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超!企業DB
日経平均64,325.64-1,890NYダウ52,980.73+214ドル円158.84-1NASDAQ26,208.82+109S&P 5007,666.58+35SOX 指数11,332.81+449/2終値

ジェイファーマ

J-Pharma Co.,Ltd.520A · Growth · 医薬品

SLCトランスポーター創薬に特化したグローバルベンチャー。LAT1阻害剤で胆道がんや多発性硬化症などアンメットニーズに挑む。

概要

ジェイファーマ株式会社は2005年12月に東京都港区で設立された創薬ベンチャーである。SLCトランスポーターの一種であるL型アミノ酸トランスポーター1(LAT1)に特化した低分子医薬品の研究開発を手掛け、2026年3月に東京証券取引所グロース市場に上場した。本社は同区浜松町に所在し、従業員は16名。現在は売上高を計上しておらず、パイプラインの臨床開発に注力している。

単一セグメントの研究開発型企業

ジェイファーマは創薬事業のみを単一の報告セグメントとして運営している。主な活動はLAT1阻害剤の研究開発であり、収益は発生していない。開発はグローバルを志向し、米国FDAとの対話を重視する。2026年3月期の営業損失は37億円、当期純損失は25億円で、研究開発投資が拡大している。資産は前期比19億円増の47億円で、増資による現金増加が寄与した。負債は3.8億円、純資産は43.8億円である。

グローバル連携による開発体制

少数精鋭の16名体制だが、米国Georgetown大学やTurku PET Centreなど最先端アカデミアと連携する。欧米のCROやコンサルタントも活用し、LAT1阻害剤の国際共同開発を推進する。アドバイザーには神奈川県立がんセンター総長や米国の腫瘍専門医・統計学者を招聘し、臨床試験デザインや薬事戦略の助言を得ている。2025年12月にはナンブランラトのグローバル第3相試験を開始した。

パイプライン価値の最大化戦略

経営戦略「Goals for 2030」では、ナンブランラトの胆道がん治療薬としてのグローバル承認獲得によりブロックバスター(年商10億米ドル)を目指す。後期段階でのライセンス契約を重視し、第3相試験のデータ取得後に導出を計画する。2026年5月末時点でナンブランラトに関して12社、JPH034に関して13社のパートナー候補と定期的に情報交換を行っている。

業界の中での役割は創薬ベンチャー(バイオ製薬)にあたる。

この章の文章は、有価証券報告書と会社の開示をもとにAIが編纂しています。数値は開示のままで、AIには生成させていません。

何をしている会社か

有価証券報告書「事業の内容」(2026/3期)より

01がん治療(胆道がん、大腸がん)主力

LAT1阻害剤ナンブランラトを開発。胆道がんでは国内第2相試験で無増悪生存期間の延長が確認され、現在グローバル第3相試験を米国FDAのレビュー下で実施中。特有の組織分布から胆汁中に高濃度で分布し、胆道がんへの有効性が期待される。大腸がん(特にKRAS変異型)への適応拡大も視野に開発を進める。

LAT1阻害剤のパイオニア

主な製品・サービス1
ナンブランラト (JPH203)
LAT1を選択的に阻害する新規低分子化合物。LAT2には作用せず、がん細胞のアミノ酸取り込みを阻害して増殖を抑制するとともに、免疫微小環境を改善する可能性がある。

02自己免疫疾患(多発性硬化症)主力

高い脳内移行性を持つLAT1阻害剤JPH034を開発。ミクログリアの活性化を抑制し、再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症に対する新たな治療アプローチを目指す。米国で第1相臨床試験を開始済み。

中枢移行性LAT1阻害剤として独自のポジション

主な製品・サービス1
JPH034
高い脳内移行性を有するLAT1阻害剤。脳内のミクログリアを標的とし、炎症を抑制することで神経変性疾患やグリオーマへの治療効果が期待される。経口投与が可能。

03希少疾患副次

LAT1関連のアミノ酸代謝異常による希少疾患を対象とした非臨床研究を実施。ナンブランラトの組織分布特性を活かした適応症の特許を出願中。

製品と技術

LAT1選択的阻害剤ナンブランラト

ナンブランラト(開発コードJPH203)はLAT1に選択的に結合し、アミノ酸の取り込みを阻害する低分子化合物である。LAT2には作用せず、がん細胞へのアミノ酸供給を制限して増殖を抑えるとともに、免疫回避を防ぐ可能性がある。胆汁中への高い分布を示し、胆道がんに対する有効性が期待される。国内第2相試験の結果は医学誌Clinical Cancer Researchに掲載され、第3相試験では全生存期間を主要評価項目としている。

中枢移行性LAT1阻害剤JPH034

JPH034は高い脳内移行性を特徴とするLAT1阻害剤で、中枢神経系の自己免疫疾患である再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症を主な適応とする。2023年10月に米国National Multiple Sclerosis SocietyのFast Forwardプログラムに採択され、60万米ドルの補助金を受けた。2026年3月に米国第1相試験を開始し、安全性・忍容性・薬物動態データを取得中。グリオーマへの適応拡大も検討する。

次世代LAT1阻害剤の創薬研究

ナンブランラトの後継品として、Best-in-Classを目指す次世代LAT1阻害剤の研究開発を進めている。すでに候補化合物を特定し、ナンブランラトとJPH034に続く成長ドライバーとして位置づける。当社のトランスポーター創薬プラットフォームを活用し、低分子薬の強みを生かした新規化合物の創出を目指す。詳細な構造や適応症は未公表だが、非臨床段階から臨床試験への移行を視野に入れている。

有価証券報告書の事業の記述をもとにAIが編纂しています。

業界での位置づけ

医薬品のなかでの位置

会社が挙げる強い分野

  • がん治療(胆道がん、大腸がん)LAT1阻害剤のパイオニア
  • 自己免疫疾患(多発性硬化症)中枢移行性LAT1阻害剤として独自のポジション

有価証券報告書(2026/3期)で会社自身が述べている位置付けです。第三者による調査ではありません。

売上ゼロの開発段階、将来性未知数

同社は医薬品セクターに属するが、直近の売上高データがなく、開発段階にある可能性が高い。同業他社にはVeritas In Silicoやジーエヌアイグループなどが存在するが、同社は売上がないため業界内でのポジションは極めて低い。パイプラインの内容や進捗が不明であり、今後の事業計画が注目される。資金調達状況や研究開発の進捗次第で一変する可能性があるが、現時点では実質的な競争力は評価できない。

強み

  • 売上ゼロでも上場を維持しており、将来の事業化に期待。
  • 売上事業がない分、研究開発に全リソースを投入可能。
  • 製薬業界とのパイプを活かした協業の可能性がある。
  • 独自技術の特許を保有している場合、参入障壁となる。

課題

  • 売上ゼロが続き、収益化の時期や実現性が不透明。
  • 売上がないため、資金調達が経営の死活問題となる。
  • 他社の類似技術に対する優位性が不明で、差別化が困難。

強みと課題は、開示資料をもとにAIがまとめた見立てです。

同業の企業

医薬品の時価総額近傍。太字がジェイファーマ

時価総額で並べると、掲載11社のなかで6番目にあたる。

時価総額は直近の終値ベース。同業の範囲は東証33業種の分類に従っています。

会社の歴史

沿革 30件

トランスポーター研究に端を発した創業

2005年12月、細胞膜トランスポーターに特化した医薬品開発を目的に、東京都港区虎ノ門でジェイファーマ株式会社を設立した。創業者の遠藤仁(杏林大学名誉教授)は12種類の新規トランスポーターを発見・特許化した第一人者であり、その中核技術であるLAT1に着目。設立直後から医薬基盤研究所やNEDOの助成事業に採択され、高リン血症治療薬や胃硬性がん療法の研究を開始した。

LAT1阻害剤の臨床試験開始とライセンス契約

2015年1月、LAT1阻害剤ナンブランラト(JPH203)の国内第1相臨床試験を開始。2017年7月に終了し、2018年11月には第2相試験に移行した。2019年4月、大原薬品工業株式会社とナンブランラトのライセンス及び共同開発契約を締結。2022年12月に第2相試験を完了し、胆道がんに対する有効性を示唆するデータを得た。この間、横浜市やAMEDの助成も活用した。

米国FDAとの対話とオーファンドラッグ指定

2022年4月、ナンブランラトが米国FDAより進行性胆道がんのオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)に指定された。2024年9月にはType C Meetingでグローバル第3相試験デザインの概要合意に至り、同日にIND申請が承認された。2025年5月にはCMCについて商業製造スケールの品質基準適合を確認する書面回答をFDAから受領。これらは国内第2相データに基づく成果である。

上場と第2のパイプライン始動

2026年3月、東京証券取引所グローバル市場に株式を上場した。同時期、JPH034の米国第1相臨床試験を開始し、最初の被験者への投与を実施。JPH034は多発性硬化症を対象とし、米国National Multiple Sclerosis Societyの助成プログラムに採択されていた。2025年12月にはナンブランラトのグローバル第3相試験(胆道がん2次療法)も開始しており、2つのパイプラインが臨床段階に入った。

年表30件を開く

2000年代

  • 2005年12月創業細胞膜のトランスポーターに特化した医薬品開発を行う会社としてジェイファーマ株式会社を東京都港区虎ノ門一丁目に設立
  • 2006年10月医薬基盤研究所 医薬品・医療機器実用化研究支援事業「高リン血症治療薬の開発」採択
  • 2006年10月東京都新宿区新宿二丁目に本社を移転
  • 2007年9月NEDOイノベーション実用化助成事業「胃硬性がん療法の開発」採択
  • 2007年10月文部科学省分子イメージング研究プログラム「がん細胞特異膜タンパク質を標的とした新規分子プローブの開発」採択
  • 2009年8月NEDOイノベーション推進事業「新規リン吸着剤JPH101の研究開発事業及び臨床第1相試験の実施」採択

2010年代

  • 2010年8月NEDO基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発/橋渡し促進技術開発「がん細胞に発現する必須アミノ酸トランスポーター(LAT1)を分子標的とする新規抗がん療法の研究開発」に採択
  • 2013年4月NEDOベンチャー実用化助成事業「アミノ酸トランスポーター阻害による革新的抗がん薬の臨床開発」採択
  • 2013年5月神奈川県横浜市鶴見区に本社を移転
  • 2013年7月横浜市特区リーディング事業助成金「トリプルネガティブ悪性乳がんの体外診断薬キットの開発」採択
  • 2014年5月NEDOベンチャー実用化助成事業「新規抗がん薬JPH203の臨床試験実施によるPOCの確保」採択
  • 2014年7月横浜市特区リーディング事業助成金「トリプルネガティブ乳がん用体外診断薬の実用化」採択
  • 2015年1月LAT1阻害剤ナンブランラト(開発コード:JPH203)の国内における第1相臨床試験を開始
  • 2017年7月ナンブランラトの国内における第1相臨床試験を終了
  • 2018年11月ナンブランラトの国内における第2相臨床試験を開始
  • 2019年4月大原薬品工業株式会社とナンブランラトに係るライセンス及び共同開発に関する契約締結

2020年代

  • 2022年4月ナンブランラトが米国食品医薬品局(FDA)より進行性胆道がんのオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)に指定
  • 2022年12月ナンブランラトの国内における第2相臨床試験を終了
  • 2023年10月中枢移行性LAT1阻害剤(開発コード:JPH034)の多発性硬化症に対する開発が、米国National Multiple Sclerosis Society (NMSS)のFast Forward商業化研究助成プログラムに採択され補助金を受領
  • 2023年10月創業米国での医薬品開発のための人材採用を目的としてJ-Pharma USAを設立(2025年7月に清算結了)
  • 2024年6月JPH034が国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」に採択
  • 2024年9月ナンブランラトのがん患者に対する臨床試験に向けたInvestigational New Drug (IND)申請が米国FDAより承認
  • 2025年5月ナンブランラトのCMC(化学・製造・品質管理)について、米国FDAより肯定的な書面回答を受領し、米国FDAが求める商業製造スケールでの品質基準を満たしていることを確認
  • 2025年6月東京都港区浜松町へ本社移転
  • 2025年12月ナンブランラトのグローバル第3相臨床試験(胆道がん2次療法を対象)を開始
  • 2026年2月JPH034の米国第1相試験開始に向け米国FDAによるIND安全性審査が完了
  • 2026年3月JPH034の第1相臨床試験を開始
  • 2026年3月上場東京証券取引所グロース市場に株式を上場
  • 2026年4月「JPH034」第1相臨床試験がClinicalTrials.gov に登録
  • 2026年4月ナンブランラトの胆道がんに対する医師主導臨床試験のjRCT登録

有価証券報告書の沿革をもとにAIが通史として編纂しています。年表は沿革の記載そのままです。

これからの方針

有価証券報告書 2026/3期の経営方針より

会社は4つの方針を掲げている。そのうち1項目には、達成する数字が明記されている。

会社が掲げている数値目標
  • ナンブランラトの年間売上10億米ドル

有価証券報告書の原文に書かれた目標だけを載せています。達成度の評価や推計は加えていません。

  1. 01

    LAT1阻害剤のグローバル開発と上市

    主力候補ナンブランラトを胆道がん治療薬としてグローバル承認獲得し、年間売上10億米ドル規模のブロックバスターを目指す。グローバル第3相臨床試験を推進中。

  2. 02

    後期段階でのグローバルライセンス

    グローバル開発を進め、臨床試験の後期段階でライセンス契約を結ぶことで契約一時金を最大化。ナンブランラト(胆道がん)は2028年3月期以降、JPH034(多発性硬化症)は2027年3月期の事業化スキーム構築を目指す。

  3. 03

    ライフサイクルマネジメントと適応拡大

    胆道がんでのPOCを起点に、免疫チェックポイント阻害剤との併用、KRAS変異大腸がん、希少疾患などへの適応拡大を推進。特許強化・延長プロジェクトも実施。

  4. 04

    SLCトランスポーター創薬のプラットフォーム化

    クライオ電子顕微鏡による構造解析技術を基盤に、新規トランスポーター阻害剤の創出とパイプライン拡充を図り、持続的な創薬・事業化の仕組みを構築する。

有価証券報告書の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」から、AIが項目ごとに整理しています。数値目標は原文に書かれたものだけです。

拠点とグループ

設備と関係会社

業績の推移

有価証券報告書 5期分

直近5期の通期業績。

決算期売上高億円営業利益億円経常利益億円営業利益率%純利益億円
2022年3月−11−11
米国での医薬品開発のための人材採用を目的としてJ-Pharma USAを設立(2025年7月に清算結了)
2023年3月−11−11
2024年3月−16−17
2025年3月−16−15−15
東京証券取引所グロース市場に株式を上場
2026年3月−37−26−25

金額は有価証券報告書の連結値をそのまま掲載しています。帯の長さは列ごとの最大値との比です。空欄の期は有価証券報告書からその項目の数値が取れていません(0ではありません)。

お金の流れ

キャッシュフロー計算書 3期分

2026年3月期は営業CFが−22億円、投資CFが0億円で、差し引きのフリーCFは−22億円この組み合わせは立て直し型にあたる。本業の赤字を資産売却と資金調達で補っている。事業転換の途上期末の手元現金は45億円

決算期営業CF億円投資CF億円財務CF億円フリーCF億円現金残高億円
2024年3月−1409−1411
2025年3月−17029−1723
2026年3月−22043−2245

本業で稼いだ現金が営業CF、設備や事業への投資が投資CF、借入と返済・配当が財務CF。営業・投資・財務の3列は縦線が0で、右がプラス、左がマイナスです。健全な会社の基本形は営業CFがプラスで投資CFがマイナス。フリーCFは営業CFと投資CFの合計で、手元に残る現金を表します。

資産と負債

貸借対照表 5期分

2026年3月期の総資産は48億円。このうち返さなくてよい自己資本が44億円で、自己資本比率は85.4%(業種中央値69.9%より厚い)

決算期総資産億円自己資本億円負債億円自己資本比率%
2022年3月1210285.3
2023年3月18144
2024年3月12102
2025年3月2924545.7
2026年3月4844485.4

自己資本比率は総資産のうち返済のいらないお金の割合で、高いほど借入への依存が小さいことを示します。負債は総資産から自己資本を引いた額です。

2026年3月期の内訳単体ベース
現金及び預金
45億円
すぐ使えるお金
利益剰余金
-25億円
過去の利益の積み上がり
負債合計
4億円
いつか返す必要があるお金

業界内での比較

医薬品 79社との比較

同じ医薬品の企業と並べると、いちばん上に来るのは自己資本比率79社中20位あたり帯は左端が業種の最下位、右端が最上位で、縦線が真ん中にあたる。

ROE株主の出したお金でどれだけ利益を生んだか
/中央値 5.9%
P25 2.0%P75 11.0%
営業利益率売上のうち本業の利益として残る割合
/中央値 2.9%
P25 -162.5%P75 11.5%
自己資本比率上位総資産のうち返済のいらないお金の割合
85.4%/中央値 69.9%
P25 53.4%P75 84.5%
売上成長率前期からの売上の伸び
/中央値 2.8%
P25 -1.3%P75 12.0%
配当利回り株価に対して1年で受け取る配当の割合
/中央値 2.9%
P25 2.3%P75 3.5%

有価証券報告書の最新期の数値をもとに、同じ業種の企業の中での順位を毎日計算しています。P25は下から4分の1、P75は上から4分の1の位置にある企業の値です。

株価

9月2日の終値

直近の終値は¥391で、1年前と比べて-44.1%過去52週の値幅のなかでは24%の位置にある。

¥391+24.1%1ヶ月+40.6%1年-44.1%時価総額70億円
過去52週の値幅
安値¥260高値¥809

チャートの金額は株式分割と配当を反映して調整した終値で、上に出している直近の終値とは一致しないことがあります。

指標
PBR1.84倍

実績値は直近の決算、予想値は会社予想にもとづきます。株価は終値ベースです。

値動きの背景

6月中旬から下落が続き、7月30日には52週安値261円を更新。7月31日に269円へ小幅反発するも、25日線(288.76円)や75日線(427.13円)を大きく下回り、下落トレンドは明確。52週高値809円からは約67%下落しており、年初来でも-61.6%と大幅安。出来高は減少傾向にあり、投げ売りが続いている可能性。RSIは36と中立圏だが、下値を試す展開が続きそう。

値動きの背景は、株価と出来高の推移をもとにAIがまとめた見立てです。

AIの評価

AI評価

株価水準の解釈です。売買の推奨ではありません

現在の株価水準を割安と判定しています(スコア 80/100)

PBRが1.10倍と同業平均の3.01倍を大きく下回り、純資産に対して割安に評価されている。直近3期連続で赤字が続き、2026/3期も純損失25億円と業績は低迷しているが、PBRが1倍前後で底値圏にある。一方、PERや配当利回りは開示されておらず、収益性の改善が見られないため、投資判断にはリスクが伴う。割安だが、業績回復の兆しが乏しい点には注意が必要。

指標この会社業種平均
PBR1.84倍3.53倍

業種平均は同じ東証33業種に属する銘柄の単純平均です。銘柄数が少ない業種では平均が振れます。

AI評価判定とスコアは公開データをもとにした解釈で、将来の株価を示すものではありません。算出の考え方は編集方針に記載しています。

評価が分かれる点

AI分析

投資家の見方

業績は開発段階にあり、売上高がほぼない一方で研究開発費などが先行する。強気派はパイプラインの進捗やライセンス契約によるマイルストーン収入に期待する。弱気派は開発リスクや資金調達リスクを懸念する。投資論点は、パイプラインの価値と開発の進捗次第で業績が大きく変動することにある。

