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日経平均64,325.64-1,890NYダウ52,959.24+192ドル円158.93-1NASDAQ26,195.71+96S&P 5007,663.84+32SOX 指数11,328.43+409/2終値

ispace

9348 · Growth · サービス業

月面着陸・探査を目指す民間宇宙企業。ランダーとローバーを自社開発し、ペイロード輸送とデータサービスの商業化を進める。

概要

ispaceは2010年に設立された民間宇宙企業で、月面探査を事業の柱とする。自社開発のランダーを用いて顧客の荷物を月へ輸送するペイロードサービスを提供する。東京都中央区に本社を置き、従業員数は333名。2023年4月に東京証券取引所グロース市場へ上場した。2025/3期の売上高は47億円だが営業赤字98億円と投資フェーズが続く。技術実証プログラム「HAKUTO-R」を経て、2028年以降の商業ミッションに向け次世代ランダー「ULTRA」の開発を進めている。

ペイロードサービスとデータサービスの二本柱

ispaceのビジネスモデルは、ランダーやローバーを用いたペイロードサービスとデータサービスの二つで構成される。ペイロードサービスでは、顧客の荷物を月まで輸送する。価格はランダー搭載で1.5百万米ドル/kg、ローバー搭載で3.5百万米ドル/kgを基本とし、契約ごとに変動する。売上は本契約からミッション完了までの期間にわたり、履行義務の進捗に応じて認識する。データサービスは将来の主要サービスとして計画され、顧客が自らペイロードを搭載してデータ収集する直接的な方法に加え、ispaceがデータ取得を代行する方式も検討されている。現在はNGC Aerospace社への売上計上など、初期の実績がある。

日米欧の三極体制によるグループ運営

グループは4社で構成される。日本法人の株式会社ispace(東京都中央区)が統括機能を担い、連結子会社としてispace technologies U.S., inc.(米国デラウェア州)、ispace EUROPE S.A.(ルクセンブルク)、株式会社ispace Ops Japan(東京都中央区)を置く。米国子会社はNASAのCLPSタスクオーダーCP-12にTeam Draperの一員として採択されており、月面物資輸送プログラムに関与する。欧州子会社はESAとのMAGPIEプロジェクトでローバー開発やペイロードサービスの契約を予定する。日本子会社は国内の運用管制業務を担当する。この体制により、各国の宇宙機関や政府との連携を強化している。

赤字が続く収益構造と厚い資金調達

ispaceは創業以来、研究開発とミッション実行に多額の投資を続け、2026/3期まで毎期営業赤字を計上している。2025/3期の営業損失は98億円、2026/3期は116億円に拡大した。売上高は2025/3期の47億円から2026/3期は33億円に減少し、ミッション2の着陸失敗が影響した。一方で資金調達は活発で、シリーズA(101.5億円)、シリーズB(35億円)、シリーズC(55.6億円)に加え、上場後の公募増資や第三者割当、銀行借入により累計で数百億円を調達している。2026年3月末時点の現金及び預金は165.7億円、長期借入金は102.6億円と、当面の運転資金は確保されている。

業界の中での役割は月面輸送サービスプロバイダーにあたる。

この章の文章は、有価証券報告書と会社の開示をもとにAIが編纂しています。数値は開示のままで、AIには生成させていません。

売上高
33億円
営業利益
-116億円
営業利益率
-351.5%
純利益
-82億円
2026/3 通期の連結業績。決算の内訳は最新の決算以降にあります。

何をしている会社か

有価証券報告書「事業の内容」(2026/3期)より

事業別の売上と利益

2026/3
事業売上構成比利益利益率
ペイロード サービス23億円69.7%
パートナーシップ サービス4億円12.1%
受託研究4億円12.1%
その他2億円6.1%

有価証券報告書のセグメント情報から、外部顧客への売上とセグメント利益をそのまま掲載しています。全社費用・セグメント間取引の消去は含みません。

01宇宙機関・研究機関主力

NASA、JAXA、ESAなどの宇宙機関や研究機関に対し、月面探査機や実験機器の輸送サービスを提供。各国の宇宙プログラムに参画し、科学ミッションを支援する。

主要顧客JAXA、NASA、ESA、MBRSC

主な製品・サービス1
ペイロードサービス
ランダーやローバーに顧客の物資を搭載し、月まで輸送するサービス。輸送に加え、搭載調整や月面での運用支援も含む。

02民間企業主力

民間企業に対し、月面に自社製品や実験装置を輸送するペイロードサービスを提供。月面での実証実験や資源探査などのニーズに対応する。

主要顧客日本特殊陶業、高砂熱学工業、ユーグレナ、Magna Petra、TASA

主な製品・サービス1
ペイロードサービス
月面への物資輸送サービス。顧客の要望に応じたミッション設計を提供。

03データサービス準主力

月面や月周回軌道から取得した画像・環境データなどを顧客に提供。将来的には大規模な月データベースを構築し、サブスクリプション型で提供する計画。

主要顧客NGC Aerospace

主な製品・サービス1
データ取得・提供サービス
ミッションを通じて取得した月面の画像、環境データ、資源情報などを顧客ニーズに応じて提供。

04安全保障・通信副次

月周回衛星を利用した月面観測や通信・測位サービス(ルナ・コネクトサービス)の立ち上げを検討。安全保障ニーズや月面インフラ構築に対応する。

主要顧客KDDI

主な製品・サービス1
ルナ・コネクトサービス
月周回衛星を活用した通信・測位サービス。月面活動の支援を目的とする。

製品と技術

RESILIENCEランダーからULTRAランダーへの進化

ミッション1および2では「RESILIENCE」ランダーが使用された。これは最大30kgのペイロードを運搬可能な小型無人ランダーで、SpaceXのファルコン9で打ち上げられた。2026年3月に発表されたULTRAランダーは、当初米国で開発していたAPEX1.0と日本で開発していたシリーズ3を統合したモデルである。ペイロード容量を最大200kgに拡大し、COTS部品の活用と民間ならではの開発プロセスによりコスト低減を図る。品質向上サイクルを回すため、高頻度のミッション(年間2〜3回)を計画し、量産による安定化を目指す。

TENACIOUSローバーによる月面探査

ispaceはローバー「TENACIOUS」を開発している。これは無人で月面を走行し、観測やデータ収集を行う。ミッション1ではUAEのMBRSC向けに月面探査ローバーを輸送する契約があった。ミッション3では韓国のUEL社の二輪ローバーを搭載予定。ローバーはランダーから展開され、太陽光エネルギーで約14日間(月の日中時間)動作する。取得したデータはランダー経由で地球のミッションコントロールセンターに伝送される。将来的にはローバーによる複数地点の探査を反復し、データプラットフォーム構築に貢献する。

ペイロードサービスと顧客開拓の広がり

ペイロードサービスはispaceの核心的な収益源である。ミッション1では日本特殊陶業(固体電池)、JAXA(変形型ロボット)、カナダのMission Control Space Services(AIコンピュータ)などと契約。ミッション2では高砂熱学工業(水電解装置)、台湾中央大学(放射線プローブ)、ユーグレナ(微細藻類培養)など多様な顧客を獲得した。ミッション3以降も東京科学大学(水資源探査)、台湾TASA(磁力計・紫外線望遠鏡)、Magna Petra社(質量分析計)などが決まっている。価格はペイロード1kgあたり1.5百万米ドル(月面着陸)を基準に設定され、技術要件に応じて変動する。

有価証券報告書の事業の記述をもとにAIが編纂しています。

業界での位置づけ

サービス業のなかでの位置

宇宙開発の先駆者、収益化途上で赤字継続

宇宙関連サービスを手掛ける数少ない上場企業の一つ。同業他社には人材派遣や建設、ITサービスなど異業種が多く、直接の比較対象は少ない。売上高は2025年3月期に47億円と倍増したが、営業損失は208億円と赤字幅が拡大。2026年3月期も売上減と赤字拡大が見込まれる。宇宙産業は成長市場だが、事業化に時間を要するため、投資回収には長期的視点が必要。

強み

  • 民間主導で月着陸船を開発し、世界初の民間月面着陸を目指す。
  • 米国や欧州にも拠点を持ち、国際的な宇宙ビジネスを推進。
  • IPOや第三者割当増資で大型資金を調達し、長期開発を支える。
  • NASAやJAXA、国内外の企業と契約を獲得し実績を積む。

課題

  • 継続的な赤字で、早期の事業収益化が課題。
  • 月着陸船の開発や打ち上げに高い技術的ハードルがある。
  • 米国など海外の民間宇宙企業が先行し競争が激しい。

強みと課題は、開示資料をもとにAIがまとめた見立てです。

同業の企業

サービス業の時価総額近傍。太字がispace

時価総額で並べると、掲載11社のなかで6番目にあたる。

#企業時価総額PER
17366LITALICO643億円21.7倍
29619イチネンホールディングス641億円8.3倍
39552クオンツ総研ホールディングス632億円20.7倍
46574コンヴァノ621億円
56200インソース616億円14.5倍
69348ispace610億円
79757船井総研ホールディングス585億円13.4倍
82749JPホールディングス581億円13.2倍
92395新日本科学562億円12.3倍
109639三協フロンテア558億円9.5倍
114658日本空調サービス554億円14.6倍

時価総額は直近の終値ベース。同業の範囲は東証33業種の分類に従っています。

会社の歴史

沿革 51件

Google Lunar XPRIZE参画から法人設立へ(2010〜2013年)

2010年1月、代表取締役CEOの袴田武史が東北大学吉田和哉教授とともにGoogle Lunar XPRIZEへの参加を検討し始めた。同年9月、合同会社ホワイトレーベルスペース・ジャパン(現ispace)を埼玉県入間市に設立。2013年5月に株式会社へ組織変更し、社名を株式会社ispaceとした。同年7月、日本唯一の参加チーム「HAKUTO」としてGoogle Lunar XPRIZEに正式に始動した。この時点ではローバー開発が中心であり、2015年1月には中間賞を受賞している。

米国子会社設立とランダー開発着手(2015〜2017年)

2015年1月、米国デラウェア州にispace technologies, inc.を設立し、株式会社ispaceを子会社化する組織変更を実施。同時にGoogle Lunar XPRIZEの中間賞を受賞した。2016年4月、月面開発事業への本格進出に向けランダーの開発に着手。同年10月には米国子会社を解散し、日本を本社とする体制に戻すとともに、新たにispace technologies U.S., inc.を設立し、NASA Ames Research Park内にオフィスを設置した。2017年3月にはルクセンブルクにispace EUROPE S.A.を設立し、同国政府と月の資源開発に関する覚書を締結。ランダー開発の国際展開が本格化した。

大型資金調達とHAKUTO-Rプログラム始動(2017〜2018年)

2017年12月、ランダー開発のためにシリーズAラウンドで101.5億円の資金調達を実施。2018年2月には追加ラウンドで2億円を調達し、累計103.5億円に達した。しかし2018年3月、Google Lunar XPRIZEが終了したため、HAKUTOプログラムを終了。直ちに新プログラム「HAKUTO-R」を立ち上げ、SpaceX社のファルコン9ロケットでの打上げを公表した。大型資金を背景に、民間月面探査の技術実証ミッションへと舵を切った。

ミッション1打上げと株式上場(2022〜2023年)

2022年12月、ミッション1の打上げをフロリダ州ケープカナベラル宇宙基地より実施。SpaceXファルコン9で打ち上げられ、ランダーは月遷移軌道への投入後、月周回軌道へ入った。しかし2023年4月、月面着陸(Success9)の完了が困難と判断され、着陸は失敗に終わった。同月、東京証券取引所グロース市場に株式を上場し、65.1億円を調達。上場後も保険金約38億円の受領や追加の借入・増資により資金を確保した。

ミッション2の失敗とHAKUTO-R終了(2024〜2025年)

2025年1月、ミッション2「SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON」を打上げ。総額10.5kgのペイロードを搭載したが、同年6月に月面着陸の完了が困難と判断された。ミッション2の保険は着陸失敗をカバーしておらず、保険金は受け取れなかった。2025年12月、全22社のパートナー企業との契約満了をもってHAKUTO-Rプログラムの終了を発表。この間も資金調達を継続し、2024年には総額100億円の借入、2025年には最大182億円の公募増資等を実施した。

事業構造改革と次世代機ULTRAへの統合(2026年)

2026年3月、日米で個別に開発していたランダーを統合し、新モデル「ULTRA」とすることを発表。同時に開発体制の構造改革を進め、エンジン変更に伴い米国ミッションの打上時期を2030年に再設定した。また、通信・測位サービス「ルナ・コネクトサービス」の立ち上げ検討を開始。宇宙戦略基金の第2期テーマ「月極域における高精度着陸技術」に採択され、支援上限200億円を得る見込み。これによりミッション4の開発開始が正式決定した。

年表51件を開く

2010年代

  • 2010年1月当社代表取締役CEOの袴田武史が東北大学吉田和哉教授とともに日本からGoogle Lunar XPRIZE(注1)参加の検討を開始
  • 2010年9月創業合同会社ホワイトレーベルスペース・ジャパン(現 当社)を埼玉県入間市に設立
  • 2013年5月商号変更合同会社を株式会社に組織変更し、社名を株式会社ispaceに変更
  • 2013年7月Google Lunar XPRIZEに日本唯一の参加チーム「HAKUTO」(注2)として始動
  • 2015年1月「HAKUTO」で開発するローバーが宇宙空間でも機能する性能を持つことが評価され、Google Lunar XPRIZEの中間賞を受賞
  • 2015年1月M&A米国デラウェア州にispace technologies, inc.を設立し、株式会社ispaceを子会社化する組織変更を実施
  • 2015年8月業容拡大に伴い、本社を東京都港区麻布台に移転
  • 2016年4月月面開発事業への本格進出に向け、ランダーの開発に着手
  • 2016年10月インキュベイトファンド株式会社及び株式会社日ノ樹よりコンバーティブル・エクイティで2億円を調達
  • 2016年10月商号変更日本での事業化加速のため、米国本社ispace technologies, inc.を解散の上、株式会社ispaceを本社に変更
  • 2016年10月新規に子会社ispace technologies U.S., inc.(連結子会社)を米国デラウェア州に設立し、NASA Ames Research Park(米国カリフォルニア州)内にオフィスを設置
  • 2017年3月ルクセンブルク大公国政府と月の資源開発に関する覚書を締結し、子会社ispace EUROPE S.A.(連結子会社)を設立
  • 2017年12月ランダー開発のために101.5億円の資金調達(シリーズA)を実施
  • 2018年2月シリーズAの追加ラウンドとして2億円(累計103.5億円)の資金調達を実施
  • 2018年3月Google Lunar XPRIZEの終了に伴い、HAKUTOプログラムを終了
  • 2018年7月業容拡大に伴い、本社を東京都港区芝に移転
  • 2018年9月月面探査の技術検証ミッション「HAKUTO-R」(注3)プログラムの立上げ及びSpace Exploration Technologies Corp.(以下、「SpaceX社」という。)のファルコン9ロケットで相乗りでの打上げを公表

2020年代

  • 2020年7月ランダー開発のために追加で30億円の資金調達(シリーズB)を実施
  • 2020年12月ispace technologies U.S., inc.のオフィスをカリフォルニア州からコロラド州デンバーへ移転
  • 2020年12月ミッション・コントロール・センター(ランダー及びローバーを地球から操縦するための管制室)を東京都中央区日本橋に開設
  • 2020年12月NASAによる月面で採取した月のレゴリス(砂)の販売に関する商取引プログラムに、当社とispace EUROPE S.A.が採択される
  • 2020年12月シリーズBの追加ラウンドとして5億円(累計35億円)の資金調達を実施
  • 2021年2月業容拡大に伴い、本社を東京都中央区日本橋浜町に移転
  • 2021年5月国内大手銀行4行から、総額19.5億円の借入を実行
  • 2021年7月東京都中央区に株式会社ispace Japan (現 株式会社ispace Ops Japan) (連結子会社)を設立
  • ランダー開発のために追加で53.1億円の資金調達(シリーズC)を実施
  • 2021年10月シリーズCの追加ラウンドとして2.5億円(累計55.6億円)の資金調達を実施
  • 2022年7月ispace technologies U.S., inc.がチャールズ・スターク・ドレイパー研究所(以下、「ドレイパー研究所」という。)を中心とするチームの一員としてNASAの商業的物資輸送プログラム(Commercial Lunar Payload Services、以下、「CLPS」という。)のタスクオーダーCP-12のサービスプロバイダーに採択される
  • 2022年7月金融機関各行より総額50億円の借入を実行
  • 2022年12月民間月面探査プログラムミッション1の打上げをフロリダ州ケープカナベラル宇宙基地より実施
  • 2023年4月上場東京証券取引所グロース市場に株式を上場し、65.1億円の資金調達を実施
  • 2023年4月ミッション1マイルストーンのSuccess8までを完了、Success9の完了が困難と判断
  • 2023年12月SBIR制度の公募テーマ「月面ランダーの開発・運用実証」において、補助対象事業として採択され、補助金120億円の交付決定通知書を受領
  • 2024年1月金融機関各行より、2024年3月期の総額として75億円の借入を実行
  • 2024年3月海外募集により83.6億円の資金調達を実施
  • 2024年4月株式会社三井住友銀行より借換も含めた総額70億円の融資契約を締結
  • 2024年7月金融機関各行より総額100億円の借入を実行
  • 2024年9月ルナ・アドバイザリー・ボードの創設を発表
  • 2024年10月Heights Capital Management, Inc.に対する第三者割当により70億円の資金調達を実施すると共に新株予約権を発行(注4)
  • 2024年11月株式会社三井住友銀行がHAKUTO-Rオフィシャルパートナーとして参画
  • 2025年1月ミッション2“SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON”の打上げを実施
  • 2025年4月宇宙戦略基金(第1期)として公募された「月面の水資源探査技術(センシング技術)の開発・実証」に、当社が連携機関として参画する研究開発課題「テラヘルツ波リモートセンシング衛星による月地下浅部の資源探索」が採択
  • 2025年5月株式会社三井住友銀行から100億円、株式会社みずほ銀行から50億円の借入を実行
  • 2025年6月ミッション2“SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON”のSuccess9である月面着陸の完了が困難と判断
  • 公募増資及び第三者割当により最大182億円の資金調達を実施(注5)
  • 2025年12月全22社のパートナー企業との契約満了を以て、民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」の終了を発表
  • 2026年1月宇宙戦略基金(第2期)として公募された「月極域における高精度着陸技術」に、当社が実施機関として技術開発課題「南極近傍への高精度着陸と通信中継衛星を用いた極域でのペイロード活動支援」が採択
  • 2026年1月サウジアラビア王国における事業機会の創出を目的に、子会社ispace S Aを設立手続きを開始
  • 2026年3月事業規模拡大に伴い、オフィス機能を集約し、本社を東京都中央区日本橋本町に移転
  • 2026年3月M&A日米ランダーモデルを「ULTRA」に統合及び開発体制の構造改革を発表
  • 2026年3月通信・測位のサービスを提供する「ルナ・コネクトサービス」の立ち上げ検討を開始

有価証券報告書の沿革をもとにAIが通史として編纂しています。年表は沿革の記載そのままです。

これからの方針

有価証券報告書 2026/3期の経営方針より

会社は4つの方針を掲げている。有価証券報告書には具体的な数値目標の記載がない。

  1. 01

    品質向上サイクルの実現

    小型軽量な無人ランダー・ローバーの開発とCOTS品調達により低コスト化を図り、高頻度にミッションを繰り返すことで、失敗から学び改善する反復サイクルを回し、技術の品質向上と製品の量産安定化を目指す。

  2. 02

    ミッションリスクに備えた手当

    信頼性の高いロケット選定や月保険の締結、顧客との自損自弁契約体系などにより、ミッション失敗時の財務リスクを軽減する仕組みを構築。将来的には損害保険商品の導入も検討する。

  3. 03

    継続的なミッション資金の十分な確保

    複数ミッションを同時並行で進めるため、株式発行や銀行借入により、累計で大規模な資金調達を実施。開発・打上・エンジニア確保の原資を継続的に手当し、持続的な事業運営を支える。

  4. 04

    政府宇宙機関及び民間企業の双方の顧客ターゲティング

    世界中の政府宇宙機関(UAE、カナダ、JAXA、欧州、NASA等)と民間企業の双方を顧客として開拓し、ペイロード輸送やデータサービスを提供することで、安定的かつ多様な収益源を確保する。

有価証券報告書の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」から、AIが項目ごとに整理しています。数値目標は原文に書かれたものだけです。

社員と組織

有価証券報告書 4期分

グループ全体で333人が働いている。提出会社(単体)の平均年収は1,076万円で、3期前と比べて+25.0%平均年齢は40.2歳、平均勤続年数は2.8年。

決算期平均年収万円平均年齢平均勤続連結従業員数一人当たり営業利益万円
2023年3月86041.62.2216
2024年3月96441.12.6282
2025年3月97842.32.8317−3,091
2026年3月1,07640.22.8333−3,483

平均年収・平均年齢・平均勤続は有価証券報告書に記載された提出会社(単体)の値、従業員数はグループ全体の値です。一人当たり営業利益は連結営業利益を連結従業員数で割ったもので、給与などの費用を払ったあとに一人あたりいくら残るかの目安になります。

拠点とグループ

設備と関係会社

関係会社2(国内 1 / 海外 1、うち連結子会社 2) を有報から抽出しています。

主要な設備 (帳簿価額 上位3)
本社 — 東京都中央区、他987百万円
月面開発事業
米国 — 12876 E.Adam Aircraft Circle, Englewood, Colorado 80112, U.S.A.860百万円
月面開発事業
ルクセンブルク大公国 — 5,Rue de l'Industrie, L-1811 Luxembourg21百万円
月面開発事業
主な関係会社
  • 国内
    ispace EUROPE S.A. (注)2.3.4
    ルクセンブルク大公国 ルクセンブルク市 · 連結子会社
    議決権100.0%
  • 海外
    ispace technologies U.S., inc. (注)5.6.7
    米国 コロラド州デンバー · 連結子会社
    議決権100.0%

業績のいま

有価証券報告書・決算短信より

2026年3月期の売上高は33億円営業利益-116億円前期と比べると減収で、売上が-29.8%。

売上高
-29.8%
33億円
営業利益
-116億円
純利益
-82億円
営業利益率
-351.5%
前期比 -143.0%pt

会社が出している今期の予想2027年3月期

項目会社予想前期実績
売上高33億円33億円
営業利益-177億円-116億円
純利益-130億円-82億円
1株あたり配当¥0¥0

会社が決算短信で公表した予想です。証券会社の予想ではありません。 短信の原本

四半期の推移

9期分

直近は2027年1Qで、売上は2億円、営業利益は−64億円。前年の2024年1Qと比べると、売上は−75.0%。

対象期間売上高億円営業利益億円営業利益率%純利益億円
2024年1Q8−11−137.5−14
2024年2Q5−9−180.029
2024年3Q5−17−340.0−23
2024年4Q6−16
2025年2Q13−37−284.6−64
2025年4Q34−61−179.4−55
2026年2Q22−42−190.9−45
2026年4Q11−74−672.7−37
2027年1Q2−64−3200.0−63

