は、工場の固定費こそありますが、調味料という商品の性質上、生産量の変動は小幅です。同じ「食」というくくりでも、ビジネスモデルによって暴落耐性に雲泥の差が出るのです。

また、医薬品は開発パイプラインの成否や特許切れで株価が大きく動くため、「不可欠性」だけで守られるわけではありません。武田薬品の例では、買収によって獲得した新薬候補が将来の収益を支えるかどうかが、配当の持続性を左右します。配当利回りの高さだけで判断すると、業績悪化による減配リスクを見落とすことになります。

要するに、10銘柄のうち2〜3銘柄をこうした「生活防衛関連」にしておくことで、暴落時の心理的ショックを和らげ、冷静な判断を保ちやすくなる——というのが、ディフェンシブ株の現実的な効用です。

「ディフェンシブ買い」はいつまで続く? 出口を考える

最後に気になるのが、「この逃げ込みはいつ終わるのか」です。過去のパターンでは、市場全体の恐怖が和らぎ、再び成長期待が勝り始めたタイミングで、資金はゆっくりと景気敏感株に戻っていきます。

具体的なチェックポイントは二つ。一つは、恐怖指数と呼ばれるVIX指数が20を下回るような水準まで下がってくるか。もう一つは、半導体など主力の成長セクターで、四半期決算の見通しが再び上向き始めるかです。企業の設備投資計画が維持・拡大されると確認できれば、ディフェンシブ株に退避していた資金は、徐々に高リターンを求めて流出していきます。

ここで「なぜVIXが20なのか」を補足しておきましょう。VIX指数はS&P500のオプション価格から算出される、市場の予想変動率です。過去のデータを振り返ると、VIXが20を超えると投資家の警戒感が強まり、ディフェンシブ株への逃避が加速する傾向があります。逆に15を下回ると、リスク志向が回復し、成長株への資金回帰が始まります。2023年春にも同じパターンが見られました。VIXが長期平均の20を割り込んだタイミングで、半導体株が再び買われ始めたのです。

今回の下落は、SOX指数が前日比2%超の下げとなり、半導体セクター全体への過熱感が意識されたのが引き金とみられます。これが一過性の調整で終わるか、本格的なトレンド転換になるかは、今後の企業決算と景気指標次第です。

「逃げ場」にいる間も、次の動きをイメージしておくことで、相場が反転したときに乗り遅れずに済む可能性が高まります。暴落局面で一番怖いのは、恐怖で固まって何もできなくなること。あらかじめ「逃げ場」の仕組みと出口の条件を知っておけば、数字が大きく動く日も、少しだけ落ち着いて画面を見られるはずです。

次に似たニュースを見たときは、「下落率が小さいセクターはどこか」「その配当利回りは長期金利の何倍か」を確認してください。そして、「そこで生活している人々が、明日もそれを買い続けるか」という素朴な問いを立ててみる。これができれば、2200円安の日にパニック売りに巻き込まれずに済むでしょう。

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