プラスに働く材料7
  • パイプライン進捗

    臨床試験の成功や提携により、大型収入の可能性がある。

  • 提携の可能性

    大手製薬との提携で資金獲得や開発加速が期待される。

  • 医療ニーズ

    アンメットメディカルニーズに応える新薬候補を持つ可能性がある。

  • PBR1.10倍で純資産を下回っていない継続影響

    時価総額48億円に対し純資産43.5億円とほぼ同水準。

  • 外国人保有23.4%と高く国際資金の選好継続影響

    海外投資家が一定程度参加し、研究開発の進展で増加余地。

  • 赤字拡大は研究開発投資の増加2026年3月期影響

    営業損失-37億円は前期の2.3倍。これは将来の収益化のための先行投資。

  • 株価が1年で61.6%下落し売られ過ぎ不定影響

    下落率が大きいため、短期的なリバウンドが期待できる。

マイナスに働く材料7
  • 開発リスク

    臨床試験の失敗や承認取得の困難さから、業績が悪化する可能性がある。

  • 資金調達リスク

    赤字が続き、資金調達が不調なら事業継続が危ぶまれる。

  • 売上低迷

    現在は売上高がほぼなく、収益化まで時間がかかる。

  • 売上高ゼロの状態が継続継続影響

    3期連続で売上高の開示なし。事業化の見通しが立たない。

  • 純損失が25億円へ拡大2026年3月期影響

    前期-15億円から-25億円。キャッシュが毎年流出。

  • 増資等による希薄化リスク不定影響

    資金調達のため、既存株主の持ち分が希薄化する恐れ。

  • パイプラインの失敗リスク不定影響

    開発中の医薬品が承認されなければ、企業価値が大きく毀損。

次の決算で確かめる点
パイプライン数
開発段階の進捗や価値を測る指標となるため。
研究開発費
開発への投資規模が将来の収益に影響するため。
ライセンス契約数
提携実績が収入獲得の鍵となるため。

株主

有価証券報告書より

2026年3月期末の株主数は延べ9,738人。区分でいちばん多いのは個人・その他55.3%。グループ会社や銀行などの安定株主が18.6%を占め、残る81.4%が市場で売買されうる浮動株にあたる。比較できる過去の期がまだ揃っていないため、直近期の構成のみを載せています。

所有者の区分ごとの比率

所有者の区分2026年3月%
個人・その他55.3
外国法人23.2
事業法人17.0
証券会社2.6
金融機関1.6
外国人個人0.2

発行済株式に対する持ち株比率です。単元未満株の扱いにより、合計が100%にならない期があります。

大株主上位10

順位株主持ち株比率 %
01JICベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合10.34
02EIGHT ROADS VENTURES JAPAN II LP (常任代理人 Eight Roads・キャピタル・アドバイザーズ・ホンコン・リミテッド)8.99
03NEWTON BIOCAPITAL I SA. PRICAF PRIVEE DE DROIT BELGE (常任代理人 三田証券株式会社)6.81
04大原薬品工業株式会社4.87
05UntroD 野村クロスオーバーインパクトファンド投資事業有限責任組合4.60
06スペラファーマ株式会社3.48
07MSIVCグローバルアカデミックシーズ投資事業有限責任組合2.93
08F-PRIME CAPITAL PARTNERS LIFE SCIENCES FUND VI LP (常任代理人 肥沼 誠)2.70
09OUVC1号投資事業有限責任組合2.57
10株式会社SBI証券2.40

有価証券報告書の大株主の状況から、上位10者を掲載しています。信託銀行の名義は、実際の保有者ではなく運用を預かる先を指すことがあります。

株価指標の推移

有価証券報告書 5期分

1株利益は5期で+80%。期末時点の株価にもとづく指標の推移。

決算期EPS
2022年3月−974
2023年3月−953
2024年3月−264
2025年3月−184
2026年3月−195

有価証券報告書に記載された各期の値です。PERは期末時点の株価にもとづく実績値で、いまの株価から計算した値とは異なります。

EPS1株利益
1株が1年で稼いだ純利益。伸びていれば株の稼ぐ力が育っている

経営陣

8名 有価証券報告書の提出日現在

有価証券報告書に載っている役員は8名。2026/3期の役員報酬は総額359百万円。社内取締役1人あたりの報酬は、従業員の平均年収の約10倍にあたる。

氏名役職年齢保有株数
吉武益広代表取締役社長676,250
藤本裕取締役最高財務責任者45318,035
三浦泰夫取締役69
森俊介取締役(監査等委員)5920,000
田島照久取締役(監査等委員)5511,000
川口幸作取締役(監査等委員)4611,000
山本寛取締役CBO45
上原祐香取締役56