期ごとの単独の業績で、期首からの累計ではありません。

業績の推移

有価証券報告書 8期分

2019年3月期からの8期で、売上は3億円から33億円へ11.0倍に増えた。直近期の営業利益率は-351.5%。

決算期売上高億円営業利益億円経常利益億円営業利益率%純利益億円
2019年3月3−12−13
ミッション・コントロール・センター(ランダー及びローバーを地球から操縦するための管制室)を東京都中央区日本橋に開設
2020年3月2−16−16
東京都中央区に株式会社ispace Japan (現 株式会社ispace Ops Japan) (連結子会社)を設立
2021年3月5−26−26
2022年3月7−40−41
東京証券取引所グロース市場に株式を上場し、65.1億円の資金調達を実施
2023年3月10−114−114
2024年3月24−61−24
2025年3月47−98−113−208.5−119
日米ランダーモデルを「ULTRA」に統合及び開発体制の構造改革を発表
2026年3月33−116−81−351.5−82

金額は有価証券報告書の連結値をそのまま掲載しています。帯の長さは列ごとの最大値との比です。空欄の期は有価証券報告書からその項目の数値が取れていません(0ではありません)。

利益の構造

2026年3月期

売上高33億円のうち、営業利益として残るのは-116億円-351.5%。営業外の損益と税金を反映した純利益は-82億円、売上の-248.5%にあたる。営業利益率は業種中央値7.5%を下回る水準。

売上高を100としたときの内訳
  • 売上原価など作る・仕入れるのにかかったお金187.9%62億円
  • 販売費及び一般管理費売る・管理するのにかかったお金263.6%87億円
  • 営業利益費用を引いたあとに残った本業の利益-351.5%-116億円

有価証券報告書の損益計算書から、当期の金額をそのまま割り振っています。

粗利率
-87.9%
売上から原価を引いて残る割合
営業利益率業種比359.1pt
-351.5%
本業の利益として残る割合
純利益率業種比253.5pt
-248.5%
税金まで払って最後に残る割合
ROA
-17.2%
資産全体がどれだけ利益を生んだか
ROIC
-45.1%
事業に使うお金がどれだけ利益を生んだか

ROICは有利子負債の開示がないため、営業利益×0.7÷(総資産−現金)の簡易式で算出しています。

お金の流れ

キャッシュフロー計算書 6期分

2026年3月期は営業CFが−136億円、投資CFが−18億円で、差し引きのフリーCFは−154億円この組み合わせは先行投資型にあたる。本業がまだ現金を生まない中、調達した資金で投資を続けている。スタートアップ・再建初期の型期末の手元現金は297億円で、売上の108.0ヶ月分にあたる

決算期営業CF億円投資CF億円財務CF億円フリーCF億円現金残高億円
2021年3月−26−235−2843
2022年3月−54−175−5563
2023年3月−73−144−7434
2024年3月−50−21204−71168
2025年3月−120−27104−147131
2026年3月−136−18314−154297

本業で稼いだ現金が営業CF、設備や事業への投資が投資CF、借入と返済・配当が財務CF。営業・投資・財務の3列は縦線が0で、右がプラス、左がマイナスです。健全な会社の基本形は営業CFがプラスで投資CFがマイナス。フリーCFは営業CFと投資CFの合計で、手元に残る現金を表します。

資産と負債

貸借対照表 8期分

2026年3月期の総資産は477億円。このうち返さなくてよい自己資本が152億円で、自己資本比率は31.6%(業種中央値53.4%より薄い)

決算期総資産億円自己資本億円負債億円自己資本比率%
2019年3月8480495.0
2020年3月7164790.5
2021年3月85731286.2
2022年3月125883770.7
2023年3月72−2395
2024年3月2709717336.0
2025年3月2727020225.4
2026年3月47715232531.6

自己資本比率は総資産のうち返済のいらないお金の割合で、高いほど借入への依存が小さいことを示します。負債は総資産から自己資本を引いた額です。

2026年3月期の内訳
現金及び預金
297億円
すぐ使えるお金
利益剰余金
-251億円
過去の利益の積み上がり
負債合計
325億円
いつか返す必要があるお金
財務の健全性
21
/ 100
安定性自己資本比率21 / 40
収益力営業利益率0 / 30
現金創出営業CFの黒字継続0 / 30

有価証券報告書の数値から機械的に配点した参考値です。自己資本比率60%で満点、営業利益率15%で満点、直近3期の営業CFが黒字だった割合の3つを足しています。業態によって出ない要素があります。

業界内での比較

サービス業 534社との比較

同じサービス業の企業と並べると、いちばん上に来るのは自己資本比率534社中453位あたり、逆に低いのは売上成長率534社中528位あたり帯は左端が業種の最下位、右端が最上位で、縦線が真ん中にあたる。

ROE株主の出したお金でどれだけ利益を生んだか
/中央値 11.8%
P25 6.0%P75 18.9%
営業利益率下位売上のうち本業の利益として残る割合
-351.5%/中央値 7.5%
P25 3.5%P75 12.7%
自己資本比率下位総資産のうち返済のいらないお金の割合
31.6%/中央値 53.4%
P25 36.8%P75 69.7%
売上成長率下位前期からの売上の伸び
-29.8%/中央値 7.2%
P25 1.6%P75 16.0%
配当利回り株価に対して1年で受け取る配当の割合
/中央値 3.1%
P25 1.9%P75 4.1%

有価証券報告書の最新期の数値をもとに、同じ業種の企業の中での順位を毎日計算しています。P25は下から4分の1、P75は上から4分の1の位置にある企業の値です。

株価

9月2日の終値

直近の終値は¥417で、1年前と比べて-24.2%過去52週の値幅のなかでは6%の位置にある。

¥417-2.3%1ヶ月+1.0%1年-24.2%時価総額610億円
過去52週の値幅
安値¥397高値¥710

チャートの金額は株式分割と配当を反映して調整した終値で、上に出している直近の終値とは一致しないことがあります。

指標
PBR7.04倍

実績値は直近の決算、予想値は会社予想にもとづきます。株価は終値ベースです。

値動きの背景

直近1カ月で-6.8%と下落。週足では25日線(437.9円)を明確に下回り、弱気トレンド。出来高は7/10に978.9万株と急増し、売り圧力が強まった。52週安値406円に接近しており、下値リスクが高い。

値動きの背景は、株価と出来高の推移をもとにAIがまとめた見立てです。

AIの評価

AI評価

株価水準の解釈です。売買の推奨ではありません

現在の株価水準を割高と判定しています(スコア 10/100)

PERは算出不能(赤字継続)、PBRは3.98倍と業界平均3.09倍を上回る。営業赤字が拡大しており、収益性の改善見通しが立たない。配当も無配。成長期待のみで株価が評価されており、割高と判断。

指標この会社業種平均
PBR7.04倍3.51倍

業種平均は同じ東証33業種に属する銘柄の単純平均です。銘柄数が少ない業種では平均が振れます。

AI評価判定とスコアは公開データをもとにした解釈で、将来の株価を示すものではありません。算出の考え方は編集方針に記載しています。

評価が分かれる点

AI分析

投資家の見方

月面開発の将来性に賭ける投資か、不確実性の高い投機か。2025年6月に2回目の着陸に再挑戦予定。成功すれば政府・企業からの受注加速が期待されるが、失敗リスクも大きい。財務面では赤字継続で資金調達リスクも。PERは算出不能、PBR約4倍と期待先行。強気派は技術力と市場の将来性を評価、弱気派は収益化の遅れと資金調達リスクを懸念。

プラスに働く材料7
  • 技術優位と先行者利益

    民間月面着陸で世界唯一の実績(一部成功)。

  • 市場の成長性

    月面探査市場は2030年までに拡大見込み。

  • 政府・企業の契約獲得

    NASAやJAXAとの契約実績あり、受注拡大の芽。

  • 最終赤字縮小、-119→-82億円2026年3月期影響

    FY26純損失82億円、前期比31%改善。黒字化の目途立たずも赤字幅縮小

  • 売上高は依然高水準、FY24比増継続影響

    FY26売上33億円はFY24の24億円から依然高い。宇宙事業の成長性

  • 月面探査事業の進展期待不定影響

    月面探査ミッション成功なら収益化の可能性。政府支援の追い風も

  • PBR3.98倍、純資産価値で下支え継続影響

    PBR3.98倍、純資産151億円程度。株価は資産価値に下支えられる

マイナスに働く材料7
  • 赤字と資金調達リスク

    2025/3期は営業赤字98億円。資金消耗が続く。

  • 着陸失敗リスク

    2023年着陸失敗。再挑戦の成功確率不透明。

  • 株価のボラティリティ

    1年で-27%下落。テーマ株特有の乱高下。

  • 営業損失拡大、-116億円2026年3月期影響

    FY26営業損失116億円、前期比18%悪化。本業の収益化遅れ

  • 売上高30%減、33億円2026年3月期影響

    FY26売上33億円、前期47億円から大幅減。受注減少懸念

  • 累積赤字拡大、自己資本毀損リスク継続影響

    連続赤字で自己資本減少、財務基盤悪化。増資リスクも

  • 無配かつ利益なし、バリュエーション困難継続影響

    PERなし、配当なし。将来収益の不確実性から割高感

次の決算で確かめる点
着陸ミッションの成否
収益化の前提となる技術実証の成否。
受注残高
将来収益の可視性を示す。
現金保有額と燃焼率
資金調達が必要になる時期を把握。

株主

有価証券報告書より

2026年3月期末の株主数は延べ105,862人。区分でいちばん多いのは個人・その他70.9%。グループ会社や銀行などの安定株主が17.6%を占め、残る82.4%が市場で売買されうる浮動株にあたる。

所有者の区分ごとの比率

所有者の区分2023年3月%2024年3月%2025年3月%2026年3月%
個人・その他53.559.072.270.9
事業法人29.515.97.913.8
外国法人6.213.79.38.3
金融機関9.86.76.33.8
証券会社1.13.43.22.4
外国人個人0.01.31.00.7

発行済株式に対する持ち株比率です。単元未満株の扱いにより、合計が100%にならない期があります。

大株主上位10

順位株主持ち株比率 %
01袴田 武史8.21
02高砂熱学工業株式会社4.79
03JICVGIオポチュニティファンド1号投資事業有限責任組合4.38
04インキュベイトファンド3号投資事業有限責任組合4.10
05栗田工業株式会社2.92
06赤浦 徹2.20
07STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505019 (常任代理人 株式会社みずほ銀行)2.04
08株式会社日本政策投資銀行1.93
09IF GROWTH OPPORTUNITY FUND 1, L.P. (常任代理人 SMBC日興証券株式会社)1.46
10三井住友信託銀行株式会社1.35

有価証券報告書の大株主の状況から、上位10者を掲載しています。信託銀行の名義は、実際の保有者ではなく運用を預かる先を指すことがあります。

大量保有報告の動き
5%超の保有者の提出ベース 直近1
  • 2026-04-30
    赤浦 徹
    新規の大量保有報告
    6.30%
    -0.68pt

提出があった時点の記録です。その後5%を割った保有者が一覧に残ることがあります。

株価指標の推移

有価証券報告書 8期分

1株利益は8期で+89%、1株純資産は4期で−37%。期末時点の株価にもとづく指標の推移。

決算期EPSBPS
2019年3月−574
2020年3月−718
2021年3月−55
2022年3月−78164
2023年3月−211
2024年3月−29105
2025年3月−12465
2026年3月−66103

有価証券報告書に記載された各期の値です。PERは期末時点の株価にもとづく実績値で、いまの株価から計算した値とは異なります。

EPS1株利益
1株が1年で稼いだ純利益。伸びていれば株の稼ぐ力が育っている
BPS1株純資産
1株あたりの持ち分。会社に積み上がった蓄えの目安

経営陣

11名 有価証券報告書の提出日現在

有価証券報告書に載っている役員は11名。2026/3期の役員報酬は総額89百万円。社内取締役1人あたりの報酬は、従業員の平均年収の約3倍にあたる。

氏名役職年齢保有株数
袴田武史代表取締役CEO4712,000,000
野﨑順平取締役CFO46291,800
赤浦徹取締役583,219,282
川名浩一取締役68
中田華寿子取締役61
畑田康二郎取締役47
牧野隆取締役69
井上優司監査役72
轟芳英監査役62
内藤亜雅沙監査役49
森慎一郎補欠監査役43

役員報酬の内訳2026/3

役員の区分人数固定報酬百万円その他百万円合計百万円1人あたり百万円
取締役(社内)248105829
社外取締役414144
監査役1101010
社外監査役2774

有価証券報告書の役員報酬等の総額から、区分ごとの内訳を載せています。人数は当期中に在任した延べ人数のため、期末の人数と一致しない期があります。

有価証券報告書

有価証券報告書 2026/3期

会社自身が書いた有価証券報告書の本文を、章ごとにそのまま収録しています (要約ではありません)。

事業の内容17,612字を開く

何をしている会社か、会社自身の説明

3【事業の内容】 当社は「Expand our planet. Expand our future.」をビジョンに掲げ、人類の生活圏を宇宙に広げ持続的な世界を実現するべく、月面開発の事業化に取り組んでいる次世代の民間宇宙企業です。当社グループは、当社及び連結子会社であるispace EUROPE S.A.(ルクセンブルク大公国)、ispace technologies U.S., inc.(米国)、株式会社ispace Ops Japan(日本)の計4社で構成されております。 <ビジネスモデルについて> 当社グループは、現在自社にて開発中のランダー及びローバーを用いて、1.ペイロードサービス、2.データサービスを提供することを、ビジネスモデルとしております。 1.ペイロードサービス 月に輸送する物資である顧客の荷物(以下、「ペイロード」という。)を当社グループのランダーやローバーに搭載し、月まで輸送するサービスを提供します。本サービスには、ロケットの打上げから月面へのペイロードの輸送は勿論のこと、打上げの約1~3年前頃を目途に開始される、顧客のペイロードをランダー及びローバーに搭載するための技術的なアドバイスと調整、更には月面到着後の実験の支援や、これらに関連する電力供給やデータ通信等に係るサービスの提供まで含まれます。当社グループでは、基本的に1機のランダーによる1回の月着陸及び月面探査のプロジェクトを「1ミッション」と定義し、ミッション単位で事業を運営しております。当社グループでは、初の月面着陸ミッションとなる2022年のミッション1及び、続く月面探査ミッションとなる2025年のミッション2を、技術実証ミッションとして位置付け、これら2ミッションを総括して「HAKUTO-R」プログラムと呼称しました。 ミッション1およびミッション2において、当社のランダーはSpaceX社のファルコン9ロケットにより打ち上げられ、成層圏を超えた宇宙の比較的地球に近いポイントまで運搬された後、ロケットから放出され、ランダー自身で燃料噴射による軌道制御等を繰り返した後、月遷移軌道と呼ばれる軌道へ入り、約4ヵ月の期間をかけて月の周回軌道へと入った後に月面着陸を予定しておりました。また、着陸後はローバー等の一部の稼働ペイロードはランダーから展開され、また一部のペイロードはランダー内部に搭載されたまま、月面での観測活動等を行い、データ収集等を行う計画でした。 ミッション1およびミッション2では、取得したデータは当社のランダーを経由して地球に伝送され、月面におけるミッション期間は、太陽光エネルギーをランダー及びローバーが獲得可能な、月の日中時間(約14日間)を計画しておりました。なお、ロケットから放出された後、ミッション完了まで当社が中央区日本橋に開設いたしましたミッション・コントロール・センターにおいて、人工衛星のミッション・オペレーションの知見を有する当社の従業員(ミッション・オペレーション・グループ)により制御されました。 図1:提供サービスのイメージ図 本サービスは、ペイロード重量に応じて1kg当たりの価格を顧客に課金する料金体系(注1)であり、ロケット打上げの1~3年前の本契約時からロケット打上げまでの間に、その全額が一括若しくは複数回に分割されて入金されます。宇宙開発分野においては、ミッションのための開発コストを負担する場合等、支出がミッションの1~3年前から発生することが多いことから、この様な打上げの1~3年前から入金が発生する契約体系は、当該分野において比較的一般的な商慣行となっており、現在契約締結を進めているミッション3以降の潜在顧客との間でも同様の契約体系を基本としております。また、売上の計上方法につきましては、ロケット打上げの1~3年前からペイロードの仕様や当社ランダーとのインターフェースの調整等のエンジニアリング検討の提供が開始されることから、本契約以降、ランダーが月へ到着しミッションを完了させるまでの期間にわたって、履行義務充足に応じた売上計上がなされる想定となります(注2)。 当社グループが開発するランダー及びローバーの外観は図2のとおりで、基本的に有人を想定しない、ロボティックス(無人)ミッションを想定しております。 ミッション1及びミッション2で使用したRESILIENCEランダーは、最大30kgのペイロードを運搬可能な設計となります。一方、2028年に打上予定のミッション3以降で使用するULTRAランダーは、この設計を拡張させ、足許最大で200kgのペイロードを運搬可能な設計であり、既に開発に着手しております。ULTRAランダーは、当初米国で開発していたAPEX1.0ランダーと日本で開発していたシリーズ3ランダー(仮名)を統合したモデルであり、顧客の要請に応える高品質と開発効率を両立したランダーモデルになります(注3)。ミッション4以降は年間2回のミッションを目指し、さらに中長期的には年間3回のミッションを通じて、高頻度にランダーでの月面着陸とローバーでの月面探査を実施することで、顧客荷物の月輸送や、顧客の要望に応じた月面データの取得等のサービスを行う、安定的な商業プラットフォームを構築することを目指しております。特に2028年から2030年代に向けては、ペイロードサービスによりもたらされる安定的な収益を基盤としながら、高頻度ミッションにより取得したデータを解析・高付加価値化したデータプラットフォームを構築し、顧客が必要とする情報にアクセス可能なサブスクリプションモデルのビジネスを展開することで当社事業の更なる成長を目指してまいります。また、データプラットフォーム構築のための先端開発投資として、データ取得のためのセンサー開発、データ解析、水資源探査、輸送サービス向上等を順次実施していく予定です。 当社初の実証ミッションとなる2022年のミッション1では、全体で約12.43kgのペイロードを輸送しましたが、その内の10kgについてはアラブ首長国連邦(UAE)のドバイの政府宇宙機関であるMohammed Bin Rashid Space Centre(以下、「MBRSC」という。)との間で月面探査ローバーの輸送を、日本特殊陶業株式会社との間では固体電池の輸送に関するペイロードサービス契約を締結しております。また、カナダ宇宙庁が推進する月面技術開発、宇宙空間での実証、科学ミッションを支援する月面探査加速プログラムであるLunar Exploration Accelerator Program(以下、「LEAP」という。)に採択されたカナダの民間企業であるMission Control Space Services(以下、「MCSS」という。)との間で人工知能のフライトコンピューター、同じくカナダの民間企業であるCanadensys Aerospace Corporation(以下、「Canadensys」という。)との間でカメラのペイロードサービス契約を締結しております。その他、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、「JAXA」という。)との間で変形型月面ロボットのペイロード輸送を合意し、2021年4月に本契約を締結しております。 また、2025年のミッション2では全体で10.5kgのペイロード輸送をしており、高砂熱学工業株式会社の月面用水電解装置、台湾中央大学の深宇宙放射線プローブ、株式会社ユーグレナの微細藻類培養装置、またムーンハウスとの間でアート作品を輸送するペイロードサービス契約を締結しております。 2028年打上予定(注4)で商業ランダーを活用する初のミッションとなるミッション3では、宇宙戦略基金第1期として公募された「月面の水資源探査技術(センシング技術)の開発・ 実証」に、国立大学法人東京科学大学が代表機関、当社が中核的連携機関として取り組む研究開発課題が2025年4月に採択され、東京科学大学との間で、当社が当該研究開発課題における衛星開発およびその打上輸送と運用を担うための業務委託契約を締結しております。また、台湾国家宇宙センター(以下、「TASA」という。)との間でベクトル磁力計及び紫外線望遠鏡のペイロードサービス契約を締結し、韓国の宇宙探査企業 Unmanned Exploration Laboratory 社 (以下、「UEL社」という。)との間では二輪月面探査ローバーのペイロードサービス契約を締結しました。また、米国の月面資源開発企業であるMagna Petra Corp(以下、「マグナ・ペトラ社」という。)との間で、ヘリウム3等の希少同位体を含む揮発性物質の観測を行う質量分析計を輸送するペイロード契約を締結しております。 2029年打上予定で量産化フェーズとなるミッション4では、当社は、宇宙戦略基金第2期のテーマである「月極域における高精度着陸技術」に採択され、支援上限額最大200億円の支援を受ける予定です(注5)。また、欧州宇宙機関(以下、「ESA」という。)との間で締結しているThe Mission for Advanced Geophysics and Polar Ice Exploration(先端地球物理学および極限氷探査ミッション(以下、「MAGPIE」という。))において、ESAはフェーズ2の予算として119億円を確保しており、今後、当社欧州法人との間でローバー研究開発受託契約およびペイロードサービス契約を締結する予定です(注6)。加えて、英国国立レスター大学との間で月面のレゴリスの観測を行うラマン分光器を輸送するペイロードサービス契約を締結しております。 2030年打上予定のミッション5は、当社がTeam Draperの一員としてNASAのCLPSタスクオーダーCP-12に採択されているミッションであり、新スケジュールの下でのCP-12実行に関してはNASAからの正式な承認待ちとなります(注7)。 (注1) 本書提出日時点の当社の価格設定としては、ランダーに搭載するペイロード価格として月面まで輸送する場合は1.5百万米ドル/kg、月周回軌道上まで輸送する場合は0.5百万米ドル/kg、ローバーに搭載するペイロード価格として、3.5百万米ドル/kgを基本価格として設定しています。なお、当社が行うペイロードサービスの単価については既に確立した水準は存在しないことから、契約相手方との関係や競合相手の状況によっては、当社が希望する水準での価格設定を行えない可能性があります。一方で、ペイロードの技術要件等の諸条件によっては、上記以上の価格での契約締結となる場合もあります。 (注2) 具体的な計上方法としては、ミッション1については、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができないため、原価回収基準を適用いたしました。ミッション2については、同様の理由により原価回収基準を適用しておりましたが、2025年1月の打上げ成功を契機として履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができるようになったことから、履行義務の進捗度に基づき収益を認識する方法に変更しております。ミッション3乃至ミッション5については、本書提出日時点まで履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができないため原価回収基準を適用しており、今後も引き続き原則として原価回収基準を適用する見込みです。なお、ミッション6以降の収益認識方法については、進捗度を合理的に見積ることができることが前提となりますが、詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)3.会計方針に関する事項 (3)重要な収益及び費用の計上基準」をご参照ください。 (注3) 当社は2026年3月に日米ランダーを統合した新モデルULTRAランダーを発表いたしました。ランダー統合及びエンジン変更に伴い、米国ミッションはミッション3から5へとナンバリングが変更になりました。 (注4) 当該打上時期については本書提出日時点の予定であり、今後変更する可能性があります。なお、当社が補助対象事業として採択されたSBIR(Small Business Innovation Research)制度の公募テーマ「月面ランダーの開発・運用実証」の事業実施期間が原則として2027年度とされており、SBIR制度に基づく補助金の対象となるミッション3は、当初2027年中の打上げとして経済産業省及びSBIR事務局と合意しておりましたが、本書提出日時点では当社内の開発計画上、2028年内の打上げとなることを見込んでおります。本変更については今後、関係省庁及びSBIR事務局と調整中の段階であり、最終的には経済産業省により正式に計画変更が認可されることとなります。 (注5) 今後ステージゲート審査等により変動し得る数字であるため、全額を受領することが本書提出日時点で確定するものではありません。 (注6) 2025/12末時点のTTMレートを使用し円換算。今後の契約内容等により金額が変動する場合があり、当該金額全額の契約締結を確約するものではありません。 (注7) 打上時期が2027年から2030年へ変更となったことに伴い、契約内容につきましては、今後修正予定です。 図2:当社が開発するランダー「ULTRA」:左とローバー「TENACIOUS」:右。それぞれの縮尺は異なります。 2.データサービス 当社は将来的にデータサービスをより主要なサービスの1つとして提供することを計画しています。顧客自身がペイロードを準備の上、当社に輸送を委託し、月面や月周回軌道から地球へ試験データをフィードバックする当社のペイロードサービスを活用した直接的なデータ収集に加えて、顧客が当社のペイロードを利用してデータ収集を行い、地球へその結果をデータとして送り返し、解析の上、次なるR&Dへ活用したいというニーズが確認されています。当社ではこれをデータサービスとして定義しており、LEAPに採択されたカナダの民間企業であるNGC Aerospace Ltd(以下、「NGC」という。)に対して、2026年3月期第1四半期に売上を計上いたしました。 ① 足許で需要が顕在化すると見込まれる、ミッションを通じたデータ取得サービス 当面の間(足許から2027年頃まで)は、ミッションごとに、当社自らが開発・購入するデータ計測機器やカメラ機器等(インターナル・ペイロード)を輸送し、主に月のデータを取得し、時には顧客の特定のニーズに合わせて取得するデータも都度アレンジしつつ、取得したデータを顧客に対して提供する予定です。またデータ提供だけではなく、(1)データ取得前の取得に関する技術コンサルテーションや運用計画、(2)取得後にデータを地球にフィードバックするための運用(電力・通信の運用)等もサービスの一環として提供することを目指しており、当社が本書提出日時点で想定している主なデータは以下のとおりです。 マーケティングデータ: 宇宙空間・月面風景・月から見た地球に関する画像・映像等 サイエンスデータ:資源分布、土壌、気温、放射線等の環境情報等 R&Dデータ:特定顧客・特定産業の将来のR&Dに必要なデータ(例:建築業界や自動車業界の研究開発の検討に資する地形・地質・堆砂圧データ等) ② 将来的に顕在化することが見込まれる大規模データベースの利用サービス 将来的(2028年以降を想定)には、当社の高頻度なミッションを通じて、当社のインターナル・ペイロードから取得・蓄積した情報に、地球上で入手可能な既存のデータも加え、加工、解析、統合することで、顧客にとって高付加価値な「大規模な月のデータベース」をクラウド上に構築し、顧客が自由にアクセスし、定額料金を課金の上、利用して頂く、SaaS(Software as a Service - サービスとしてのソフトウェア)型・サブスクリプションモデルのビジネスの展開を目指しています。地球上で、月面活動や試験等を簡易的にシミュレーションすることが可能となれば、より多くの企業が、より少ない負担で、月面事業への参画を検討することが可能となります。また、顧客はデータにアクセスするだけで、デジタル上でビジネスにおける潜在的なニーズを把握することが可能となり、これにより能動的な新事業開発の促進が期待され、将来の月面社会の創出へ大きく寄与することが想定されます。 入金と売上の計上方法につきましては、①ミッションを通じたデータ取得サービスはペイロードサービス同様、ロケット打上げの1~3年前の本契約時から打上げまでの間に、その全額が一括若しくは複数回に分割されて入金され、本契約以降月へ到着しミッションを完了させるまでの期間にわたり、履行義務の進捗度に応じて売上が計上される想定であり、②大規模データベースの利用サービスは、サブスクリプションモデルによる月額課金及び月次での売上計上を想定しております。 ③ 新たに着目される安全保障等のニーズに応えるデータ取得サービス 近年、米国が主導するアルテミス計画をはじめ、月面インフラ構築に向けた取り組みが国際的に本格化しております。2026年3月にNASAが発表した「IGNITION」では、今後10年程度で、月面に恒常的な拠点を構築することが明確に示されております。それに伴い、インフラ設備を守る観点から安全保障上のニーズが増加しており、2026年4月には、米国宇宙軍が「Cislunar Coordination Office」の新設を発表しました。安全保障の観点から、広範囲な月面観測、宇宙状況把握(Space Situation Awareness)等、月周回衛星等のアセットを活用したサービスの潜在的な需要が急速に高まっています。 こうした環境下において、当社は、過去2度の月面着陸ミッションを通じて実証した「月周回軌道への輸送・投入および同軌道上での運用能力」を活用し、月周回衛星等の自社アセットを今後積極的に月周回軌道へ展開する方針です。当社は2030年までに少なくとも5機の自社月周回衛星を投入することを計画しております。 また、月面インフラの増加に伴う通信・測位のニーズを踏まえ、当社は、月面および月周回で活動する顧客に対して、当該月周回衛星を活用した通信・測位サービス「ルナ・コネクトサービス」の立ち上げを検討開始することを決定いたしました。ルナ・コネクトサービス事業を構築する上では、大容量の通信・データ等を月から安定的に受信するための、地球側の地上局の整備が重要な鍵となりますが、地上局の運用および利用について、ispaceは日本国内における主要な地上局提供事業者であるKDDI株式会社(以下「KDDI」という。)と、共同検討を進めるべく基本合意書を締結しています。本合意に基づき、KDDIは地上局の機能や、月面における通信サービスの在り方等についてispaceに必要な技術的・事業的情報を提供し、両社は共に将来計画の具体化を進める予定です。KDDIは2024年11月に、「宇宙戦略基金」の技術開発テーマである「月-地球間通信システム開発・実証(FS)」の委託先に選定されており、同システムにおける地上局及び地上局ネットワークの基本設計と、月面モバイル通信環境構築の実現可能性評価を実施しており、今後、ルナ・コネクトサービスを共同で提供する上で両社の具体的な役割等について協議を進めて行く予定です。 当社は2026年3月ミッション2.5として、最速2027年にも、米Argo Space Corp.が提供する宇宙輸送サービスを利用して当社初の衛星1基を月周回軌道へ投入することを計画しております。 図3:データビジネスの成長イメージ <当社グループが注力する月面輸送サービスの分類について> 現在の月面物資輸送市場は、主にランダーで運搬されるペイロードのサイズに応じて、小型ランダー(500kg以下のペイロード)、大型ランダー(500kg以上のペイロード)の二分類に分かれると考えております。ペイロードの大きさが拡大するに伴ってランダーのサイズも大型化され、一般的に大型ランダーは有人向けのものが中心となります。 当社グループは、ランダーとローバーの小型軽量化による開発費の低コスト化の優位性を活かし、年複数回の高頻度なミッションを実現することを見据え、小型ランダーへの戦略的集中を行っております。当小型ランダーには、独自の顧客市場の存在、及び技術的観点の差異から、大型ランダーとの間に明確な区分けが存在し、それぞれの分類で活動するプレーヤーも区別されていると考えられます。 顧客の観点では、特に足許の市場草創期においては、民間企業や研究機関等からの比較的小型のペイロードを月面に輸送したいというニーズが存在しています。例えば、ペイロードを月面に輸送するに当たっては、顧客のペイロードをランダー及びローバーに搭載するための技術的なアドバイスと調整等の事前のアレンジメントが多数発生いたしますが、同様の顧客が複数、1機のランダーに相乗りをするケースが通常です。小型のペイロードの顧客の観点からは、大型ランダーの中で多数のペイロードの1つとして格納されるケースに比べ、小型ランダーの中で主要なペイロードの1つとして格納されるケースの方が、より自身のニーズに沿ってカスタマイズされたミッション設計(着陸地点・ミッション期間・ペイロードの環境条件等)を得られるメリットを享受できると考えております。また大型のペイロードによるミッションと比べて、より低コストかつ高頻度なミッションを実現できるため、上記のミッション設計の選択肢が多いというメリットもあります。 また、技術的観点からは、一般的に、無人が主流の小型ランダーと有人が主流の大型ランダーとでは、開発に求められる安全性要件の高さも異なれば、サイズ・重量等も異なるため、基本的にそれぞれの開発要素が全く異なるものと考えられます。特に当社グループの場合は民生品(Commercially available Off-The-Shelf、(以下、「COTS品」という。))を活用して低コスト化も実施する開発コンセプトでのエンジニアリングを追求しておりますが、これは大手プレーヤーによる大型ランダーの開発原則とは必ずしも一致しないと考えられます。従って、大型ランダーを製造するプレーヤーが小型ランダーに参入する場合には、低コスト・軽量化を実現するための技術的障壁が一定程度存在すると考えられます。 なお、当社は将来的にランダーのサイズアップを予定しており、輸送可能なペイロード容量を、ミッション1及びミッション2での最大30kgから、ミッション3以降最大200kg程度まで増大させる開発に現在着手しており、以降も段階的に500kg程度までを目指して増大させることを目指していますが、小型ランダーへの戦略的集中に変わりはありません。 <当社グループの開発及びミッション推進体制について> 当社グループでは、天体の表面に着陸し、静止することができるランダー)及び地球外の天体の表面を移動し、観測するために使われるローバーを開発しております。なお、当社のランダー及びローバーにつきましては有人利用を想定せず、無人のロボティックスとして開発しております。 ペイロード及びローバーは、ランダーの内部に格納され、更にそのランダーは打上ロケットの内部に格納され、打上ロケットによって宇宙空間における一定ポイントまで輸送されます。ランダーはロケットから分離された後、一定期間をかけて月に向けて自力で宇宙空間を推進し、月の周回軌道へと入り、月面に着陸をします。着陸後、ローバーはランダーから分離され、月面を自走しながら探査活動を行います。 ランダー及びローバーの開発、ランダー又はローバーへのペイロードの搭載、打上ロケットから切り離された後の月までの航行と着陸、月面の探査活動はすべて当社グループが行う活動です(ランダー及びローバーはすべて、当社グループのミッション・コントロール・センターから、当社グループオペレーターにより遠隔操作されます)。一方で当社グループは、打上ロケットに関しては自身で開発等は行わず、既に市場でサービス提供を行っている打上プロバイダーと契約の上、打上サービスを購買しております。 当社グループは2016年以降、ランダーの本格的な自社開発に着手するとともに、経験豊富なエンジニアを順次採用しており、2026年3月31日時点では約200名のランダー開発エンジニア及びオペレーション専門のエンジニアが在籍し、開発プロジェクトのリーダー層には、衛星開発等で豊富な知見と経験を有する人材を確保しております。多数の外国籍のエンジニアが在籍していることに加え、宇宙/非宇宙のバックグラウンドを持つエンジニア、ハードウェア/ソフトウェアの専門家等、幅広いエンジニアリング人材で構成されていることが1つの特徴です。これまでの宇宙開発ノウハウを最大限活用する一方で、自動車・機械産業等で培われた民間企業ならではの柔軟・迅速な開発プロセスを目指しています。 また、ソフトウェア技術の活用も民間企業として宇宙開発へ参入する上での重要な鍵となります。高い信頼性が求められる宇宙開発においては、これまで確実な信頼性評価が可能なハードウェア技術による開発が優先されてきました。一例としては、ロケットの推進力を向上させるためにはより大型のエンジンを多額のコストを投じて開発していくという考え方が挙げられます。一方、近年のソフトウェアによる制御技術の著しい進化により、民間企業でのソフトウェアを駆使した高度な開発が可能となり、上記のケースであれば、小型のエンジン複数機をソフトウェアで制御することにより、同程度の推進力を維持しつつも大幅なコスト削減が可能となります。このように、今後宇宙開発分野においてソフトウェア技術との融合によりハードウェアの小型軽量化を進めることで、大きなコスト削減が可能になると考えており、当社においても多くのソフトウェアエンジニアを採用し開発に従事しております。 なお、当社グループでは、信頼性を維持しながらコストと開発期間を短縮するべく、システム・インテグレータとしての開発スタンスを基本としております。すなわち、当社ではシステム要件を整理の上でシステム設計をしますが、部品については既に宇宙で実績のあるCOTS品を中心に調達をしており、内製化する部品を最小限としています。その上で、調達した部材を組立て、システム・インテグレートし、システム環境試験を行い、完成したことを検証することとしています。 <ランダー・ローバーのテクノロジー及びペイロード> 1.ローバーについて 当社は2010年の創業以来、一貫してローバー開発に取り組んでおり、その技術は当社の取締役兼テクノロジー・アドバイザーであった吉田和哉氏が教授を務める東北大学大学院工学研究科において研究開発されたロボティクス・ローバー技術がベースとなっております。当社は米国のGoogle社がスポンサーとなりXPRIZE財団が運営する世界初の月面探査レース「Google Lunar XPRIZE」に参戦しておりましたが、そこで使用するローバーのプロトタイプを2011年8月に発表し、2015年1月にはローバーのエンジニアリングモデル(注1)が宇宙空間でも機能する性能を持つことが評価され、Google Lunar XPRIZEの中間賞を受賞し50万米ドルの賞金を獲得しました。その後もフライトモデル(注2)の製造まで当社は完了させ、相乗り先である他社のランダーの打上げを待つ状態に有りましたが、月面探査レースは残念ながら2018年3月に勝者がいないまま終了となりました。当社のローバーは月面での実証を行うことができなかったものの、フライトモデルの製造まで完了させたことが一定の評価を受け、本ローバーは2019年に米ワシントンD.C.のスミソニアン航空宇宙博物館へ寄贈され、展示されております。 当社がGoogle Lunar XPRIZEを通じて開発したローバーは、総重量約4.0kgであり、当社が認識する限り、世界でも最小・最軽量の四輪ローバーです。月面の不整地を走破できる4輪駆動、360度の視野を持つカメラで静止画と動画の撮影等、宇宙空間で月面探査ミッションを達成できる能力を維持しつつ、可能な限りCOTS品を活用し、小型軽量化とコスト削減を実現しました。 (注1)基本設計に基づき製作し、機能・性能・環境試験に供することで設計の妥当性を確認し、次の詳細設計段階に移行するための設計を固めるためのデータを取得するためのモデル (注2)実際に宇宙に打ち上げる本番モデル 2.ランダーについて 当社は2016年よりランダーの自社開発を開始し、2017年以降実施している複数回の資金調達を原資として開発作業を進捗させております。ミッション1及びミッション2で利用したRESILIENCEランダーのサイズは、乾燥重量:約340kg(燃料含まず)、ミッション3以降で利用予定のULTRAランダーのサイズは乾燥重量:約1,000kg(燃料含まず)となっております。 ランダー開発と月面着陸の歴史は、1959年にソビエト連邦共和国によって開発され月面着陸を行った無人探査機のルナ2号から始まり(以降、1976年のルナ24号までに複数回の着陸を実現)、その後1961年から1972年にかけてNASAが実施したアポロ計画、2013年と2019年にそれぞれ月面着陸を果たした中国の嫦娥3号・4号等、過去にも様々な開発事例が存在しており、ランダー開発技術は原理的に既に確立されたものであります。特にアポロ計画で開発されたランダーは合計6回の有人月面着陸を成功させましたが、これを契機に、ランダーの様な大規模システムを高い品質を保ちながら確実に効率よく開発するための手法として、「段階的プロジェクト計画」(Phased Project Planning:PPP)がNASAによって生み出されました。以降、この手法をベースとして多数の民間企業による人工衛星の開発が行われており、JAXAもまた「段階的プロジェクト計画法におけるシステムエンジニアリング活動」として同様の手法を提唱しています。 図4:システムエンジニアリング活動に準拠した開発の工程 (JAXA発行「ライフサイクルにおけるプロセスのアウトプット/アクティビティの例」を元に当社作成) 技術 審査   MDR Mission Definition Review   SRR System Requirement Review   SDR System Definition Review   PDR Preliminary Design Review   CDR Critical Design Review   PSR Pre- Shipment Review   LRR Launch Readiness Review 目的   ミッションの意義・目的・成功要件・コスト等、ミッション定義の妥当性を確認する審査会   ビジネス要件とシステム要件の整合性を確認の上、システム設計開始を承認する審査会     システム仕様、及びそれに対する検証計画の妥当性、基本設計フェーズに向けた技術・体制・計画等の一連の準備が完了されていることを確認する審査会   仕様値に対する設計結果、設計検証計画の実現性を確認する審査会   製造と試験の詳細設計と検証計画が適正かを、これまでに実施した試作評価、熱構造特性の評価、電気機械設計等の評価を活用して確認する審査会   試験結果の確認及び、打上場への輸送承認を行う審査会       ロケットへのインテグレーション作業終了の確認及び、打上げと初期運用への移行承認を行う審査会 本手法の概要は、開発全体を複数のフェーズに区分し、各フェーズで行うべき作業内容を段階的に定義しながら、それぞれのフェーズにおける結果を審査により評価し、次フェーズへの移行可否を判断しながらフェーズを進めていくものであり、これにより可能な限りの不具合・エラー等を事前に検知し、ミッションまでに確かな開発品質へと高めていく手法です。当社のランダー開発もまた、機能面において人工衛星と近似する部分を多く有しているため、基本的には既存の人工衛星開発のプロセスである「段階的プロジェクト計画法におけるシステムエンジニアリング活動」を踏襲して進められています(詳細な当社の開発状況については、後記「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」をご参照下さい)。 また上記「システムエンジニアリング活動に準拠した開発の工程」は一般的な人工衛星開発のプロセスを示したものですが、これを基礎としつつ、民間企業等の人工衛星の開発現場においては、そのプロジェクトの複雑性や新規性に拠って、必要とされる審査プロセスを柔軟にアレンジされるケースも一般的です。例えば、新規開発ではない量産型の人工衛星の製造等の場合、既存設計は過去の物を踏襲し、プロジェクト開始後即座にPDRを実施の上、フェーズCへ移行するケースも存在します。当社の場合も、ミッション2の開発においては基本的にミッション1と類似する設計であったことから、ミッション1よりも比較的短期のプロセスでの開発となりました。 3.外部の開発パートナーの積極的な活用について 当社は経験豊富なエンジニア陣による「段階的プロジェクト計画法におけるシステムエンジニアリング活動」に万全を期すことで、確かな開発品質を実現させていく計画ですが、技術実証ミッションを遂行する上では外部パートナーの積極的な活用にも取り組んでおります。中でもランダー固有の開発点として、以下の二点については外部パートナーの協力を積極的に活用しております。 ・微小重力下で月面着陸姿勢を制御可能な大型推進システムの開発 ・月面着陸を精度高く行うための着陸制御システムの開発 推進システムについては、宇宙空間における推進システムの開発における長年の実績を有する、欧州大手の航空宇宙企業であるエアバスから分離独立したAriane Group社から、推進系システムの設計協力(レビュー等)を得つつ、基幹部品であるスラスター・バルブ・配管等を調達し、推進系システムの組立も同グループの工場を賃借し行う等、緊密な協力関係を構築しております。ミッション5については組立・製造・試験は米国子会社で行い、NASAによる月面への輸送サービス委託するプログラムであるCLPSへ採択されサービス提供を実行することから、CLPSの要求事項であるDomestic Source Requirements(US内製品の使用)の条件を満たす必要があり、比較的多くの部材調達を米国企業から実施する見込みです。 着陸制御システムの開発については、1960年代から70年代にかけてのアポロ計画でランダーの同システムの開発を担当した米国のドレイパー研究所(本社:米国マサチューセッツ州)に委託をしております。同社との契約関係により、当社は2028年6月末までの期間、地球以外の惑星に500kg以下のペイロードを着陸させる能力を持つランダーへの利用に関して、同社が開発する着陸制御システムを独占的に使用する権利を保有しています。 また、前述のとおり、当社グループは、打上ロケットの自社開発は行わず、既に市場でサービス提供を行っている打上プロバイダーと契約の上、打上サービスを購買してまいりますが、本書提出日時点でミッション1からミッション2までについて、SpaceX社との間で打上契約を締結しております。同社のロケットであるファルコン9は、累計で600回超の打上げを行い、過去の打上の成功確率としても約99%と極めて信頼性の高い実績を持つパートナーです。なお、今後のミッションにおいては、JAXAと三菱重工業にて開発しているH3ロケットを含む他の打上プロバイダーの活用も検討しております。これらの外部パートナーの協力を積極的に活用することで、当社はより着実なミッションの成功を目指してまいります。 <開発・営業におけるグローバルネットワーク> 上述のとおり、当社グループでは、グローバルなエンジニア人材による「段階的プロジェクト計画法におけるシステムエンジニアリング活動」や海外の外部パートナーの積極的な活用により技術実証ミッションを遂行しております。これを実現する上では、世界中の優秀なエンジニアを獲得することが必要となります。当社グループでは、グローバルで統一されたランダーの設計を、組立・製造・試験する拠点を東京の本社と米国デンバーの子会社にそれぞれに置く他、ルクセンブルク大公国の子会社ではローバーの開発および組立・製造・試験の拠点を置く等、グローバルにそれぞれの拠点の強みを活用しております。また、2026年1月には、サウジアラビア王国内の商業および政府、研究機関とのパートナーシップ連携を一層強化することを目的に、サウジアラビア王国に子会社の設立手続きを開始いたしました。 それぞれの拠点は、日本のJAXAや米国のNASA、欧州のESA等の重要な宇宙機関と物理的距離を近く取ることにより、各地での月面開発ニーズの吸い上げを行っております。また顧客開拓の観点においても、当社は世界各国において、宇宙機関や民間企業の顧客需要を開拓していく上でも、グローバルなネットワークを構築し、各拠点営業人員を配置しております。 図5:当社グループのグローバルネットワーク <長期ビジョン> 当社グループが掲げる「Expand our planet. Expand our future.」には、月を人類が宇宙内で活動する上でのエネルギー補給基地として活用し、2040年以降に「地球と月がひとつのエコシステムとなる経済圏を創出する」というビジョンを実現させる意思が込められています。この経済圏を具現化した構想として、当社グループは2040年台に1,000人が月に暮らし、年間1万人が地球との間を往来することを想定した月面上の都市「Moon Valley 2040」の構想を併せて掲げています。 月を「エネルギー補給基地」として活用する上で鍵となるのが、月における水の存在です。近年の調査で月には水資源が存在することが明らかとなっており(注1)、そのサイズは数億~60億トン(注2)とも言われ、その分布状況や分量の確定に更なる調査と分析が必要とされています。また月には水資源だけでなく、鉱物資源やヘリウム3も存在する可能性があり、これらの資源の利用可能性にも注目が集まっています。 (注1)出所:Direct evidence of surface exposed water ice in the lunar polar regions, PNAS https://www.pnas.org/content/115/36/8907 (注2) 出所:Dr.David R. Williams, https://nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/text/lp_pr_19980903.txt 水から電気分解された水素と酸素は、液体水素・液体酸素として、近年の宇宙開発におけるロケット推進燃料として利用されています。将来的に月の水資源を有効活用し、エネルギー源の生成からロケットの推進燃料としての利用までを、一気通貫して月で行うことができれば、地球の1/6ともされる微小重力下の月から抜け出し宇宙空間を移動する燃料輸送コストは、地球の重力から抜け出すことが所与となっていた従来の燃料輸送コストに比べて、大幅に引下げることが可能になると考えられております。これが現在、世界中の注目が月に集まる最大の背景と考えられます。 図6:エネルギー補給基地としての月の可能性 小惑星・火星等の深宇宙探査は、科学的観点から人類に大きな利益をもたらすと考えられており、将来的にもより高頻度で実施されることが期待されています。また、現在地球の周回にはGPS(全地球測位システム)・気象観測衛星等、数千機もの人工衛星が存在し、近い将来にはメガ・コンステレーション(大規模な人工衛星群)によるインターネット接続も計画されている等、これらの衛星が地球上の人類の生活を維持する上で必要不可欠なインフラになっており、長期的な維持利用を見据えて燃料補給等のメンテナンスをいかに行うかが課題です。 将来的に更に増大することが見込まれる深宇宙探査のための移動燃料、また人工衛星の活動維持のための燃料を、すべて地球上から賄うことは、特に地球の重力から抜け出す際に膨大なエネルギーコストが必要になることを考えれば、深刻な課題と言えます。本課題を解消するために月を人類が宇宙内で活動する上でのエネルギー補給基地として活用し、2040年以降に「地球と月がひとつのエコシステムとなる経済圏を創出する」ことを目指す当社のビジョンは、長期的に人類の地球上の生活を持続させることに繋がる世界的に重要な施策の1つと言えます。 <ビジョン実現に向けたロードマップ> 当社グループでは、前述の「Moon Valley 2040」の実現に向けたロードマップを下記図7のように大きく2つのフェーズに分けて整理しております。 図7:「Moon Valley 2040」の実現に向けたロードマップ フェーズ1では、当社グループは月の水資源やその他資源の商業的価値に着目し、高頻度・低コストな月面輸送を行うプラットフォームを構築するとともに、月面資源のデータマッピングを行い、月ビジネスに参入するすべての顧客(政府宇宙機関・研究機関・民間企業等)に有益な月のデータ(画像データ・環境データ・資源情報等)を提供することを計画しております。続くフェーズ2では、月面資源探査/開発プラットフォームを構築するために、月の水資源からロケット推進燃料を生成する事業パートナー企業とのアライアンス構築に取り組む計画です。 これらを通じて、2040年代には地球と月がひとつのエコシステムとなる経済圏「Moon Valley 2040」を創造していきます。 [事業系統図] 当社グループの事業系統図は、次のとおりであります。 図9:事業系統図
経営方針・対処すべき課題14,866字を開く