役員報酬の内訳2026/3

役員の区分人数固定報酬百万円その他百万円合計百万円1人あたり百万円
取締役(社内)359264323108
社外取締役42016369

有価証券報告書の役員報酬等の総額から、区分ごとの内訳を載せています。人数は当期中に在任した延べ人数のため、期末の人数と一致しない期があります。

有価証券報告書

有価証券報告書 2026/3期

会社自身が書いた有価証券報告書の本文を、章ごとにそのまま収録しています (要約ではありません)。

事業の内容35,222字を開く

何をしている会社か、会社自身の説明

3【事業の内容】 (1) 事業の特徴 ①概要 ・企業理念と行動規範 当社は、「SLCトランスポーター※1創薬の新たな可能性を追求し、グローバルベンチャーとして世界中の人々が抱えるアンメット・メディカル・ニーズに応える革新的新薬の開発を通じ、人々が健康を維持し、希望を持ち続けることに貢献します」を企業理念として掲げております。 当社は当該理念のもと、革新的な医薬品の創出に取組み、持続的な企業成長と社会的価値の向上を目指しております。 また、当社は、企業理念の実現のために、以下の3つを行動規範として定めております。 1.グローバルベンチャーとして挑戦する情熱 2.サイエンスの追求 3.コンプライアンスの徹底遵守 ・事業構造とグローバル開発体制 当社は、グローバル市場を対象とする創薬ベンチャーとして、革新的な医薬品の研究開発を推進しております。当社の事業は研究開発を中心とした創薬事業の単一セグメントで構成されており、米国FDAをはじめ主要規制当局の承認取得を目指して臨床開発を実施しております。 図1:ジェイファーマの事業モデル 国際開発を確実に進めるため、豊富な海外経験を持つ経営陣・研究開発人材を中核に体制を整備し、欧米のCROやコンサルタントに加え、最先端のアカデミアと連携しております。主な委託・共同研究先は、米国Georgetown大学(多発性硬化症)、Turku PET Centre(多発性硬化症)などです。 さらに、グローバルに活躍する専門家から継続的な助言を受け、開発戦略と研究活動の高度化を図り、研究開発成果の創出につなげてまいります。 当社のアドバイザーの例 アドバイザー名   タイトル   助言を受ける疾患領域   専門 古瀬純司, M.D., Ph.D.   神奈川県立がんセンター総長   胆道がん   臨床 Dr. Eric Rowinsky, M.D.   Cancer Therapeutic Development and Regulatory Consultant   胆道がん   臨床・薬事 Dr. Michael Szarek, Ph.D.   Research Professor, University of Colorado and Mount Sinai New York; Venrock   胆道がん   統計学・薬事 Dr. Jeff Huang, Ph.D.   Associate Professor, Georgetown University   多発性硬化症   基礎研究 Dr. Pavan Bhargava, M.D.   Associate Professor Johns Hopkins Hospital   多発性硬化症   臨床 Dr. Laura Airas, M.D., Ph.D.   Professor of Neuroimmunology, University of Turku   多発性硬化症   画像診断、臨床 ※Dr. Eric Rowinsky, M.D. と Dr. Michael Szarek, Ph.D. は、当社との直接のアドバイザリー契約ではなく、米国の薬事・開発コンサルティング会社を通じての間接的な契約 ※Dr. Laura Airas, M.D., Ph.D. は当社と Turku University Hospital との間の委託研究契約に署名する Principal Investigator こうした体制の具体的な成果として、リード化合物「ナンブランラト」は2022年4月に米国FDAよりオーファンドラッグ指定を取得しております。また、国内第2相臨床試験のデータを基に米国FDAと協議の上、2025年12月にグローバル第3相臨床試験の開始に至りました。国内臨床データに基づき米国FDAのレビューを経てグローバル第3相臨床試験へ進む事例は多くはなく、当社としては一定の進展であると評価しております。 さらに、2剤目JPH034についても、2026年2月に米国FDAによるIND安全性審査が完了し、米国時間2026年3月22日に米国における第1相臨床試験を開始し、最初の被験者への投与を実施しました。現在は、本試験において安全性、忍容性及び薬物動態に関するデータの取得を進めております。これらの進捗は、当社の開発推進力及び国際対応力を示す一要素であると考えております。 ・LAT1とLAT1阻害剤 溶質輸送体(Solute Carrier; SLC)トランスポーターは、生体膜を介して多様な溶質を運ぶヒト最大級の膜タンパク質群で、これまでに400種類以上が報告されております(例:Cell. 2015, 162, 478–487)。がん・自己免疫疾患※2、代謝性疾患※3、神経変性疾患※4など幅広い領域で治療標的として提案される一方、米国FDA承認薬の標的遺伝子※5に占めるSLCトランスポーターは依然5%未満※6と未開拓領域が大きく、創薬ターゲットとして検討余地が残されている領域であると当社は認識しております。 当社創業者である遠藤仁(現杏林大学名誉教授)はトランスポーター研究の第一人者として12種類の新規トランスポーターを発見し特許化しました。当社は創業者が発見したSLCトランスポーターの一つであるL型アミノ酸トランスポーター1(LAT1)※1に注力し、その活性を抑制するLAT1阻害剤を開発しております。LAT1はがん細胞や活性化免疫細胞で高発現し、腫瘍増殖や自己免疫における免疫活性化に関与することが示されております。当社化合物はがん及び自己免疫領域で新たな治療選択肢となる可能性を示しております。 LAT1は世界中の研究者から関心を集めており(図2)、当社は創業者が2019年まで保有したLAT1遺伝子特許を背景に、国際的に早期段階から臨床開発を進めております。ヒトでの有効性や安全性について良好な結果が得られており、年1回開催されるがん治療に関する世界最高峰の学会の一つである米国臨床腫瘍学会(ASCO)では複数回の口頭発表を実施しており、国内外から共同研究又は共同開発に関する問い合わせを受けております。 図2:LAT1関連論文数推移 ・ジェイファーマが考える低分子創薬の未来 当社は、LAT1阻害剤の開発において、新モダリティ※7も含めた中で、低分子化合物に特化した創薬を推進しております。低分子薬剤は経口投与可能なものが多く、細胞膜を通過して細胞内標的に作用できるという特性から、100年以上にわたり製薬の中心的な役割を担ってきました。現在も多くの疾患で中核的な選択肢の一つとして高いシェアを維持しております。 承認実績にも優位性が表れており、2017年~2022年に米国FDAが承認した新規化学物質293件のうち約62%(182件)が低分子薬※8です。さらに、AIやIn Silico技術※9の進展により創薬効率は飛躍的に向上しております。実際、AI創薬スタートアップの約45%が低分子に特化※8しており、スピードとコストで他技術を凌駕する局面が増えております。これらを踏まえ、低分子創薬は引き続き創薬手法の重要な選択肢の一つであると当社は認識しております。 この環境下で当社は、低分子の強みを最大限に活かし、LAT1阻害剤のグローバル承認を目指すことで、持続的成長と医療ニーズへの対応に資することを目指してまいります。 ・First-in-ClassとBest-in-Class First-in-Classは、新しい作用機序で未充足領域に挑み医学のフロンティアを拓く薬剤を指します。他方、Best-in-Classは、既存機序の枠内で有効性・安全性・利便性を磨き上げ、臨床性能や製剤性を最適化して最高水準の価値を実現する薬剤を指します。 当社は、未知を切り拓く開拓力(First-in-Class)と、既存技術を極める実行力(Best-in-Class)の双方を兼備することで、新しい領域において大きな事業機会を創出できると考えております。実際に、LAT1阻害剤領域で早期から臨床開発を行ってきた経験を基盤に、この開拓的立場を維持しつつ、蓄積した知見でBest-in-Class創出にも取組み、事業基盤の一段の強化を目指します。 ② LAT1阻害剤の可能性 ・LAT1と固形がん LAT1はSLCトランスポータースーパーファミリー※10に属し、がん細胞の成長・増殖に不可欠な大型中性アミノ酸の取り込みを担っております※11。 図3:LAT1の構造※12 (a) LAT1-4F2hc複合体の図(4F2hcはオレンジ、LAT1は青色) (b) LAT1トランスポーターの膜トポロジー がん化に伴い細胞膜上のLAT1発現が亢進し、アミノ酸取り込みが増大します。実際に、胆道がん、膵臓がん、脳腫瘍など多くの固形がんで過剰発現が確認され※13、リンパ節転移、細胞増殖、血管新生、短い生存期間と相関します※14。 腫瘍微小環境※15では、がん細胞のLAT1依存的な特定アミノ酸過剰取り込みによりその細胞外アミノ酸が枯渇し、T細胞※16の活性化・分化・機能維持に必要な代謝基材が不足するとされております。結果として、T細胞の増殖・生存・エフェクター機能※17の低下によりT細胞は本来の抗腫瘍機能を維持できず、免疫回避に関与する可能性が示唆されております。 このためLAT1阻害剤は、(1) がん細胞のアミノ酸獲得を制限し増殖を直接抑制する可能性に加え、(2) 免疫細胞の抗腫瘍機能の回復を促す可能性があると考えられております※18。 図4:全生存期間(OS)※19とLAT1遺伝子発現※20 実際、LAT1阻害剤は、細胞・動物レベルで有効性が示され(例:Cancer Sci., 2016, 107, 1499–1505; Cancer Sci., 2009, 101, 173–179; Scientific Reports, 2023, 13, Article number 13943)、当社の国内第1相/第2相臨床試験では胆道がん・大腸がんで有効性が示唆される結果が得られております※21。 ・LAT1と自己免疫疾患 これまでの多くの研究から、LAT1は一部の自己免疫疾患の新規治療標的となり得ることが示されております。LAT1はmTOR経路※22を介して免疫細胞の増殖や炎症を引き起こす物質(炎症性サイトカイン)の放出を制御しており、LAT1の遺伝学的抑制やLAT1阻害剤の投与により、過剰活性化した免疫細胞からのサイトカイン産生が低減することが示されております(例:J Immunol., 2013, 191, 4080-4085; EMBO Mol Med., 2025, 17, 1631–1665)。 この知見に基づき、LAT1機能の抑制は過剰免疫反応を鎮める新たな治療アプローチとなる可能性があります※23。特に、多発性硬化症のような神経に炎症が生じる自己免疫疾患では、LAT1抑制により炎症や酸化ストレス起因の神経損傷を抑える効果が期待され、神経炎症性疾患に対する一つのアプローチとなる可能性があると考えられております※24。 ・LAT1と希少疾患 LAT1は、希少疾患に対する新たな治療候補としても複数の研究で有望視されております。特定のアミノ酸関連希少疾患は、LAT1を含むSLCファミリーのアミノ酸トランスポーターの異常によって発症し、腸管・腎臓・脳・肝臓におけるアミノ酸輸送機能の障害が主な病態要因となっております※25。 米国FDAでは、Rare Disease Innovation Hubの設立、条件付き承認制度の検討、さらにはOrphan Cures Actによるインセンティブ拡充などを通じて、希少疾患治療薬の開発を後押しする施策が講じられております※26。これらの施策によって希少疾患領域での新規治療薬の研究開発は加速しており、LAT1を標的とした希少疾患を対象とする創薬も、こうした規制当局の支援を背景にアンメット・メディカル・ニーズに応える治療薬として開発を進められる可能性を有しております。 (2) 開発パイプライン ①パイプラインの概要 当社が現在臨床開発を進めている化合物は、ナンブランラト(JPH203)とJPH034の2剤です。 図5:ナンブランラトとJPH034 ナンブランラトは、LAT1を標的として見出した新規の低分子化合物であり、LAT1内部のアミノ酸ポケットに競合的に結合することでその活性を阻害します。正常細胞に発現するLAT2には作用せず、LAT1を選択的に阻害します※27。 図6:ナンブランラトのLAT1選択的な阻害活性※27 図7:クライオ電子顕微鏡(cryo-EM)構造解析※28 ナンブランラト(JPH203)がLAT1に競合的に結合する様子 また、特有の組織分布※29を示すことから、現在は胆道がん(2次療法※30及び1次療法)ならびに大腸がんを対象とした開発を進めております。さらに、将来的な適応拡大を見据え、希少疾患を対象とする非臨床研究にも着手しております。 図8:サルにおけるナンブランラトの薬物濃度※31 血液中に比べ胆汁中に非常に高い濃度で分布する (Cmax※32、AUC※33) 一方、JPH034は高い脳内移行性を有する点が特長であり、中枢神経系の自己免疫疾患である再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症やグリオーマを対象疾患とした開発を推進しております。 加えて、当社はBest-in-Classを目指す次世代LAT1阻害剤の創薬研究にも取組んでおり、すでに候補化合物を特定しております。これにより、ナンブランラト及びJPH034に続く新たな成長ドライバーを確立し、持続的な事業拡大を目指して取組んでまいります。 図9:当社の開発パイプライン ②臨床開発が進む主要開発パイプライン(胆道がん、再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症) ②-a. 胆道がん(ナンブランラト) ・胆道がんの市場規模と5年生存率 胆道がんは、日本及び欧州5か国(イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン)でそれぞれ年間約2万人、米国で年間約1.4万人が新たに診断される疾患であります※34。早期には自覚症状が乏しいため、多くの患者は進行期に至ってから診断されるのが現状です。 進行期の胆道がんは治療選択肢が限られており、5年生存率は25%未満と、膵臓がんに次いで生存率が低いがん種です※35。こうした背景から、胆道がんはアンメット・メディカル・ニーズが非常に高い疾患であり、新たな治療法の開発が求められています。 ・胆道がんとLAT1 胆道がんにおいて、LAT1の発現量を基準に患者群を比較したところ、LAT1高発現群では生存期間が有意に短いことが確認されました※36。 図10:胆道がんにおける全生存期間(OS)比較(LAT1高発現 vs. LAT1低発現)※36 この結果は、LAT1の高発現が胆道がん患者における予後を推測する指標となり得ることを示すとともに、LAT1が新たな分子標的治療の候補として検討されている背景の一つとなっています※37。 ・胆道がんの現在の治療環境 胆道がんは、日本では肝内胆管がん、肝外胆管がん、胆嚢がん、十二指腸乳頭部がんの4つに分類されますが、欧米では十二指腸乳頭部がんを除く3つが胆道がんとして扱われております。1次療法では化学療法に加え、抗PD-1抗体薬や抗PD-L1抗体薬※38が全サブタイプにおいて用いられており、現在の標準療法は化学療法と抗PD-1/PD-L1抗体薬の併用療法です。しかしながら、この治療を受けた患者のうち24か月後に生存しているのは25%以下※39にとどまっており、依然として大きなアンメット・メディカル・ニーズが存在しております※40。特に、治療開始から25週以降は抗PD-L1抗体単剤、あるいは抗PD-1抗体+ゲムシタビンによる維持療法へ移行しますが、その間の病勢進行が課題となっております。 2次療法では分子標的薬※41が用いられ、米国では3種類の承認薬があります。しかし、これらの薬剤が有効な遺伝子変異(IDH1変異、FGFR2陽性、HER2陽性)を持つのは2次療法に進む患者の約30%に限られ(図11)※42、残り約70%の患者には有効な承認薬が存在しないのが現状です(欧州・米国での状況であり、日本では2次療法で使用可能な承認薬が存在します)。 図11:胆道がんの治療選択肢 (当社作成。なお、ナンブランラトに関する記載は、承認取得又は販売開始を前提とするものではありません。) ナンブランラトは、抗PD-1/PD-L1抗体との併用効果が動物モデルにおいて確認されており※43、1次療法において25週目以降の維持療法にアドオンすることで、標準療法と競合しない形で治療選択肢の拡充に資する可能性があります。 さらに2次療法においては、これまでの臨床試験の結果から、既存の承認薬が存在しない約70%の患者に対し、有効な治療選択肢の一つとなる可能性が示唆されております。安全性にも優れていることから、患者に最後まで寄り添える治療薬となる可能性を秘めております。 ・ナンブランラトの臨床試験結果 当社は、ナンブランラトの国内第2相臨床試験を実施しました。本試験は、胆道がん2次療法以降の患者211名をスクリーニングし、105名を無作為に割り付けた大規模な二重盲検無作為化プラセボ比較試験であり、2022年に終了しました(ナンブランラト群70名(うち1名は不適格な疾患が発見されたため解析から除外され、解析対象となったのは69名)、プラセボ群35名※44が解析対象)。当試験の結果、ナンブランラトの投与により、統計学的有意差をもって腫瘍が大きくなるまでの期間を延長し、また特定の患者群において生存期間についても良好な改善効果があることが確認されました。 図12:国内第2相臨床試験のデザイン 2023年1月に開催されたASCO GI 2023(米国臨床腫瘍学会・消化器がんシンポジウム)において、ナンブランラトが前治療歴のある進行性・難治性胆道がん患者に対し、無増悪生存期間(PFS)※45でプラセボ群に対して統計学的有意差を示し、主要評価項目を達成した結果が口頭発表されました(ハザード比※46=0.56、95%信頼区間:0.34–0.90、p=0.02)※47。薬物有害反応(副作用)の発生率はナンブランラト群41.4%、プラセボ群57.1%であり、グレード3以上の有害事象はナンブランラト群30.0%、プラセボ群22.9%でした。いずれの群においても投与中止・減量や死亡に至る事象は認められず、安全性が確認されました。特にグレード3以上の有害事象率は、胆道がん2次療法で使用されることのあるFOLFOX(69%)※48や1次療法の標準治療であるデュルバルマブ+シスプラチン/ゲムシタビン(76%)※49と比べても低く、ナンブランラトの良好な安全性プロファイルが示されました。この特性により、長期的治療が可能であり、現在は緩和ケアを選択している患者層への市場拡大の可能性も期待されます。 図13:胆道がん治療薬別有害事象比較※50 さらに、2023年6月のASCO Annual Meeting(米国臨床腫瘍学会年次総会)のClinical Science Symposiumでは、同試験のサブグループ解析が口頭発表されました。発表では、LAT1高発現群(ハザード比=0.44、95%信頼区間:0.23-0.85、p=0.01)、及び肝外胆管がん・胆嚢がん群(ハザード比=0.22、95%信頼区間: 0.10-0.49、p<0.001)において、統計的にさらに有意差を示したことが説明されました※51。 ASCOはがん治療において世界最高峰の学会の一つとされており、当学会における口頭発表は採択率が数%に限られることから、2023年に2回に渡りナンブランラトの臨床試験結果の口頭発表の機会が得られたことは、当社のデータが国際的に高く評価されていることを示しております。加えて、この試験結果は米国癌学会発行の学術誌「Clinical Cancer Research」(2024年9月15日号)に掲載されました。 直近では、ESMO Congress 2025において、全生存期間(OS)のサブグループ解析結果がポスター発表されました※52。本発表のサブグループ解析では、胆道がんのサブタイプのうち十二指腸乳頭部がん(欧米においては胆道がんに含まれない)を除く3つのサブタイプを対象とした解析においてハザード比=0.76(95%信頼区間:0.46–1.26)を示しました。加えて、2次療法患者群のみ(3次療法以降の患者群を除外)に限定した解析ではハザード比=0.55(95%信頼区間:0.09–3.54)、手術未実施患者群ではハザード比=0.53(95%信頼区間:0.28–1.01)と、良好なOS改善効果が確認されました。本解析により、第3相臨床試験における患者選択基準の最適化に資する重要な知見が得られております。 図14:ナンブランラト第2相臨床試験 OSハザード比のサブグループ解析※52 *IHC: 肝内胆管がん、EHC: 肝外胆管がん、GBC: 胆嚢がん # 95%信頼区間: 真の値がその区間内に含まれる確率が95%であると推定される範囲 さらに、同ポスター発表では、同試験のデータを用いた曝露-反応解析も紹介されました※52。これは、薬剤の体内曝露量と有効性の関係を評価する解析であり、その結果、累積曝露量(Accumulated AUC)とOSの間に正の相関が認められました。また、累積曝露量(Accumulated AUC)が大きい程、腫瘍縮小の傾向が見られました。 図15:ナンブランラトの曝露-反応解析※52 ・進行中の臨床試験: 米国FDAレビューの下でグローバル第3相臨床試験 当社は現在、米国FDAのレビュー下でグローバル第3相臨床試験を進めております。本試験には、胆道がん患者にとって「灯」となることを願い、「Beacon-BTC」と命名しております。 図16:グローバル第3相臨床試験(Beacon-BTC)の患者向けイメージ 本試験は、第2相臨床試験で得られた成果を踏まえ、主要評価項目を全生存期間(OS)とし、より高い効果を期待すべく対象患者の厳格なエンリッチメント※53を行います。具体的には、対象とする胆道がんサブタイプを欧米における胆道がんの定義に合わせる(十二指腸乳頭部がんを除外)とともに治療ラインを2次療法に限定し、3次療法以降の患者は対象外としております。また、Treatment Beyond Progression(TBP)を適用し、病勢進行後も治療を継続できる設計とすることで、より長期間の投与を可能としております。さらに米国では外科手術が適用される患者が少なく※54、対象患者の多くが、第2相臨床試験で効果が高かった手術未実施例となることが想定されます。第2相臨床試験の解析結果に基づくこれらの戦略により、試験の成功確率を高められると考えております。 Beacon-BTC試験は2つのパートで構成されます。 ・パート Aでは、用法・用量設定を目的に、用法用量の異なる3種類のナンブランラト投与群と 最善支持療法群(Physician’s Best Choice(PBC)群※55)の4群(各30例)を比較。 ・パート Bでは、パート Aで選択された用法用量のナンブランラト群と最善支持療法群の2群(各180例)を比較。 図17:グローバル第3相臨床試験(Beacon-BTC)のデザイン 当臨床試験開始に向けて当社は、米国FDAとの緊密な対話を重ねてまいりました。2022年4月にはオーファンドラッグ指定を取得し、2024年9月にはIND申請が承認されました。さらに2025年5月13日付で、CMC(化学・製造・品質管理)に関して、商業製造スケールにおける品質基準への適合についてFDAより肯定的な書面回答を受領しました。 これらの進展を経て、当社は、胆道がん治療における新たな選択肢の確立を目指して、2025年12月にBeacon-BTC試験を開始しており、2026年6月現在、計画通り順調に進捗しております。なお、試験の具体的条件及び実施体制等は、規制当局との協議や治験実施上の要請等により変更となる可能性があります。 ・進行中の臨床試験:ナンブランラトと免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の併用療法 切除不能・再発胆道がんの1次治療では、ゲムシタビン+シスプラチンに免疫チェックポイント阻害剤(ICI:デュルバルマブまたはペムブロリズマブ)を併用する治療法が標準治療とされております。この治療では、24週間経過後にICI単独(ペムブロリズマブの場合はICI+ゲムシタビン)による維持療法へ移行しますが、維持療法中の病勢進行が課題となっております。 当社はこの課題に対し、ICI維持療法にナンブランラトを追加する新たな治療アプローチの開発を推進しております。本アプローチは、腫瘍微小環境における免疫抑制を解除し、ICIの効果を増強することを目的としております。前臨床モデルにおいては、ナンブランラト単剤で腫瘍免疫環境を改善する作用が確認され、さらにICIとの併用によってICI単独では得られない抗腫瘍効果が示されております※56。 胆道がんは依然として治療選択肢が限られている領域であり、ナンブランラトを1次療法に適応拡大することにより、より多くの胆道がん患者への治療貢献が可能となります。この併用療法は、プラチナ製剤※57ベースの化学療法に伴う強い副作用がないため長期投与が可能であると考えられ、既存の標準療法とも競合しないことから、本併用療法は、将来的な適応拡大の選択肢の一つとなり得る可能性があると当社は考えております。将来的には、胆道がんにとどまらず、他のICI抵抗性がん種への適応拡大も視野に入れております。 国内では、胆道がんの1次療法におけるナンブランラトと免疫チェックポイント阻害剤(ICI)との併用療法を検討する医師主導臨床試験(JON-2404-B)が開始され、2026年4月にJapan Registry of Clinical Trials(jRCT)へ試験情報が登録・公開されました。本試験では、デュルバルマブ+シスプラチン/ゲムシタビンの併用療法を受け、デュルバルマブ単剤維持療法へ移行する患者を対象に、デュルバルマブ+ナンブランラト併用療法へ切り替えることで、その有効性と安全性を検証します。本試験は、公益財団法人がん研究会有明病院を代表施設として実施されるものであり、当社は同院との契約に基づき、資金提供者として本試験の円滑な遂行を支援してまいります。 図18:ICI維持療法におけるデュルバルマブとナンブランラトの併用 ②-b. 再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症(JPH034) ・多発性硬化症とは 多発性硬化症は、若年成人に最も多く見られる慢性の炎症性脱髄性神経疾患であり、厚生労働省の指定難病に含まれております。診断時の平均年齢は32歳と比較的若く※58、全世界で毎年6万人以上が新たに診断され※59、現在は約290万人の患者が存在しております※60。 本疾患では、免疫反応による炎症により神経細胞の軸索※61を覆うミエリン※62が損傷(脱髄)※63し、その結果、神経信号の伝達が遅延または途絶します。そのため、感覚障害、視覚障害、運動麻痺など多様な神経症状が現れ、患者は四肢の不自由を抱え、車椅子での生活を余儀なくされることも少なくありません。 患者の約85%は再発寛解型※58で発症し、再発期と寛解期を繰り返しながら進行し、10~15年かけて2次性進行型へ移行します※64。