経営陣が考える方向性と課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日時点において当社グループが判断したものであります。 (1)経営方針 当社グループは、「Expand our planet. Expand our future.」をビジョンとし、地球と月が1つのエコシステムとなる世界を築くことにより、月に新たな経済圏を創出することを目的としています。この実現に向け、史上初の民間月面探査へ向け研究・開発を推進する企業として、持続的な成長と企業価値の最大化を目指すことを基本方針としております。 (2)経営戦略等 1.品質向上サイクルの実現 当社グループは現在、2028年に計画しているミッション3及び2029年のミッション4に向けて、ローバー及びランダーの開発を進めておりますが、過去の国主導の宇宙ミッションでは実現が困難であった、民間企業ならではの品質向上サイクルを回すことを企図しています。 既存の宇宙開発の課題の1つに、コストの高さ及びそれに起因する実証機会の少なさが挙げられます。過去の宇宙ミッションの多くが国主導のミッションですが、民間企業と比較して失敗に対する許容度を相対的に低く設定せざるを得ないことから、より慎重かつ複雑な開発プロセスと、より重層的な実証試験等を行わざるを得ず、開発コストが大規模かつ開発期間が長期化する傾向があります。 一般的に、技術的な品質を向上させ成功率を高めるためには、リスク・コントロールが可能な範囲での技術的失敗と改善を繰り返す、言わば健全な反復プロセスが必要不可欠とされています。しかしこれまでの宇宙ミッションでは、高額な開発コストはそのまま実証機会の少なさにつながり、結果的に宇宙開発におけるプロダクトの品質向上サイクルを回すことに限界が生じていたと考えられます。 当社グループは提供するプロダクトをロボティックスによる無人かつ小型で軽量化されたモデルに設定し、また必要とされる部材についても、近年その品質が急速に向上しているCOTS品から十分に宇宙品質に耐えられるものを選定し、柔軟に調達することを基本としています。また国主導のミッションと比較して、失敗に対する許容度を相対的に高く設定することが可能な民間企業としての特性を活かし、実用性が高く迅速な開発プロセスを設計し、結果的に既存の宇宙機器開発と比較して大幅な開発コストの低減が可能となっています。これにより実証機会を増加させ、将来的に反復ミッションと十分な研究開発による品質向上を実現し、更には量産による品質安定化を図ることを計画しております。 当社は、2022年のミッション1及び2025年のミッション2を、技術実証ミッションとして位置づけておりました。前述のとおり、経験を十分に有するエンジニア陣による「段階的プロジェクト計画法におけるシステムエンジニアリング活動」に万全を期すことで、確かな開発品質を実現させていく計画ですが、失敗が一切存在しないミッションを保証するものではありません。当社としては、リスク・コントロール可能な範囲での失敗については、仮に発生した場合にも企業として許容可能な十分な手当を準備しています。実際に、ミッション1及び2で獲得されたミッションデータは、着陸失敗の要因分析に関するデータまでを含めて、ミッション3以降の後続ミッションへと活用されております。ミッションを高頻度に実施し、技術的な経験値を継続して蓄積させていくことが、当社の技術的リスクを低減させ、持続安定的な事業運営を達成する上での重要な鍵となります。 2.ミッションリスクに備えた手当 当社グループが行う月着陸ミッションには、宇宙開発における一定の不確定要素が存在するため、これに備えた十分な手当を行うことを戦略としております。 当社は、既存のミッションを含む複数ミッションについて、主にSpaceX社のファルコン9ロケットにランダーを搭載し打上げを行う予定です。ファルコン9はSpaceX社により開発された中型ロケットであり、打上価格が機当たり74百万米ドル/1回(本書提出日時点における公表値(https://www.spacex.com/media/Capabilities&Services.pdf))と同規模の他社ロケットと比較し安価であり、市場において大きなシェアを獲得しております。打上契約後は、仮に何か問題が発生しミッション継続に支障が起きた場合にも、SpaceX社は打上代金の返金をせず、打上業者と顧客である当社の双方がお互いに損害賠償請求権を放棄して、自損自弁にしておくことが業界慣行となっています。当社は、累計で600回超の打上げを行い、過去の打上げの成功確率としても約99%と極めて信頼性の高い実績を持つSpaceX社のファルコン9を選定しておりますが、仮に問題が発生した事態における財務的リスクを軽減するために、第三者の損害保険会社との間ですべてのミッションについて月保険を締結する予定であり、ミッション1については、三井住友海上火災保険株式会社との間で損害保険契約を締結しておりました。当該保険はロケットが打ち上げられてからランダーが月面に着陸し、通信の機能が正常に作動して地球とランダーとの間でデータ送受信が行われるまでを保険責任期間としており、実際にミッション1の月面着陸未完に伴い約38億円の保険金を受領しております。ミッション2についても同様に三井住友海上火災保険株式会社との間で月保険を締結しており、保険責任期間はロケットが打ち上げられてからランダーが高度100kmの月周回円軌道上までの軌道制御確認完了までとし、保険金は約21億円としておりました。ただし、ミッション2の月面着陸未完は、当該保険責任期間外となっているため保険金の受領はできませんでした。 同様に、当社と当社の顧客との間においても、SpaceX社と当社との間と同様の仕組みを踏襲し、当社と顧客の双方がお互いに損害賠償請求権を放棄して自損自弁とする契約体系を基本としております。また、当社が手掛ける①ペイロードサービス及び②データサービスでは、基本的にロケット打上げに先立つ1~3年前に本契約をし、以降、ロケット打上げまでの間に、ほぼ全額の金銭的対価を顧客から受領することを基本としていますが、仮に契約後に問題が発生しミッション継続に支障が起きた場合にも、当社側に契約不履行に繋がる程の重大な瑕疵(マテリアル・ブリーチ)が生じない限り、原則として当社から顧客への返金が生じない契約体系となり、複数のペイロード顧客との間で、既に上記趣旨の内容で最終契約を締結しております。将来的には、より多くの顧客に安心して当社のサービスを利用してもらい、産業を活性化させる上では、損害保険等の商品により顧客の財務的リスクを軽減させる仕組みが不可欠と考えており、月面輸送サービスにおける損害保険商品の将来的な導入を見据え、現在第三者の損害保険会社との間で検討を進めております。 3.継続的なミッション資金の十分な確保 前述のとおり、宇宙開発における技術の品質向上サイクルを実現させることは民間企業ならではの利点と言え、当社は、常に単発ではなく同時並行で継続的なミッションの準備を進めておくことで、リスク・コントロールが可能な範囲での技術的失敗を、タイムリーに次のミッションの改善へと反映させることを実現させます。 当社は足許、2028年に計画するミッション3のULTRAランダーの開発にも人的・財務的なリソースを配分しております。ランダー及びローバーの開発には一般的に高額の開発費用を要すること、また継続的に打上業者との間で高額な打上契約に関する合意を形成していかねばならないこと、そして複数ミッションの検討を同時並行して実施可能な十分の開発エンジニアを確保することから、当社は常に比較的大規模な財務的原資を手当する必要があり、継続的な資金調達の実施が持続的な事業運営上不可欠です。 当社は、2014年の無担保転換社債型新株予約権付社債の発行(シード投資)、2017年12月から2018年2月にかけてシリーズAとして国内過去最高額、また、宇宙分野のシリーズAとしては世界過去最高額(いずれも2018年2月当時)となる103.5億円の新株発行による資金調達を行いました。その後、2020年のシリーズB、2021年のシリーズCの資金調達を経て、2023年4月には、東京証券取引所グロース市場に上場しております。上場後も、2024年3月には海外募集を、2024年10月から2025年3月にかけては第三者割当増資を、また2025年10月から11月にかけては公募増資並びに第三者割当増資を実施し、累計で598億円の新株発行による資金調達を実施しております。また、銀行からの借入についても2024年3月期においては複数行と融資契約を締結し総額75億円の借入を実行、2025年3月期には総額100億円のシンジケートローン契約を含め、借換も含めて総額193億円の融資契約を締結し実行、2026年3月期には株式会社三井住友銀行と100億円、株式会社みずほ銀行と50億円の融資契約をそれぞれ締結し総額150億円の借入を実行しております。進行期である2027年3月期には、4月に朝日信用金庫との10億円の融資契約を締結・実行し、本書提出日時点で創業以来の累計値で506億円の融資契約を締結し実行しております。これらの資金を原資としたランダー及びローバーの開発並びに当社ミッションの実行を進めると同時に、事業化のための市場と顧客の開拓を行っております。 4.政府宇宙機関及び民間企業の双方の顧客ターゲティング 足許の当社の売上は、グローバルな顧客ニーズの高まりを背景に、顧客からのペイロードを輸送するペイロードサービスの売上が重要な割合を占めております。 当社は、2019年12月にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイの政府宇宙機関であるMBRSCより、ミッション1において10kgのペイロード(月面探査ローバー)を運ぶ大型受注を獲得し、2021年に本契約を締結致しました。MBRSCの前身となる機関は2006年に設立され、以降、2009年のDubaiSat-1、2013年のDubaiSat-2等、複数の衛星プロジェクトを打上げた実績を持つ、中東を代表する先進的宇宙機関の1つです。2020年7月には、UAE建国50周年を迎える2021年に中東初となる無人探査機の火星到着を目指す火星探査ミッションにおいて、MBRSCは火星探査機「HOPE」の設計と技術面の取りまとめを行い、三菱重工のロケットH-IIAによる打上げを成功させています。 この他の宇宙機関との間では、カナダ宇宙庁が推進するプログラムであるLEAPに採択されたカナダの民間企業であるMCSSとの間で人工知能のフライトコンピューターのペイロードサービス、Canadensysとの間でカメラのペイロードサービス、NGCとの間でデータサービスを提供する契約を締結しております。また、JAXAとの間では変形型月面ロボットのペイロードを月面へ輸送することで合意し、2021年4月に本契約を締結しております。加えて、当社子会社であるispace EUROPE S.A.はイタリア宇宙機関とレーザー反射鏡を月面へ輸送することで合意し、欧州宇宙機関とは今後のMAGPIEと呼ばれるミッションの実現可能性、定義・設計、ミッションを実行するための全体的な枠組みの検討を行う契約を締結しております。 また、当社子会社であるispace technologies U.S., inc.は、主契約者であるドレイパー研究所等で構成されるドレイパーチームの一員として、2022年7月においてNASAのCLPSのタスクオーダーCP-12のサービスプロバイダーの1社に選ばれており、当該タスクオーダーの総額は採択時点で73百万米ドルとなります。これに関して、当社子会社であるispace technologies U.S., inc.は、ドレイパー研究所との間で、ランダーの製造やペイロードサービスを実施するための請負契約を締結し、当該契約に基づき、ミッション5において、リレー衛星を月周回軌道に投入し、月震計(FSS)、地下の熱流探査機(LITMS)、及び電磁場測定器(LuSEE)といった一連の科学実験機器を含むペイロードを月の裏側に存在する南極付近に輸送する予定です。これらのリレー衛星はBlue Canyon Technologies Inc.が製造し、Advanced Space, LLC が運用をサポートする予定で、これらの衛星を活用して月震データを最大1年間にわたり収集する予定です。 当社子会社とドレイパー研究所の間の上記請負契約の契約金額は当初約5,450万米ドルとなっており、2024年12月に約6,218万米ドルに増額となっておりますが、支払は一定のマイルストーンの達成を条件とした分割払いとなっており、打上日までに総額の10%を除いた金額が支払われ、残り10%相当額については月面着陸及びペイロードからのデータの受信時に支払われる予定です。また、NASAの要請によりドレイパー研究所がミッション期間を延長した場合には、最大で280万米ドルの支払いを追加で受領できる可能性があります。ただし、当社子会社は、ドレイパー研究所との契約上、自らの契約不履行又は履行遅滞に起因して発生した損害についてドレイパー研究所に対して損害賠償義務を負う可能性があり、また、当社起因の理由によりタスクオーダーCP-12の費用が増加した場合には、当該増加費用分をドレイパー研究所に対して当社が負担することになる可能性があることから、最終的な受取金額は減少する可能性もあります。 民間企業との間では、ミッション1のペイロードとして、日本特殊陶業株式会社との間で固体電池を月面へ輸送する契約を獲得しており、既に本契約を締結の上、全額の入金も完了しております。また、ミッション2顧客として、高砂熱学工業株式会社との間で月面用水電解装置、台湾中央大学との間で深宇宙放射線プローブ、株式会社ユーグレナとの間で微細藻類培養装置及びムーンハウスとの間でアート作品のペイロードサービス契約を締結しております。ミッション3顧客として、マグナ・ペトラ社、Control Data Systems SRL社とペイロードサービス契約を締結しております。 また、当社は世界各国の民間企業・宇宙機関・研究機関との間で、MOU(Memorandum of Understanding)やinterim Payload Service Agreement(ペイロードサービス中間契約。以下、「i-PSA」という。)を締結しております(以下、MOUとi-PSAを総称して「MOU等」という。)。当該MOU等は基本的にミッション3以降における将来的なペイロードサービス、データサービスについて共同検討や共同開発を進める内容であり、今後も多くの民間企業・宇宙機関・研究機関とMOU等の締結を拡大させる予定です。民間企業とのMOU等締結の背景は様々ですが、直近では特に、月面における水資源を活用したバリューチェーンに含まれる事業と関係する企業との強固な関係を築いております。 例えば、バリューチェーンのエンド・ユーザーとなるトヨタ自動車株式会社との間では、日米両政府による「Lunar Surface Exploration Implementing Arrangement」にて日本からの提供が決まった「有人与圧ローバー」に関連する地上試験、月面環境での技術実証に関する協議を進めております。2026年5月15日時点において、ミッション3以降を対象とした締結済みの契約・助成金(PL計上済みの金額を除く)と予算確保済みの案件で合わせて562億円見込んでおり、加えてMOU等で984億円を締結しております。 上記のMOU等には法的拘束力が認められず、受注及び当社の売上計上に繋がるかは不確実ではあるものの、当社は今後も民間企業各社とのMOU締結を進めてより多くの顧客と間で強固な関係を築く予定であり、将来的な民間企業からのペイロードサービスの受注につなげることを見込んでおります。 5.中長期的な売上拡大及び収益性の改善 当社は、ミッション3に向け、先行する米国の大型ランダー開発ノウハウと、日本の過去2回のミッション経験を統合したULTRAランダーを開発中です。ULTRAランダーはこれまでのRESILIENCEランダーから設計を変更し、最大200kgのペイロードが輸送可能となるサイズアップを計画しております。実際の顧客への販売重量は、デザイン上の重量から開発における不確実性や販売充足率を加味した歩留まり率をもとに販売重量を想定しており、ミッションを重ねるごとに開発マージンの効率化、販売充足率の向上により、顧客への販売重量を順次拡大させていくことを目指します。 また当社は、技術が一定程度確立され、安定的な月面輸送が可能となると想定されるミッション4以降、平均して年2回から3回のミッションを実施することを計画しており、それに伴うランダーの量産化によりコストの低減を目指します。 中長期的には、複数のミッションから収集されたデータの蓄積を元に、データサービスからの売上も徐々に拡大することを想定しています。データサービスの提供の方法としては、(1)データの取得前から取得するためのペイロード機器の開発から当社が検討に加わり、データ取得のために必要なペイロードの輸送コストまで含めて顧客へ課金するケースと、(2)既に当社で保有する取得済みの顧客の需要に応じた付加価値の高いデータセットへ加工し、データ販売のみ提供するケースが存在します。2020年代において高頻度輸送を確立することで他社に先行してデータの収集、解析、高付加価値化を実施し、2020年代後半から2030年代に向けてデータプラットフォームを活用した高収益なデータビジネスモデルの構築を目指します。 図1:ミッションスケジュール (3)経営環境 当社グループの事業が属する経営環境は次のような特徴があります。 当社グループが属する宇宙資源開発の分野では、2023年8月にインド宇宙研究機関の「チャンドラヤーン3号」が月面着陸、2024年1月にはJAXAの「SLIM(Smart Lander for Investigating Moon)」が月面へのピンポイント着陸に成功、2024年6月には中国が「嫦娥6号」により月面着陸とサンプルリターンを実施する等、世界各国で政府主導による宇宙探査活動が活発化しています。 一方、近年ではテクノロジーの進化とCOTS品の拡大、ソフトウェア技術の進化を背景に、これまでは政府主導の宇宙機関に限定されてきた宇宙事業の門戸が民間企業へ開かれてきております。NASAを筆頭とする各国の宇宙機関では、地球低軌道における活動等に関する宇宙関連予算の大幅な節約につなげるべく、宇宙開発に民間企業を活用する傾向が拡大しており、サービスを提供可能な民間企業に対して政府が発注する「サービス調達」の形態による宇宙探査活動も活発化しております。 特に米国ではその傾向が顕著であり、一例として、NASAは2008年より商業補給サービス(Commercial Resupply Services:CRS)計画を発表しており、国際宇宙ステーション(International Space Station、(以下、「ISS」という。)への輸送を民間企業に委託しています。実際に2011年には高コストであったNASA自身によるスペースシャトルの開発と運用が停止され、その後2020年6月には、SpaceX社のロケットから切り離された宇宙船「クルー・ドラゴン」が、民間企業としては史上初となるISSへのドッキングを成功させています。 日本政府もまた民間による宇宙開発を推進していく考えであり、日本政府が主導する「中小企業イノベーション創出推進事業」では宇宙分野にも補助金の配分がなされました。中小企業イノベーション創出推進事業は、日本のイノベーション創出を促進するためのSBIR(Small Business Innovation Research)制度の下、革新的な研究開発を行うスタートアップ等が社会実装に繋げるための大規模技術実証を実施し、日本におけるスタートアップ等の有する先端技術の社会実装の促進を図ることを目的とするものです。また2023年11月には、民間企業・大学等による複数年度にわたる宇宙分野の先端技術開発や技術実証、商業化を支援するため、JAXAに10年間の「宇宙戦略基金」を設置し、総額1兆円規模の支援を行うことを目指すことが閣議決定されました。2024年4月には第一期として約3,000億円、2025年3月には第二期として約3,000億円分のテーマが発表されております。 宇宙市場全体の成長可能性については、2040年代にはその市場規模はグローバルで1兆米ドル以上に成長するとの予測がありますが(注1)、宇宙産業の中でも特に月は、前述のとおりその存在が見込まれている水資源をエネルギーとして利用する経済価値が高く着目されており、世界各国が月面へのミッションを実行しております。 2019年初頭には中国の無人探査機「嫦娥4号(じょうが4号)」が世界で初めて月の裏側へ着陸し、また米国ではバイデン政権下で、昨年度対比で約15億米ドルもの増額となる248億米ドル相当の2022年度NASA予算が議会に申請され、1970年代のアポロ計画以降初となる月面の有人探査を2028年までに実施する「アルテミス計画」が推進されています。2020年10月以降本アルテミス計画の一環として、月面における平和的・友好的かつ透明性ある活動のガイドラインとなる「Artemis Accords(アルテミス合意)」に日本と米国を含む世界66カ国(本書提出日時点)が合意・署名する等、引き続き活発な進捗が見られております。さらに、2026年3月にNASAにより開催されたイベント「IGNITION」においては、2030年までの月面基地構築に向けた投資の集中や、2028年までに20回を超える月面着陸ミッションを実施する方針など、今後の月面開発事業を大幅に加速させる計画が発表されました。加えて、同年4月にはアルテミスIIミッションにおいて53年ぶりの有人月周回を成功させ無事帰還したことで、米国を中心に、月面探査への機運は世界的に一段と高まっております。 日本もまたJAXAがSLIMプロジェクトにより、将来の月惑星探査に必要な高精度着陸技術を小型探査機で実証しており、月面探査の動きが活発化しつつあります。上述の「中小企業イノベーション創出推進事業」では、当社は「月面ランダーの開発・運用実証」と提示された経済産業省の実施するテーマに選定され、予算額(補助上限)120億円の補助対象事業として採択されました。宇宙戦略基金では、当該基金の第1期の公募テーマのひとつ「月面の水資源探査技術(センシング技術)の開発・実証」(支援上限額:64億円(注2)) において、当社は代表機関である国立大学法人東京科学大学を中心とするプロジェクトの中核的連携機関として採択され、代表機関から受領する最大額は47億円(注3)となることを見込んでおります。更に、2025年3月公表された3,000億円規模第2期テーマのうち、当社は「月極域における高精度着陸技術」(支援上限額:200億円(注4))に採択され、本採択に伴いミッション4の開発開始を正式に決定いたしました。 さらには、欧州においてもESAよりMAGPIEプロジェクトフェーズ2の予算確保が発表されるなど、将来のミッションに向けたグローバルでの事業進捗がみられています。 なお昨今NASAは、民間企業に対して今後10年間で総額26億米ドルの予算を投じ、月面への輸送サービス委託するCLPSプログラムを遂行しています。当社子会社であるispace technologies U.S., inc.は米国のドレイパー研究所を中心とするチームに所属し、同チームで応募したCLPSに関する初期提案書は、2018年11月にNASAにより採択され、ispace technologies U.S., inc.は同プログラムにてNASAから受注する資格を有するチームの1社として選定されました。その後2022年7月において、同チームの提案がNASAに採択されており、ミッション5において、リレー衛星を月周回軌道に投入し、月震計(FSS)、地下の熱流探査機(LITMS)及び電磁場測定器(LuSEE)といった一連の科学実験機器を含むペイロードを月の裏側に存在する南極付近に輸送する予定です。これらのリレー衛星はBlue Canyon Technologies Inc.が製造し、Advanced Space, LLC が運用をサポートする予定で、これらの衛星を活用して月震データを最大1年間にわたり収集する予定です。 宇宙機関による月面開発の本格化の動きを受け、月面でのエネルギー経済圏が創出されることを見据えた民間企業による新しいビジネスも生まれつつあります。トヨタ自動車株式会社は、水素を燃料とし、月面で1万キロ以上の走行が可能な有人与圧ローバー(ルナ・クルーザー)をJAXAと共同で開発し、早ければ2032年に月に打ち上げることを目指しています。清水建設株式会社は、月面拠点の開発に向けた構想や、月面での大規模太陽光発電により生まれたエネルギーを地球上にまで伝送するLunar Ring構想を掲げています。 加えて、2024年4月には、日本の月面与圧ローバー提供及び運用と米国によるアルテミス計画での日本人宇宙飛行士による2回の月面着陸の機会提供などを含む「Lunar Surface Exploration Implementing Arrangement」への署名に関する共同声明が日米両政府により発表されました。さらに2025年2月には石破首相とトランプ米大統領の首脳会談にて月面探査におけるパートナーシップの継続が共同声明に織り込まれるなど、月面開発への具体的な政府の取り組みが大きく進捗しております。 PwC社の調査に基づくと、当社がターゲットとする市場が大きく拡大することが予想されております。各地域の市場トレンドや観測可能な調査に基づくボトムアップ分析の楽観的シナリオにおいては、月面輸送サービス事業の市場は2040年に84億米ドル(注5)、月面データ取得・販売事業の市場は12億米ドル(注5)に達するとされており、それぞれの2020年から2040年の期間においての年平均成長率は12%~22%と高い成長が予測されております。また、当社のビジョンである「2040年以降に月に1,000人が居住」することと同様の前提を置いた場合のロードマップ分析による同社の調査データによると、月面輸送市場は年間約1,502億米ドル(注5)まで達すると推定されております。 (注1)出所:総務省 宙を拓くタスクフォース(第6回)平成31年3月1日開催。NTTデータ経営研究所作成の「長期的な宇宙ビジネス市場規模の試算」 (注2)今後ステージゲート審査等により変動し得る数値。 (注3)最終的な契約金額は、JAXA及び代表機関による実績報告及び成果報告書の内容についての検査、並びに契約金額の確定通知をもって確定されます。 (注4)今後ステージゲート審査等により変動し得る数値であるため、全額を受領することが本書提出日時点で確定するものではありません。 (注5)2036年~2040年の累計値の年平均値 (4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等 当社グループがステークホルダーから主に期待されている点は、計画から遅延しない研究開発活動による技術確立とミッションの実行、顧客からの事業収益の獲得、事業運営のために必要な原資の適時な調達、及び限られた資金の最大限に効率的な使用等を通じて、収益の最大化を図ることと認識しております。 技術確立の実現のため、今後複数ミッションの同時開発を実施し、後続ミッションへの技術フィードバックを適時に実施してまいりますが、複数ミッションを同時並行で進捗させるために、事業収益の獲得や資金調達を通じた財務基盤の確立が重要となります。 より直接的に開発の進捗を確認する上では、当社が開示するミッションごとの開発スケジュール及び、1つの開発フェーズが完了し、次のフェーズへ移行する上でマイルストーンとなる審査の完了報告が重要となります。 当社は2017年よりミッション1のランダー開発を開始しており、以降、途中でミッション内容の変更を行った影響により開発期間の長期化等も発生しましたが、2022年10月までに製造、最終試験まで完了し、2022年12月11日にミッション1の打上げを実施しました。「段階的プロジェクト計画法におけるシステムエンジニアリング活動」では、各フェーズで行われるべき作業プロセスが完了すると、それぞれのフェーズにおける結果を評価し、次フェーズへの移行可否を判断する技術審査を行いますが、ミッション1の開発プロセスにおいても以下のとおりの審査を経ております。 表2:ランダー開発フェーズの概観(ミッション1のケース) フェーズ   フェーズA   ➡   フェーズB   ➡   ―   ➡   フェーズC   ➡   フェーズD 技術 審査   SRR System  Requirement Review   PDR Preliminary Design Review   ⊿SRR・⊿PDR Delta SRR ・Delta PDR   CDR Critical Design Review   PSR Pre-Shipment Review   LRR Launch Readiness Review 目的   ビジネス要件とシステム要件の整合性を確認の上、システム設計開始を承認する審査会   仕様値に対する設計結果、設計検証計画の実現性を確認する審査会   ―   製造と試験の詳細設計と検証計画が適正かを、これまでに実施した試作評価、熱構造特性の評価、電気機械設計等の評価を活用して確認する審査会   試験結果の確認及び、打上場への輸送承認を行う審査会   ロケットへのインテグレーション作業終了の確認及び、打上げと初期運用への移行承認を行う審査会 当社の ケース   2017年下期に実施。外部専門家がオブザーバーとして参加。MDR及びSDRを包含して実施   2018年下期に実施。グローバルに約30名の外部専門家が審査に参加   ランダー開発を月周回から月面着陸へと変更する上で必要な変更を審議するため、SRR(2019年8月)及び⊿PDR(2019年11月)を実施   2020年9月以降、外部専門家も交えて実施、2021年2月に最終完了   2022年10月に実施   2022年11月に実施 また、顧客からの事業収益の観点では、ペイロードサービス契約及びデータサービス契約に加え、MOU及びi-PSAの締結総額が収益の先行指標として重要となります。2026年5月15日時点において、ミッション3以降を対象とした締結済みの契約・助成金(PL計上済みの金額を除く)と予算確保済みの案件で合わせて562億円見込んでおり、加えてMOU等で984億円を締結しております。 (5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 当社グループの属する宇宙関連ビジネスは、グローバルベースで継続的かつ加速度的に拡大していくものと見込まれており、この産業の潮流に対応するために必要な技術確立が急がれる状況にあります。多額の先行研究開発投資及び長期の開発期間を要する宇宙関連機器の開発に従事しているため、当社は本書提出日時点において、これらの開発投資を補うための十分な収益を計上するには至っておりません。この結果、継続的な営業損失及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上しており、当連結会計年度末時点において、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。当該事象又は状況を解消し、安定的な事業収益を創出するまでの間、下記の事項を重要な課題として取り組んでおります。ただし、当該重要事象等を解消するための対応策を実施していることから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。 ①研究開発の推進 日本で商業用の新たなモデルを使用するミッション3、宇宙戦略基金の採択をもって開発開始を決定したミッション4、また米国での初の打上げとなるミッション5に向けて、打上事業者による打上機会を確保すると同時に、開発スケジュール、開発コスト及び開発クオリティを厳格に管理することで、ランダー及びローバーの開発を着実に進めてまいります。 ②顧客の開拓 当社が事業収益を獲得するために必要なランダー及びローバーは開発途上にあります。また当社が事業収益を見込む市場は、現在グローバルでも草創期に当たります。当社では現在ミッション3からミッション5までの顧客からの潜在的受注を確認していますが、事業収益の安定化に向けて引き続き中長期的に持続可能な顧客市場を開拓してまいります。 ③人材の確保 当社はランダー及びローバーの研究開発を遂行するために、継続して多様な開発領域について高度な専門性と能力を備えた人材を国内外から雇用しております。また、急速に従業員数が拡大する組織の中において、各人材がその能力を最大限に発揮することが可能な環境を整えるための取り組みを引き続き行ってまいります。 ④成長に対応した内部統制の構築と適切な運用 今後の事業運営及び業容拡大に対応すべく、必要な業務プロセス、財務・経理上の体制、労務管理、子会社管理、セキュリティ管理等を整備する等、当社の成長に対応した内部統制の構築及び運用の実施を引き続き行ってまいります。 ⑤中長期的な成長資金の確保 当社にとって、安定的な事業収益化を目指す上で将来的に継続的なミッションの実現が必要であり、そのための必要資金を着実に確保することが重要です。当社ではこれまで、無担保転換社債型新株予約権付社債の発行、第三者割当増資、金融機関からの借入、クラウドファンディング、公募増資等によって資金調達をしてまいりましたが、今後も、ミッション推進のために機動的な資金調達の可能性を適時検討してまいります。 また、当社はミッション1およびミッション2に関して三井住友海上火災保険株式会社との間で損害保険契約を締結し、ミッション1において保険金を受領しております。ミッション2においては、その保険責任範囲外であるため、保険金は受領しておりません。当社は保険によるリスク低減も財務安全性確保のための一つの手段として認識しており、ミッション3以降も保険の利用を検討しております。 金融機関からの借入については、2024年3月期には複数行より総額75億円の融資契約を締結しており、2025年3月期には複数行より借換も含めて総額193億円の融資契約を締結しております。また、当連結会計年度においても155億円の融資契約を締結しております。 資本調達についても、2024年10月にはCVI Investments, Inc.との間でのEquity Program Agreementを締結し第三者割当増資による新株式及び新株予約権を発行しております。また、2025年10月から11月にかけて、公募及び第三者割当による新株式発行並びに当社株式のオーバーアロットメントによる売出しを実施しており、払込が完了しております。
事業等のリスク34,935字を開く