MRI所見(MRIで測定される炎症性病変)は疾患の初期から見られ、MRI所見が生じる際は血液脳関門※65の機能破綻により末梢の免疫細胞(T細胞・B細胞※66)が脳内へ侵入し、脱髄と不可逆的な組織損傷を引き起こします※67※64。 一方で、2次性進行型に移行すると、MRI所見の頻度は減少し、MRI所見がない間は末梢免疫細胞の浸潤は見られなくなるものの、脳内では「くすぶり炎症(smoldering inflammation)」が持続し、病状が進行します※68。この段階では、末梢のT細胞やB細胞を標的とする既存薬の効果は乏しく※69、再発を伴わない2次性進行型に対する治療選択肢は依然として限られているのが現状です。 図19:多発性硬化症の臨床経過 ・くすぶり炎症とミクログリアとLAT1 2次性進行型で中心的な病態とされる「くすぶり炎症(smoldering inflammation)」は、脳内に常在する免疫細胞であるミクログリア※70が引き起こすと考えられております※68。そのため、この病態に対処するには、従来のように末梢免疫細胞を標的とするのではなく、薬剤が脳内に移行してミクログリアの活性を直接抑制する治療アプローチが求められていると当社は認識しております。 近年、このアプローチに基づき開発された代表例が、中枢移行性の高いBTK阻害剤※71トレブルチニブです。開発元であるサノフィ社は、再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症を対象とする第3相臨床試験を終了しNDA(新薬承認申請)を米国FDAに提出したものの、Complete Response Letter(CRL)を受領した旨を公表しており、現在引き続きFDAと協議し前進の道筋を検討する方針を示しています※72。 一方で、ミクログリアの活性化にはLAT1が必須アミノ酸輸送を介して関与することが知られております※73。この知見を踏まえると、中枢移行性を有するLAT1阻害剤によりミクログリアを標的とし、その活性を抑制することで、2次性進行型多発性硬化症に対する新たな治療法となる可能性が示唆されます。 図20:既存薬 vs. 脳移行型新薬候補の比較 (当社作成。なお、脳移行型新薬候補に関する記載は前臨床段階を含む研究開発中の情報であり、 将来の臨床成績又は承認取得を示唆するものではありません。) ・中枢移行性LAT1阻害剤:JPH034 当社が開発中のJPH034は、高い脳内移行性を有するLAT1阻害剤です。本剤は脳内へ移行し、ミクログリアを標的とすることで、既存薬が限定的である「再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症」に対する新たな治療アプローチとなり得る可能性を持っております※24※74。 研究開発パートナーである米国Georgetown大学が実施したマウスモデル試験では、JPH034が脳内病変部のミクログリアを再プログラムし、再生促進型の状態へ導くことにより、中枢神経系の局所炎症を抑制することが確認されました※75。この作用機序により、既存治療薬とは異なるアプローチの治療戦略を検討しております。 さらに、JPH034は良好な経口バイオアベイラビリティ※76とPKプロファイル※77を有しており、長期治療を必要とする多発性硬化症患者にとって、1日1回の経口投与が可能となる潜在的な利便性を有すると当社は考えております。 ・開発状況と進行中の臨床試験 当社が開発を進めるJPH034(再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症を対象)は、競争が極めて厳しく評価水準も高いことで知られる米国 National Multiple Sclerosis Society(NMSS)のFast Forward Research Grantに選出され、60万米ドルの補助金交付を受けております。さらに、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の創薬ベンチャーエコシステムにも採択され、IPOに至るまで継続的な支援を受けておりました。 知財面では、当社は米国Georgetown大学が保有するLAT1阻害剤の中枢性炎症性疾患(多発性硬化症を含む)に関する用途特許の独占的通常実施権をグローバルに取得し、開発・商業化における権利保護の強化を目指しております。 研究開発面では、米国Georgetown大学によるマウスモデル試験により、LAT1阻害剤による臨床スコアの改善、免疫調整・神経保護作用、視覚誘発電位(VEP)遅延の改善などを確認しました※24。また、Turku PET Centreとの委託臨床研究を進めており、中枢神経系の炎症要因の一つであるミクログリアの活性化とLAT1の発現が脱髄病巣レベルで共存することを確認しました※24。 また、AMED補助金を活用して第1相試験用治験薬の製造完了後、2026年2月に米国FDAによるIND安全性審査が完了し、当社が申請した臨床試験計画の実施を可能とする旨の連絡を受領いたしました。米国時間2026年3月22日に米国における第1相臨床試験を開始し、最初の被験者への投与を実施しました。現在は、安全性、忍容性及び薬物動態に関するデータの取得を進めております。 ・市場規模 2次性進行型多発性硬化症の市場規模は、2024年で約56億米ドル、2033年には約98億米ドルに達すると推計されております※78。その成長要因としては、再発寛解型からの移行による患者数の増加、診断技術の進歩による診断率向上、さらに効果の高い新薬の上市が挙げられます※78。 このように大きな市場規模を背景に、多発性硬化症領域ではグローバル大手製薬企業が積極的にライセンス契約を締結してきた実績があります。例えば、2023年4月にContineum Therapeutics社がJanssen Pharmaceutica社に導出したPIPE-307は、第1相臨床試験を完了し第2相試験開始を控えた段階の化合物でありながら、契約一時金5,000万米ドル、マイルストン収入最大10億米ドル、ロイヤルティ最大10%台後半という大規模な契約条件となっております※79。先に述べたトレブルチニブと同様にPIPE-307も高い中枢移行性を有しており、これらの事例は、当社が開発を進める中枢移行型LAT1阻害剤JPH034についても、適切な開発進展を経ることで将来的なライセンス交渉の参考となると考えられます。 図21:多発性硬化症(MS)治療薬のライセンス契約の事例※80 ③その他の開発パイプライン ・その他の臨床開発 当社は現在、ナンブランラトの胆道がん2次療法(単剤療法)及び1次療法(ICIとの併用療法)、JPH034の再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症を重点的に開発しております。これに加えて、KRAS変異大腸がん※81(ナンブランラト)及びグリオーマ(JPH034)についても開発を進めてまいります。 ナンブランラトは、非臨床及び臨床データに基づき、大腸がんに対する適応拡大の可能性が示されております。特に、転移性大腸がんの約40%を占める※82KRAS変異型では既存薬の効果が限定的である※83一方、LAT1の高発現が患者予後不良と強く関連する臨床データが報告されております※84。また、ナンブランラトがKRAS変異大腸がん細胞株において有意な増殖抑制効果を示す非臨床試験結果も公表されております※85。さらに、複数の固形がんを対象とした第1相臨床試験では、大腸がん患者6例中2例で「安定(SD)」が確認されており※86、今後の臨床開発に向け、一定の示唆が得られております。このように当社としてもKRAS変異大腸がんに対するナンブランラトの開発可能性を見出しており、KRAS変異大腸がんを対象とした医師主導臨床試験についても、開始に向けた準備を支援しております。 一方、グリオーマについては、グリオーマにおけるLAT1関与の複数の報告※87及びJPH034の高い脳内移行性等を踏まえ、臨床試験の実施に向けた検討を進めております。 大腸がんとグリオーマの市場規模※88 大腸がん全体   199.5億米ドル(2034年予測) グリオーマ全体   75.1億米ドル(2031年予測) 当社は、胆道がん2次・1次療法及び再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症を最優先とし、それ以外の臨床開発については資金状況やコストを踏まえ、適切なリスク管理のもとで段階的に推進してまいります。 ・希少疾患を対象とする非臨床試験 一部のアミノ酸代謝性希少疾患は、LAT1を含むSLCファミリーのアミノ酸トランスポーター異常によって発症し、腸管・腎臓・肝臓におけるアミノ酸輸送機能の障害が主な病態要因とされております※25。 当社は、ナンブランラトが肝臓・胆管・大腸などに高濃度で分布する特有の組織分布に着目し、ある希少疾患の動物モデルにおいて有効性を示唆する結果を得ました※89。この成果を踏まえ、当該適応症に関する用途特許を申請中であり、ナンブランラトの適応拡大に向けた新たな可能性を追求しております。 ・Best-in-Class の次世代LAT1阻害剤の創薬研究 当社は、高度な専門知識と経験を備えた人材を採用することで、創薬研究チームを強化し、Best-in-Classを目指す次世代LAT1阻害剤の研究開発を本格的に進めております。 既に、ナンブランラトと同等程度又はそれ以上の特性を有する可能性のある候補化合物を特定しており、現在はその構造最適化を進めるとともに、非臨床評価を進めております。当社はこの取組みを通じて、次世代化合物の創出を推進しております。 (3) 事業系統図 <製薬企業等から受領する対価の体系> 契約一時金   ライセンス契約の締結時に、契約に基づき当社が収入として得るもの。 マイルストン収入   開発又は販売に関して予め定義するマイルストンを達成した際に、契約で定められた金額を当社が収入として得るもの。 ロイヤルティ収入   当社がライセンスした製品について、当該製品が承認を受け販売が開始された後、その売上高に対して契約で定める一定の割合を乗じて算出される金額を収入として得るもの。 ※なお、製薬企業等との提携形態については、ライセンス契約に限らず、共同開発、出資その他開発を進めるための契約体系となる可能性があります。 (注記) 番号   解説または引用 ※1   SLCトランスポーター:細胞のまわりは「細胞膜」という薄い膜で覆われており、物質が自由に出入りすることができません。しかし細胞はブドウ糖やアミノ酸、イオンなど、体にとって重要な物質を細胞内に取り込む必要があります。そこで必要な物質の細胞内への取り込みの機能を果たしているのがSLC (Solute Carrier) トランスポーターです。SLCトランスポーターは細胞膜のドアの役割を果たし、特定の物質だけを細胞の中に入れたり、外に出したりします。 「Solute:溶質」とは、水に溶けている物質のことです。たとえば、ブドウ糖、アミノ酸、イオンなどが溶質にあたります。SLCトランスポーターは、こうした溶質を適切に運びます。 SLCトランスポーターは、ヒトの体では約400種類あることが知られています。これらは種類ごとに適切な細胞に発現し、特定の溶質を輸送することで、細胞の適切な機能に貢献しています。 LAT1:LAT1は、当社創業者である遠藤仁(現杏林大学名誉教授)が発見したSLCトランスポーターで、アミノ酸を細胞内に取り込みます。健康な体では、特定の場所の細胞にしか発現していません。しかし、通常の細胞ががん化し、大量のアミノ酸を必要とすると、このLAT1が細胞表面に過剰に現れ、アミノ酸をがん細胞内に取り込むことで、がん細胞の増殖に寄与します。LAT1の発現量はがん患者の予後にも影響があることが分かっており、がんに対する新しい治療標的として注目されています。 ※2   自己免疫疾患:細菌やウイルス、腫瘍などの自己と異なる異物を排除するための役割を持つ免疫系が、本来の働きをせずに自分自身の正常な細胞や組織に対してまで過剰に反応し攻撃を加えてしまうことで異常を来す疾患の総称です。関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群などに代表される膠原病、多発性筋炎、多発性硬化症等の全身性自己免疫疾患と、自己免疫性溶血性貧血、潰瘍性大腸炎、バセドウ病、橋本病等の臓器特異的自己免疫性疾患の2種類があります。 ※3   代謝性疾患:生活習慣病として知られる糖尿病、脂質異常症、脂肪肝、高尿酸血症(痛風)などが代表的な疾患です。 ※4   神経変性疾患:何らかの原因により脳や脊髄の神経細胞が徐々に失われ、物忘れが多くなったり(認知症)、手足がうまく動かせなくなったり(運動障害)する病気です。アルツハイマー病やパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ポリグルタミン病などがあります。 ※5   標的遺伝子:特定の疾患の発症に関わる遺伝子やタンパク質を特定し、それらを治療薬の作用標的(ターゲット)として位置づけたものを指します。 ※6   2017年時点、米国FDA承認薬の標的遺伝子667個の内訳データに基づきます。13のSLCトランスポーターが米国FDA承認薬の標的になっております。 ※7   モダリティ:創薬研究におけるモダリティ(modality)とは、治療に用いる薬の種類や作用様式を分類する概念を指します。代表的なものとして、化学合成された低分子医薬品、標的に高い特異性で結合する抗体医薬品、mRNAやsiRNAなどによる核酸医薬、タンパク質と低分子の中間的特徴を持つペプチド医薬、さらにCAR-T細胞や遺伝子編集を活用した細胞・遺伝子治療などが挙げられます。 ※8   L. Howes, Chemical & Engineering News. 2023, Volume 101, Issue 36. "Why small-molecule drug discovery is having a moment". (https://cen.acs.org/pharmaceuticals/drug-discovery/small-molecule-drug-discovery-having/101/i36 最終アクセス日 2025年10月28日) ※9   In Silico技術:コンピュータを用いたシミュレーションや解析によって、薬剤候補の探索や最適化を行う技術の総称です。分子ドッキングや構造ベース創薬、機械学習による予測モデルなどを用いて、実験前に標的分子との相互作用や薬効・副作用の可能性を評価できる点が特徴です。 ※10   SLCトランスポータースーパーファミリー:ヒトには約400種類のSLCトランスポーターが存在し、これらはまとめてSLCトランスポータースーパーファミリーに分類されます。LAT1は、その中の一つであるLATファミリーに含まれますが、LATファミリー以外にも、輸送する溶質や構造、機能の異なる多様なSLCトランスポーターのファミリーが存在します。このような高い多様性をもつことから、SLCは単なるファミリーではなく、より大きな括りとして「スーパーファミリー」と呼ばれます。 ※11   Y. Zhao et al., "The role of L-type amino acid transporter 1 in human tumors" Intractable Rare Dis Res., 2015, 4, 165–169. ※12   C. Lopes et al., “ASCT2 and LAT1 Contribution to the Hallmarks of Cancer: From a Molecular Perspective to Clinical Translation” Cancers (Basel), 2021, 13, 203. Licensed under CC BY 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/). ※13   S.Yothaisong et al., "Increase in L-type amino acid transporter 1 expression during cholangiocarcinogenesis caused by liver fluke infection and its prognostic significance" Parasitol Int., 2017, 66, 471-478.; K. Kaira et al., “Prognostic significance of L-type amino-acid transporter 1 expression in surgically resected pancreatic cancer” Br J Cancer., 2012, 107, 632-638.; N. Yanagisawa et al., “High expression of L-type amino acid transporter 1 (LAT1) predicts poor prognosis in pancreatic ductal adenocarcinomas” J Clin Pathol., 2012, 65, 1019-1023.; Z. Haining et al., “Relation of LAT1/4F2hc expression with pathological grade, proliferation and angiogenesis in human gliomas” BMC Clin Pathol., 2012, 12, Article number 4.; H. Nawashiro et al., "L-type amino acid transporter 1 as a potential molecular target in human astrocytic tumors" Int J Cancer., 2006, 119, 484-492. ※14   J. Zhang et al., "Review of the Correlation of LAT1 With Diseases: Mechanism and Treatment" Front Chem., 2020, 8, 564809. ※15   腫瘍微小環境:腫瘍微小環境(tumor microenvironment, TME)とは、腫瘍細胞の周囲に存在する血管、免疫細胞、線維芽細胞、細胞外基質、サイトカインなどを含む環境のことを指します。これらは腫瘍の増殖や転移、さらには薬剤感受性に大きな影響を与えるため、がん研究や治療標的として重要視されております。 ※16   T細胞:T細胞は免疫細胞の一つでありリンパ球の60~80%を占め、自らが働き、体を防御するとともに、一度侵入してきた病原体を記憶し、それに基づいてすばやく対応し、排除する働きをもっております。 ※17   エフェクター機能:エフェクター機能(effector function)とは、T細胞などの免疫細胞が、がん細胞やウイルス感染細胞に対して実際に攻撃・排除を行う機能を指します。エフェクター機能は免疫系による抗腫瘍活性の中核を担う重要な機能であり、その低下は免疫回避の主要因となります。 ※18   M. Nachef et al., "Targeting SLC1A5 and SLC3A2/ SLC7A5 as a Potential Strategy to Strengthen Anti-Tumor Immunity in the Tumor Microenvironment" Front. Immunol., 2021, 624324.; Y. Zhao et al., "Targeting LAT1 with JPH203 to reduce TNBC proliferation and reshape suppressive immune microenvironment by blocking essential amino acid uptake" Amino Acids. 2025, 57, 27. ※19   全生存期間(OS):治療開始から死亡(あらゆる原因による死亡を含む)までの期間を指します。英語ではOverall Survivalといいます。治療の効果を直接的に反映する指標であり、がん領域などで最も重要な評価項目のひとつとされております。 ※20   R. Otani et al., “The Anti-Tumor Effect of the Newly Developed LAT1 Inhibitor JPH203 in Colorectal Carcinoma, According to a Comprehensive Analysis” Cancers 2023, 15, 1383. Licensed under CC BY 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/). ※21   N. Okano et al., "First-in-human phase I study of JPH203, an L-type amino acid transporter 1 inhibitor, in patients with advanced solid tumors" Invest New Drugs., 2020, 38, 1495-1506.; J. Furuse et al.,  "A Phase II Placebo-Controlled Study of the Effect and Safety of Nanvuranlat in Patients with Advanced Biliary Tract Cancers Previously Treated by Systemic Chemotherapy” Clin Cancer Res., 2024, 30, 3990–3995. ※22   mTOR経路:細胞の成長や代謝、増殖、そして生存を制御する中心的なシグナル伝達経路のことを表します。栄養(アミノ酸やグルコース)、エネルギー状態、成長因子などの刺激を感知し、タンパク質合成や自食作用(オートファジー)の調節を通じて、細胞機能を最適化します。この経路の異常は、がん、糖尿病、神経疾患など多くの病態と関連しており、mTOR阻害薬(例:ラパマイシンやその誘導体)は臨床的にも重要な治療薬となっております。 ※23   B.R. Yoon et al., "Role of SLC7A5 in Metabolic Reprogramming of Human Monocyte/Macrophage Immune Responses" Front. Immunol., 2018, 09, 00053.; D. Cibrian et al., “Targeting L-type amino acid transporter 1 in innate and adaptive T cells efficiently controls skin inflammation” J Allergy Clin Immunol., 2020, 145, 199-214.e11. ※24   当社と Georgetown大学, Turku大学との共同・委託研究結果に基づく社内レポート ※25   R. Yahyaoui and J. Pérez-Frías. "Amino Acid Transport Defects in Human Inherited Metabolic Disorders" Int J Mol Sci., 2019, 21, 119.; M. Palacín et al., "Amino Acid Transport Defects" Physician’s Guide to the Diagnosis, Treatment, and Follow-Up of Inherited Metabolic Diseases. 2022, 291-312.; A.M. Sokolov et al., "The amino acid transporter Slc7a5 regulates the mTOR pathway and is required for granule cell development" Hum Mol Genet., 2020, 29, 3003–3013. ※26   U.S. Food and Drug Administration (FDA) (https://www.fda.gov/about-fda/center-drug-evaluation-and-research-cder/accelerating-rare-disease-cures-arc-program 最終アクセス日 2025年10月28日) ※27   M.F. Wempe et al., "Developing selective L-Amino Acid Transport 1 (LAT1) inhibitors: A Structure-Activity Relationship overview" Medical Research Archives, 2019, 7, issue 12. ※28   Adapted from Y. Lee, et al., “Structural basis of anticancer drug recognition and amino acid transport by LAT1.” Nature Communications, 2025, 16:1635. Licensed under CC BY 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/). ※29   組織分布:組織分布とは、投与された薬剤が体内のどの臓器・腫瘍にどの程度集積するかを示す指標であり、薬剤の“治療標的への到達精度”を評価する重要な概念です。 治療効果の発現や副作用リスクを左右する要素であるため、腫瘍など“狙った組織へ選択的に分布できているか”は創薬の競争力を判断する上で重要な評価ポイントとなります。 ※30   2次療法:治療が効かなくなった場合や、治療を続けるのが困難な副作用が現れた場合は、別の治療に切り替えて薬物療法を続けていきます。 このとき、最初に行う治療を1次療法、その後に順次行う治療を2次療法、3次療法と呼びます。 ※31   社内非公開レポート ※32   Cmax:薬を投与した後に血中に到達する濃度の中で最も高い「最高血中濃度」を指します。これは薬の有効性や安全性と関連があり、同じ薬でも製剤が異なればCmaxが異なる場合があり、製剤の比較や生物学的同等性(BE)の評価に用いられる薬物動態の重要な指標です。 ※33   AUC:Area Under the Curve(血中濃度時間曲線下面積)の略で、血漿中の薬物濃度が時間とともに変化するグラフにおいて、時間軸と薬物濃度曲線で囲まれた面積のことです。この面積が大きいほど、体内に取り込まれた薬物の総量が多いことを示し、薬剤の生体利用率(バイオアベイラビリティ)を比較する際の重要な指標となります。 ※34   米国:Bureau, United States Census. 2023. QuickFacts United States. [Online] July 1, 2023、Epidemiologic patterns of biliary tract cancer in the United States: 2001–2015. Jill Koshiol+4. 2022. 2022, National Library of Medicineを元に当社試算。 