会社が自認するリスクの一覧

3【事業等のリスク】 本書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事 項には、以下のようなものがあります。当社グループはこれらのリスクの発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努める方針ですが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。また、これらは投資判断のためのリスクをすべて網羅したものではなく、さらにこれら以外にも様々なリスクを伴っていることにご留意ください。当社グループは、月面への輸送サービスを主軸としつつ、月周回衛星等の自社アセットを活用した通信・測位サービスを含む月面インフラ事業の構築にも取り組んでおりますが、月面着陸をはじめとする宇宙ミッションの成功がビジネス継続のための重要な要素となります。しかしながら、未だ当社において月面への着陸実績はありません。また、当社が属する宇宙産業自体未だ市場草創期であり安定的な市場は確立されておらず、将来の市場規模拡大には不確実性を伴います。また、ランダー等の開発には長い年月と多額の費用を要するとともに、すべての開発及び宇宙ミッションが成功するとは限らないことからも、当社への投資は一般投資者の投資対象として供するには相対的にリスクが高いと考えられます。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性のあるすべてのリスクを網羅したものではありません。 Ⅰ. 外部環境及び第三者など自社を取り巻く環境に関するリスク (1)当社ビジネスおよび業界に関するリスク ①市場について (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:特定時期なし) 当社の属する宇宙産業は将来の成長が期待される市場でありますが、当社が事業収益を見込むペイロードサービスとデータサービスは、現在グローバルでも草創期に当たります。それゆえ、宇宙産業の将来には多くの不確実性が伴います。当社では既に現在ミッション1及びミッション2の顧客からの受注の確定及び、ミッション3以降に係る顧客からの潜在的受注を確認しておりますが、今後、当該事業における市場が当社の想定通り成立・成長する保証はありません。例えば、世界的な経済情勢、各国の宇宙政策や企業の景気による影響、月資源の存在及び規模並びにその商業的開発の実現可能性に対する認識の変化等により事業環境が変化した場合には、当社の顧客が政府機関の場合には月関連の事業に投入可能な予算額が減少し、また民間企業の場合には研究開発予算や事業開発予算・ブランディング予算等が減少し、その結果、市場において十分な需要が生じない可能性があります。加えて、当社又は第三者が策定する市場規模に関する予測は、様々な仮定や前提条件に基づいており、前提条件の内容等によってその結果は大きく異なります。例えば、PwC社の調査においても、各地域の市場トレンドや観測可能な調査に基づくボトムアップ分析と、当社のビジョンである「2040年代に月に1,000人が居住」することと同様の前提を置いた場合のロードマップ分析では大きく結果が異なります。したがって、これらの予測において用いられる仮定や前提条件が正しくない場合には、予測とは大きく異なった結果となる可能性があります。また、当該調査は2021年9月に発表されたものであり、例えばNASAのアルテミス計画の遅延等、それ以降の市況や地政学的状況の変化を反映しておりません。NASAにおいては、2025年5月に発表された予算計画案において全体の予算額削減が計画された一方、2026年3月にはIGNITION(日本語訳:点火)というイベントの中で、今後は月面での基地開発(Moon Base)に集中し、総額3兆円規模の投資が発表されるなど、当社事業にも係る多くの計画更新が発表されております。アルテミスⅡミッションの成功や次期CLPS(CLPS2.0)の発表などもあり、今後も米国は月面開発及び商業化を重視する意向であると認識していますが、時の政権の意向や影響は大きく、今後も具体的な実施計画は変更になる可能性はあります。 また、有価証券報告書「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3.事業の内容 <当社グループが注力する月面輸送サービスの分類について>」記載のとおり、当社は、ペイロードサービスにおいて、小型ランダーへの戦略的集中を行っており、大型のランダーのペイロードを指向する顧客とは重複しない一定層の小型ランダーが成立し得ると考えているところ、ペイロード市場における主要なニーズが、当社が対応出来ない大型のペイロードを指向する場合には、当社が提供するサービスへの需要が十分に喚起されないおそれがあり、また、仮に需要があったとしても、他の事業者が提供する大型ランダーの余剰スペースに搭載する形のペイロードサービスによって代替されるおそれもあります。さらに、当社が行うペイロードサービスの単価等については既に確立した水準は存在しないことから、契約相手方との関係や競合相手の状況によっては、当社が希望する水準での価格設定や契約条件の設定を行えない可能性があります。 加えて、データサービスについては、潜在的な顧客からのニーズは確認されており、当社として顧客からの受注も存在しているものの、本書提出日時点で十分な市場は確立されておらず、また、同サービスにおける価格設定についても、今後市場動向や競合の動向によって仕組み等が変動する可能性があります。したがって、将来的に同サービスにおいて、当社が期待するだけの需要を喚起できない可能性や、できたとして当社が希望する水準での価格設定を行えない可能性があります。また、当社が顧客のために取得したデータについて、顧客との交渉次第では、当社が権利を確保できない可能性があり、その場合、当社が計画するデータプラットフォームやデータベースの構築が遅延する、又は実現しない可能性があります。 2026年3月に発表した、月の周回衛星を活用した通信・測位サービス「ルナ・コネクトサービス」についても、潜在的な顧客からのニーズは確認されているものの、通信・測位の市場自体は本書提出日時点では十分に確立されておらず、今後のグローバルでの月面輸送サービスの進展により、需要は大きく変動する可能性があります。 このように、当社の想定通りに市場が成立・成長しなかった場合等には、売上計上時期が後ろ倒しになる等、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 ②マクロ経済について 当社の業績は、日本、米国及び国際的な経済・政治情勢等の影響を大きく受けます。現在の世界経済は、インフレ圧力の継続に加え、エネルギー価格の上昇や地政学的緊張の高まり等を背景に、不確実性が一層高まっております。これにより、様々な部品、材料及びサービスの調達コストの上昇が継続する可能性があるほか、金融環境の引き締まりや金利動向の不確実性により、当社の借入コストが増加する可能性があります。また、現在及び将来の顧客については、その事業または予算が経済状況の影響を受けた場合には、当社のサービスに対する支出を延期または減少させる可能性があります。近時の国際経済環境においては、貿易摩擦や政策不確実性に加え、地政学的リスクの高まりが投資や需要の抑制要因となる可能性があります。当社は、ペイロードサービスの対価の一部を顧客からの前払いとし契約後の返金を行わないこと等のリスク軽減措置を講ずる予定であるものの、今後ペイロード容量を増加し民間企業の潜在顧客も見込まれる中で、契約期間が数年間など長期に渡る契約も想定されるところ、現在及び将来の顧客が当社のサービスに対する代金を支払えない場合、当社の収益及びキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。 現在のロシアとウクライナの軍事衝突は長期化しており、欧州及び国際的な安全保障環境に継続的な影響を与えるとともに、米国及び北大西洋条約機構(NATO)とロシアの緊張状態は続いております。各国による経済制裁や輸出管理措置も継続・変化しており、その内容によってはサプライチェーンや資金決済等に影響を及ぼす可能性があります。さらに、中東地域における軍事衝突及び緊張の高まりは、エネルギー供給や海上輸送の安定性に影響を及ぼし、原油価格の上昇や物流コストの増加を通じて、世界経済及び企業活動全般に影響を与える可能性があります。また、これらの地政学的リスクは金融市場の変動、インフレ再加速及びサプライチェーンのさらなる混乱を引き起こす可能性があります。加えて、主要国間の経済安全保障政策や保護主義的な通商政策の強化、国際秩序の変化等により、貿易環境の不確実性が高まっております。これらの動きは、商品価格、信用市場及び資本市場における大幅な変動をもたらす可能性があり、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 ③為替レートについて (顕在化の可能性:高/影響度:中/発生時期:特定時期なし) 当社グループは、海外への事業展開にも取り組んでおり、ルクセンブルク大公国及び米国に連結子会社を有しております。ルクセンブルク子会社及び米国子会社の財務諸表における現地通貨建の項目は、連結財務諸表作成のために円換算されることから、連結財務諸表数値は為替相場の変動による影響を受ける可能性があります。また、当社、ルクセンブルク子会社及び米国子会社も海外のサプライヤーとの間で複数の外貨建て取引を行っており、為替変動リスクを軽減するため、2026年3月期に為替予約その他ヘッジ取引を行うことを決定しました。かかるヘッジ取引については、外貨の手元流動性を踏まえて実施しない可能性があり、また実施する場合でも、必ずしも為替変動リスクを全てヘッジできるとは限りません。また、当社は、ペイロードサービスやデータサービス等の主要な事業については米ドル建ての入金とすることによって、米ドルに対する円の為替変動リスクを一定程度軽減しておりますが、今後著しい為替変動があった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。 ④自然災害等について 大規模な地震等の自然災害、異常気象や気候変動の影響、伝染病の蔓延、事故、テロ・戦争・政治的混乱等、当社による予測が不可能又は突発的な事由によって、事業所等が壊滅的な損害を被ったり、事業の継続に支障が生じたりする可能性があります。このような事態に備え、従業員安否確認手段の整備、防災品の確保等に努めておりますが、想定を超える事態が発生する場合は、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、打上施設やサプライヤーが自然災害により損害を被った場合、悪天候により打上スケジュールが遅延した場合、サプライヤーの所在する地域においてテロや政治的混乱が生じた場合や、宇宙空間における太陽フレアや流星塵等の影響により、ランダーや通信系統に不具合が発生する場合等にも、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 (2)第三者に関するリスク ①政府機関の顧客について (顕在化の可能性:高/影響度:大/発生時期:特定時期なし) 当社の既存顧客の多くが政府機関であり、また、当面の間、当社の潜在顧客の多くも政府機関となることが予想されるところ、一般に政府機関の数は限定的であり、受注できる契約数も限定的となる可能性があります。また、政府機関からの発注については、各国の宇宙政策、国家予算や地政学上のリスクによる影響を受ける傾向があり、これらによって、政府機関からの発注自体が少なくなるか、発注内容が変更若しくは取り消される可能性があります。また、政府機関からの発注への応募についても一定の当該国での内製化要件等が課される場合もあり、当社としては米国・日本・欧州の各拠点で開発体制を敷いているものの、当社が必ずしも応募できるとは限りません。加えて、政府機関との契約については、入札手続を経ることから当社が期待する水準の単価とならない可能性があり、したがって、当社の想定通りの採算で受注できない可能性があります。また、契約締結後も、政府機関による解約が広く認められる場合等、民間企業と契約する場合に比べて当社にとって不利な契約条項が含まれる可能性、当社の技術内容を含めた一定の事項について開示が要求される可能性、部材やサービスの調達先について一定の要件を課される可能性や、現地のオフィスや施設等の設置等を求められる可能性等があります。 加えて、政府機関との契約においては、契約条件の遵守について政府機関による詳細な調査権が認められる場合があります。さらに、当社がこれらの規制や条件等に違反した場合、契約の解約のみならず、行政処分等の対象となる場合があり、かかる処分等が下された場合、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 したがって、政府機関からの発注については、受注できたとしても、当社が想定したとおりの収益を上げることができない可能性があります。例えば、当社は経済産業省が実施する宇宙分野の「月面ランダーの開発・運用実証」をテーマとする補助対象事業に採択されておりますが、当該事業に係る補助金の付与は、当社が100kg以上のペイロードを月面輸送するための月面ランダーの開発と、当社が経済産業省と合意した時期までに月への打上げ及び運用を行うことを前提としています。当社は、ミッション3のULTRAランダーの開発費用の一部に当該補助金を充当する予定であるところ、ミッション3は、当初2027年中の打上げとして経済産業省と合意しておりましたが、本書提出日現在では当社内の開発計画上、2028年内の打上げとなることを見込んでおります。本変更については今後、関係省庁と調整中の段階であり、最終的には経済産業大臣により正式に計画変更が認可されることとなりますが、経済産業省との間でスケジュールの延期について最終的に合意できない場合等には、当該補助金を得られない可能性があります。 ②重要な外部パートナー及び顧客への依存について (顕在化の可能性:高/影響度:大/発生時期:特定時期なし) 当社が開発するランダーは、有価証券報告書「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3.事業の内容 <ランダー・ローバーのテクノロジー及びペイロード>」に記載のとおり、ミッション1及びミッション2の推進系システムについてはAriane Groupに製造を委託し、着陸制御システムの開発についてはドレイパー研究所とのアライアンス関係を築いております。 加えて、後記「Ⅱ.ビジネスモデル等の自社の事業に起因するリスク (2)当社営業に関するリスク ② 参加中・参加予定のプロジェクト及び協業について」記載のとおり、政府機関による商業月面探査・科学ミッションやプロジェクトにおいて、様々なパートナーと協業しております。 しかしながら、当社がこれらの関係を継続し続けられる保証はありません。当社はこれらのパートナーと長期にわたるビジネス面での連携を過去より実施し信頼関係を構築するとともに、定期的なミーティング等の場を通じて関係維持に努めておりますが、既存の関係を失った場合、同等の技術的水準若しくは価格水準又は協業機会を提供する代わりの第三者パートナーを確保できない可能性があります。また、現状の契約期間の終了後にこれらのパートナーとの契約を再締結又は更新できる保証はなく、これらの契約が同価格又はサービス水準では更新されない可能性もあります。さらに、関係各国の輸出管理法令その他の規制の動向によっては、これらのパートナーとの協働に支障が生じる可能性もあります。 また、上記の企業以外にも、当社は開発するランダーの部品の多くを外部から調達しているところ、部品調達に遅延が生じた場合や、当該部品に欠陥等があった場合、さらには、新型コロナウイルスの拡大を含む天災や事故等により外部サプライヤーの生産能力が制限された場合等には、当社の開発・ミッションに遅延が生じる可能性や追加の費用を負担する可能性があります。 加えて、有価証券報告書「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3.事業の内容 <ビジネスモデルについて>」記載のとおり、当社のランダーは、ロケットから放出された後ミッション完了まで、すべて当社が東京都中央区日本橋に保有するミッション・コントロール・センターから、当社の従業員によって制御しております。しかし、そのために必要なミッション・コントロール・センターとランダー間の宇宙通信については、当社以外の機関等が保有する宇宙通信ネットワークを利用する必要があるため、当該ネットワークに障害が生じた場合にはミッションの実行に支障を生じさせる可能性があり、また、当社の米国子会社が実施するミッションについても同様の支障を生じさせる可能性があります。 ③打上業者に関するリスクについて (顕在化の可能性:高/影響度:大/発生時期:1年以内) 当社がミッション1からミッション2、及びミッション5で使用するランダーの打上げについては、有価証券報告書「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3.事業の内容 <ランダー・ローバーのテクノロジー及びペイロード>」に記載のとおり、SpaceX社と打上契約を締結しております。 当該契約上ミッション2においては、第三者のペイロードとの相乗りでSpaceX社のロケットに搭載され打上げが実施されました。SpaceX社は、当社及び相乗り先のスケジュールや技術要件、打上場所の天候等を考慮して打上スケジュールを決定する責任を負っており、当社のミッションスケジュールに遅延等の影響が生じる可能性があります。また、ミッション5においては当社がSpaceX社のロケットを占有する契約となっておりますが、この場合も、米国連邦航空局等の政府機関によるSpaceX社のロケット及び/又は当社のランダーの打上げの承認が遅れた場合等に、打上スケジュールに影響が生じる可能性があります。 このような場合でも、当社は既存顧客との間で、少なくともミッション1及びミッション2の間は、基本的な方針として当社の顧客に対して返金を行わない契約を締結しておりますが、顧客側が任意解除権を有する契約や一定期間以上のスケジュール遅延が生じた場合に顧客側に解除権が発生する(ただし、後者については既に受領済みの対価についての返金は不要となる)契約や、一定のマイルストーンの達成を一部支払の条件としている契約を一部の顧客との間で締結しており、結果としてミッションが遅延又は達成されない場合、当社の評判や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 なお、当社はミッション3以降においても、ランダーの打上げについては、第三者である打上業者に委託をする予定ですが、将来において必ずしも十分な数の打上業者が存在するとは限らず、業界全体として十分な打上機会が確保されない結果、当社ランダーの打上コストが当社の想定を上回り、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、打上業者の不足等により、当社のスケジュール通りのミッションの実現を可能とする打上業者と当社が契約できなかった場合には、当社のミッションスケジュールに遅延等が生じる可能性があります。 上記の結果、ミッションに悪影響が生じた場合には、遅延の期間や顧客との契約の内容によっては、当社の売上高の計上時期に影響が生じる可能性があります。 ④競合について 当社の事業と同様のビジネスモデルを有している企業は海外に数社あり、既に月面への着陸・ペイロード輸送に実績を有する企業が存在します。また、当社は、月面ペイロード輸送事業及びデータ事業を行う企業のみならず、宇宙衛星軌道にペイロードを輸送する事業を行う企業や、月面探査ローバーの開発事業のみを行う企業、月周回に配置した衛星を用いて、通信、測位事業を行う企業等とも競合する可能性があります。 当社は東北大学の吉田研究室での月面探査ローバー開発をベースとして、創業以来、約10年にわたるローバー開発の歴史を持ち、当社開発のローバーは「Google Lunar XPRIZE」の中間賞を受賞した実績を有します。また、ランダー開発においても2016年頃から取り組みを開始する等、比較的長い期間の開発実績と研究成果の蓄積を有しており、これらランダー及びローバーの開発状況が評価されたことからNASAのCLPSへ採択され、今後も継続してNASAから提示されるタスクオーダーの受注資格を有しており、さらにミッション1及びミッション2においては設定した10のマイルストーンのうち8を達成し着陸直前までの間に貴重な航行データを収集した等の実績を持ちます。さらに、ESAからもローバー利用の検討(MAGPIE)に関する契約を継続的に受注しており、将来的なミッションへの発展が期待されています。それに加え、技術的難易度の高い着陸誘導制御をアポロ計画の月着陸で実績を持つドレイパー研究所と協業することによる技術競争力、日本、米国、欧州3拠点体制により各国政府の輸出規制等に左右されない最適なサプライヤー選定が可能になることによるコスト競争力の両面において他社との差別化を目指してまいりますが、宇宙産業は将来の成長が期待される市場であり、引き続き国内外の事業者がこの分野に参入してくる可能性があります。このため、先行して事業を推進していくことで、さらに実績を積み上げて市場内での地位を早期に確立してまいりますが、今後において十分な実績が得られなかった場合や、新規参入により競争が激化した場合には、ペイロードサービスの価格を下げざるを得ない場合による売上減少等、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 また、データサービスについても、当社のペイロードサービスの競合他社が、当社同様、ミッションで取得したデータを用いた上でデータサービスを提供する可能性があり、また、宇宙衛星軌道上で宇宙データサービスを取り扱う会社が、業務の一部として、月面データの領域に参入する可能性もあります。 当社の競合他社の中には、当社よりも早期に実績を積み上げマーケットシェアを拡大する企業、当社に比べ、より多額の投資ができる企業や、より高価値又は魅力的な価格でサービスを提供することができる企業が存在する可能性があります。特に米国の企業は、NASAのIGNITIONイベントで発表された計画に基づき急増する月面への輸送需要をとらえるために、多くの先行投資をする可能性があり、また、既存の競合他社が、第三者と戦略的提携等を行うことにより、競争力を強化する可能性もあります。加えて、今後、海外の競合他社が政府から補助金等を受領することによって競争力を高める可能性もあります。このように、当社の競争力は多くの要因によって影響を受けるところ、当社が競争力を維持することが出来なかった場合、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 ⑤ベンチャーキャピタル等の株式所有割合に伴うリスクについて 当社の発行済株式総数に対するベンチャーキャピタル及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業組合(個人を含まず、以下「ベンチャーキャピタル等」という。)の所有割合は2026年3月末現在5.6%であります。当社の株式の株価推移や、ベンチャーキャピタル等に定められた規程によっては、ベンチャーキャピタル等が所有する株式の全部又は一部を売却する可能性や、ベンチャーキャピタル等の投資家へ現物分配が実施される可能性等が考えられ、その場合、株式市場における当社株式の需給バランスが短期的に損なわれ、当社株式の市場価格に悪影響を及ぼす可能性があります。 Ⅱ. ビジネスモデル等の自社の事業に起因するリスク (1)当社開発・ミッションに関するリスク ①ミッションの未達について(顕在化の可能性:高/影響度:高/発生時期:1年以内) 当社が行うミッションについて、ミッション1においては月面着陸、ミッション2においては月面着陸及びローバーによる月面探査を目指したものです。一方、月面開発事業は元来技術的リスクを伴うものであり、当社においてこれまで月面着陸の実績はなく、また、民間企業が完全な月面着陸を行った事例は本書提出日時点で、1例のみです。当社としては、技術的にはランダーの推進及び着陸誘導制御は旧ソ連によるルナ計画、米国のアポロ計画、中国による嫦娥計画等の実績があり特に革新的な新規技術を必要とするものではないとの理解であり、ミッション1及びミッション2においてミッションを計10個のSuccessマイルストーンに分解したうち、Success8となる月周回軌道上でのすべての軌道制御マヌーバの完了(Success8)までの達成をしております。一方で、ミッション1及びミッション2ではSuccess9となる月面着陸の完了は未達で終わっており、本書提出日現在、当社のランダーが月に軟着陸した実績はありません。加えて、地球外の天体にランダーを着陸させることは元来難易度が高いオペレーションであるため、当社では両分野の開発は経験豊富な第三者と協業することでリスクの低減に努めておりますが、予期せぬトラブルが発生した場合、今後もミッションが未達となる可能性があります。ミッション未達についても様々な事象が想定され、A.ロケットの打上げ時に障害が発生する可能性、B.月へ向かう航行中に障害が発生する可能性、C.月の周回軌道に入る際に障害が発生する可能性、D.月への着陸が安定的に成功しない可能性、E.着陸後にランダーからローバーを放出する等のミッションを実行できない可能性等が考えられます。 特に、ミッション1とミッション2では月面着陸の完了は未達で終わった結果、当社の技術の一部(例えば誘導・航法・制御システム(以下「GNC」という。)の完全な検証ができず、当初見込んでいたミッションデータ量を収集することができなかったため、将来的な車両や技術の開発、成功裏にミッションを遂行する能力に影響を与えるおそれがあります。当社としては、ミッション1のフライトデータの解析に基づき、ミッション1で月面着陸が未了となった主な原因は、ソフトウェアが当社の期待通りに動作せず、ランダーの高度測定において異常が生じたこと、及び打ち上げ前に実施したシミュレーションによっても当該問題を発見するまでの十分な検証に至らなかったことにあると考えています。ミッション2については、フライトデータの解析に基づき、月面着陸が未了となった主な原因は、レーザーレンジファインダー(以下「LRF」という。)のハードウェアの異常によるものであり、その結果、着陸時に有効な測定値の取得が遅れ、ランダーがソフトランディングに必要な速度まで減速できなかったためと考えております。一方で、GNCに問題は見当たらず、推進システムや他のシステム(例えば電源供給)の異常も見つかりませんでした。ただし、ミッション1中にミッション2で見つかったLRFの問題を予見することはできませんでした。当社がこれまでに遭遇した問題に適切に対処できない場合、今後のミッションでも同様の問題が発生しない保証はありません。また、当社が、ミッション1及びミッション2での月面着陸の失敗に寄与したすべての問題を完全に特定した保証はなく、他の未特定又は予期しない問題が発生することで、将来のミッションの完了能力に影響を与える可能性があります。 なお、当社は、ミッション2の軟着陸未達に関するより広範な改善策として、JAXA、NASA、ESA等の専門家を含む外部有識者からなる「改善タスクフォース」を設置し、CAST手法(システム理論に基づく因果分析)を用いた包括的な分析・検討を実施いたしました。改善タスクフォースからは、運用レベル(地形相対航法(TRN)の導入、着陸運用時の残燃料の活用)、システム開発レベル(ベンダー選定プロセスの改善、試験リソースの増強、故障検出・隔離・回復(FDIR)の設計と検証)、及び経営判断レベル(パートナーとの連携、企業のリスク管理アプローチ強化)の3階層にわたる「7つの提言」が報告されました。