EU4*+UK:What is bile duct cancer?, Cancer Research UK、Gallbladder cancer statistics, Cancer Research UK、NCIN Data Briefing, Incidence and survival of ampulla of Vater and duodenal cancers, National Cancer Intelligence Network、The World Bank, DataBank, Population estimates and projections 、Liver cancer, Label_Logo Zentrum für Krebsregisterdaten、Cancer in gallbladder and biliary tract, Label_Logo Zentrum für Krebsregisterdaten、D. Walter et al., "The Diagnosis and Treatment of Ampullary Carcinoma" Dtsch Arztebl Int., 2023, 120, 729-735.、Population factsheets, Cancer Today, International Agency for Research on Cancer、The World Bank, DataBank, Population estimates and projections を元に当社試算。(*EU4: フランス・ドイツ・イタリア・スペイン) 日本:Cancer Statistics 2016-2019. Cancer Information Service, National Cancer Center, Japan、S. Ishihara et al., “Biliary tract cancer registry in Japan from 2008 to 2013” J Hepatobiliary Pancreat Sci., 2016, 23, 149-157を元に当社試算 ※35   公益財団法人がん研究振興財団 がんの統計2023 (https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/statistics/2023_jp.html 最終アクセス日 2025年10月28日) ※36   K. Kaira, et al. "Clinical significance of L-type amino acid transporter 1 expression as a prognostic marker and potential of new targeting therapy in biliary tract cancer" BMC Cancer, 2013, 13, 482. Licensed under CC BY 2.0 (https://creativecommons.org/licenses/by/2.0/). ※37   N. Yanagisawa et al., “High expression of L-type amino acid transporter 1 as a prognostic marker in bile duct adenocarcinomas” Cancer Med., 2014, 3, 1246-1255.; S.Yothaisong et al., "Increase in L-type amino acid transporter 1 expression during cholangiocarcinogenesis caused by liver fluke infection and its prognostic significance" Parasitol Int., 2017, 66, 471-478. ※38   抗PD-1抗体薬:PD-1(Programmed cell Death 1)は、T細胞などの免疫細胞の表面に発現する免疫チェックポイント分子であり、がん細胞や樹状細胞などに発現するPD-L1と結合することで、免疫細胞の働きを抑制します。抗PD-1抗体によりPD-1がPD-L1と結合しなくなることで、免疫細胞の抑制が解除され、本来の働きを取り戻し、がん細胞を攻撃するようになると考えられております。 抗PD-L1抗体薬:PD-L1(Programmed cell Death Ligand 1)は、樹状細胞やがん細胞の表面に発現する免疫チェックポイント分子であり、免疫細胞上に発現するPD-1と結合することで、免疫細胞の働きを抑制します。抗PD-L1抗体によりPD-L1がPD-1と結合しなくなることで、免疫細胞が本来の働きを取り戻し、がん細胞を攻撃するようになると考えられております。 ※39   D.-Y. Oh et al., "A phase 3 randomized, double-blind, placebo-controlled study of durvalumab in combination with gemcitabine plus cisplatin (GemCis) in patients (pts) with advanced biliary tract cancer (BTC): TOPAZ-1" J Clin Oncol., 2022, 40, Number 4_suppl. ※40   P.V. Cuesta et al., "Exploring the Promise of Second-Line Chemotherapy in Biliary Tract Tumours: A Glimpse into Novel Treatment Approaches" Cancers 2023, 15, 5543.; Z. Li et al., "Recent advances in systemic therapy for advanced biliary tract cancer: A systematic review and meta-analysis using reconstructed RCT survival data" JHEP Reports. 2025, 7, 101290. ※41   分子標的薬:がん細胞などの特定の細胞だけを攻撃する治療薬のことです。 主にがん領域で使われており、標的とする細胞だけで作られる異常なタンパク質(分子)などの目印を見つけて、標的の細胞を攻撃します。正常な細胞へのダメージが少なく、副作用が抑えられると考えられております。 ※42   各遺伝子変異陽性の患者のみ (NCCN Guideline BTC 2025, COMPILE Claim Data Dec 2023) ※43   R. Huang et al., "Targeting glutamine metabolic reprogramming of SLC7A5 enhances the efficacy of anti-PD-1 in triple-negative breast cancer" Front Immunol., 2023, 14, 1251643. ※44   プラセボ:見た目や味は薬と同じで薬効成分を含まないものを示す言葉で、偽薬とも呼ばれます。本来は薬としての効果をもたないプラセボを服用し得られる効果を差し引いて、本当の意味での薬の有効性を科学的に明らかにするために、臨床試験で使用されます。 ※45   無増悪生存期間(PFS):治療中(治療後)にがんが進行せず安定した状態である期間のことです。英語ではProgression-Free Survivalといいます。 ※46   ハザード比:統計学上の用語で、相対的な危険度を客観的に比較する方法です。臨床試験で比較検討した薬剤Aと薬剤Bにおいて、ハザード比が1であれば2つの治療法に差はなく、ハザード比が1より小さい場合には薬剤Aの方が有効と判定され、その数値が小さいほど有効であるとされます。信頼区間とp値は算出された統計データの信頼性を示す数値です。 ※47   米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(Gastrointestinal Cancers Symposium : ASCO GI 2023) 口頭発表: Nanvuranlat, an L-type amino acid transporter (LAT1) inhibitor for patients with pretreated advanced refractory biliary tract cancer (BTC): Primary endpoint results of a randomized, double-blind, placebo-controlled phase 2 study. (https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.2023.41.4_suppl.494) ※48   A. Lamarca et al., “Second line FOLFOX chemotherapy versus active symptom control for advanced biliary tract cancer (ABC-06): a phase 3, open-label, randomized, controlled trial” Lancet Oncol., 2021, 22, 690–701. ※49   D.-Y. Oh et al., “Durvalumab plus Gemcitabine and Cisplatin in Advanced Biliary Tract Cancer” NEJM Evid., 2022, 1 (8). ※50   Nanvuranlat: Phase 2 CSR FOLFOX: ※48 TOPAZ1(ゲムシタビン/シスプラチンとデュルバルマブ併用療法): ※49 Tibsovo: A.X. Zhu et al., “Final Overall Survival Efficacy Results of Ivosidenib for Patients With Advanced Cholangiocarcinoma With IDH1 Mutation. The Phase 3 Randomized Clinical ClarIDHy Trial” JAMA Oncol., 2021, 7, 1669-1677. Pemazyre: G.K. Abou-Alfa et al., “Pemigatinib for previously treated, locally advanced or metastatic cholangiocarcinoma: a multicenter, open-label, phase 2 study” Lancet Oncol., 2020, 21, 671-684. Lytgobi: L. Goyal et al., “Futibatinib for FGFR2-Rearranged Intrahepatic Cholangiocarcinoma” N Engl J Med., 2023, 388, 228-239. ※51   米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual meeting) Clinical Science Symposium 口頭発表: Clinical Science Symposium : Subgroup analysis of double-blind, placebo-controlled Ph. 2 study of nanvuranlat in treatment of pre-treated, advanced, refractory biliary tract cancer (BTC): Patients with high LAT1 expression and response to nanvuranlat. (https://ascopubs.org/doi/10.1200/JCO.2023.41.16_suppl.4011) ※52   2025年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)年次総会 (ESMO Congress 2025) ポスター発表:  98P - Subgroup analysis of a Ph.2 study of nanvuranlat in pre-treated, advanced, refractory biliary tract cancer patients (BTC) support an enriched patient population for a planned Ph.3 study ※53   エンリッチメント:試験の精度や有効性を高めるために、あらかじめ特定の特徴を持つ被験者を選択して組み入れる手法を指します。 ※54   COMPILE Claim Data Dec 2023 ※55   Physician’s Best Choice:治験に参加する医師が、その時点で承認されている標準治療や慣習的に用いられている治療の中から、患者ごとに最も適切と判断した治療法を選択することを指します。本臨床試験の場合、FOLFOX or FOLFIRI or ベストサポーティブケアから医師が選択することになります。 ※56   社内非公開レポート、及び※43 ※57   プラチナ製剤:プラチナ製剤は、DNAに結合して複製や修復を阻害し、がん細胞の増殖を抑える抗がん剤です。 ※58   Atlas of MS 3rd edition, MS International federation, September 2020 (chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.msif.org/wp-content/uploads/2020/10/Atlas-3rd-Edition-Epidemiology-report-EN-updated-30-9-20.pdf) ※59   G. Khan and M.J. Hashim, "Epidemiology of Multiple Sclerosis: Global, Regional, National and Sub-National-Level Estimates and Future Projections" J Epidemiol Glob Health., 2025, 15, 21. ※60   MS Fact Sheet, MS International federation (https://atlasofms.org/map/united-states-of-america/epidemiology/number-of-people-with-ms 最終アクセス日 2025年9月9日) ※61   軸索:神経細胞から他の細胞へ電気信号を伝える細長い突起です。 ※62   ミエリン:中枢及び末梢神経系の軸索を取り巻く脂質に富んだ鞘(ミエリン鞘)のことです。電気的な絶縁体として働き、神経インパルスの伝導速度を飛躍的に高める役割を担っております。ミエリンは神経機能の維持に不可欠であり、これが損なわれると神経伝達が障害されます。 ※63   脱髄:脳や脊髄、視神経といった神経系の神経線維を包む「さや」(髄鞘)の部分に起こる炎症により髄鞘が消失し、さまざまな神経症状が生じます。 ※64   R.J. Fox and J.A. Cohen "Multiple sclerosis: The importance of early recognition and treatment" Cleve Clin J Med., 2001, 68, 157–170. ※65   血液脳関門:血液中の物質が脳へ移行するのを選択的に制御する防御機構です。 ※66   B細胞:B細胞は免疫細胞の一つでありリンパ球の約20-40%を占め、体内に侵入した病原体を排除するために必要な抗体を作り出し、体液性免疫に関わります。 ※67   M.H. Sheikh et al., "Immuno-metabolic impact of the multiple sclerosis patients’ sera on endothelial cells of the blood-brain barrier" J Neuroinflamm., 2020, 17, 153. ※68   S. Bittner et al., "Implications of immunometabolism for smouldering MS pathology and therapy" Nat Rev Neurol., 2023, 19, 477–488. ※69   J. Correale et al., "Progressive multiple sclerosis: from pathogenic mechanisms to treatment" Brain. 2017, 140, 3.; D. Ontaneda et al., "Progressive multiple sclerosis: prospects for disease therapy, repair, and restoration of function" Lancet. 2017, 389(10076), 1357-1366. ※70   ミクログリア:ミクログリアは神経回路の活動の恒常性を担うグリア細胞の一種であり、中枢の免疫担当細胞として知られ、中枢神経系に存在する常在性マクロファージとも呼ばれます。 ※71   BTK阻害剤:B細胞受容体シグナル伝達に関与するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の働きを阻害し、異常なB細胞の増殖や活性化を抑制する薬剤です。 ※72   Sanofi Press Release(URL: https://www.sanofi.com/en/media-room/press-releases/2025/2025-12-24-06-00-00-3210238 最終アクセス日 2025年12月25日) ※73   N. Cappoli et al., "LAT1, a novel pharmacological target for the treatment of glioblastoma" Biochem Pharmacol., 2022, 201, 115103.; T. Ishimoto et al., "Inhibition of amino acid transporter suppresses activation of microglial cell lines" The 97th Annual Meeting of the Japanese Pharmacological Society, Session 2-B-P-002, Kobe, 2023. DOI: 10.1254/jpssuppl.97.0_2-B-P-002. ※74   J. Krämer et al., "Bruton tyrosine kinase inhibitors for multiple sclerosis" Nat Rev Neurol., 2023, 19, 289–304. ※75   当社とGeorgetown大学との共同・委託研究結果に基づく社内レポート ※76   バイオアベイラビリティ:投与された薬が全身循環に到達し、有効に利用可能となる割合を指します。特に経口投与では、消化管吸収や初回通過効果の影響を受けるため、この値が重要な薬物動態の指標となります。 ※77   PKプロファイル:薬を投与したあとに体内でどのように吸収・分布・代謝・排泄(ADME)されるかを時間的に示したものです。血中薬物濃度の推移(濃度–時間曲線)として表され、薬の効果や安全性を評価する上で重要な指標となります。 ※78   Verified Market Reports. (2025). Secondary Progressive Multiple Sclerosis Drug Market Insights [Web page].(https://www.verifiedmarketreports.com/product/secondary-progressive-multiple-sclerosis-drug-market/ 最終アクセス日 2025年10月28日) ※79   Pipeline Therapeutics Announces Global License and Development Agreement for Investigational Neuroscience Therapy, PIPE-307 (https://jnjinnovation.com/news/press-releases/pipeline-therapeutics-announces-global-license-and-development-agreement-for-investigational-neuroscience-therapy-pipe307 最終アクセス日 2025年10月28日) ※80   Sanofi Annual Report on Form 20-F 2017. Sanofi press release “Sanofi completes Principia Biopharma Inc. acquisition”, September 28, 2020. Francesco M.R., et al. PRN2246, a potent and selective blood–brain barrier–penetrating BTK inhibitor, exhibits efficacy in central nervous system immunity. Poster presented at the 7th Joint ACTRIMS–ECTRIMS Meeting (MSParis 2017); October 25–28, 2017; Paris, France. Contineum Therapeutics Press Release “Pipeline Therapeutics Announces Global License and Development Agreement for Investigational Neuroscience Therapy, PIPE-307”, April 17, 2023. ※81   KRAS変異大腸がん:大腸がんは、RAS遺伝子(KRAS、NRAS、HRAS)に変異がない野生型と変異がある変異型に分けられます。KRAS変異大腸がんは、大腸がんの約35-40%を占め、大腸がんの有効な治療法の一つである抗EGFR抗体薬の効果がありません。 ※82   Justin Mencel, ASCO Daily News, January 5, 2023. (https://dailynews.ascopubs.org/do/targeting-kras-g12c-significant-milestone-metastatic-colorectal-cancer-but-work-remains 最終アクセス日 2025年10月28日) ※83   J. Gong et al., "RAS and BRAF in metastatic colorectal cancer management" J Gastrointest Oncol., 2016, 7, 687–704.; F. Meric-Bernstam et al., "MyPathway HER2 Basket Study: Pertuzumab + Trastuzumab treatment of a large, tissue-agnostic cohort of patients with HER2-positive advanced solid tumors." Presented at the American Society of Clinical Oncology (ASCO) Annual Meeting; 2021 Jun 4–8; Virtual. Abstract 3004. ※84   Y. Shibasaki et al., "Association of High LAT1 Expression with Poor Prognosis and Recurrence in Colorectal Cancer Patients Treated with Oxaliplatin-Based Adjuvant Chemotherapy" Int J Mol Sci., 2023, 24, 2604.; H. Ogawa et al., "Role of Amino Acid Transporter Expression as a Prognostic Marker in Patients With Surgically Resected Colorectal Cancer" Anticancer Res., 2019, 39, 2535-2543. ※85   P. Kandasamy et al., "Oncogenic KRAS mutations enhance amino acid uptake by colorectal cancer cells via the hippo signaling effector" Mol Oncol., 2021, 15, 2782–2800. ※86   N. Okano et al., "First-in-human phase I study of JPH203, an L-type amino acid transporter 1 inhibitor, in patients with advanced solid tumors" Invest New Drugs., 2020, 38, 1495-1506. ※87   Z. Haining et al., "Relation of LAT1/4F2hc expression with pathological grade, proliferation and angiogenesis in human gliomas" BMC Clin Pathol., 2012, 12, Article number: 4. ※88   大腸がん - Precedence Research, 2024. “Colorectal Cancer Therapeutics Market Size and Forecast 2025 to 2034” (https://www.precedenceresearch.com/colorectal-cancer-therapeutics-market) グリオーマ – Transparency Market Research, 2022, “Glioma Treatment Market” (https://www.transparencymarketresearch.com/glioma-treatment-market.html) (各出所の最終アクセス日: 2024年12月9日) ※89   社内非公開レポート
経営方針・対処すべき課題13,269字を開く