当社は当該提言を真摯に受け止め、後続ミッションにおいて具体的な改善策の実装を計画しております。 また、ミッション3以降については従来日本及び米国で並行して開発していたランダーモデルを統合し、新たな統合ランダーモデル「ULTRA」を用いる方針としており、従前想定していた複数モデル個別開発から統合開発へ移行しております。当社ULTRAランダーを使用する計画のミッションにおいて、前述のとおり、RESILIENCEランダーを使用するミッションよりも多くの販売可能重量及び売上高を計画していることから、ULTRAランダーに問題が生じた場合、当社の収益に生じる悪影響の程度が大きくなる可能性があります。ULTRAランダーの開発及び運用については、設計統合、開発体制の再構築及びサプライチェーンの見直し等を伴うことから、日本及び米国における開発プロセスの統合に起因する技術的・運用的リスク、並びに設計変更に伴う開発スケジュールの遅延リスクや部材調達リスクが新たに顕在化する可能性があります。 さらに、月周回衛星等の自社アセットを活用した通信・測位サービスを提供する「ルナ・コネクトサービス」の立ち上げに向けた事業構想を発表しております。当社は2030年までに少なくとも5基の自社月周回衛星を月周回軌道へ投入する計画であり、その第一弾として、米Argo Space Corp.の宇宙輸送サービスを利用し、新ミッション2.5として最速2027年にも当社初の月周回衛星1基を月周回軌道へ投入することを目指しております。当該事業は従来の月面着陸・輸送サービスとは異なる新たな事業領域であり、月周回衛星の開発・運用・サービス提供において想定外の技術的問題が生じる可能性があるほか、事業構想段階であることから、サービスの需要や収益性が当社の見込み通りとならない可能性があります。また、ミッション2.5で予定している通信衛星の輸送についても、初の月周回軌道への輸送となることから、ミッション1及びミッション2とは異なる問題が生じる可能性があります。 当社においては、有価証券報告書「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3.事業の内容 <ビジネスモデルについて>」及び「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営戦略等 2.ミッションリスクに備えた手当」に記載のとおり、ペイロードサービスについては、その一部の対価を前払いとし、かつ、契約後の返金を行わないこととすることや、損害保険契約を締結する等によって、ミッションが未達となった場合のリスク軽減措置を講ずる予定です。他方で、顧客との契約上、ペイロードサービスの対価の一部について、ミッションに設定されたマイルストーンの成功等、一定の支払い条件が定められる場合があり、ミッション1及びミッション2においては、ミッション未達により一部受領できない対価が発生しました。もっとも、有価証券報告書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営戦略等 1.品質向上サイクルの実現」記載のとおり、事業モデルとしても、一定の失敗が生じ得ることは織り込んだ上での事業運営を行っております。したがって、当社としては、ミッションの未達が直ちに営業面、財務面における重大な悪影響を及ぼすものではないと考えております。しかしながら、同業他社の中には、月面着陸の実績を有する企業があることから、ミッションの未達が継続して発生した場合においては、当社の技術的信用力が低下することで、当社の株価・資金調達能力・評判に悪影響が及ぶ可能性があり、後続ミッションにおける補助金等の政府支援を受けられなくなる可能性や顧客離反リスクが顕在化する可能性、当社が希望する水準での価格設定や契約条件の設定を行えない可能性等があります。また、ミッションが未達となることにより、当社の技術力の検証ができない可能性や、必要なデータを取得できない可能性もあり、これにより、その後のミッションに影響を及ぼす可能性があります。また、有価証券報告書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営戦略等 2.ミッションリスクに備えた手当」記載のとおり、当社とSpaceX社との間の打上契約では、打上げ後にはいずれの責かを判定することが困難なことから、業界慣行上、相互の責を問わない契約となっており、当社の責によらないと考えられる事由により発生しミッション継続に支障が起きた場合であっても、同社に対して打上代金の返金を求めることができないこととされています。上記のリスク軽減措置についても、例えば当社が加入する保険の保証限度内で当社が負担する損失をカバーできない等、リスクを軽減するのに十分でない可能性があります。現に、ミッション2において締結していた月保険については、宇宙保険のマーケット環境やミッション1で獲得した有効なデータを活用可能であること等に鑑み、打上げ~高度100kmの月周回円軌道上までの軌道制御確認完了までを保険責任範囲としていたため、「月面着陸完了の未達」は当該範囲に含まれておらず、当社は保険金を受領しておりません。また、本書提出日現在において当社はミッション3以降について保険契約を締結していないところ、月保険においては本書提出日時点で商品内容が確立されておらず、不確実性を伴うこと等から、当社が望む経済的条件で保険に加入できない可能性、損害を十分に幅広くカバーする保険に加入できない可能性や、高額な保険料によって当社の収益が圧迫される可能性もあります。 ②当社の開発について (顕在化の可能性:高/影響度:中/発生時期:特定時期なし) 当社は2022年12月11日にミッション1の、また2025年1月15日にはミッション2の打上げを完了するとともに、現在ミッション3及びミッション4に向けてランダー及びローバーの開発を進めており、その開発状況の詳細は有価証券報告書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」記載のとおりです。当社は、スケジュールについては進捗管理を専担するミッション・マネジメント・オフィスを設け厳格に管理しており、仮にスケジュールに影響を与える事象が生じた場合においては、全体スケジュールへ影響を及ぼさないよう、製造工程の手順調整や部分的な作業の加速によって調整する方針ですが、従前ミッション1において、発注から納品までに年単位の時間を要する長納期品の納入に伴う開発期間の変更や、顧客ペイロードインターフェースのためのランダー仕様変更、ランダーの推進系システムの一部不具合による再調達等により、開発スケジュールの遅延が生じたことがあり、今後も同様の遅延が生じる可能性があります。現に、従前2027年に打上げを予定していた旧ミッション3(NASAのCLPSタスクオーダーCP-12に採択されているミッション)については、搭載予定であった新型エンジンにおいて要求性能を満たす燃料効率の実証に遅延が生じたことから、当社は慎重に検討を重ねた結果、過去の月面ミッションでの使用実績を有する代替エンジンへの変更を決定いたしました。 加えて、統合モデルである「ULTRA」を導入することを決定いたしました。 これらの変更を踏まえ、当該米国ミッションの打上げ時期を2030年に再設定し、ミッション番号を新ミッション5として再編いたしました。また、当社はミッション番号の再編に伴い、経済産業省のSBIR補助金を活用し日本拠点で開発が進められている旧ミッション4を新ミッション3(2028年打上げ予定)とし、宇宙戦略基金事業第二期「月極域における高精度着陸技術」の採択を受けた旧ミッション6を新ミッション4(2029年打上げ予定)としております。さらに、当社は月周回衛星等の自社アセットを活用した通信・測位サービスを提供する「ルナ・コネクトサービス」の事業構想を発表しており、その第一弾として、米Argo Space社の宇宙輸送サービスを利用し、新ミッション2.5として最速2027年にも当社初の月周回衛星1基を月周回軌道へ投入することを目指しております。当社が行う月面開発事業においては高度な技術と正確性が求められ、ミッションの成功に向けては、細心の注意を図り、万全を期す必要があることから、今後の組立工程や試験の結果、及びその結果を踏まえた物品の再調達による納期の関係等様々な要因により、やむを得ず遅延が発生する可能性があります。 開発上の技術的問題により遅延が生じた場合、当該問題を克服するために想定外の費用が生じる可能性や、想定外の期間の遅延が生じる可能性があります。また、有価証券報告書「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3.事業の内容 <ビジネスモデルについて>」記載のとおり、当社の新ミッション3以降で使用するULTRAランダーは、ミッション1及びミッション2で使用したRESILIENCEランダーの設計からの変更を予定しているところ、ULTRAランダーが予定通り開発できる保証はなく、開発できたとしても当初の想定を上回る費用が生じる可能性があります。ミッションが遅延した場合、打上契約等外部パートナーとの間の契約内容を変更する必要が生じる可能性や、追加の費用負担が発生する可能性があり、当社の希望通りに変更や資金的な手当てができない場合にはミッションの実行に支障が生じる可能性があります。さらに、当社が既に受注を受けている顧客が発注の変更又はキャンセルを要望する可能性があります。当社は、少なくとも技術実証段階であるミッション1、ミッション2の期間については、当社ペイロードサービスの本格的な商業化前であることに鑑みて、顧客とのペイロード契約上、かかる変更やキャンセルに伴う返金が発生しない方針で基本的に合意し最終契約を締結しておりますが、商業化を目指すミッション3以降において同趣旨での契約が合意されない場合には、当社が想定する収益が減少する可能性があります。また、1つのミッションが遅延した場合には、後続のミッションスケジュールにも影響を及ぼす可能性があります。このような場合には、売上計上時期が後ろ倒しになる等、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 (2)当社営業に関するリスク ①当社の締結するMOU等について (顕在化の可能性:高/影響度:中/発生時期:1年以内) 有価証券報告書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営戦略等」のとおり、当社は世界各国の民間企業・宇宙機関・研究機関との間で、基本的にミッション3以降における将来的なペイロードサービス、データサービスについて、MOU等を締結しております。しかしながら、これらのMOU等は法的拘束力を伴うものではなく、MOU等を締結したとしても、当社の売上高が計上されるわけではありません。また、これらのMOU等について、当社が最終契約を締結できる保証はありません。また、最終契約を締結できたとしても、当該契約の内容は、MOU等の内容とは大幅に異なる可能性があります。さらに、当社が締結するMOU等は、相当期間、先の内容について定めるものもあり、仮にMOU等の内容通り最終契約締結に至ったとしても、将来の時点においては経済合理性を欠いている可能性もあります。 ②参加中・参加予定のプロジェクト及び協業について (顕在化の可能性:高/影響度:大/発生時期:1年以内) 当社グループは現在、NASAの実施するCLPSタスクオーダー及びその他顧客向けの商業月面探査や科学ミッションにおいて、Redwire社と共同で推進しており、当社の米国子会社が着陸船及び月面へのペイロード輸送の設計・開発・運用の下請け業者として提案参加するなど、多数のプロジェクトに提案を行っており、さまざまな協業や提携にむけた協議を行っております。また、当社子会社であるispace technologies U.S., inc.が、ドレイパー研究所のチームの一員として、2022年7月にNASAのCLPSプログラムのタスクオーダーCP-12のサービスプロバイダーに採択されています。また、国内では、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が実施する、宇宙戦略基金公募テーマの一つである、「月面の水資源探査技術(センシング技術)の開発・実証」にて、中核的連携機関として参画し、また同基金の公募テーマの一つである、「月極域における高精度着陸技術」には代表機関として採択され、公募テーマの一つである、「月面インフラ構築に資する要素技術」でも連携機関として参画予定です。また、今後も宇宙戦略基金のその他公募テーマについても、当社を取り巻く事業環境や戦略を踏まえて応募を検討して参ります。このようなプロジェクトが採択された場合には世間や業界の大きな注目を集める可能性があり、その結果によっては、当社株式の取引価格、当社事業、及び将来プロジェクト等に悪影響を及ぼす可能性があります。このような入札に関連するその他のリスクについては、後記「Ⅱ.ビジネスモデル等の自社の事業に起因するリスク (2)当社営業に関するリスク④ 営業活動について」もご参照ください。 ③当社のデータプラットフォームを用いたSaaS型・サブスクリプション型のサービス及びその他の新規事業について 有価証券報告書「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3.事業の内容 <ビジネスモデルについて> 2.データサービス」記載のとおり、将来的には、当社の高頻度なミッションを通じて、当社のインターナル・ペイロードから取得・蓄積した情報に、地球上で入手可能な既存のデータも加え、加工、解析、統合することで、顧客にとって高付加価値な「大規模な月のデータベース」をクラウド上に構築し、顧客が自由にアクセスし、定額料金を課金の上、利用して頂く、SaaS型・サブスクリプションモデルのビジネスの展開を目指しています。当該ビジネスモデルの実現のためには、当面の間、当社がインターナル・ペイロードを通じて月面の様々なデータを取得することが前提となりますが、ミッション未達等により、当社の想定通りミッションが実行されない場合には、当社の月面データ取得にも悪影響が及ぶ可能性があります。また、当社が十分に資金調達を行うことができない等の理由により、当社の想定通りの頻度でミッションが実行できない場合にも、当社の月面データ取得にも悪影響が及ぶ可能性があります。これらの場合、当社の同サービスの競争力を失う可能性があります。加えて、ミッションが予定通り実行されたとしても、当社がインターナル・ペイロードとして輸送するローバーや、計測機器・カメラ機器等を通じて、想定通り月面のデータが取得できるという保証はなく、当社の想定通りデータが取得できない場合、サービスの提供が困難となる可能性があります。また、データサービスのビジネス展開のためには、データセンサー・データプラットフォームの構築費用やデータサービスのための人件費等多額の支出が必要となるところ、必要となる支出が当社の想定を上回る可能性があります。また、支出したにもかかわらず、様々な要因により、当社がデータサービスを実施できない可能性があります。さらに、当社がデータサービスの提供のために外部業者と協力する場合、当該業者と契約条件を合意できない場合や当該業者によるサービスが想定通りに提供されない場合等には、当社によるデータサービスの提供に支障が生じる可能性があります。さらに、当社は、軌道間輸送機(OTV)の開発に着手し、OTV市場に参入することを検討していますが、当社によるOTVの開発が予定どおり進捗する保証はありません。 加えて、今後、当社がデータサービス及びOTV事業の展開ができたとしても、これらの事業に対する需要が、当社の予想する水準や、当該事業からの収益性を維持できる水準に達する保証はありません。また、当該事業に係る市場競争が激化する場合や、当社が付加価値のあるサービスを競争力のある価格で提供できない場合には顧客を獲得できる保証はなく、また、当社が十分な利益を上げられるほどの単価を設定できる保証もありません。 ④営業活動について (顕在化の可能性:高/影響度:中/発生時期:1年以内) 当社の業績は、業界特性に起因する長期化する営業期間とその不確実性により変動しており、今後も変動する可能性があります。営業努力の一環として、当社は潜在顧客の特定のニーズを評価し、当社のペイロードサービスの技術的能力と価値について潜在顧客に理解いただくために、多大な時間と費用を投資しています。営業期間は長期化する傾向にあり、顧客によってその期間も大きく異なります。当社のペイロードサービスの購入は多額の費用が発生するため、潜在顧客は一般的に、組織内の複数のレベルで当社のシステム、製品、技術を評価し、それぞれの要件を満たしていることを確認したうえで、管理職と複数の内部承認が必要となります。このような評価は、政府機関の場合特に複雑で多大な時間を要する可能性があり、政府機関の意思決定スケジュールは、当初の見積もりよりも大幅に遅れる可能性があります。場合によっては、当社の管理職を含む人的資源、費用及び時間に対する多大な投資を含む営業活動が、潜在的な顧客と拘束力のあるペイロードサービスの締結に繋がる保証はありません。また、あるミッションの主要顧客を確保できたとしても、その顧客が着陸船のペイロード容量をすべて使用しない場合、着陸船の残りのペイロード容量について、同じタイミングまたは月面の同じ場所へのペイロード輸送を希望する顧客を確保することが困難になる可能性があります。ミッションの全ペイロード容量を満たす顧客の確保が困難な場合、全ペイロード容量に満たない状態で打上げたり、ペイロード容量を満たすため通常よりも不利な条件で契約を締結したりする可能性があり、いずれの場合もミッションの収益性を低下させる可能性があります。潜在的な顧客に対する営業努力の結果、当社の投資を正当化するのに十分な売上高が得られない場合、当社グループの事業、財務状況及び業績に悪影響が及ぶ可能性があります。 ⑤販売可能なペイロード容量について 当社のミッション1及びミッション2では、ランダーの設計上、顧客に提供可能なペイロード容量を30kgに設定しておりましたが、このすべての重量について顧客へ課金することは想定しておりません。具体的には、顧客に販売するためのデータを取得するため社内の実験機器の搭載や、顧客ペイロードの性質に伴う想定外の追加デバイスの搭載等により、顧客に課金可能なペイロード容量が削減される可能性があります。事業計画上は、ミッション1においては12.43kg、ミッション2においては10.5kgを顧客に課金可能な容量として設定し、一定程度保守的な見積もりを置いておりましたが、ミッション3以降においては、顧客に提供可能なペイロード容量を足許最大で200kg、将来的には最大500kgに設定予定です。ただし、ミッション1及びミッション2と同様に不確定要素が存在することから、事業計画上は過去の実績を鑑み一定の開発マージンを割り引いた容量を設定し、更に容量をすべて充足するだけの顧客を獲得できない可能性を踏まえ、一定の販売充足率の前提も掛け合わせた想定歩留まり率を設定の上、将来的にこの値が徐々に改善される前提を置き、売上計画を立てております。 上記に加えて、ペイロードの構成によっては想定よりも多くのペイロード容量を要する場合もあり、ペイロード容量は顧客へ課金できる容量とは異なり、また、販売可能容量のすべてについて顧客の契約を獲得できるとは限らない点に留意する必要があります。 (3)当社財務に関するリスク ①月保険について (顕在化の可能性:高/影響度:中/発生時期:1年以内) 宇宙分野の技術は進歩し続けておりますが、宇宙で行われるサービスには、スペースデブリとの衝突、打ち上げ時や飛行中の事故や故障など、固有のリスクが伴います。万が一このような事故が発生した場合、当社のランダーやローバーは甚大な被害を受けるもしくは全損する可能性が高いですが、当社が将来加入する可能性のある月保険は、発生し得る損失を補償するのに十分でない可能性があります。ミッション1では、ランダーが月面への軟着陸に失敗し、ランダーと搭載していたペイロードの全損を経験しており、当時加入していた月保険の契約に基づき約38億円の保険金を受領しております。一方で、ミッション2において締結していた月保険については、打上げ~高度100kmの月周回円軌道上までの軌道制御確認完了までが保険責任範囲となるため、「月面着陸完了の未達」は当該範囲に含まれておらず、当社は保険金を受領しておりません。 当社は今後のミッションについても同様に、月保険への加入を適宜検討してまいります。当社がミッション1及びミッション2に使用し、ミッション5の打上げを契約しているSpaceX社は、当社の過失によらず打上げ時に事故や故障が発生した場合でも、打上費用の払い戻しは行いません。これは、打上サービス提供者とその顧客が、そのような事故に関する損害賠償請求権を放棄するのが現在の業界慣行であるためです。今後のミッションで月保険を締結した場合でも、損害の重大性や原因によっては、保険の内容や金額がすべての費用や賠償責任をカバーするのに十分でない可能性があります。 また、一般に、すべての業務上のリスク、自然災害及び費用をカバーする保険契約を締結することは不可能です。当業界における保険の利用可能性や価格は大きく変動するおそれがあるため、当社の特定のニーズに合致する保険や、当社が想定する保険料やその他の条件の保険に加入できない可能性があります。また、ミッション1及びミッション2の未達並びに将来のミッションの未達によって、将来の保険の利用可能性、保険料、保険金額、その他の条件にも悪影響が及ぶ可能性があります。加えて、当社が認識しているリスクの多くに対応する保険に加入できたとしても、より広範な保険市況や当社がコントロールできない要因により、保険料が本書提出日時点の見積もりよりも大幅に高くなったり、利用可能な保険金額が減少したりする可能性があります。保険契約の保険料の増加や、不利な条件が適用された場合には、当社の純利益が減少する可能性があります。 上記のような保険リスクにより、収益が大幅に減少もしくは保険費用等に多額の追加費用が発生する可能性があり、その結果、当社の財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。 ②財務制限条項について (顕在化の可能性:高/影響度:大/発生時期:1年以内) 当社グループの借入金のうち、複数の借入金について財務制限条項(下記A.及びB.)が付されております。当社が将来において財務制限条項に抵触した場合、財務制限条項に係る期限の利益喪失につき権利行使しないことについて各行から合意を得られる保証はなく、各行が当社の期限の利益を喪失させる権利を行使した場合には、当社グループの事業及び業績に重大な影響を与える可能性があります。 なお、2026年3月末時点において純資産は15,173百万円であり、同時点において現預金残高は29,690百万円となっております。 A.各事業年度末日(一部の借入契約では各四半期末日)における連結貸借対照表に記載される純資産の部の合計金額を正の値に維持すること。 B.各事業年度末日(一部の借入契約では各四半期末日)における連結貸借対照表に記載される現預金の合計金額を30億円以上に維持すること。 ③継続企業の前提に関する重要な事象について (顕在化の可能性:中/影響度:大/発生時期:1年以内) 当社グループは多額の先行研究開発投資と長期の開発期間を要する宇宙関連機器の開発に従事していることから、継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあり、現在のところすべての開発投資を補うための十分な収益は生じておりません。これらの状況から、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。 ただし、有価証券報告書「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、当該重要事象等を解消するための対応策を実施していること、また、自己資本の充実を目的とした機動的な資金調達の可能性を適宜検討していることから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。 ④資金調達について (顕在化の可能性:高/影響度:大/発生時期:1年以内) 当社は事業活動を維持拡大するため、今後も多額の研究開発投資が必要となり、また、想定を上回る投資の増加、事業環境の変化への対応、融資契約に係る財務制限条項の遵守に向けた資金確保が事業上重要となります。当社が現在締結している融資契約の財務制限条項を遵守するため、また、ミッション3以降の将来的な顧客からの売上が当初計画よりも遅れるケースや、追加的な開発コストが必要となるケース等に備え、当社として安定的な財務基盤を維持することは重要と考えられることから近い将来において、資金調達を実施する可能性があります。 また、有価証券報告書「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3.事業の内容 <ビジネスモデルについて>2.データサービス」記載の大規模データベースの実現のためには、様々な分野において多額の研究開発投資が必要となり、継続的な外部からの資金調達が必要となる可能性があります。例えば、当社は上記大規模データベースの実現等将来の事業規模拡大を企図した研究開発投資(以下、「先端研究開発投資」という。)を実施する予定であるため、資本増強に加え、負債調達又はその他の方法により、資金調達を実施する可能性があります。ただし、当該資金調達を実施しない場合にも、ミッション3以降の既に契約済みである顧客からの入金並びにSBIR及び宇宙戦略基金等の補助金の受領に加え、ミッション3以降の将来的な顧客から計画通りの入金を計上することが可能である場合、それらを原資として、先端研究開発投資を除いた当社の運転資金を維持することが基本的に可能であると見込まれることから、追加の資金調達の手段、時期等につきましては、今後の金融環境や事業環境を踏まえつつ慎重に検討していく予定であり、追加の資金調達の全額又は一部を実施しない可能性もあります。 しかしながら、当社が将来において想定する上記の資金調達が出来ない場合や、必ずしも望ましい条件での資金調達ができない場合等は、当社がキャッシュ・フロー不足に陥る可能性、当社の事業を支えかつこれを成長させるために必要な投資を行うことができない可能性、当社のミッションの一部の遅延又は中止を余儀なくされる可能性、また当社が財務制限条項を遵守できなくなる可能性等があり、これにより当社が将来の支出計画又は事業活動の一部を遅延又は断念しなければならなくなるおそれや、当社の競争力に悪影響が生じるおそれがあります。また、当社は、上記の資金調達以外にも、今後、継続的な外部からの資金調達が必要となる可能性があるため、継続的な資本調達のために当社株主に希薄化をもたらす株式発行が繰り返し行われる可能性があります。さらに、借入れによる調達を行う場合には、財務制限条項その他の条項が設定されることにより、当社の事業活動が制約される可能性があります。 ⑤当社実績について ランダー及びローバーの開発に当たっては、研究開発費の支出や優秀な技術者の採用等、先行的な投資が必要であり、結果として当社は創業以来営業赤字を継続して計上しております。今後も開発部門におけるスケジュール管理、財務部門によるコスト管理及び各開発段階におけるレビュープロセスによるクオリティ管理を実施することで開発を着実に推進するとともに、事業収益の安定化に向けて引き続き中長期的に持続可能な顧客市場の開拓を進めていく方針にあります。しかしながら、当社の技術は本書提出日時点では完全には実証されておらず、また、当社が属する市場は新しい市場であることから、今後の当社の利益を正確に予測することには困難が伴い、想定通りの開発計画・顧客開拓が進まない場合、当社サービスに対する需要が想定通りに集まらない場合、当該投資に見合った収入が得られない場合、或いは想定外の費用が生じた場合等には、想定通りのタイミングで利益を上げることができず、当社グループの事業及び業績に重要な悪影響を及ぼす可能性があります。 また、データサービスについては売上計上を開始したのが2026年3月期第1四半期であることから、当社の過年度の業績は当社を評価するために十分な材料とはならず、今後の業績を判断する情報としては不十分な可能性があります。 ⑥収益認識に係る会計処理について (顕在化の可能性:高/影響度:中/発生時期:1年以内) 当社は「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)及び「収益認識に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第30号 2021年3月26日)を適用しており、約束した財又はサービスの支配が顧客に移転した時点で、当該財又はサービスと交換に受け取ると見込まれる金額で収益を認識しております。ミッション1及びミッション3乃至ミッション5においては履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができないため、原価回収基準を適用しております。ミッション2については、同様の理由により原価回収基準を適用しておりましたが、2025年1月の打上げ成功を契機として履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができるようになったことから、履行義務の進捗度に基づき収益を認識する方法に変更しております(ただし、ミッション3乃至ミッション5については本書提出日時点における判断であり、今後、ミッション2と同様に履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができるようになった場合には、進捗度に基づき収益を認識する方法に変更となる可能性があります。)。ミッション6以降については、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができることを前提として、総原価の発生割合により見積る方法で収益認識を実施することを検討しております。ただし、実際の会計処理は将来の顧客との契約締結後において個々の契約内容に従い決定されるものであることから、適用される実際の会計処理は上記と異なる可能性があります。特に、当社が想定する総原価からの打上コストの控除については、個別の契約内容を確認の上最終的な会計処理を決定してまいります。なお、ミッション2においては打上コストを控除せず収益認識を実施しております。 ⑦当社四半期業績について 当社の四半期及び年間の経営成績はさまざまな理由により変動する可能性があり、その多くは当社がコントロールできないものです。こうした変動により、当社の四半期業績がアナリストや投資家の予想を下回り、当社普通株式の株価が下落する可能性があります。そのため、将来の業績を示す指標として、当社の過去の四半期決算や年次決算との比較は適切ではありません。また、急速に発展する市場において企業が頻繁に遭遇するリスクや不確実性も考慮する必要があります。当社の四半期または会計年度の業績は、事業等のリスクに記載されているさまざまなリスク要因のほか、以下のような数多くの要因によって影響を受ける可能性があります。 ・将来のミッションの打上げと完了を成功させる能力、及びそのようなミッションの打上げと完了のタイミング ・当社が顧客との契約を締結するタイミング、ミッションの打上げのタイミングと搭載ペイロード重量(当社がミッションの売上高と売上原価の大部分を認識するのは、契約を締結してから打上げまでの間であると想定しているため) ・収益認識に関する会計処理(ミッション1及びミッション3乃至ミッション5については履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができないため原価回収基準を適用しておりますが、ミッション3乃至ミッション5については本書提出日時点における判断であり、今後、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができるようになった場合には、ミッション2と同様に進捗度に基づき収益を認識する方法に変更となる可能性があります。) ・販売関連費、研究開発費、その他の営業費用の増加額及び増加時期 ・当社が今後展開可能性のある新サービスの展開時期とその進捗 ・競合の変化による影響とその変化への対応 ・当社の既存事業と将来の成長を管理する能力 ・当社のサービスの中断や撤退による影響(これらがミッション打上げ前に発生した場合、ミッションの遅延や追加費用の発生を招く可能性があります) ・ミッション開発の遅れ、ミッション費用の削減、またはその他の理由によるミッション費用の認識の遅れによって発生する原価回収基準による売上高の認識遅れ ・不利な訴訟判決、示談、その他の訴訟関連費用などの不測の事態 ・特に当業界に影響を与える経済及び市場の状況 ・自然災害、公衆衛生問題、その他の開発など、制御不能な事象の影響 ⑧株式価値の希薄化について 前記「(3)④ 資金調達について」記載のとおり、当社の事業においては、継続的に外部からの資金調達が必要となる可能性があり、その手段として、株式発行が繰り返し行われた場合には、当社の株式価値が希薄化する可能性があります。 また、当社は、業績向上に対する意欲向上を目的としてストック・オプション制度を導入していたことから、会社法の規定に基づく新株予約権を当社グループの取締役及び従業員に付与しております。加えて、第三者割当による新株予約権の発行も実施しているため、2026年3月末現在、新株予約権の対象となっている株数は12,935,700株であり、当社発行済株式総数の146,209,683株に対する潜在株式比率は8.85%に相当しております。これらの新株予約権が行使された場合は、当社の株式価値が希薄化する可能性があります。また、当社が第三者割当により2024年10月から2025年3月に発行した第14回乃至第17回新株予約権(これらの新株予約権の対象となっている株数は11,000,000株であり、当社発行済株式総数の146,209,683株に対する潜在株式比率は7.52%)は、当社普通株式の新たな発行における払込金額が当該新株予約権の行使価額を下回る場合には、当該行使価額が、当該払込金額と同額に調整(ただし、調整後の行使価額の下限は360円)される設計となっています。そのため、将来的なエクイティファイナンスにおける払込金額が当該新株予約権の行使価額を下回った場合には、上記第14回乃至第17回新株予約権の行使価額は、当該払込金額と同額に調整(ただし、調整後の行使価額の下限は360円)される予定であり、かかる場合、これらの新株予約権の行使が促進される可能性があります。 ⑨配当政策について 当社は、株主に対する利益還元を経営課題と認識しており、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案し、利益還元政策を決定していく所存であります。 しかしながら、当社は成長過程にあり内部留保が充実しているとはいえず、創業以来配当を行えておりません。また、本書提出日時点ではミッションの達成に向けた研究開発投資等に充当し、事業拡大を目指すことが株主に対する最大の利益還元に繋がると考えております。 将来的には、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案し、利益還元を行うことを検討してまいりますが、本書提出日時点において配当実施の可能性及びその実施時期については未定であります。 ⑩国内一般募集、海外募集及び第三者割当による調達資金使途について 2024年3月に実施した海外募集及び2024年10月から2025年3月にかけて実施した第三者割当増資により調達した資金並びに2025年10月に実施した国内一般募集、海外募集及び並行第三者割当により調達した資金の使途につきましては、主にミッション3、ミッション4及びミッション5以降のミッションの実行にむけた研究開発資金並びにその他運転資金に充当する予定であります。しかしながら、当社グループが属する業界の急速な変化により、当初の計画通りに資金を使用した場合でも、想定通りの投資効果をあげられない可能性があります。 ⑪内部管理体制について 当社では、今後の事業運営及び業容拡大に対応するため、内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しており、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底のため内部管理体制を充実・強化させていく方針であります。しかしながら、事業規模に応じた内部管理体制の整備に遅れが生じた場合は、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 (4)当社その他のリスク ①ビジネスモデルについて 当社のビジネスモデルや宇宙産業は草創期にあり、成長可能性の評価には多くの不確実性が伴います。特に、本書提出日現在、当社はミッション完遂の経験を有していないため、当社のビジネスモデルの実行可能性を評価するための実績がありません。前記「Ⅱ.ビジネスモデル等の自社の事業に関するリスク (1)当社開発・ミッションに関するリスク ① ミッションの未達について」をご参照ください。 当社のビジネスモデルは、地球と月の間に広がるシスルナ経済圏、関連する輸送・データサービス、通信・測位サービスの市場が将来成長するという前提に立っております。上述のとおり、シスルナ経済圏の将来的な発展には多くの不確定要素があり、また、シスルナ経済圏もまた草創期のため、その予測は困難です。例えば、当社のビジネスモデルでは、シスルナ経済圏がPwCの「ロードマップ評価」に基づいて発展すると仮定していますが、この評価では、当社の「ムーンバレー2040」ビジョンに沿って、2040年代に1,000人が月面で生活し、仕事をするようになると想定しています。一方、シスルナ経済圏の実際の成長は、このロードマップ評価とは大きく異なる可能性があります。さらに、シスルナ経済圏の発展に関する当社のその他の重要な仮定(月の水の量とアクセス可能性、将来の宇宙活動における水の需要、月の水を利用するためのコストなど)は推測に基づくものであり、将来的に不正確であることが判明する可能性があります。さらに、月データサービス市場の発展は、月輸送市場よりも長期間にわたると予想されるため、この市場の成長に関する当社の仮定は、月輸送市場に関する仮定よりもさらに不確実となります。 シスルナ経済圏の発展に関する不確定要素に加え、当社の事業展開自体にも、事業歴が浅い故の不確定要素が存在しております。当社のビジネスモデルは、合理的と考えられる複数の仮定のもと構築されておりますが、これらの仮定は将来不正確であることが判明する可能性があります。これらの仮定に関するリスクに以下のようなものが含まれますが、これらに限定されるものではありません。 ・ミッションスケジュールは、本「事業等のリスク」のセクションの他の箇所で説明されているものを含め、多くの要因に基づいて変更される可能性があります。当社は過去に複数回ミッションスケジュールを延期しており、今後も延期する可能性があります。 ・当社は、ミッションの頻度や各ミッションの販売可能なペイロード重量が時間の経過とともに増加し、それに伴い将来的に当社のペイロードサービスに対する顧客からの一定の需要増加を想定しております。しかし、こうした想定は、今から何年も先に計画される将来ミッションに関するものもあり、特にそうした想定需要のほとんどは法的拘束力のないMOU等さえ締結していないため、大部分が推測に基づきます。さらに、ビジネスモデルの検討にあたり現在締結済みのペイロードサービス及びMOU等の契約を考慮にいれておりますが、これらの契約に基づき想定される需要が将来のミッションにおける実際の顧客ペイロード需要と一致する保証はありません。したがって、実際の需要の水準や、その期間にわたってペイロードサービスを供給する当社の能力は不確実性が高く、当社の本書提出日時点における想定と大きく異なる可能性があります。 ・当社のペイロードサービスに対する需要が十分にある場合であっても、ペイロードの構成等により想定以上にペイロードの搭載容量を消費し、販売可能なペイロード重量が想定より減少する可能性があります。また、歩留まり率の向上も想定しておりますが、設計上の技術的制約、想定を下回る需要、当社の顧客獲得能力による制約、その他の要因により、歩留まり率の向上を実現できない可能性があります。 ・当社のビジネスモデルは、締結済みのペイロードサービスに加え法的拘束力のないMOU等の価格設定やその他の仮定に基づいて、ペイロードサービスの価格設定を想定しています。しかし、実際の価格設定は、競争の激化や、主要な政府出資プログラムの価格決定力を含むその他の要因により、想定よりも低くなる可能性があります。さらに、月周回軌道に投入する場合の価格設定は、月面着陸のペイロードよりも低くなると想定しています。従って、将来の顧客とサービスの組み合わせにより、当社の価格設定の前提がビジネスモデルで想定したものと大きく異なる可能性があります。現在、これらのサービスには確立された市場がなく、当社のペイロードサービスの価格は時間の経過とともにある程度下落すると想定していますが、これらの予測は、現在想定している競合環境、需要、コストを基に作成しており、その実現に相応の不確実性が見込まれます。 ・将来のミッションにおいて収益認識方針を原価回収基準から履行義務の充足に係る進捗度に基づき収益を認識する方法に変更する想定ですが、この変更が遅れる可能性があり、結果各ミッションの打上げ前に認識・計上される売上高が想定よりも小さくなる可能性があります。 ・当社の実際のコストは、さまざまな要因により、想定を上回る可能性があります。例として、打上コストの増加、ミッションを重ねることでランダー開発等に係るコスト削減を実現できないこと、研究開発コストが現在の計画を上回ること等、が考えられます。 これらまたはその他のリスクや不確実性が存在するため、当社が想定する売上高と費用は、当社の実際の将来の売上高や費用を示すものではありません。当社の実際の将来の売上高及び費用は、シスルナ経済圏の発展及び当社の事業に関連する多くの要因に左右され、当社の想定と大きく異なる可能性があります。 ②将来の不確実性について 当社は2010年以降、宇宙輸送・インフラサービスの開発に注力してきましたが、これまでは主に研究開発業務に注力してきたため、パートナーシップサービスやミッション1乃至5に関する顧客からの支払いを中心に、比較的限定的な売上高しか計上しておらず、ミッションの打上げは2件のみで、まだミッションの成功には至っておりません。特に、ペイロード事業については2020年4月から売上高を計上開始したばかりであり、データサービスについても、売上高の計上を2026年3月期第1四半期に開始したばかりです。このような限られた事業歴により、当社の将来の見通しや当社が遭遇する可能性のあるリスクや課題を精確に評価することは困難です。当社が直面した、あるいは直面すると予想されるリスクや課題には、以下のようなものがあります。 ・売上高予測及び支出管理・予算管理 ・新規顧客の獲得及び既存顧客の維持 ・効率的な事業運営と成長の継続(現在及び将来のランダー、ローバー、衛星及びサービスのための資本的支出の計画と管理、またそれに関連するサプライチェーン及びサプライヤーとの関係構築を含む) ・法規制等の遵守(輸出管理規制等、当社の事業に適用される既存及び新規または変更された法律及び規制) ・マクロ経済の変化や当社が属する市場の変化の予見及び対応 ・当社の評判とブランド価値の維持・向上 ・知的財産の創出と保護 ・組織のあらゆる階層で有能な人材の採用、育成、定着 当社が直面するリスクや困難(上記に関連するものや、本「事業等のリスク」の他の箇所に記載されているものを含む)に対処できない場合、当社グループの事業、財務状況及び業績に悪影響が及ぶ可能性があります。さらに、当社はまだミッションを完了しておらず、急速に発展する市場で事業を展開しているため、本書記載の過去の財務情報は、当社の将来の財務実績や成長見通しを評価する上で限定的な情報となります。当社は過去にも、また将来にも、急速に変化する業界において、事業歴の浅い成長企業が頻繁に経験するリスクや不確実性に遭遇する可能性があります。当社が事業計画や事業運営に使用しているこれらのリスクや不確実性に関する前提が誤っていたり変更されたりした場合、またはこれらのリスクにうまく対処できなかった場合、当社の業績は当社の予想と大きく異なる可能性があり、当社グループの事業、財務状況及び業績に悪影響が及ぶ可能性があります。 ③海外事業展開について 当社グループは、海外への事業展開にも取り組んでおり、ルクセンブルク大公国及び米国に連結子会社を有しております。これら子会社が所在している国の政治・経済・社会情勢・法規制等の影響により、事業遂行の不能等のカントリーリスクが顕在化する可能性があります。 さらに、海外での事業活動においては、当社の企業文化を保ちつつ優秀な人材を確保することが困難となるリスク、雇用や労働慣行に関する現地法規制に関するリスク、言語・慣習の違いや地理的分散によって経営陣によるコミュニケーションが困難となるリスク、輸出入規制・課税に関するリスク、伝染病の蔓延を含む公衆衛生や渡航制限に関するリスク、政治・経済状況に関するリスク等が存在し、これらが顕在化した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。 ④成長の継続について (顕在化の可能性:高/影響度:中/発生時期:特定時期なし) 私たちは事業拡大を続け、現在では日本、米国、ルクセンブルグにオフィスを構えており、将来の成長を支えるために今後も人員を増やしていく予定です。計画通りに事業が成長し続ければ、営業・マーケティング、研究開発、サービス提供部門等を拡大する必要があります。当社の成長を継続するためには、業務及び管理プロセスとシステムを改善し続け、多数の有能な従業員を雇用、育成、モチベートしなければなりません。社内のリソースを効率的に拡大できなければ、当社の事業成長能力が損なわれる可能性があります。当社の事業が成長を続け、より複雑な組織構造を導入する必要が生じた場合、費用対効果が高く、効率的かつタイムリーな方法で当社のサービスを維持・改善することがますます困難になる可能性があります。 現在計画されている通りに、あるいは計画された期間内に事業を拡大できるという保証はありません。当社の継続的な成長により、当社のリソースへの負担が増大する可能性があり、従業員の雇用や育成、ランダーやローバー、関連機器を製造する第三者の製造能力の確保の難しさ、製造の遅延等に直面する可能性があります。さらに、事業規模の拡大に見合った内部統制を維持・改善できなかった場合、サービスや業務の質の低下を招き、当社の評判を損なう可能性があります。こうした状況は経営陣や管理職が事業成長に集中できない環境を招き、財務及び経営成績に影響を与える可能性があります。当社が相応の成長を継続できない場合、利益率や営業成績の低下に至り、当社グループの事業、財務状況、経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。 ⑤システム障害等について 当社では、社内システムのセキュリティ対策やネットワークの監視等を行い、安定的に運用できるように対策を講じておりますが、サイバー攻撃や不正アクセス等により重要データの流出が発生した場合、ITインフラ機器の障害、コンピューターウイルスへの感染、自然災害、その他不測の事態が生じることによりシステムトラブル等が発生した場合や、第三者によるデータの不正使用等が生じた場合には、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 特に、本書提出日時点において当社のデータサービスについてのデータシステムを構築しておらず、当該システムの構築やアップデートを適切に行えない場合、想定以上に期間を要する場合や、当該システムに障害が生じた場合には、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 ⑥当社グループのイメージ及びブランドについて 当社の事業活動において、イメージ及びブランドは、既存顧客との関係維持又は新規顧客の獲得にとって重要な要素であると認識しています。ミッション未達や遅延、当社サービスの不具合、サイバー攻撃、顧客データの管理に関する問題について、当社にとってネガティブな報道がされた場合、当社に不利益な風説が流布した場合、当社の従業員又は経営陣による違法又は不適切な行為のあった場合その他当社のイメージやブランドに悪影響を与える事態が生じた場合や、同業他社に事故等が生じることにより月面探査に対するイメージが低下する場合には、当社の顧客が離反する又は当社が新規顧客を獲得できなくなることにより、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 また、第三者が当社の許可なく当社のブランド、商標、ロゴ等を使用した場合には、当社のイメージやブランドに悪影響が生じ、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 ⑦法的規制等について 当社グループは、事業活動を行う各国において、宇宙活動に関する規制のほか、商取引、労働、租税、個人情報、補助金や政府調達に関する規制等の法的規制の適用を受けています。当社グループでは、法的規制の動向に関する情報収集に努めていますが、その変更は当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。 宇宙活動に関する主な規制には、人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(宇宙活動法)に基づく人工衛星等の打上げに係る許認可、宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律(宇宙資源法)に基づく資源の探査及び開発に係る許認可、及び当社連結子会社である株式会社ispace Ops Japan(2025年9月9日付で株式会社ispace Japanから商号変更)で取得すべきランダー等の当社宇宙機が宇宙空間から地上に向けて電波を発するに当たっての電波法等の許認可、並びに、これらに相当する諸外国の法的規制などがあります。ミッション1及びミッション2においては適切な許認可を取得しており、今後のミッションにかかる必要な許認可の取得についても特段の懸念はありません。 もっとも、宇宙事業は世界的にいまだ草創期にあり、今後の立法によっては当社グループの事業が制約を受ける可能性があります。例えば、宇宙資源法第5条は、当社が採掘等をした宇宙資源について所有権の取得を認めていますが、今後の国際的枠組み等の動向によっては、所有権の取得に関して何らかの制約を受ける可能性は否定できません。他方、宇宙条約第9条に関連し、月面で展開をする当社の宇宙機(又は当社ランダーに搭載した他社のペイロード)が月面の環境を汚染しないかという問題もありますが、当社は国際宇宙空間研究委員会が定める惑星保護方針に準拠する方法で事業を進めるよう準備をしておりますので、この問題が事業の障害となる可能性は低いものと考えております。また、打上ロケットからの切離し後に当社の宇宙機が第三者に損害を与えた場合には、当社が打上国から求償を受ける可能性がありますが、宇宙活動について事前に関係国政府の審査を受けることからしても他衛星への衝突リスクは低いと言え、本書提出日時点で当社事業の大きな障害となるものではないと評価しております。なお、打上ロケット切離し前の第三者損害に関しましては、打上業者のみが責任を負う業界慣行となっておりますので、基本的に当社の事業上のリスクは極めて低いと理解しております。 加えて、当社では、外国為替及び外国貿易法、米国のITAR(国際武器取引規則)及びEAR(輸出管理規則)をはじめとする各国の輸出管理法令の対象となる技術情報を取り扱っております。そこで、輸出管理を統括する専門部署を設置し、厳格な輸出管理プロセスを実施し、また、社内研修や情報提供を通じて役職員への周知徹底を図っております。しかしながら、適用法令を遵守できなかった場合には、法的な処分を受けたり、社会的な信用が失墜したりするなどし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 当社グループとしては、引き続き法令を遵守した事業運営を行うべく、法令遵守体制の強化や社内教育等を行っていく方針ですが、今後当社グループの事業が新たな法的規制の対象となった場合には、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 ⑧特定人物の依存について 当社の代表取締役CEOである袴田武史は、当社の創業者であり、設立以来当社の経営方針及び事業戦略の立案や、その遂行において重要な役割を担っております。当社は特定の人物に依存しない体制を構築すべく、幹部社員への情報共有や権限の委譲によって代表取締役CEOに過度に依存しない組織体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により代表取締役CEOの当社における業務遂行が困難になった場合やその他の当社経営陣及び重要な従業員が当社から離職する場合、当社グループの事業運営の品質の維持に支障をきたし、 当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 ⑨人材の確保と育成について 当社が今後更なる成長を成し遂げていくためには、優秀な人材の確保が重要課題の一つであると認識しております。当社は現在も人材紹介会社を利用した中途採用を実施し、従業員からの紹介による採用(リファラル採用)制度を導入するとともに外部業者を活用する等、多様なチャネルを用いて優秀な人材の確保を進めておりますが、ミッション数の増加やデータサービスの立ち上げ及び拡充に伴う今後の事業拡大のためにはより一層の多様かつ優秀な人材採用が必要となります。また、事業拡大に伴い、十分なマネジメント体制を構築するための管理職及び専門人材の確保も必要となります。 これらの人材を十分に採用できない場合や、あるいは在職中の優秀な従業員が退職する等した場合には、当社の事業拡大の制約となり、その結果、ミッションの遅延が生じる等、当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 ⑩知的財産権について 当社グループは、第三者の知的財産権を侵害しないよう慎重に調査・検討を行っておりますが、侵害が生じた場合は金銭の支払や使用の停止などにより当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 また、当社グループの知的財産権が第三者により侵害された場合や、ノウハウその他の機密情報が外部に流出した場合には、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。 さらに、当社のペイロードが獲得するデータに対して適切な保護が得られない場合、今後の当社の事業、特にデータサービスの運営等に悪影響を及ぼす可能性があります。 ⑪訴訟、係争について 当社グループでは、本書提出日現在において、業績に重大な影響を及ぼす訴訟等は生じておりません。 今後、何らかの事情で当社に関連する訴訟等が発生した場合、その経過又は結果によっては当社グループの事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
経営成績の分析 (MD&A)7,434字を開く