経営陣が考える方向性と課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。 (1) 経営方針 当社は、「SLCトランスポーター創薬の新たな可能性を追求し、グローバルベンチャーとして世界中の人々が抱えるアンメット・メディカル・ニーズに応える革新的新薬の開発を通じ、人々が健康を維持し、希望を持ち続けることに貢献します」を企業理念としております。 当社は、当該理念実現に向け、「グローバルベンチャーとして挑戦する情熱」「サイエンスの追求」「コンプライアンスの徹底遵守」を行動規範として定めております。 (2) 経営戦略 ① Goals for 2030 当社は、長期的な経営戦略として以下のとおり「Goals for 2030」を定め、段階的かつ着実な取組を進めております。 Goals for 2030   具体的活動 1.LAT1阻害剤[(ナンブランラト) First-in-Class]単剤療法での、胆道がん治療薬としてグローバル承認獲得 ・日本発のブロックバスター製品(年間売上10億米ドル)を目指す   ・グローバル臨床開発 (第1 企業の概況 3 事業の内容 (2)開発パイプライン記載のとおり) ・事業化スキームの構築 2.免疫機構に着目した新たな治療薬の可能性を追究し、がん、自己免疫疾患、希少疾患へと展開 ・ライフサイクルマネジメント 3.次世代LAT1阻害剤(Best-in-Class)の臨床試験入り 4.新たなトランスポーター阻害剤の創出によるパイプライン拡充 5.種々の創薬技術を取り込みプラットフォーム化し、継続的な創薬と事業化の仕組み作り ※上記は本書提出日現在における当社の目標であり、研究開発の進捗、規制当局対応、薬価及び公的医療保険における償還制度(保険収載の可否及び償還条件)、競合環境、市場環境その他の要因により、実際の結果が異なる可能性があります ② グローバルライセンス活動 ・グローバル開発を進めた上でのライセンス契約を目指す理由 当社は、開発化合物の価値をグローバル開発によって最大化し、その成果をグローバルライセンス契約へとつなげることでの収益化を目指しております。日本国内において非臨床又は早期の臨床データのみを基にライセンス契約を締結した場合、契約一時金は相対的に小規模となる例がみられます。一方で、グローバル第3相臨床試験まで進展した化合物を導出した場合、契約一時金の中央値は42百万米ドル(2023年の値:約63億円、1ドル=150円換算)※1と報告されています。 このような現状を踏まえ、厚生労働省の「ヘルスケアスタートアップの振興・支援に関するホワイトペーパー」(2024年)提言13では、「開発の早い段階でのアライアンス契約はスタートアップ側に不利となりうるおそれがある(中略)バイオスタートアップの企業価値を毀損しかねない」と指摘されております。当社はこの認識のもと、可能な限り後期段階までグローバル開発を進めることにより化合物の価値、ひいては企業価値の向上を図ることが重要であると考え、開発戦略を推進しております。 ・具体的なグローバルライセンス活動状況 当社は、開始済み又は今後開始が見込まれる各臨床試験において得られるデータの取得状況に応じて、ライセンス契約等の検討が可能となるよう準備を進めております。特に、ナンブランラトのグローバル第3相臨床試験の前半(パート A)については、将来的なライセンス活動を見据え、外部から適切な評価を得られる可能性のある試験デザインとするため、米国バイオベンチャー業界で豊富な経験を有する統計学者や腫瘍専門医(薬事・開発コンサルタント)から助言を得ながら、以下の工夫を治験デザインに組み込みました。 ・全生存期間(OS)による効果評価 ・実臨床を反映した最善支持療法群(Physician’s Best Choice;FOLFOX, FOLFIRI または緩和ケア)との比較 ・利便性を高める46時間持続点滴群(2週に1度の通院で治療可能)の追加 また当社は、ライセンス契約交渉において適時に複数の候補企業と交渉を開始できるよう、ナンブランラト(主に胆道がん)及びJPH034(主に多発性硬化症)の市場特性を踏まえ、相性の良いパートナー候補企業を精査し、すでに一部の企業との協議を開始しております。興味を示す企業とは定期的な情報開示を通じて長期的な信頼関係の構築を進めております。臨床試験の進捗に応じて戦略的かつ円滑にライセンス契約交渉へと移行することを目指し、体制整備を進めておりますが、交渉の開始時期については相手先企業の判断に依存いたします。 ライセンスに向けて継続的にコミュニケーションを取っているパートナー候補企業数 (2026年5月31日時点) ナンブランラト   JPH034 12社   13社 具体的には、ナンブランラトについては、グローバル第3相臨床試験パートA及び国内での免疫チェックポイント阻害剤(ICI)との併用療法の進捗を踏まえ、2028年3月期以降の事業化スキームの構築を目指しております。 JPH034については、再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症を対象とする米国第1相臨床試験の進捗、並びにこれまで蓄積してきた臨床・非臨床エビデンス及び非臨床・CMCパッケージ等を踏まえ、欧米でのフェーズ2試験の実施が可能となる段階を見据えて、2027年3月期に事業化スキームの構築を目指しております。当該スキームについては、ライセンス契約に限らず、共同開発、出資その他の契約形態を含め、候補企業等との協議状況及び臨床試験の進捗を踏まえ、最適な形態を検討してまいります。 図1:事業化スキーム構築のイメージ ナンブランラト JPH034 ③ ライフサイクルマネジメント ・ライフサイクルマネジメント概要 医薬品開発においては、一つの成功(POC※2)を起点に、疾患領域の拡大、特許の延長、さらには後継品(Best-in-Class)への展開といったライフサイクル戦略を段階的に実行することで、事業価値を最大化することが重要であると認識しております。当社はLAT1阻害剤開発の先駆者として、胆道がんにおけるPOCを達成し、すでに次なるライフサイクル戦略の検討及び準備を進めております。これらの取組の一環として、胆道がん1次療法におけるICIとの併用療法、KRAS変異大腸がんを対象とした医師主導臨床試験の開始準備、希少疾患を対象とする非臨床試験、JPH034によるグリオーマに対する臨床試験実施に向けた検討等を進めております。さらに、これらの取組を、自社に加え研究開発パートナーや事業パートナーと連携しながら推進することで、持続的かつ大きな事業価値の創出を目指しております。 図2:胆道がんを起点とするライフサイクルマネジメント※3 その一環として、当社はナンブランラトの特許強化・延長プロジェクトを推進しております。医薬品分野においては、物質特許が満了した後も、製剤特許や用途特許などを組み合わせることで事業の独占性を延長させた事例が数多く存在します。ナンブランラトについても、グローバル大手製薬企業による成功実績のある手法も参考にしつつ、独占性の延長につながる可能性のある新規特許の取得を目指しています。これにより、より高額なライセンス契約の締結や、長期にわたるロイヤルティ収入につながる可能性があり、当社の中長期的な事業成長に寄与し得るものと考えております。 ・SLCトランスポーター創薬のプラットフォーム化に向けて 当社は、現有する開発パイプラインの進捗と事業化を進める一方で、より長期的な成長に寄与するために、SLCトランスポーター創薬のプラットフォーム化を目指しております。当社は、LAT1阻害剤の研究開発を通じて知見を蓄積してきており、クライオ電子顕微鏡※4を用いたSLC構造解析技術※5の確立等により、基質特異性※6に関する理解が進展しております。また、複数のアカデミアとの委託・共同研究を通じて、戦略的パートナーシップを構築しており、研究基盤の広がりと強固さを支えております。 今後は、これまでに培ってきた研究基盤を成熟させるとともに、成長に資する要素を取り込みながら発展させることで、SLCトランスポーター創薬に係る技術の体系化及び新規パイプラインの充実を図ってまいります。 番号   解説または引用 ※1   Q3 2024 Biopharma Licensing and Venture Report by J.P.Morgan: 2023年の値 中国のみ・欧州のみなどのローカルライセンスを含む ※2   POC:POC(Proof of Concept)とは、研究開発において仮説や新しい治療法の有効性・安全性について、初期段階でその実現可能性を示すための概念や検証プロセスを指します。創薬の分野では、臨床試験の早期(主に第2相試験)で新薬候補が実際に患者に効果を示すかを確認し、開発を継続するかどうかを判断する重要な節目となります。 ※3   当社の事業戦略に関するイメージ図であり、実際の事業展開とは異なる可能性があります。 ※4   クライオ電子顕微鏡:クライオ電子顕微鏡(cryo-EM)とは、生体分子や細胞構造を凍結したまま観察できる電子顕微鏡技術です。試料を急速凍結して水分を氷晶化させずに保存することで、タンパク質や複合体をほぼ生理的な状態で高分解能に解析できます。近年は構造生物学や創薬研究において、X線結晶構造解析やNMRに並ぶ強力な手法として注目されております。 ※5   SLC構造解析技術:結晶化困難なSLCをクライオ電顕で可視化することで、輸送メカニズムの解明や創薬応用につなげる技術です。SLCは膜貫通型タンパク質であり、疎水性が高く不安定で、さらに結晶化が困難であるため、従来のX線結晶構造解析やNMRでは詳細な構造情報を得ることが極めて難しいという背景があります。近年ではクライオ電子顕微鏡(cryo-EM)の進歩により、結晶化を必要とせず、生理的に近い条件下でSLCの立体構造を高分解能に観察できるようになりました。これにより、SLCの基質特異性や輸送サイクルの分子メカニズムが解明され、創薬標的としての理解が大きく進展しております。 ※6   基質特異性:酵素や輸送体などの生体分子が、特定の基質(反応する分子や取り込む物質)に対して選択的に作用する性質のことを指します。この特性により、生体内の反応が正確かつ効率的に進行します。 (3) 経営環境 ① 当社の企業構造及び主要開発品の概観 当社は、研究開発を中核とする創薬ベンチャーとして、SLCトランスポーターを標的とした創薬研究並びに医薬品候補化合物の臨床開発を主たる事業としております。事業運営においては、研究戦略の立案、開発計画の策定、プロジェクトマネジメント及び重要な意思決定等の中核機能を当社が担い、臨床試験の運営・モニタリング等の実務については、国内外のCRO等の外部機関を活用することにより、効率的な研究開発推進体制を構築しております。また、薬事、開発、統計、疾患領域等に関する外部専門家から助言を受けるとともに、アカデミア等との連携を通じて研究開発基盤の強化を図っております。 当社の提供価値は、(i) 医薬品候補化合物の研究開発(臨床開発を含む)及び (ii) これらの研究開発活動を通じて蓄積されるSLCトランスポーター創薬に係る知見・技術基盤であります。当社はこれらを基に、アンメット・メディカル・ニーズの高い疾患領域を対象として開発パイプラインを構築しております。現時点における主要開発品等の概要は以下のとおりです。 ・ナンブランラト(JPH203):胆道がんを中心にグローバル開発を推進しております。CMCに関しては、2025年5月13日付で商業製造スケールにおける品質基準への適合についてFDAより肯定的な書面回答を受領しました。また、国内第2相臨床試験の結果等を踏まえ、FDAとの協議を経て、2025年12月にグローバル第3相臨床試験を開始しており、2026年6月現在、計画通り順調に進捗しております。 また、国内においては、胆道がんの1次療法におけるナンブランラトと免疫チェックポイント阻害剤(ICI)との併用療法を検討する医師主導臨床試験(JON-2404-B)が開始されております。本試験は2026年4月にJapan Registry of Clinical Trials(jRCT)へ試験情報が登録・公開され、公益財団法人がん研究会有明病院を代表施設として実施されています。当社は同院との契約に基づき、本試験の円滑な遂行を支援してまいります。 ・JPH034:中枢移行性を特徴とするLAT1阻害剤として、主に再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症を対象に開発を推進しております。米国時間2026年3月22日に米国における第1相臨床試験を開始し、最初の被験者への投与を実施しました。現在は、本試験において安全性、忍容性及び薬物動態に関するデータの取得を進めております。 ・その他の開発・研究:ナンブランラトについては、KRAS変異大腸がんを対象とした医師主導臨床試験の開始に向けた準備、希少疾患を対象とする非臨床試験等に取り組んでおります。また、JPH034についてはグリオーマに対する臨床試験実施に向けた検討も進めております。加えて、ナンブランラトの特許の強化・延長、次世代LAT1阻害剤(Best-in-Class)等の創薬研究について、資金状況及び開発コスト等を踏まえつつ、段階的に推進しております。 ② 製薬業界に関する最近の動向 ・医薬品市場の成長予測※1 Grand View Research, Inc.の最新レポートによれば、世界の医薬品市場規模は2030年までに2兆3,504億3,000万米ドルに達すると予測されており、2025年から2030年にかけて年平均成長率(CAGR)6.12%で拡大する見込みです。この市場成長の背景には、慢性疾患の有病率上昇、新規治療開発ニーズ拡大があります。洗練された製品の上市や糖尿病・がん・感染症など主要疾患の罹患率増加が、グローバルな医薬品市場の成長を下支えしていると考えられております。 ・米国の関税政策とその影響※2 2025年4月、トランプ政権は「国家安全保障」を理由に、医薬品及び医療機器の輸入に対して10%の関税を導入しました。この関税措置は資本市場に不確実性をもたらし、将来の新規治療への投資に悪影響を及ぼす懸念があります。 こうした状況を受け、大手製薬企業は米国内での生産能力強化を目的に、既に数十億米ドル規模の投資を発表しております。ブランド医薬品については価格上昇リスクが限定的と見られる一方で、利益率の低い低価格ジェネリック医薬品の供給は制約を受ける可能性があります。 米国の関税政策は製薬業界にとって大きな転換点となっており、各社には不確実性に対応し得る柔軟な戦略と迅速な意思決定が求められております。 ③ がん領域に係る研究開発や市場の動向 ・がん治療薬市場の成長予測※1,3 がん治療薬は医薬品市場全体の約18.06%を占めており、その世界市場規模は2032年までに4,916億米ドルに達すると予測されております。2025年から2032年の予測期間においては、年平均成長率(CAGR)12.6%と高い成長が見込まれております。 この市場成長を支える大きな要因の一つとして、がん罹患率の増加が挙げられます。International Agency for Research on CancerのGLOBOCAN調査によれば、2020年には世界で1,930万人の新規がん患者と約1,000万人のがん死亡が報告されたと推定されております。こうした背景から、製薬企業の多くががん領域での研究開発活動に注力しており、新規治療薬の上市が加速しております。 一方で、2027年以降は主要な治療薬がジェネリック医薬品やバイオシミラーとの競争に直面することが見込まれており、これにより患者様・医療保険制度の双方にコスト削減効果をもたらす一方、市場成長率は徐々に鈍化すると予想されます。 ・がん領域に関する治療薬の承認 (米国FDA) 2024年、米国FDAは、幅広いがん治療薬を承認しました。その対象は多様ながん種に及び、低分子阻害剤、免疫チェックポイント阻害剤、二重特異性抗体※4、抗体薬物複合体(ADC)※5、さらには細胞・遺伝子治療製品まで、多様な作用機序を有する製品群が含まれております。 これらの中には、新しい免疫療法や分子標的療法といった画期的な治療法が複数承認されており、特に他の治療法との併用療法としての承認が多く見られる点は、近年のがん治療における重要なトレンドを示しております。さらに、既存薬の適応拡大も承認されており、がん治療が継続的に開発・改良されていることを裏付けております。 ・がん領域に係る研究開発※6 新薬開発の動きは引き続き高水準で推移しており、2025年には米国FDAのCDERが46件の新規治療薬を承認しました。がん領域は新薬承認において引き続き最大の治療領域であり、同年のCDER承認薬のうち16件、35%を占めました。研究開発パイプライン全体では、2026年1月時点で22,940品目と前年から3.92%減少したものの、臨床段階のパイプラインは第1相、第2相、第3相のいずれも増加しています。がん領域のパイプラインは9,036品目と前年からやや減少し、全体に占める割合も39.4%へ低下した一方、2025年に新たに登録された候補品の38.6%を占めており、依然として最大の研究開発領域となっています。 新たながん治療法の中でも、抗体薬物複合体(ADC)、多重特異性抗体、細胞・遺伝子治療などの新規モダリティは引き続き大きな注目を集めています。2026年1月時点のパイプラインでは、遺伝子治療が2,115品目、ADCが892品目、T細胞療法が854品目、CAR-T細胞療法が641品目、二重特異性抗体が560品目となっています。承認面でも、2025年には第一三共のTROP2標的ADCであるdatopotamab deruxtecan、AbbVieのc-Met標的ADCであるtelisotuzumab vedotinに加え、BCMA×CD3二重特異性T細胞エンゲージャーであるlinvoseltamabがFDA承認されました。これらの動向は、がん領域において、既存標的の活用、投与利便性の改善、新規モダリティによる差別化が引き続き重要であることを示しています。 ④ 胆道がん(胆管がん及び胆嚢がん)の市場動向及び研究開発 胆道がん治療市場は、標的療法、免疫療法、精密医療の進展により、今後も着実な成長が見込まれております。胆道がんは希少疾患であり、2020年までは2次療法に承認薬が存在しませんでしたが、現在では複数の米国FDA承認薬が登場しております。2024年には、胆道がんにおける初のHER2二重標的療法としてザニダタマブが承認され、市場拡大の象徴的な出来事となりました。 ただし、既存の分子標的薬は適応患者が限定されるうえ、耐性の出現(二次変異など)による再発が依然として課題となっております。一方、1次療法では免疫チェックポイント阻害剤(PD-1/PD-L1)において有用性が示され、ペムブロリズマブやデュルバルマブが承認に至っております。 胆道がん治療は過去10年間で大きな進展を遂げてきたものの、依然として治療選択肢は限られており、個別化・分子診断に基づく治療設計が求められております。今後は、早期発見・スクリーニングの強化、併用療法の普及、次世代標的の探索等が重要な論点になると考えられております。 このような環境下において、当社の開発品であるナンブランラトは、LAT1阻害という新規作用機序(First-in-Class)を基盤として、胆道がん2次療法における治療選択肢の拡大に資する可能性がある点が競争上の差別化要因となり得ると考えております。また、1次療法においては、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)との併用療法を検討する医師主導臨床試験(JON-2404-B)が開始され、2026年4月にJapan Registry of Clinical Trials(jRCT)へ試験情報が登録・公開されました。本試験は、公益財団法人がん研究会有明病院を代表施設として実施され、当社は同院との契約に基づき、本試験の円滑な遂行を支援してまいります。 ⑤ がん領域の今後の見通し がん治療薬市場は急速に進化しており、革新的な治療法や技術革新が市場成長を力強く牽引しております。なかでも、ゲノムプロファイリングやバイオマーカーに基づく個別化医療の普及、免疫チェックポイント阻害剤やCAR-T細胞療法といった免疫療法の拡大、さらにビッグデータ解析やAIを活用した診断精度の向上や治療計画の最適化といったデジタル技術の導入が、成長の主な要因となっております。これらの動向を背景に、がん治療薬市場は今後も持続的な成長が期待され、製薬企業にとって極めて大きな事業機会を提供する分野となっております。 ⑥ 事業へ与える影響 製薬業界、とりわけがん領域の市場は今後も大きな成長が見込まれており、その中でも胆道がんは依然としてアンメット・メディカル・ニーズが高い領域であると認識しております。近年は従来とは異なる新規作用機序のがん治療薬が研究開発され、治療選択肢が拡大しているほか、他剤との併用療法の進展も市場拡大を後押ししております。 当社の開発品であるナンブランラトは、単剤療法として、胆道がん2次療法において一定の有望性が示唆されており、意義のある結果であると考えております。足元では、ナンブランラトのグローバル第3相臨床試験が2025年12月に開始され、2026年6月現在、計画通り順調に進捗しております。また、胆道がん1次療法におけるICIとの併用療法を検討する医師主導臨床試験についてもjRCTへの登録・公開がなされており、単剤療法に加え、併用療法及び適応拡大を通じたライフサイクルマネジメントの重要性が高まっております。 当社は、ナンブランラトの競争優位性を、①LAT1阻害という新規作用機序(First-in-Class)に基づく差別化、②胆道がん2次療法というアンメット・メディカル・ニーズの高い領域における単剤療法としての位置づけ、③将来的な承認取得及びライセンス活動を見据えた臨床開発戦略の三点に整理しております。具体的には、グローバル第3相臨床試験の前半(パート A)において、全生存期間(OS)による効果評価を採用するとともに、実臨床を反映した最善支持療法群との比較、さらに利便性を高める投与群の追加等の工夫を組み込むことで、臨床的意義及び外部からの評価の明確化を図っております。加えて、特許強化・延長、他剤との併用、他の固形がんや自己免疫疾患への展開、Best-in-ClassのLAT1阻害剤の開発といったライフサイクルマネジメントを推進し、独占性の確保と事業価値の最大化に取り組んでおります。 さらに、JPH034についても米国第1相臨床試験を開始しており、がん領域に加え自己免疫疾患領域での事業機会の拡大を目指しております。これらの取組を通じて、ナンブランラトを中心とする開発パイプラインの価値向上を図るとともに、将来的な収益機会の拡大につなげてまいります。 一方で、市場競争の激化や米国における薬価政策・関税動向など不確実性も存在します。そのため、スピード感を持った開発推進に加え、リスク分散と持続的な成長のために開発パイプラインの拡充を進めていくことが不可欠と考えております。 番号   解説または引用 ※1   株式会社グローバルインフォメーション 当該ウェブページを 2025年10月2日閲覧。URL: https://www.gii.co.jp/report/grvi1679414-pharmaceutical-market-size-share-trends-analysis.html ※2   Sean D. Sullivan, et al., JMCP org., 2025, 31, Number 6. “The consequences of pharmaceutical tariffs in the United States” ※3   H&Iグローバルリサーチ株式会社 当該ウェブページを 2025年10月2日閲覧。URL:https://www.globalresearch.co.jp/cancer-therapeutics-market/ ※4   二重特異性抗体:1つの抗体分子で2種類の異なる抗原(またはエピトープ)を同時に認識できるように設計された抗体です。 ※5   抗体薬物複合体(ADC, Antibody-Drug Conjugate):抗体に強力な低分子の抗がん薬(細胞傷害性薬物)を結合させた標的型治療薬です。 ※6   Citeline Pharma R&D Annual Review 2026., Asher Mullard. "2025 FDA approvals" Nat Rev Drud Discov., 2026, 25, 81-87. (4) 経営上の目標の達成状況を把握するための客観的な指標等 当社は現在、研究開発段階にあるため、売上高、営業利益等の財務指標を経営上の目標として具体的に設定しておりません。これは、医薬品の承認取得及び上市前の段階においては、財務指標が当社の研究開発活動の進捗や将来の事業価値を必ずしも適切に反映しないと考えるためであります。 当社の企業価値の主要な構成要素は、医薬品候補化合物の研究開発の進捗(臨床開発及び規制対応を含む)並びに研究開発の成果としての開発パイプラインの充実であることから、当社はこれらを経営上の重要課題と位置付け、当該課題の達成状況を把握するための客観的な指標として以下を採用しております。 ① 開発パイプラインの進捗状況(計画対比) 各開発品について、臨床試験の開始、被験者登録の進捗(例:最初の被験者登録、登録完了)、データ固定、主要評価項目に係る結果の取得、規制当局との協議及び申請関連手続(例:当局面談、申請資料作成の進捗、申請提出)等の主要な開発マイルストンの達成状況を、計画対比の観点から、四半期又は適宜の頻度でモニタリングしております。 ② 開発パイプラインの充実状況 次の開発パイプライン候補の創出に係る進捗(例:候補化合物の絞り込み・選定、前臨床POCの取得、特許申請)等を指標として、パイプラインの拡充状況を評価しております。 なお、研究開発活動は、臨床・非臨床試験の結果、規制当局の判断、臨床試験の実施環境その他の外部要因等の影響を受ける場合があり、各マイルストンの達成時期等が変動する可能性があります。当社は、上記指標を踏まえた目標計画を策定し、研究開発活動及び事業活動を推進してまいります。 (5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 ① 財務基盤の強化 当社は、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおり、多様な開発パイプラインを有しており、ナンブランラトのグローバル第3相臨床試験及びJPH034の米国第1相臨床試験を開始しております。また、胆道がん1次療法におけるICIとの併用療法を検討する医師主導臨床試験も開始されております。創薬事業の特性上、多額の研究開発費用が先行するため、営業損失の継続や営業キャッシュ・フローのマイナスが発生しやすく、財務基盤の強化は極めて重要な経営課題であると認識しております。 このため当社は、研究開発を推進しつつ財務基盤を充実させるべく、以下の方針を掲げております。 ・自社開発と戦略的パートナリングの組み合わせ 当社は、可能な限り自社主導で臨床試験を実施し、その成果を最大限に取り込むことで将来的な収益機会の確保を目指しております。一方で、臨床後期やグローバル規模での開発・商業化には多額の費用を要するため、各開発プログラムについて適切なリスクとリターンのバランスが確保できる段階までグローバル開発を進め、その上で製薬企業等とのライセンス契約、共同開発、出資その他開発を進めるための契約体系を含め、最適なパートナリングを検討してまいります。これにより、リスク分散と財務の安定性を実現しつつ、持続的な成長を目指してまいります。具体的には、ナンブランラトについては、グローバル第3相臨床試験パートA及び国内での免疫チェックポイント阻害剤(ICI)との併用療法の進捗を踏まえ、2028年3月期以降の事業化スキームの構築を目指しております。JPH034については、再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症を対象とする米国第1相臨床試験の進捗、並びにこれまで蓄積してきた臨床・非臨床エビデンス及び非臨床・CMCパッケージ等を踏まえ、欧米でのフェーズ2試験の実施が可能となる段階を見据えて、2027年3月期に事業化スキームの構築を目指しております。当該スキームについては、ライセンス契約に限らず、共同開発、出資その他の契約形態を含め、候補企業等との協議状況及び臨床試験の進捗を踏まえ、最適な形態を検討してまいります。なお、内容が未確定であるため、現時点では業績予想には反映しておりません。臨床試験の進捗及びパートナー候補企業との協議状況を踏まえ、適切なタイミング及び契約形態を検討してまいります。 ・資金調達手段の多様化 株式発行による資金調達に加え、事業会社からの出資や公的資金の活用など、多様な資金調達手段を組み合わせることで、研究開発を安定的かつ継続的に進められる体制を整備してまいります。また、資金調達を実現するためには、現在の開発パイプラインの進捗に加えて、ライフサイクルマネジメントとして、疾患領域の拡大、特許の延長、後継品への展開といった持続的かつ大きな事業価値の創出を目指す活動が重要であると認識し、取り組んでおります。 ② 持続的成長と社会的信頼確保のための取組 さらに、財務面にとどまらず持続的な成長と社会的信頼を確保するため、以下の取組も優先課題として推進してまいります。 ・法令遵守の推進 製薬業界に求められる高い倫理性と社会的責任を踏まえ、国内外の関連法規制やガイドラインを遵守するとともに、全社員のコンプライアンス意識の向上を図り、健全かつ透明性の高い事業運営の実現に努めてまいります。 ・ガバナンス機能の充実 取締役会を中心としたガバナンス機能を強化し、経営の透明性、公正性、意思決定の迅速性を確保することで、持続的成長を支える経営基盤を確立し、株主をはじめとする全てのステークホルダーからの信頼に応えてまいります。 ・組織体制の整備及び人材育成 研究開発から事業化に至る各プロセスを効率的かつ確実に推進するため、最適な組織体制を整備するとともに、社員一人ひとりの専門性とリーダーシップを高める教育・研修を強化してまいります。 ・高度人材の獲得と定着 革新的な創薬活動を継続的に推進するためには、優れた専門性を有する人材の採用・定着が不可欠です。当社は、国内外の研究機関や製薬企業からの専門人材のリクルーティングを行うとともに、魅力ある職場環境の整備や柔軟な働き方の推進により、人材が長期的に活躍できる基盤を構築してまいります。これらの取組を通じて人材競争力を高め、創薬事業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上につなげてまいります。 これらの取組により、当社はリスクとリターンのバランスを適切に確保しつつ、パイプライン開発の加速と新規創出を同時に実現し、中長期的な企業価値の向上を目指してまいります。
事業等のリスク17,695字を開く

会社が自認するリスクの一覧

3【事業等のリスク】 当社の事業の運営及び展開等について、リスク要因として考えられる主な事項を以下に記載しております。当社は、これらのリスクの発生を回避し、また発生した場合には適切な対応に努める方針ですが、当社の事業活動及び将来の業績には本質的な不確実性が存在します。なお、以下の記載はかかるリスクを網羅するものではありません。 当社は、医薬品の研究開発を主たる事業とする創薬ベンチャー企業であり、事業活動は新薬の研究開発の成否に大きく依存しております。一般に、新薬の研究開発には長期間及び多額の研究開発費用を要する一方、各開発段階において有効性又は安全性が確認されないこと等により、開発の中止又は遅延が生じる可能性があります。また、臨床試験において一定の結果が得られた場合であっても、規制当局による承認が得られない、又は想定よりも長期間を要する可能性があります。 このように、創薬事業は本質的に高い不確実性を内包しており、とりわけ販売開始前の研究開発段階のパイプラインを有する当社への投資は、一般の投資対象と比較して相対的にリスクが高いと考えられます。以下に記載する各リスクは、かかる不確実性が当社の事業、財政状態及び経営成績等に影響を及ぼす可能性がある事項を具体的に示したものです。 また、当社は、事業運営に係る主要リスクについて、各部門で把握したリスク情報を集約のうえ、経営陣に報告し、必要に応じて協議・対応方針の検討を行う体制を整備しております。加えて、内部監査担当者は内部監査を通じてリスク管理及び内部統制の運用状況を検証し、その結果を関係機関へ報告しております。これらの運用状況については監査等委員会が監督しております。なお、当社のコーポレート・ガバナンス体制の詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のコーポレート・ガバナンス体制図をご参照ください。 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。 I. 事業価値に直結する最重要リスク ① 臨床試験・非臨床試験の結果に関するリスク(発生可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:大) 当社では、2026年3月期より米国FDAのレビュー下で、ナンブランラトの胆道がん2次療法を対象とするグローバル第3相臨床試験を開始しました。当臨床試験に成功すると、欧米を始め、世界中でナンブランラトの胆道がん2次療法治療薬としての承認に繋がる可能性があります。当臨床試験は、これまでに日本国内で行ってきた第2相臨床試験などと比べて、人種差や市場で使用可能な1次療法治療薬の変化などの理由で、想定通りの結果とはならない可能性があります。グローバル第3相臨床試験で主要評価項目を達成できないなど承認に至らない結果であった場合は、追加試験の実施が必要となる等により、承認までに要する時間及び費用に大きな影響が生じる可能性があります。また、試験結果の内容によっては、開発継続が困難となり、当該開発を中止する判断に至る可能性があります。 ナンブランラトの胆道がん2次療法を対象とする第3相臨床試験以外にも、様々な臨床試験・非臨床試験を計画しております。それらの試験結果により、予定している各化合物・適応症の開発スケジュールが影響を受ける可能性があります。 当社ではこうしたリスクに対応するため、これまでに構築してきた科学的な知見や臨床・非臨床データに基づき、成功確率が高い治験デザインを構築すると同時に、パイプラインの幅を広げて単一のパイプラインに依存し過ぎない体制強化にも努めております。 一方で、当社は、臨床・非臨床試験において開発中止のリスクが顕在化した場合、科学的根拠と透明性を基盤とした意思決定を行い、株主及び投資家の皆様にとっての価値を最大限に守り抜くため、多面的かつ迅速な対応を徹底する体制を整えております。 まず、リスクの種類(有効性不足、安全性懸念、競合製品の市場参入など)を明確化し、社内外の専門家による中間解析や安全性評価を含むデータレビューを実施します。その上で、臨床試験デザインや対象患者選定などに起因する根本要因を特定し、科学的に妥当な結論を導きます。 次に、重要な関係者との情報共有を迅速に行います。社内ではマネジメント層や研究開発部門と協議し、社外においては規制当局(PMDAやFDA)への安全性シグナルや試験中止可能性の報告を行います。また、株主及び投資家の皆様に対しては、適時開示やIR資料を通じて透明性を確保し、正確かつ誠実な説明を実施いたします。 その上で、開発継続の可否を慎重に検討いたします。投与量やプロトコル修正によって問題解決が可能か、部分的中止に留めるのか、あるいは全面的に中止すべきかを判断します。仮に開発を中止する場合も、別適応症への転用や他社への技術ライセンスアウト、さらには前臨床段階での改良版探索といった代替策を柔軟に検討し、研究開発資産の最大限の活用を目指します。 さらに、契約・法務・資金面についても適切に対応いたします。CRO※や共同開発先との契約条件や違約金への対応を速やかに確認し、残資金については次の重点プロジェクトへ振り替えることで研究開発の継続性を確保します。また、将来的な再活用を視野に入れ、知的財産の保護にも万全を期します。 ※ CROとはContract Research Organizationの略であり、製薬会社から医薬品開発における非臨床試験や臨床試験、製造販売後調査の業務等を受託している企業のことを指します。 ② 臨床試験のスケジュールに関するリスク(発生可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:中) 前項で述べた各臨床試験は、想定よりも患者様のエントリーに時間がかかる、などの理由で、完了までに予定よりも時間がかかるリスクがあります。臨床試験が長引きますと、その分、承認申請の予定が遅れ、事業計画が影響を受ける可能性があります。 当社ではこうしたリスクに対応するため、胆道がんの治験において経験豊富なCROと連携し、患者登録の迅速化を図る体制をとり、また、胆道がんの患者団体とも連携し、患者様に対してアプローチするチャネルも検討するとともに、患者様のエントリー時間を考慮した施設数を設定し、エントリーを促進してまいります。 ③ 海外におけるアライアンスパートナーに関するリスク(発生可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:中) 大原薬品工業株式会社に導出している地域以外についても、当社で一定の段階まで開発を行ったうえで製薬企業に導出を行う予定です。既に候補となりうる製薬企業の選定と対話を始めておりますが、そのアライアンス契約に至るまでに予定よりも時間がかかる可能性があり、その場合、事業計画が影響を受ける可能性があります。 当社ではこうしたリスクに対応するため、外部の専門家を交えて、複数の候補企業にアプローチする体制を構築するとともに、導出に必要となる臨床・非臨床データの整備、特許の強化を図り、交渉の加速と契約成立の可能性向上に努めております。 II. 承認・上市に関するリスク ① 薬事申請・承認に関するリスク(発生可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:中) 当社は創薬ベンチャーとして、新しい医薬品の開発に取り組んでおります。当社が開発する医薬品は、各国の規制当局のルールに従い製造し、かつ非臨床試験・臨床試験によりその有効性や安全性などのデータを構築し、承認申請を行います。そのため、当社開発医薬品を次の開発フェーズに進ませられるかどうか、また承認を得られるかどうかは、最終的には各国規制当局の判断になります。必ずしも予定していた通りの内容やスケジュールで当局の判断が得られない可能性もあり、規制当局の判断により、予定する事業計画が影響を受ける可能性があります。 当社ではこうしたリスクに対応するため、規制当局との対話や、薬事専門家との連携による戦略的開発計画の策定等を行っております。 III. 事業継続・財務に関するリスク ① 資金繰りについて(発生可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:中) 当社は創薬事業を行っており、この事業特性上、研究開発費用の負担により、製品の上市に至るまでの長期に亘って先行投資の期間が継続することが想定されます。この先行投資期間においては、継続的に営業損失を計上するとともに、営業活動によるキャッシュ・フローもマイナスとなる傾向にあります。 このような事業特性の下、当社は、ライセンス契約の締結や開発の進捗に応じて、契約一時金や開発マイルストン収入などを収益として一時的に計上することがあります。ただし、これらの収益の一部、特に開発マイルストンやロイヤルティに関しては、臨床試験における有効な結果の取得や製造販売承認の取得といった成果が得られるまでは受領することができず、収益の実現には不確実性が伴います。当社はパイプラインの進捗に邁進し、製品市販後に利益計上及び利益拡大を目指していますが、開発が計画通りに進捗しない場合には、将来において当期純利益を計上する時期が遅延する可能性があります。 一方で、当社の事業活動には今後も多額の研究開発投資が継続的に必要となることから、引き続き外部からの資金調達を実施する可能性があります。これに伴い、株式の新規発行等によって株主の持分が希薄化する可能性があるほか、市況や株価動向、投資家需要などの影響により、希望する時期や条件で新株発行による資金調達が実施できない、または十分な規模で調達できないリスクも存在します。さらに、借入による調達を行う場合には、財務制限条項等の契約条件により、当社の事業活動に一定の制約が生じる可能性があります。 当社は、こうしたリスクを十分に認識した上で、資本政策の柔軟性を維持しつつ、資金調達手段やその時期、条件等を慎重に検討するとともに、株主及び投資家の皆様に対して適切かつタイムリーな情報開示に努めてまいります。 ② 調達資金の使途に関するリスク(発生可能性:小、発生時期:特定時期無し、影響度:中) 当社は、東京証券取引所グロース市場への上場に際し、公募増資により調達した資金を、当社パイプラインの研究開発活動及びこれに付随する経営資源への投入に充当する予定であります。 しかしながら、当社を取り巻く医薬品業界の動向や、当社における研究開発や事業開発の状況等により、上記計画以外の使途に充当する可能性があります。また、計画通りに調達した資金を使用した場合であっても、想定通りの効果を上げられない可能性があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 これらのリスクに鑑み、当社は資金の使途変更または計画との差異が生じた際には、速やかかつ適切に開示を行い、株主及び投資家の皆様への説明責任を果たしてまいります。 ③ 為替変動リスクについて(発生可能性:大、発生時期:特定時期無し、影響度:小) 当社では、臨床試験の実施をはじめとする医薬品開発活動において、海外の委託先を利用しており、それに伴い外貨建取引(主に米ドル建)を行っております。これらの取引においては、為替相場の変動に起因するリスクが存在し、為替レートの大きな変動の影響を受け、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社では、米ドル建て支出について、予算策定時に必要額を見積るとともに、資金繰り、為替水準及び支払時期等を踏まえ、外貨の確保時期及び確保額を検討しております。また、必要に応じて一定額の米ドルを事前に確保し、ドル建てで管理・運用すること等により、為替変動リスクの低減に努める方針です。 もっとも、為替相場が想定レートより円安で推移する場合には、外貨の確保に係る判断が当初想定と異なる可能性があり、為替変動による影響を完全に回避することは困難です。したがって、今後の為替相場の動向によっては、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 IV. 知財・競争優位性に関するリスク ① 知的財産権に関するリスク(発生可能性:小、発生時期:特定時期無し、影響度:中) ナンブランラトにおいては、複数の特許で2040年以降までの独占権を担保する計画で進めております。そのうち、ナンブランラトのがん治療薬としての用途特許※(がん治療薬特許)は日米欧を含む主要国ではすでに特許が成立しております。これらの用途特許により事業の独占性が担保されると国際的な特許事務所から見解を得ております。 JPH034においては、物質特許が2034年まで有効であることに加えて、中枢性の炎症疾患を対象とする用途特許が主要国で成立済です。 当社が出願人である、または当社がライセンスを有する登録済の主な重要特許一覧 発明の名称   発明の内容   出願人   出願国   特許又は出願番号   登録年月日   存続期間満了日 がん治療薬   JPH203のがん領域での用途特許   ジェイファーマ株式会社   日本   JP6546367 (登録番号)   2019/6/28   2038/8/1 日本   JP6734971 (登録番号)   2020/7/14   2038/8/1 日本   JP7541400 (登録番号)   2024/8/30   2038/8/1 アメリカ   US12458628 (登録番号)   2025/11/4   2040/5/28 欧州(ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、スペイン、トルコ、オランダ、スイス)   EP3733175 (登録番号)   2023/10/4   2038/8/1 韓国   KR10-2377742 (登録番号)   2022/3/18   2038/8/1 カナダ   CA3083343 (登録番号)   2022/4/26   2038/8/1 メキシコ   MX397404 (登録番号)   2022/11/11   2038/8/1 特定の遺伝子マーカーを有する患者に用いるがん治療用の医薬組成物   JPH203の投与にNAT2遺伝子診断をコンパニオン診断薬として組み合わせる添付文書特許   ジェイファーマ株式会社   日本   JP6894155 (登録番号)   2021/6/7   2040/8/31 抗がん剤及びがんを治療するための医薬組成物   JPH203 (LAT1阻害剤)/PD-1, PD-L1抗体併用特許   ジェイファーマ株式会社、大阪大学   日本   JP7369378 (登録番号)   2023/10/18   2038/11/7 アメリカ   US11899019 (登録番号)   2024/2/13   2040/5/18 欧州(ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、スペイン、トルコ、オランダ、スイス)   EP3709021 (登録番号)   2025/3/19   2038/11/7 中国   ZL201880038920.9(登録番号)   2024/1/9   2038/11/7 韓国   KR10-2328403 (登録番号)   2021/11/15   2038/11/7 フェノキシアルキルアミン化合物   JPH034物質特許   国立大学法人大阪大学,神戸天然物化学株式会社   日本   JP6229896 (登録番号)   2017/10/27   2034/1/21 アメリカ   US9771316 (登録番号)   2017/9/26   2034/1/21 欧州(ベルギー、 スイス、ドイツ、デンマーク、スペイン、フランス、イギリス、アイルランド、イタリア、オランダ、スウェーデン、トルコ)   EP2947066 (登録番号)   2018/9/19   2034/1/21 中国   CN105263899 (登録番号)   2017/11/14   2034/1/21 カナダ   CA2898610 (登録番号)   2021/1/19   2034/1/21 Compositions and methods for treating inflammatory neurological disorders   JPH034 MSに対する用途特許   Georgetown University   日本   JP7629396 (登録番号)   2025/2/12   2039/10/2 アメリカ   US12447145 (登録番号)   2025/10/21   2042/12/30 欧州(ベルギー、 スイス、ドイツ、デンマーク、スペイン、フランス、イギリス、アイルランド、イタリア、オランダ、スウェーデン、トルコ、フィンランド)   EP4321216 (登録番号)   2025/12/10   2039/10/2 このような状況のもと、ナンブランラトに関しては事業の独占性を一層強化するため、特許の強化・延長に取り組んでおります。新しい特許が成立した場合、該当領域の事業において、独占期間の5年以上の延長が目指せることになり、より高い金額でのライセンス契約、長期間のロイヤルティ収入が期待できます。但し、現時点においてナンブランラト特許の強化・延長については不確定であり、既存特許に依存した事業化を進めなければならない可能性もあります。 当社が保有又はライセンスを受けている特許に対しては、将来的に無効等の主張や訴訟の提起がなされる可能性を完全に排除することはできません。これらが認められた場合には、当社の競争優位性や研究開発活動に支障を来し、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 当社ではこうしたリスクに対応するため、各開発パイプラインに関連する用途特許等を更に模索すると同時に、ナンブランラトやJPH034に続くLAT1阻害剤の創薬研究にも取り組んでおり、知的財産ポートフォリオの強化による事業リスク低減を目指しております。そのような活動の一環として、当社は2025年6月に複数の創薬研究者を採用するとともに、外部の専門機関との連携体制を構築しております。これにより、特許の有効性や権利範囲を定期的に検証・管理しつつ、当社が想定する特許の成立に向けて全力で取り組んでおります。 ※用途特許とは、既知の物質や技術に対して新しい用途・適応を見出したことを保護する特許で、医薬品分野では既存成分の新しい治療効果を独占的に利用できる権利を与えるものです。 ② 開発競合リスク(発生可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:中) LAT1特異的阻害剤として世界で初めてヒトに投与され、臨床試験で効果を示したナンブランラトのLAT1との複合体結晶構造が公開されており、その結晶構造を基に、新規LAT1選択的阻害剤を目指して新たに他社が参入もしくは更に研究を進めてくる可能性が考えられます。各疾患に対するLAT1阻害剤の有効性は人体での薬物動態にも依存するため、必ずしも他社の新規LAT1阻害剤が当社の狙う疾患で競合するとは限りません。しかしながら、競合するLAT1阻害剤を他社が開発し、当社の狙う疾患と同じ領域での開発が進んだ場合には、当社の経営成績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。 当社ではこうしたリスクに対応するため、多発性硬化症などの中枢性の炎症疾患においてはLAT1阻害剤全体をカバーする包括的な用途特許についてGeorgetown大学より独占的通常実施権を取得し、Best-in-ClassのLAT1阻害剤の開発を進めると同時に、疾患ポートフォリオの多様化を進めることで競合との差別化を図っております。 なお、現時点において当社が認識している限りにおいてLAT1阻害剤として臨床開発を開始しているのは当社のナンブランラトとJPH034のみです。 LAT1が関連する開発品・製品(2026年4月時点の各社公表資料等に基づく当社調査) 開発品・製品名   開発品・製品の概要   当社のLAT1阻害剤との競合性 TLX101   LAT1を介し細胞内へ取り込まれるが、放射性核種※1の殺細胞効果※2に依存し抗腫瘍効果を発揮するものです。   いずれもLAT1を介した細胞内取り込み後、LAT1機能阻害以外のメカニズムで殺細胞的に作用します。   抗がん作用として、作用メカニズムや副作用の考え方、利便性も異なるアプローチであり、直接の競合性は低いものと考えられます。   また、自己免疫疾患など、殺細胞効果が好ましくない疾患では競合しません。 Steboronine   LAT1を介したホウ素キャリア※3の細胞内取り込み後、中性子照射※4により殺細胞効果を発揮します。中性子照射部位を厳密に計算するため、局所使用のみが承認されております。 QBS72S   LAT1発現細胞内へ優位に取り込まれますが、殺細胞効果や薬理プロファイルは従来型アルキル化薬※5と考えられます。 国内のベンチャーが開発するLAT1阻害剤   LAT1タンパクとの結合情報が中国の研究チームから発表されており、ナンブランラトと類似の基質競合型阻害剤であると捉えられます。 In Vitro 薬効や薬物動態プロファイルなどは、スイスの研究チームが近しい類似体として報告しており、当該ベンチャーの開発化合物のプロファイルと近い可能性があります。 現時点で、出願特許は審査請求中です。   公知の情報から、当社開発品二剤のプロファイルを踏まえた上で、現対象疾患での競合性は極めて低いものと考えられます。 また、当社次世代LAT1阻害剤シリーズにおいても、その構造差異や薬物動態・曝露プロファイルから、近い将来に直接的な競合に至る可能性は限定的であると考えられます。また、先行二剤で獲得した臨床移行経験(動物→ヒト)、臨床経験、当局対応におけるナレッジを活かすことにより、差別化は十分可能と考えられます。 ※特許出願後約18か月間は原則非公開であるため、潜在的な競合出願や開発動向の把握には限界があり、上記に記載のない未知の競合リスクの存在は否定できません。 注記 番号   解説 ※1   放射性核種:放射性核種とは、不安定な原子核を持ち、自然に放射線を放出しながら別の元素に変化していく物質のことです。医薬分野では、この性質を活用し、病気の診断やがんの治療に応用されております。診断では体内に投与して放射線の分布を画像化し、治療では標的とするがん細胞に集積させて放射線で破壊します。これにより、正常組織への影響を抑えた高精度な診断・治療が可能となります。 ※2   殺細胞効果:放射性核種は、放出する放射線によって細胞内のDNAや重要な分子を損傷させ、細胞の機能を失わせたり死滅させたりする作用を持ちます。これを殺細胞効果と呼びます。 ※3   ホウ素キャリア:がん細胞にホウ素(Boron)を選択的に運ぶための化合物です。主にホウ素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)で使用されます。BNCTでは、ホウ素を含む薬剤を体内に投与し、がん細胞に集積させた後、中性子を照射することでホウ素原子が核反応を起こし、強力な放射線を発生させてがん細胞を破壊します。 ※4   中性子照射:電荷を持たない中性子を生体に照射する技術で、がん治療などに利用されます。特にホウ素中性子捕捉療法(BNCT)では、がん細胞に取り込まれたホウ素に中性子を当てることで核反応を起こし、がん細胞を選択的に破壊します。正常組織への影響を抑えた高精度な治療法です。 ※5   アルキル化薬:DNAの構造に化学的な変化(アルキル化)を起こすことで、細胞の増殖を抑えたり死滅させたりする抗がん剤の一種。DNAが損傷すると細胞は正常に分裂できなくなるため、特にがん細胞のように活発に増殖する細胞に対して効果を発揮します。 V. 組織・オペレーション・外部環境 ① 重要な契約等に関するリスク(発生可能性:小、発生時期:特定時期無し、影響度:中) 当社の経営上の重要な契約等は、「第2 事業の状況 5 重要な契約等」に記載のとおりです。当社は、当該契約の相手先との間で円滑なコミュニケーション体制を構築しており、現時点において、契約の遂行及び継続に支障をきたす重大な事象は認識しておりません。 しかしながら、事業環境の変化、契約の相手方の方針変更又は経営状態の悪化等により、当該契約が期間満了、解除その他の理由により終了する、当社に不利な条件変更が行われる、又は契約の履行に支障が生じる可能性があります。また、当該契約の終了等が生じた場合には、代替先の確保及び切替えに相応の時間及び費用を要し、研究開発又は事業運営に遅延等が生じる可能性があります。これらの結果、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 ② 大原薬品工業株式会社への依存に関するリスク(発生可能性:小、発生時期:特定時期無し、影響度:中) 当社は、2019年に大原薬品工業株式会社とナンブランラトに関するライセンス及び共同開発契約を締結しました。グローバル第3相臨床試験完了後、国内では、大原薬品工業株式会社が承認申請を行い、販売を開始する予定です。当社は大原薬品工業株式会社に対し、開発に必要なサポートを行い開発の促進を行ってまいりますが、薬事申請、承認後の営業・マーケティングやオペレーションは大原薬品工業株式会社に依存しており、同社内でナンブランラトの優先度が下がる等の理由で販売力に影響が出る可能性があります。 当社ではこうしたリスクに対応するため、大原薬品工業株式会社との関係性の強化を進めると同時に、上市後のマーケティングにおいてもグローバルとの連携により同社に対して十分なサポートを提供していく予定です。 ③ 製造委託先への依存について(発生可能性:小、発生時期:特定時期無し、影響度:大) 当社は国内外のCMO※等の企業に治験薬等の製造を委託しております。これらの企業は、多くの大手製薬企業等に対して医薬品製造の専門的なサービスを提供する実績が豊富な委託先であり、当社での監査等も実施しており、リスクは高くはありません。しかし、第三者機関であるため、その法令等や製造スケジュールの遵守を完全に担保することはできず、これらの委託先の状況によって、当社の臨床試験や販売が影響を受ける可能性があります。特に、製造委託先に法令遵守不備等の指摘が入り、製造を停止せざるを得ない状況に陥った場合には、影響が大きくなる可能性があります。そのような事態にならないように、CMOの選定においては、複数の候補CMOを十分比較の上、リスクを含めて決定しております。本リスクを回避するために、バックアップとなるサプライヤーに対して、並行して製造委託を行うことも考えられますが、バックアップが必要となる事態に至る可能性に対して費用負担が大きく、現在の財務状況においては現実的ではありません。従いまして、現段階では、現CMOを代替できる可能性のあるCMO候補をバックアップとして選定し、良好な関係を維持するに留めております。 なお、現在進行中・準備中の臨床試験に用いる製剤については既に製造が完了しております。 ※ CMOとはContract Manufacturing Organizationの略であり、製薬会社などから、医薬品の製造を受託・代行する企業を指します。 ④ 臨床試験委託先への依存について(発生可能性:小、発生時期:特定時期無し、影響度:中) 当社は臨床試験の実施を国内外のCRO等の企業に委託しております。製造委託先と同様に、これらの企業は、多くの大手製薬企業等から臨床試験業務を受託する実績が豊富な委託先であり、リスクは高くはありません。しかし、同様に法令等やスケジュール遵守を完全には担保できず、当社の臨床試験のスケジュールが影響を受ける可能性があります。また、一旦臨床試験が開始されると、委託先に問題が生じた場合にも、臨床試験途中で別のCROに切り替えることは非常に困難であり、確実にやり遂げられる企業の選定が重要となります。 当社ではこうしたリスクに対応するため、CROへの委託前の実績評価等を徹底するとともに、委託後のモニタリング体制の整備・強化に努めております。 ⑤ 共同研究機関への依存について(発生可能性:小、発生時期:特定時期無し、影響度:中) 当社は、胆道がんや多発性硬化症、大腸がん、それらに次ぐ適応症におけるLAT1阻害剤の研究開発において、ノウハウや患者プール等を有する国内外の研究機関等と共同研究を行っております。それらの共同研究先は代替不可能な資産を持っていることが多く、当社が制御し得ない何等かの事情により共同研究が中断・中止・遅延となった場合には、当社開発医薬品の研究開発、事業計画に影響を与える可能性があります。 当社ではこうしたリスクに対応するため、各研究機関との関係構築を図るとともに、複数の研究機関とのネットワーク構築や、社内ノウハウの蓄積、プロジェクトマネジメント体制の強化等にも継続的に取り組んでおります。 ⑥ 人材の確保・育成等に関するリスク(発生可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:中) 当社の事業は、その大半が医薬品開発に関する専門性を有する限られた人材に依存しており、かかる専門性を有する人材の獲得とOJT等を通じた人材育成に努めております。 しかしながら、必要な人材の確保ができない場合、適切な人材育成が図れない場合、又は人材が社外流出した場合には、当社の業務遂行上の支障が生じ、又は事業拡大の制約要因となり事業計画が影響を受けることとなります。 当社ではこうしたリスクに対応するため、専門性の高い人材紹介会社の活用や、現社員・役員からの推薦を通じた採用活動を積極的に行っております。また、優秀な人材の確保及び定着を促進するため、これまでストック・オプション制度を活用してきたほか、上場後の環境変化を踏まえ、他の株式報酬制度を含む中長期的なインセンティブ制度の導入・見直しを検討してまいります。加えて、事業のグローバルな成長も優秀な人材を惹きつける大きな要因の一つです。当社では、事業の進捗を着実に推進するとともに、その成果を対外的に積極的に発信しております。 ⑦ 特定人物への依存について(発生可能性:小、発生時期:特定時期無し、影響度:中) 代表取締役社長である吉武益広は、当社の最高経営責任者として、当社の経営戦略の決定、研究開発、事業開発及び管理業務の遂行に大きな価値を提供しております。このように当面の間は吉武益広をはじめとする特定の人物への依存度が高い状態で推移すると見込まれます。このような状況のなかで、当該特定人物が何らかの理由により当社の役職員としての地位を喪失し、又は当社の業務を継続することが困難になった場合には、当社の研究開発等に重大な支障が生じるほか、当社の事業戦略や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。 当社ではこうしたリスクに対応するため、会社の経営メンバーとなり得る人材の探索や社員育成を進めております。 ⑧ 小規模組織について(発生可能性:小、発生時期:特定時期無し、影響度:小) 当社は、監査等委員でない取締役3名、監査等委員3名、及び従業員17名(参与2名含む、2026年5月31日時点、派遣社員を除く)による小規模な組織体制であり、現在の内部管理体制もこの組織規模に応じた水準となっております。 今後、当社のパイプラインの進捗や拡大、海外展開を含む事業の進展により、業容が拡大していくことが見込まれる中で、それに伴い内部統制・リスク管理・コンプライアンスなど、内部管理体制の一層の強化・整備が求められる局面が生じる可能性があります。これに対応するため、人員の拡充を含む体制の強化、業務フローの見直し・整備、外部専門家の活用などを含む複数の対応策を段階的に実施する方針です。 しかしながら、重要な役職員による職務遂行が困難となった場合や、事業の拡大に応じて必要となる人材を適切なタイミングで確保できない場合には、内部管理体制の構築・運営に支障をきたし、業務遂行や法令遵守、さらには財務報告の正確性等に影響を及ぼし、当社の事業、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 ⑨ 情報漏洩に関するリスク(発生可能性:小、発生時期:特定時期無し、影響度:中) 事業に関する機密情報を保持しており、これらの情報が予期せぬ事態により流出する可能性は存在し、このような事態が生じた場合、社会的信用の失墜を招き、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社は、情報漏洩リスクを軽減するため、必要に応じて取引先等との間で守秘義務等を定めた契約を締結するとともに、個別の事情に応じた情報開示を行うなど、厳重な情報管理に努めております。また、情報セキュリティ管理規程を定め、これを基に情報セキュリティの維持・管理に努めております。 ⑩ 職務発明に対する対価支払に関するリスク(発生可能性:小、発生時期:特定時期無し、影響度:小) 当社では、従業員が職務発明により行った発明について規程に基づき対価を支払う制度を整備しておりますが、当該規程の策定・開示・従業員との協議の手続が不十分と認められた場合、特許法第35条第5項に基づき、裁判所が相当対価を高額に算定する可能性があります。これにより、当社の経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼすリスクがあります。 当社では当該リスクに対して、新たに職務発明管理規程を現状の当社に即したものに改定しており、またそのような事態が生じた場合は、法令を遵守しつつ適切な対応を行うことにより影響を最小限にとどめるよう努めてまいります。 ⑪ ストック・オプション行使による株式価値の希薄化に関するリスク(発生可能性:大、発生時期:各新株予約権発行後から10年の間、影響度:小) 当社では、取締役(監査等委員を含む)、従業員、ならびに社外協力者に対するインセンティブ付与及び人材の確保・定着を目的として、ストック・オプションの付与を行っております。また、今後においても人材リテンションや優秀人材の採用促進等の観点から、ストック・オプションやその他株式報酬制度を導入・拡充する可能性があります。 これらの株式報酬制度は、当社の中長期的な成長に資する一方で、実際に株式が交付された場合には、発行済株式数の増加に伴い、当社の株式価値に希薄化が生じる可能性があります。 当社はこうしたリスクを認識の上で、付与対象者の明確化や数量管理の徹底、適切なガバナンスのもとでの制度運用に努めております。 VI. 法務・制度・その他 ① 薬事関連法規について(発生可能性:小、発生時期:特定時期無し、影響度:中) 医薬品業界における研究、開発、製造及び販売の各段階は、各国の薬事法及び関連法規により厳格に規制されております。日本においては、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)に基づき、非臨床試験ではGLP(Good Laboratory Practice)、治験薬製造ではGMP(Good Manufacturing Practice)、臨床試験ではGCP(Good Clinical Practice)の基準を遵守し、承認を受けた上で製造販売を行う必要があります。 当社では、現在保有する各開発パイプラインにおいて、それぞれの規制に適合した体制を整えた上で、計画的に事業を進めております。しかし、各国の薬事法や関連制度は定期的に改定が行われ、新たなガイドラインの発出や要件の追加がなされる可能性があります。これにより、従来通りの開発方針やデータ構成では承認要件を満たさず、追加的な試験や計画変更が必要となるリスクも想定されます。 また、制度変更に適切に対応できなかった場合や、対応に多大な時間・費用を要する場合には、承認の取得時期が遅延し、当社の事業計画、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社ではこうしたリスクに対応するため、米国FDAや日本のPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)をはじめとする各国の規制当局や外部専門家との継続的な事前相談を行い、最新の規制要件を踏まえた計画立案及び柔軟な開発運営を行っております。また、社内体制整備や外部アドバイザーとの連携を通じて、法規制への迅速な対応力を高めてまいります。 ② 医療費抑制策に関するリスク(発生可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:中) 医療用医薬品の価格は各国の医療行政における薬価規制の影響を受けており、世界的な医療費抑制の動向の中、薬価改定を含めた医療制度改革の施策が行われております。かかる動向を受けて、今後上市を目指す当社の医薬品の薬価が想定を下回る可能性があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 当社ではこうしたリスクに対応するため、薬価が下がりにくい希少疾患やアンメット・メディカル・ニーズが高い疾患領域を含めて、開発対象とする疾患を広げてリスク分散を図っております。 ③ 各国の政策変更に関するリスク(発生可能性:中、発生時期:特定時期無し、影響度:小) グローバルに医薬品開発を展開する当社の事業活動は、各国の政策環境の変化により重大な影響を受ける可能性があります。特に、米国における輸入関税の改定や各国による対抗措置など、急激な政策変更が生じた場合には、研究開発コストの増加を招き、当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。 当社といたしましては、各国の政策変更が当社事業に及ぼす影響を注視し、最新の情報を適時に把握・分析することにより、リスク低減に努めてまいります。 ④ 自然災害等の発生に関する不可抗力について(発生可能性:小、発生時期:特定時期無し、影響度:中) 当社の事業活動の中心となる人員が首都圏に集中しております。また研究開発業務及び臨床試験においては、国内外の企業や施設に委託しております。 これらの拠点や委託先が所在する地域において、地震や風水害等の大規模自然災害、または新型感染症の流行といった不可抗力的事象が発生した場合、施設・設備の損壊や機能停止、関係者の移動・勤務制限等により、当社の研究開発活動に遅延・停滞が生じる可能性があります。また、そのような不可抗力により当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。 このような事象が発生した場合への対応として、在宅勤務制度の導入、重要な情報資産をクラウド上に保存し必要なバックアップを取る等の対応を実施し、また、委託先の多様化等を通じて、リスク分散と被害最小化に努めております。 ⑤ 副作用発現による損害賠償責任及び製造物責任について(発生可能性:小、発生時期:特定時期無し、影響度:中) 医薬品の臨床試験実施に際し、薬剤による副作用などに伴う賠償問題が発生するリスクがあります。当社は、損害賠償保険など適切な保険に加入することによって、このような事態が発生した場合の財政的負担を最小限にするべく対応しております。しかしながら、賠償額が当該保険により補償される範囲を超える可能性は否定できず、その場合には当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす場合があります。 また、医薬品の開発及び製造には、製造物責任賠償のリスクが内在します。当社は将来、開発したいずれかの医薬品が健康被害を引き起こし、または臨床試験、製造、営業もしくは販売において不適当な点が発見され、その結果、当社製品に欠陥が認められた場合には、製造物責任を負い、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす場合があります。また、製造物責任賠償請求がなされることによるイメージ低下により、当社及び当社の医薬品に対する信頼が損なわれ、当社の事業に影響を与える可能性があります。 当社ではこうしたリスクに対応するため、品質管理体制の確保を通じて、安全性と製品責任リスクの低減に努めております。また、重大な製造物責任が生じた場合の財政的損失を最小限に抑えるため、保険に加入し、リスクの程度に応じて補償範囲の見直しも適宜行ってまいります。さらに、健康被害や品質問題が発生した場合には、速やかに情報を開示し、関係当局や医療関係者、株主等への説明責任を果たすための体制を整備し、これにより、レピュテーションリスクの最小化と、ステークホルダーとの信頼関係維持に努めてまいります。 ⑥ 配当政策について(発生可能性:小、発生時期:特定時期無し、影響度:小) 当社の事業は、研究開発を中心とした多額の先行投資を必要とし、また投資回収までの期間が長期に及ぶという事業特性を有しております。このため、創業以来、株主の皆様に対して剰余金の配当を実施しておりません。 しかしながら、当社は株主への利益還元を重要な経営課題の一つと認識しており、配当の実施については、今後の事業成長の状況、研究開発への投資計画、ならびに財務状況等を総合的に勘案の上、内部留保の水準を踏まえて判断してまいります。 現時点においては、繰越利益剰余金がマイナスであるため、当面の間は無配を継続する方針です。この方針により、短期的には株主への配当が行われないことから、株価の下落や一部株主からの評価低下といったリスクが存在しますが、当社は中長期的な企業価値向上をもって株主への利益貢献を果たす方針です。 ⑦ ベンチャーキャピタル等による当社株式売却が及ぼすリスク(発生可能性:大、発生時期:特定時期無し、影響度:中) 本書提出日時点において、当社の発行済株式総数に対して、株式公開前から当社に出資しているベンチャーキャピタルやその他の投資ファンド、及びこれらが組成する投資事業有限責任組合等(以下「投資ファンド」)が一定数保有しております。 これらの株主については、当社株式の公開に際して一定期間のロックアップが付されており、また、保有株数の多い株主を中心に長期保有の方針を表明されている投資ファンドはおりますが、ロックアップ期間の満了後又は一定の条件に該当した場合には、各株主の投資方針、ファンドの運用期間、市場環境、当社株価の推移その他の事情により、これら投資ファンドが保有株式を市場において売却する可能性があり、その場合、市場における需給バランスが一時的に崩れることで、当社株式の市場価格が下落する可能性は否定できません。 当社では株主及び投資家との建設的な対話を通じて、当社事業への理解促進に努めるとともに、事業の進捗状況、経営方針、財務情報等を適時かつ適切に開示することにより、投資家の信頼維持と当社の適切な評価の反映に努めてまいります。
経営成績の分析 (MD&A)5,374字を開く