業績がなぜこうなったかの経営陣の説明

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 (1)経営成績等の状況の概要 当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。 ① 財政状態の状況 (資産) 当連結会計年度末における資産合計は47,704,955千円となり、前連結会計年度末に比べ20,515,826千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が16,573,053千円、長期前渡金が2,517,651千円増加したことによるものであります。 (負債) 当連結会計年度末における負債合計は32,531,470千円となり、前連結会計年度末に比べ12,349,928千円増加いたしました。これは主に、短期借入金が3,089,806千円、長期借入金が10,257,234千円増加したことによるものであります。 (純資産) 当連結会計年度末における純資産の残高は15,173,485千円となり、前連結会計年度末に比べて8,165,898千円増加いたしました。これは主に、資本金及び資本剰余金がそれぞれ9,177,862千円増加した一方、親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことにより利益剰余金が8,152,112千円減少したことによるものであります。 ② 経営成績の状況 当社グループは、人類の生活圏を宇宙に広げ、持続的な世界を実現するべく、「Expand our planet. Expand our future.」をビジョンに掲げ、月面開発の事業化に取り組んでいる次世代の民間宇宙企業です。 当連結会計年度における世界経済は、米国ドナルド・トランプ大統領による第二次政権下の諸政策の進展や、イランを巡る中東情勢の緊迫化、また米国・中国の二大大国を中心とする国際秩序の動向等も含め、グローバルに地政学的リスクが高まる状況にあります。またこれに伴い、不安定な資本市場や為替変動等、先行き不透明な状況が続いております。 当社グループが行う宇宙資源開発は安全保障政策とも関連性が高い分野となりますが、かかる不安定な地政学情勢も背景となり、各国の宇宙政策にも変化の兆候が見られます。中でも2026年3月にNASA(アメリカ航空宇宙局)により開催された「IGNITION」イベントにおいては、2030年までの月面基地構築に向けた投資の集中や、2028年までに20回を超える月面着陸ミッションを実施する方針など、今後の月面開発事業を大幅に加速させる計画が発表されました。加えて、同年4月にはアルテミスIIミッションにおいて53年ぶりの有人月周回を成功させ無事帰還したことで、米国を中心に、月面探査への機運は世界的に一段と高まっております。また、民間企業による月面開発需要にとっても中長期的に強力な追い風となっております。 日本においても、2025年10月に発足した高市政権下で宇宙および経済安全保障分野の重要性が引き続き強調されており、当社を取り巻く事業環境は好調に推移しております。10年間で総額1兆円規模の「宇宙戦略基金」に関しては、当該基金の第1期の公募テーマのひとつ「月面の水資源探査技術(センシング技術)の開発・実証」(支援上限額:64億円(注1)) において、当社は代表機関である国立大学法人東京科学大学を中心とするプロジェクトの中核的連携機関として採択され、代表機関から受領する最大額は47億円(注2)となることを見込んでおります。更に、2025年3月公表された3,000億円規模第2期テーマのうち、当社は「月極域における高精度着陸技術」(支援上限額:200億円(注3))に採択され、本採択に伴いミッション4の開発開始を正式に決定いたしました。 また、欧州においてもESAよりMAGPIEプロジェクトフェーズ2の予算確保が発表されるなど、将来のミッションに向けたグローバルでの事業進捗がみられました。 このようにグローバルで増大する月面開発需要に対し、当社グループは顧客が期待するミッション品質および開発効率の向上に向けて着実に対応していくための様々な施策を進めています。当社は2026年3月、外部専門家を交えた「改善タスクフォース」による成果報告「7つの提言」を受領し、今後のミッションに向けた改善策の対応方針を決定しております。また、事業戦略のアップデートおよびミッションスケジュールの再設定を実施し、これまで日米で個別に進めてきたランダー開発体制を統合し、より信頼性の高いエンジンを採用した共通プラットフォームである新モデルULTRAランダーを導入することを決定いたしました。これに伴い、米国により実施されるミッション5(注4)の打上時期を2030年へと再設定しております。 次回の月面着陸ミッションの打上げは2028年(注5)、日本主導のミッション3を予定しており、開発は構造試験モデルの製造フェーズへと移行し、予定されているPDR(基本設計審査)に向けて着実に進捗しております。今後のミッションに向けて、JAXAからの技術支援を受けており、JAXA及び宇宙科学研究所(ISAS)の小型月着陸実証機SLIMのプロジェクトに携わったメンバーも参画の上、開発体制を強化しております。 以上の結果、当連結会計年度における売上高は3,307,092千円(前期比30.3%減)、営業損失は11,580,063千円(前期は9,795,143千円の営業損失)、経常損失は8,141,515千円(前期は11,334,495千円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は8,152,112千円(前期は11,945,139千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。 なお、当社グループの事業は月面開発事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。 ご参考までに、当連結会計年度における当社グループのプロジェクト収益は5,890百万円(前期比18.5%増)となりました。当社は、会計上の売上高にSBIR補助金からの収入を合計した当社試算値を「プロジェクト収益」として開示しております。これは足許、SBIR補助金が定義上「本業以外の収入」である営業外収益として計上されており、宇宙戦略基金についても同様となる予定である一方、その他の各国宇宙機関等との契約等は売上高として計上されており、政府及び政府宇宙機関との契約の扱いに統一性がないことから、ご参考値として「プロジェクト収益」としてまとめてお示しするものです。 (注1)今後ステージゲート審査等により変動し得る数値。 (注2)最終的な契約金額は、JAXA及び代表機関による実績報告及び成果報告書の内容についての検査、並びに契約金額の確定通知をもって確定されます。 (注3)今後ステージゲート審査等により変動し得る数値であるため、全額を受領することが本書提出日時点で確定するものではありません。 (注4)本米国ミッションは当社がTeam Draperの一員としてNASAのCLPSタスクオーダーCP-12に採択されているミッションであり、新スケジュールの下でのCP-12実行に関してはNASAからの正式な承認待ちとなります。 (注5)当初2027年内として経済産業省及びSBIR事務局と合意しておりましたが、足許、本書提出日時点では当社内の開発計画上、2028年内の打上げとなることを見込んでおります。本変更については、関係省庁及SBIR事務局と調整中の段階であり、最終的には経済産業省の認可を受領の後、正式に計画変更が認可されることとなります。 ③ キャッシュ・フローの状況 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ16,573,053千円増加し、当連結会計年度末には29,690,611千円となりました。 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。 (営業活動によるキャッシュ・フロー) 営業活動により使用した資金は13,568,357千円(前連結会計年度は12,049,809千円の使用)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失8,142,931千円、長期前渡金の増加額3,636,031千円等によるものであります。 (投資活動によるキャッシュ・フロー) 投資活動の結果使用した資金は1,825,606千円(前連結会計年度は2,671,770千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出2,060,756千円等によるものであります。 (財務活動によるキャッシュ・フロー) 財務活動の結果獲得した資金は31,447,837千円(前連結会計年度は10,423,789千円の獲得)となりました。これは主に、株式の発行による収入18,195,411千円等によるものであります。 ④ 生産、受注及び販売の実績 a.生産実績 当社グループが提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。 b.受注実績 当連結会計年度の受注実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。 サービスの名称   当連結会計年度 (自 2025年4月1日 至 2026年3月31日) 受注高 (千円)   前年同期比 (%)   受注残高 (千円)   前年同期比 (%) ペイロードサービス   10,209,229   652.4   14,562,707   163.4 その他   505,353   270.5   462,391   111.1 合計   10,714,582   611.6   15,025,098   161.0 (注)1.当連結会計年度において、受注実績に著しい変動がありました。これは、当連結会計年度のペイロードサービスにおきまして、複数の大型案件を受注したことによるものです。 2.パートナーシップサービスについては、その事業の性質上、受注生産形態になじまないため、受注実績は記載しておりません。 3.当社グループは単一セグメントであるため、サービスごとに記載しております。 c.販売実績 当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社グループは、月面開発事業の単一セグメントのため、セグメント別の記載はしておりません。 セグメントの名称   当連結会計年度 (自 2025年4月1日  至 2026年3月31日) 金額(千円)   前年同期比(%) 月面開発事業   3,307,092   69.7 (注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。 相手先   前連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)   当連結会計年度 (自 2025年4月1日 至 2026年3月31日) 金額(千円)   割合(%)   金額(千円)   割合(%) The Charles Stark Draper Laboratory, Inc.   2,118,719   44.7   1,706,237   51.6 European Space Agency   168,249   3.5   526,221   15.9 Taiwan Space Agency   -   -   451,229   13.6 高砂熱学工業株式会社   1,824,870   38.5   100,870   3.1 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。 ① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積もりを必要としております。経営者は、これらの見積もりについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。 当社の連結財務諸表を作成するにあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。 ② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 a.経営成績 (売上高) 当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べて1,436,145千円(30.3%)減少し、3,307,092千円となりました。これは主に、2025年6月に実施したミッション2の打上げ以降、次回ミッションの打上げまでの期間における顧客へのサービス提供機会が限定的となったことにより、ペイロードサービスを含む売上高が前期比で減少したことによるものであります。 (売上原価、売上総利益) 当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度に比べて3,661,731千円(146.5%)増加し、6,160,437千円となりました。これは主に、ミッション2およびミッション3の開発を並行して進めたことによるものであります。この結果、前連結会計年度においては2,244,533千円の売上総利益を計上しておりましたが、当連結会計年度においては2,853,344千円の売上総損失となりました。 (販売費及び一般管理費、営業損失) 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べて3,312,956千円(27.5%)減少し、8,726,719千円となりました。これは主に、前連結会計年度にミッション2の打上げに伴い一括計上した打上げ費用の反動減に加え、研究開発費が前連結会計年度の7,730,999千円から3,928,864千円へと減少したことによるものであります。この結果、売上総損失の計上により、営業損失は11,580,063千円(前年同期は9,795,143千円の営業損失)となりました。 (営業外収益、営業外費用、経常損失) 当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度に比べて5,064,824千円(前年同期は、406,991千円の営業外収益)増加し、5,471,815千円となりました。これは主に、為替差益の計上に加え、補助金収入2,583,796千円を計上したことによります。 営業外費用は、86,923千円(4.5%)増加し、2,033,267千円となりました。これは主に、借入金の増加に伴う支払利息が前連結会計年度の920,442千円から1,816,406千円へと増加したことによるものであります。この結果、経常損失は8,141,515千円(前年同期は11,334,495千円の経常損失)となりました。 (特別利益、特別損失、税金等調整前当期純損失) 当連結会計年度において、特別利益の計上はありませんでした。特別損失については、固定資産除却損1,416千円を計上しております。 その結果、税金等調整前当期純損失は8,142,931千円(前年同期は11,956,713千円の税金等調整前当期純損失)となりました。 (法人税等、親会社株主に帰属する当期純損失) 法人税等は、主に法人税、住民税及び事業税9,180千円(前年同期は△11,573千円の計上)を計上いたしました。 その結果、親会社株主に帰属する当期純損失は8,152,112千円(前年同期は11,945,139千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。 b.財政状態 主な増減内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に記載のとおりであります。 ③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報 キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。 当社グループは、安定的な事業収益化を目指す上で将来的に継続的なミッションの実現が必要であり、2022年12月にミッション1を、2025年1月にミッション2の打上げを実施するだけでなく、後続ミッションであるミッション3のランダー開発も既に着手しており、今後も積極的に開発活動を推進してまいります。当社の資金需要として主なものは、ランダー開発のための部材調達費用、事業の拡大に伴う人件費、打上げ費用等です。必要な資金は自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。 現預金保有残高については、2026年3月期末における現金及び現金同等物が29,690,611千円であり、必要な流動性を確保しております。 ④ 経営成績に重要な影響を与える要因について 当社グループの将来の財政状態及び経営成績に重要な影響を与えるリスク要因については、「3 事業等のリスク」に記載しております。 ⑤ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおりです。 ⑥ 経営者の問題認識と今後の方針について 経営者の問題認識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

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