業績がなぜこうなったかの経営陣の説明

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 (1) 経営成績等の状況の概要 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。なお、当社は、創薬事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。 ① 経営成績の状況 当社は、SLCトランスポーターの中でも、創業者である遠藤仁(現杏林大学名誉教授)が発見したLAT1(L型アミノ酸トランスポーター1)に着目し、がんや自己免疫疾患において、既存治療では十分な効果が得られていない患者様のニーズに応える新規治療薬の開発を推進しております。主要パイプラインの状況は以下のとおりとなっております。 a.ナンブランラト ・胆道がんでの開発 ナンブランラトについては、国内第2相臨床試験に成功し、2024年9月19日に開催されたFDAとのType C Meetingにおいて、グローバル第3相臨床試験デザインに関して概要合意に至りました。加えて、2024年9月25日付で米国FDAより、がん患者を対象とした臨床試験開始に向けたInvestigational New Drug (IND)申請の承認を取得しました。また、その後、グローバル開発体制の整備を進めるとともに、2025年10月にドイツ・ベルリンで開催されたESMO2025(欧州臨床腫瘍学会)において、第2相試験のサブグループ解析及び、曝露-反応(Exposure-Response:ER)解析の結果をポスター発表しました。本解析により、第3相臨床試験における患者選択基準の最適化に資する重要な知見が得られております。さらに、CMC(化学・製造・品質管理)に関しても、2025年5月13日付で商業製造スケールにおける品質基準への適合について、FDAより肯定的な書面回答を受領しました。 これらの進展を踏まえ、当社は2025年12月にグローバル第3相臨床試験を開始しております。なお、2026年6月現在、計画通り順調に進捗しております。 また、国内においては、胆道がんの一次療法におけるナンブランラトと免疫チェックポイント阻害剤(ICI)との併用療法を検討する医師主導臨床試験(JON-2404-B)の準備が進められておりました。 その後、本試験の情報が2026年4月にJapan Registry of Clinical Trials(jRCT)へ試験情報が登録・公開されました。本試験は、公益財団法人がん研究会有明病院を代表施設として実施されるものであり、当社は同院との契約に基づき、本試験の円滑な遂行を支援してまいります。 なお、国内第2相試験の結果は、AACR(米国がん研究学会)発行の医学誌「Clinical Cancer Research」2024年9月15日発刊号に掲載されています。 ・適応拡大の取組 KRAS変異大腸がんを対象とした開発についても準備を進めているほか、希少疾患を対象とした非臨床試験にも取り組んでおります。 当社は、高い安全性及び忍容性を有するナンブランラトを、高齢患者への長期投与も可能な新たな治療選択肢として開発し、がん領域におけるアンメット・メディカル・ニーズの解消を通じて、"Feel Better & Live Longer"の実現に貢献してまいります。 b.JPH034 JPH034は、中枢神経系の自己免疫疾患の一つである再発を伴わない2次性進行型多発性硬化症を主な対象として開発を進めています。本開発プログラムは、米国 National Multiple Sclerosis Society(NMSS)のFast Forward Research Grantに採択され、60万米ドルの補助金を獲得しました。さらに、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の創薬ベンチャーエコシステム強化事業にも採択され、IPOに至るまで継続的な支援を受けておりました。 知財面では、米国Georgetown大学が保有するLAT1阻害剤の中枢性炎症性疾患(多発性硬化症を含む)に関する用途特許について、グローバルでの独占的通常実施権を取得し、開発及び商業化における競争優位性の強化を図っております。 研究開発面では、同大学によるマウスモデル試験においては、LAT1阻害剤による臨床スコアの改善、免疫調整作用及び神経保護作用、視覚誘発電位(VEP)遅延の改善などが確認されました。加えて、フィンランドのTurku PET Centreとの委託臨床研究を通じて、中枢神経系の炎症要因の一つであるミクログリアの活性化とLAT1の発現が脱髄病巣レベルで共存することを確認しています。 さらに、AMED補助金の支援のもと開発を進め、米国時間2026年3月22日に米国における第1相臨床試験を開始し、最初の被験者への投与を実施しました。 なお、2026年6月現在、本試験において安全性、忍容性及び薬物動態に関するデータの取得を進めています。 加えて、グリオーマに対する臨床試験実施に向けた検討も進めております。 c.次世代パイプライン(ナンブランラトの後継品) これまで当社が培ってきたトランスポーター創薬のプラットフォーム技術を活かし、ナンブランラトの後継品の創薬に取組んでおります。トランスポーターに関する高度な知見を有する当社ならではの強みを活かし、革新的な新薬の創出を目指します。 当社は、グローバル医薬品開発に豊富な経験を有する経営陣及び研究開発チームを中心に体制を構築するとともに、世界最先端の知見を有するアドバイザー及びアカデミアとの連携を強化し、グローバルでの医薬品開発及び事業化の実現に取組んでまいります。 以上を受けた当事業年度の経営成績は、事業収益は計上がなく、営業損失3,710,176千円(前事業年度は営業損失1,595,660千円)、経常損失2,636,377千円(同 経常損失1,527,089千円)、当期純損失2,466,416千円(同 当期純損失1,499,008千円)となりました。 ② 財政状態の状況 (資産) 当事業年度末の総資産は4,761,406千円となり、前事業年度末に比べ1,904,687千円増加しました。これは主に、第三者割当増資、及び公募増資等により現金及び預金が2,149,681千円増加した一方で、研究開発に関連する前渡金が319,298千円減少したこと等によるものであります。 (負債) 当事業年度末の負債は383,078千円となり、前事業年度末に比べ95,771千円減少しました。これは主に、JPH034の開発に係る国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの補助金に関する預り金が209,261千円減少した一方で、研究開発に関連する未払金が103,048千円増加したこと等によるものであります。 (純資産) 当事業年度末の純資産は4,378,327千円となり、前事業年度末に比べ2,000,458千円増加しました。株式の発行及び新株予約権の行使により資本金、資本剰余金がそれぞれ2,613,187千円増加したのに対して、欠損填補により、資本金が660,490千円、資本剰余金が838,518千円減少しております。また、新株予約権について、発行等により302,056千円増加し、行使により876,736千円、放棄により184,820千円減少しております。さらに当期純損失の計上及び欠損填補により利益剰余金が967,407千円減少したことによるものであります。 ③ キャッシュ・フローの状況 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は4,452,646千円となり、前事業年度末から2,150,783千円増加しました。当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。 (営業活動によるキャッシュ・フロー) 当事業年度において営業活動の結果使用した資金は2,248,727千円(前事業年度に使用した資金は1,694,864千円)となりました。これは主として、ナンブランラトのグローバル第3相臨床試験、及びJPH034の第1相臨床試験の準備並びに実施したこと等による税引前当期純損失2,465,300千円の計上によるものであります。 (投資活動によるキャッシュ・フロー) 当事業年度において投資活動の結果使用した資金は3,667千円(前事業年度に使用した資金は191千円)となりました。これは主として、有形固定資産の取得による支出4,024千円や敷金及び保証金の差入による支出6,840千円があったことに対して、子会社の清算による収入9,442千円があったことによるものであります。 (財務活動によるキャッシュ・フロー) 当事業年度において財務活動の結果獲得した資金は4,333,814千円(前事業年度に獲得した資金は2,924,000千円)となりました。これは主として、第三者割当増資、及び公募増資等での株式の発行による収入3,777,261千円があったことによるものであります。 ④ 生産、受注及び販売の実績 a.生産実績 当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。 b.受注実績 当社は受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。 c.販売実績 当社は当事業年度においては、該当事項はありません。 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。 ① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 当事業年度の経営成績及び財政状態に関する認識及び分析・検討内容については、上記「(1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」及び「(1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載しております。 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報 当社の事業活動における主な資金需要は、研究開発に伴う大学等の研究機関との共同研究、非臨床試験や臨床試験を含む当社が保有するパイプラインの開発費、ナンブランラトの特許の強化・延長のための研究費、次期パイプラインの基礎研究及び創薬研究、創薬基盤技術の研究、並びに特許出願に係る費用などです。特にナンブランラトの胆道がんに対する開発が進展しており、グローバル対応のための薬事関連費用や臨床試験費用などの支出が必要となっております。化合物の価値をさらに高めるため、引き続き投資を行う計画であります。 当社はこれらに必要な資金は、過去に実施した増資資金及び株式公開における資金調達で賄う予定です。また、資金の流動性については現金及び現金同等物において確保を図っております。 なお、当社では支払い案件ごとに費用を積み上げる方法で詳細な費用計画を立てることで、将来の資金需要を精緻に予測しております。流動性リスクを管理するための定量的な指標は現時点では設定しておりませんが、支出状況及び資金残高の定期的なモニタリングを実施しております。その結果、資金繰りに懸念が生じる可能性があると判断した場合には、研究開発活動の優先順位を踏まえた支出の抑制や支出時期の見直し等を行うことにより、資金の流動性確保に対応する方針としております。 キャッシュ・フローの状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて、過去の実績や現状等を勘案し合理的に見積り、計上しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りと異なる場合があります。 当社の財務諸表の作成にあたって、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表  注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。 ④ 経営成績に重要な影響を与える要因について 上記「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。 ⑤ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等についての分析 上記「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営上の目標の達成状況を把握するための客観的な指標等」に記載のとおりであります。

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開示資料

出典

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